異世界はBTとともに   作:ユウキ003

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楽しんでいただければ幸いです。


第17話 日常・2

エルゼ達と結婚を前提に付き合う事になった俺。そんな俺に、シェスカを通してメッセージを送って来たレジーナ・バビロン。そして俺はその中で、ミリシアの意味、過去の文明が滅んだ原因などを知るのだった。更に、エンデと言う男と出会ったり、エルゼ達にプレゼントなどをしながら、俺は日常を過ごしていた。

 

 

エルゼ達にプレゼントを贈った翌日。俺たちはギルドで依頼を受ける事にした。アルファにブラボーとシエラも連れているからかなり目立っているが、気にしても始まらない。やってきたギルドで早速依頼を探す。

「ジャックさん。これなんてどうでしょうか?」

そう言ってユミナは赤い依頼書を指さす。

「ん?そいつは赤ランクの冒険者用だろ?青の俺らじゃ受注出来ないだろ?」

 

赤は、現在青である俺たちより一つ上のランクだ。普通なら俺たちは受注出来ないはずだが……。

 

「はい。でも、ここを見てください」

「ん?なんだ?……『なお、B級以上の称号持ちであればこの依頼はランクを問わない』?称号って、あれか?ドラゴンスレイヤーとか」

「はい。そしてドラゴンスレイヤーはA級の称号ですから、問題なく受注できるはずです」

と、ユミナが言うので、俺たちはその依頼、『ミスリルゴーレム討伐』の依頼を受ける事にした。

 

 

依頼内容は、メリシア山脈の麓にあるステア鉱山にある採石場に居座っているミスリルゴーレムの討伐。ゴーレムはその巨体とパワー、更にテリトリーに侵入した物を許さない性質から宝物庫の番人として使役されることもあるらしい。更に今回のミスリルゴーレムは、通常のゴーレムよりも軽いためその分素早いらしい。既に鉱山で働ていた鉱山夫に被害が出ている。報酬は白金貨5枚。赤の依頼にしては安い方だが、問題ない。

 

さて、問題はメリシア山脈までどうやって行くかだ。地図を確認したが、その辺りには行った事が無い。

 

「馬車でも借りますか?或いは、この前みたいにBTさんから風景のイメージを貰うとか?」

「そうだな。馬車は時間が掛かるだろうからパス。BTから記憶を貰うのもアリだが、今回は別の方法で行こう」

俺はリンゼの言葉にそう答える。

 

「別の方法って?」

「あれだよ。ミリシア級航空母艦だ」

 

 

こうして、俺たちは航空母艦を動かす事にした。

 

ギルドを出て、一旦屋敷に戻った俺はサラを連れてミリシアの港へと向かった。改めて間近で見る航空母艦の大きさにエルゼ達は驚嘆の声を漏らしながら船体を見上げている。

「大きいわね~」

「うん。大きいね~」

「ここからだと上が見えないでござるな~」

「でも、どうして上の方は平べったいんでしょうか?」

 

などと話をしている4人。

「サラ、こいつの運用に人員は必要なのか?」

「いえ。ミリシア級航空母艦は、通常司令部からの遠隔操縦も可能です。目的地までの移動であれば、それで問題はありません。ですが、今回は処女航海になりますので、私が直に乗り込み操縦を担当します」

「そうか、頼むぞ」

 

その後、俺たちはタラップでミリシア級航空母艦・1番艦『ミリシア』へ乗り込んだ。中を通って艦橋へと向かったが、そこには艦長席と思われるシートが一つあり、それより少し低い場所にいくつかの椅子があった。そしてサラが艦長席らしきシートに座る。

 

「このシートは人が操艦する場合にのみ使われます。今回は私が操艦をしますので、皆さまは他の席にお座りください」

「了解した」

 

俺たちはサラの言われた通り、周囲の適当な椅子に座る。

「それでは、発進シーケンスを開始します」

 

そう喋ったサラの眼前に、突如としていくつものモニターが現れた。

「メインジェネレーター始動。回転数上昇。反重力ローター、回転開始。メインスラスター、稼働開始。……システムチェック。オールグリーン。各部問題なし。ミリシア級1番艦ミリシア、微速前進。港を離れます」

サラの言葉通り、ミリシア級はゆっくりと前進し始める。そして外と中を隔てるドームが近づくと、その一部が開いてゲートとなった。

 

「港を離脱しました。目的地を設定。メリシア山脈、ステア鉱山。速度上昇。第3戦速にて現場空域へ向かいます。目的地までは1時間もあれば到着するでしょう」

「そうか」

 

さて、これで目的地まで1時間、暇になった訳だが……。

 

「さて。到着まで時間があるし俺は少し艦内を見回ってくる。お前たちはどうする?」

「でしたら私達も」

 

って事で、俺は4人を連れて艦内を回る事にした。

 

艦内には、人が生活できる居住区があり、内部には大きな格納スペースもあった。これだけの広さがあれば大部隊を移送出来るな。……もし可能なら、ミリシアやIMCで運用していた航空機、『ドロップシップ』の『クロウ』や『ゴブリン』を工廠で量産出来れば……。あとは操縦できる者がいれば航空部隊の完成だ。って、まさかあの博士、俺が航空部隊を作る事も見ていたのか?

 

なんて考えながら中を見て回る。更に、少々気を付けながら甲板に出た。空母は上空を飛行しているが、どうやらバリアを展開しているらしく甲板上に出ても風に飛ばされる事は無かった。

 

「すごいですね。これだけの船が空を飛んでいるなんて」

「あぁ。……武装が無いとは言え、これだけの速度で飛び、しかも内部にはかなりの積載量を誇るペイロードがある。こいつなら、一国の軍隊を乗せて運ぶ事だって出来る」

俺は甲板の上を駆け回るエルゼと八重、リンゼを見守りながらユミナと話していたが……。

 

「相変わらず、兵士の方らしい感想ですね」

「っと、すまん。……どうにも染みついた考え方だからな」

「いえ。気にしていませんから。……それにしても、どうしてバビロン博士はこのような物を作ったのでしょう?」

「あ、あ~~。実はそれについてなんだが……」

「はい?」

 

俺は、ユミナにレジーナ博士からのメッセージの事を話した。

 

「成程。将来ジャックさんは大きな軍を率いる指揮官になる。その為にこんなものを?」

「あぁ。彼女曰く、プレゼントらしい。そもそもミリシアって俺の古巣と同じ名前にしたのも、俺の興味を引くためだったらしい。おかげでこっちは色々大変だったってのに」

 

と、そう言ってため息をつく俺だが、隣のユミナはなぜか笑みを浮かべていた。

「あれ?俺、何か変な事言ったか?」

「いいえ。でも、どうやら私の予感は当たったようです」

「予感?」

 

「はい。私には将来、ジャックさんが何か大きなことを為すのでは?という予感がありました。そしてそれは、レジーナ博士の言葉で証明された訳ですから」

「……俺が、大きなことをねぇ」

ユミナの言葉に、俺は実感がわかないと言わんばかりにため息をついた。

 

 

その後、甲板から艦橋へ戻ると。

「おかえりなさいませ。あと数分で現場空域に到着いたします」

どうやら目的地上空に迫ったようだ。ナイスタイミングだな。

 

その後、ミリシア級は徐々に高度を下げ、ある程度まで下がった所で俺がミリシアの甲板の上から飛び降りた。地上までかなりの高さがあったが、そこはパイロット。ジャンプキットもあったので軽やかに着地。甲板の上とゲートをつないだのだが、出て来たユミナ達にめっちゃ怒られた。心臓に悪い、とか言ってな。

 

さて、まぁとにかく目的地にはついた。ステア鉱山の採掘場。辺りは誰も居らずに静まりかえっている。前方には大きな坑道の入り口がある。ミスリルゴーレムはあの中か。

 

「BT、坑道内部をスキャンしてみてくれ。目標の現在地を探りたい」

「了解。少々お待ちを」

 

俺はBTの言葉を聞きながらクレーバーを取り出して周囲を警戒する。そして……。

「スキャン完了。目標を発見しましたが、1点警告したい事が」

「警告だって?穏やかじゃないな。どうした?」

「坑道内部にミスリルゴーレムを2体確認しました。2体ともこちらへ向かって来ます」

「ッ、2体だと?ギルドの調査ミスか」

 

「如何されますか?予定では1体討伐でしたが?」

聞こえるBTの声。更にユミナ達の方に視線を向ければ、彼女達は『判断は任せる』と言わんばかりの表情だ。……仕方無い。

 

「10体も居る訳じゃないんだ。狭い坑道内部では無く、ここで迎撃する。BTは今すぐ来てくれ」

「了解。ゲート開放」

端末からそう声が聞こえた直後、俺達の傍に光のゲートが現れそこからBTが現れる。

 

「ここで逃げ帰って、2体が居た事を理由に依頼を失敗扱いにされればランク上昇に関わる。むしろ、不測の事態に対応して依頼をこなしたって事にしておけば、箔も付くさ」

そう言って俺は更に武器を取り出す。『R-6P ソフトボール』。一言で言えばグレネードランチャーだ。こいつを全部で4丁。

 

「ユミナ達は、ソフトボールで援護射撃を頼む。あと、大丈夫だとは思うが俺達が近くに居るときは撃たないでくれよ?」

「分かってるわよ。それくらい」

そう言って一丁を受け取るエルゼ。他の3人もそれぞれソフトボールを手にする。

 

それと、彼女達のために予備の弾が入った弾薬ケースを近くに置いていく。

 

「BTは、ノーススターのロードアウトで頼む。相手は硬いし早い。トラップで足を止めたら、そのまま足を壊しにいけ。奴らだって、フレイズほどの再生能力は無いだろう。移動力を奪えばこっちのものだ」

「了解」

 

エルゼ達やBTに指示を出し、俺もクレーバーを構える。BTもプラズマレールガンを取りだし構える。

 

そして……。

「来たぞ」

俺が呟いた次の瞬間、坑道の暗がりの中から現れた銀色のゴーレム、ミスリルゴーレム。それが2体。

「作戦開始だっ!BTっ!」

「了解っ!」

 

即座に俺とBTが左右に分れる。ミスリルゴーレムはそれぞれ、俺とBTを警戒している。

『ドパァンッ!』

 

『キュィィィィィンッ!ドォンッ!』

 

俺のクレーバーと、BTのチャージされたレールガンから放たれた銃弾がミスリルゴーレムの足に命中した。対タイタンを想定して高い貫徹能力を持つBTのプラズマレールガンはゴーレムの足を撃ち抜き破壊した。だがクレーバーの方は命中した物の弾が逸れてしまった。奴はバランスを崩して倒れこそしたが、足に罅が入った程度だった。

 

と、そこに。

『『ポンッ!ポンッ!ポンッ!』』

軽い音と共にミスリルゴーレムの足首周りに着弾し、次の瞬間には爆発するグレネード。後方のエルゼとリンゼによる支援だ。

 

この攻撃でも奴の足首を完全には破壊出来なかった。だが、クレーバーで出来た罅を大きくする事は出来た。だったらっ!

 

『ドパァンッ!』

もう一度、同じ場所に銃弾をたたき込んだ。ひび割れた所にもう一発を食らい、更にグレネードが炸裂する。すると、ミスリルゴーレムは立ち上がろうとしたが……。

『バギャッ!!』

 

ひび割れ、欠けた足ではその重量を支えきれなかったのか片足首が折れ、ミスリルゴーレムは地に伏した。

 

もう一方の方はと言うと……。

 

『キュィィィィィンッ!ドォンッ!』

 

今ちょうどBTがミスリルゴーレムの片腕を肩口辺りから吹き飛ばす所だった。BTの方のゴーレムは、既に片腕1本になっていた。それも、すぐにBTのプラズマレールガンに吹き飛ばされた。動けなくなったゴーレムに歩み寄ったBTは、達磨にされて動けないゴーレムを仰向けにさせると、その胴体部にプラズマレールガンの銃口を突き付け何発も銃弾をたたき込んだ。そして、砕けた胸の奥から現れた赤いコア。あれがミスリルゴーレムの心臓だ。BTは、それを左手で掴み引っこ抜いた。……すると、1匹のミスリルゴーレムは動かなくなった。

 

さて、あとはこっちだ。俺もクレーバーを連射に、奴の片腕を肘の辺りから破壊する。そこに、BTとBTをサポートしていた八重とユミナのソフトボールによる射撃も加わる。銃弾と砲弾とグレネードの雨が殺到し、ミスリルゴーレムを飲み込む。

 

そして……。

「射撃止めっ!」

俺が指示を出すと、全員が射撃を止める。攻撃で出来た砂煙が晴れたのを確認すると……。

そこにはボロボロになり、コアの砕けたミスリルゴーレムが転がっていた。

 

「ふぅ」

それを確認すると俺は息をついた。

 

「BT、目標の生体反応は?」

「ネガティヴ。完全に沈黙しました」

「了解した」

これで後は、討伐証明のコアの欠片を手に入れれば十分だ。……しかし。

「ミスリル、か。一応回収しておくか」

 

ミスリルは高価な金属だ。いざとなれば工廠で使う資源になるだろうから、残ったミスリルゴーレムのボディや腕、足などを無属性魔法のストレージで回収しておく。

 

「さて。これで依頼は終了だな。あとはミリシアで戻るだけだ」

 

 

こうして、無事にミスリルゴーレムの討伐に成功した俺達はミリシアで帰還。ギルドに寄ったが、報酬もランクアップのためのポイントも2倍になった。俺はゴーレムバスターの称号をゲットし、ユミナ以外の俺達は赤ランク冒険者。ユミナは青だった。その後、屋敷に戻ると、応接室にリーンが来ていた。

 

「あら?お帰りなさい」

「何だ。来てたのか?今日は何の用だ?」

俺はリーンの向かいのソファに腰を下ろした。

「念のため報告、って所かしらね。今も魔法陣の情報を集めているけど、これといった情報はまだ無いわ」

「そうか。……まぁ引き続き頼むぞ、リーン」

「えぇ。……所で、あなたはどうするの?元いた場所に戻りたがっていたけど」

「あぁ。その事か。それなら、当面はここに留まるつもりだ。帰る方法も分からないままだし、何より、大切な存在も出来た事だからな。今更彼奴らを置いてここを去るつもりは無い。

今の所はな」

「あら、そうなの?……まぁでも良いわ。それならますます、協力して貰うだけだし」

 

「そうだな。俺としてもフレイズの情報は欲しいし、バビロンの機能があれば、対フレイズ戦の役に立つだろう」

「分かったわ。まぁ、とりあえず情報は今後も集めるから、見つかった時はお願いね?」

「あぁ。任せろ」

 

 

それから数日の間、俺は八重を連れて手に入れたミスリルで刀を作る為に彼女と2人でオエドに向かったり、更にベルファスト国王達の所へ正式にユミナと結婚する旨を伝えに向かった。

 

その最中で……。

「もし、俺がユミナと結婚したら俺がベルファストの次期国王になるのか?」

「そうですね。その可能性は高いかと」

「そうか。……しかし、俺が王様ねぇ」

俺は気怠げに息をつく。

 

「あら?ジャックさんは王になることに反対なのですか?」

「反対というか、実感が沸かないんだよ。人を指揮したことも無いからな。俺が王になるかもって言われても。俺に分かるのは軍事関係の事が関の山だ。それが、幾万の人間の今後を背負う立場になるとか。荷が重くて気後れしてる、って所だ。……なぁユミナ、俺がお前と結婚して王になる以外に、新しい王が生まれる可能性は何か無いか?」

「そうですねぇ。お父様とお母様の間に私の弟、つまり男児が生まれる。或いは叔父様のところに男児、つまりスゥの弟が生まれでもすれば分かりませんが」

「そうか」

 

俺が王様、か。本当に実感が沸かないし、俺はどこまで言っても兵士という枠組みからは抜けられない。レジーナも俺がそう言う存在になると示唆していたが、どうなる事やら。

 

その後、ベルファスト王とユエル王妃に話をしに言ったが、2人ともとても喜んでいた。国王に居たっては、早く孫の顔が見たいと言って顔を赤くしたユミナにド突かれる始末だった。

 

あと、ユエル王妃も俺と同じ考えだったのか、厄介事が起きないように結婚決定の話はしばらく伏せておくそうだ。

 

で、ユミナも久しぶりに城へ戻ってきたので、家族水入らずという事で俺はユミナと王妃、国王を残して城に近い訓練場へとやってきた。そこでは騎士達が模擬戦を繰り広げていた。しかし、やっぱりこの世界のメイン武器は剣か。しかも強度はフレイズの外殻を貫ける程ではない。BTに言って分析させたが、あのレベルの剣では、『10回も斬り付ける事は出来ない』そうだ。10回斬り付けるよりも先に刃こぼれし、最悪剣が折れるらしい。

 

となると、やはりクレーバーの量産とそれの訓練が必要だな。だが、クレーバーは威力が高い分反動も強い。とても素人に振り回せる代物ではない。となると、チャージライフルやアーチャーの量産も考えるべきか。

 

と、考え事をしていた時。

 

「おい貴様、ここで何をしている」

近づいてくる気配に気づいていたが、声を掛けられたのでそちらを向けば、二十歳前後の騎士が10人、そこに立っていた。

「見慣れん顔だな、誰かの使用人か?ここは貴様如きが来て良い所では無いぞっ!」

そう言って偉そうに声を荒らげる男。その傍で他の9人がケラケラと笑みを浮かべている。

 

見た目と態度からして、良いとこのお坊ちゃん連中か。まぁ良い。俺は無視を決め込み、模擬戦の方へと視線を向けた。

「ッ!貴様っ!この俺を無視するかっ!」

声を荒らげる男。だが俺は見向きもしない。

「ッ!こいつっ!俺を誰だと思って居るっ!俺は貴族のっ!」

 

そう言って男が掴みかかってくる、が……。

 

『ガッ!』

「え?」

 

俺は伸びてきた男の手を掴んで……。

『ドタァンッ!!』

「ぐあぁっ!」

呆けた声を出した男をその場に引き倒した。

 

男の悲鳴に、模擬戦をしていた騎士達が動きを止め、近くにいた9人が呆然としている。

 

俺は倒した男から手を放す。すると……。

 

「き、貴様ぁっ!何をするっ!その者はバロー子爵家の次男だぞっ!貴族に手を出しておいて、ただで済むと思うなよっ!」

リーダー格らしき男が叫ぶと、9人が次々と剣を抜いた。それを見た俺は、即座にアーマー類とジャンプキットを展開する。突如として服装が変わった俺に奴らは戸惑った様子だ。

 

まぁ、良い。

「剣を抜いたんだ。死ぬ覚悟、あるんだろうな?」

そう言って、俺はナイフを抜く。

 

「黙れぇっ!」

すると、騎士が1人剣を手に突っ込んでくる。だが、その動きは素人丸出しで、動きが拙い。こいつ、ホントに騎士か?そう考えながら余裕で剣を避ける。

「でぇぇぇぇぇぇっ!」

そして大ぶりで突っ込んできたところを……。

 

『ズバッ!』

すれ違い様にその喉を切り裂いた。俺とすれ違った刹那。

『ブシュゥゥゥゥゥッ!』

頸動脈を切られた男は、盛大に血を噴き出しながら倒れた。

 

「ひ、ひぃぃぃぃっ!?」

それだけで騎士達は全員、及び腰になる。

 

「どうした?来いよ?剣を抜いたんだ。当然、殺し合いだろ?それとも、死ぬ覚悟も無しに他人を殺そうってか?だったら。…………笑わせるな素人共がぁっ!」

 

俺は腹の底から怒声を放つ。その怒声に奴らはビクッと体を震わせる。その時、俺が最初に倒した男が起き上がろうとする。が……。

 

『ドゴォッ!』

「がはぁっ!」

俺はそいつの腹部に蹴りを入れて、もう一度気絶させる。

 

「……さぁ、死にたい奴は掛かってこい」

そう言って、俺は手元にハンドガン、P2016を取り出す。

「ひ、怯むなっ!相手は1人だっ!囲んで嬲り殺しにしろっ!」

リーダー格の男の指示を受けた7人の男達が俺を円形に取り囲む。だが……。

 

『ダンッ!』

「ぎゃぁっ!」

P2016が火を噴き、1人の腹を撃ち抜く。

『ダンダンッ!』

更に2発。1人1発ずつ、心臓にぶち込む。

 

「こ、こいつっ!」

後ろから迫ってくる男の剣を、半身を知らして躱し、振り向きざまの顔面にナイフを突き刺す。ナイフが刺さったままの男が後ろに倒れ動かなくなる。残り4人。

『ダンッ!ダンッ!』

更に2人、銃弾で顔面を撃ち抜く。

 

「このぉっ!」

囲んでいた最後の1人が向かってくる。俺は繰り出される剣を避けながらP2016をホルスターに戻し、振り下ろした剣を握る奴の右手を左手で押さえ、右拳のストレートを奴の顔面に打ち込んだ。

『ガッ!ガッ!』

1発、2発と拳をたたき込み、歯がへし折れ鼻が折れ、口と目と鼻から血を流す。俺はフラフラになった男の後ろに回り込んで……。

 

『ベキッ!!』

首の骨をへし折るネックブレーカーでトドメを刺した。最後の男を適当に地面に転がす。

 

「さて。最後は、お前だけだ」

「ひ、ひぃっ!?」

 

俺はもう一度P2016を抜き、狙いを定める。と、その時。

 

「そこまでにしてくれないか?」

声が聞こえた。狙いを定めたまま視線を向けると、そこに立っていたのはリオンともう1人、銀髪の騎士だった。すると……。

 

「副団長!こ、こいつがっ!こいつがいきなりっ!」

生き残っていた茶髪のリーダーらしき男が銀髪の騎士へと駆け寄る。が……。

 

『ドゴォッ!』

「がはっ!」

副団長と呼ばれた男は茶髪のリーダーを殴りつけた。

 

「貴様等、今まで市民に乱暴狼藉を働いて迷惑を掛けていた事を、知らないとでも思って居たのか?」

……どうやら彼奴らは、普段から貴族としての立場を利用して好き勝手やっていたようだ。そういや以前、公爵様がそんな事を話していたな。貴族として騎士にも関わらず傍若無人な態度をするのが居るとか何とか。

 

その後、茶髪は謹慎処分を言い渡され、唯一生き残った男と共に他の騎士達によって連行されていった。

 

それを後目に、俺は1人の顔面に突き刺さったままだったナイフを抜き、ケースへと戻す。

「ジャック殿」

そこにリオンから声が掛かった。

 

「お久しぶり、と言いたいのはやまやまですが、やり過ぎではありませんか?」

そう言ってリオンは周囲の、倒れた骸へと目を向ける。

「やり過ぎだと?笑わせるな。こいつらは剣を抜き、殺す気で向かってきた。だから当然、俺も殺す気で行き、殺した。それだけの事だ」

 

今の俺は、兵士としての自分を覚醒させている。だからこそ言葉にも棘が突く。

 

「それより、何だあのお粗末な連中は。あれで戦闘訓練でもしてるってのか?あれなら、俺の古巣の歩兵だって倒せないぞ。はっきり言って、雑魚も良い所だ」

「そこまで言われると、ぐうの音も出ないよ」

俺の言葉に答えたのは、リオンではなくあの銀髪の副団長と言われていた男だった。

 

「アンタは?」

「失礼。私は『ニール・スレイマン』。騎士団の副団長をしている」

「そうか。俺はジャック・クーパーだ。……まぁ、知ってると思うが」

「あぁ。君のことはレオン将軍やここに居るリオンなどから聞いているよ」

「そうか」

 

「それより、本音を言うと助かったよ」

「ん?それは、こいつらを殺した事についてか?」

そう言って俺は傍に転がっている骸に目を向ける。

 

「騎士団の者としては公に喜ぶ事は出来ないが、この者達は騎士団の中でも厄介者でね。獅子身中の虫だったのさ。貴族の次男、三男であるあの者達は家の権力を笠に着てやりたい放題でね」

「あぁ。そう言う奴らが騎士団にいるってのは、アルフレッド公爵から聞いてるよ」

「だからこそ、どうにか奴らを騎士団から追い出せないかとしていた所に……」

「俺に喧嘩を売って逆襲され、この様だ」

そう言ってもう一度骸に目を向ける。リオンとニールもだ。

 

「所で、その武器は一体何かな?」

ニールは俺の腿にあるホルスターに収められたP2016に興味津々だ。

 

「こいつか?こいつは銃と言ってな。簡単に言うと、爆発する粉の力で鉄の塊を発射する武器だ。……はっきり言わせて貰うが、こいつの前には大抵の防具だろうが無意味だ」

「それはそれは、恐ろしいね。それを量産する事は出来るかい?」

「残念ながら、今のベルファストの工業力じゃ無理だ。お手本として俺がこいつをお前に預けても良いが、こいつを分解して、銃弾や銃の構造を腕利きの職人が調べて模倣したとしても、1丁作るのに相当の時間が掛かるだろう」

 

そもそも、銃火器は俺達の世界で何世紀も掛けて発展してきた。それをこの世界の技術でコピー出来るか?俺の見つけたミリシアの工廠みたいな施設があれば別だが、恐らくは無理だろう。

「そうか。私も男としての性かな、新しい武器にはどこか心惹かれてしまってね」

そう言ってP2016に目を向けるニール。

 

「そんなに欲しいなら、見繕ってやろうか?」

「え?」

「一軍全員に銃と弾を供給するのは無理だが、個人になら、余裕で分け与える事が出来ぞ?」

「ほ、本当かい!?出来ればお願いしたいが……」

「別に構わないさ。俺としても騎士団の副団長ともなれば、パイプを持っておきたいからな。お互い、利益ある取引だ。悪く無いだろ?」

 

「あぁ。そうだね」

と言う事で、俺はニールに銃火器の扱い方を教えた。更に傍に居たリオンも混ざり、俺は2人に銃火器の扱い方を伝授した後、2人にはハンドガンタイプのショットガン、『モザンビーク』とその弾薬、弾倉などをいくつか渡しておいた。

 

こいつなら、一般的なARであるフラットラインやLMGのディボーションほど貫徹能力は無いだろう。なので町中でもぶっ放せる。まぁ、こいつらがモザンビークを使う時が来るとしたらよほどピンチの時だけだろう。

 

ともかく、2人にはモザンビークを渡しておいた。リオンの方は、この先オルガと色々あるだろうから護身用の意味も込めてな。

 

 

そうやって、俺は異世界での日常を過ごしていた。

 

     第17話 END

 




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