異世界はBTとともに   作:ユウキ003

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遅くなりましたが、楽しんで頂ければ幸いです。


第18話 第2のゲートへ

日常の中でミスリルゴーレムの討伐依頼を受けたり、ある時いちゃもんを付けてきた似非騎士共をぶっ殺すなどしていた。

 

騎士団の訓練場で問題が起こった翌日の夜。

 

ラピスから不審な集団が向かっていると聞いたので、俺とBTで迎撃した。門番のフリオにはトイレにでも行く振りをして貰い門から離れて貰った。そして案の定、50人ほどの連中が侵入してきたのだが……。

 

『『ドドドドドドドドドドドッ!!!!!』』

それを出迎えたのは俺のスピットファイアとBTのXO-16による銃弾の雨だ。

 

瞬く間に大勢の侵入者が挽肉にされていく。血と臓物の欠片が飛び散る。ある程度なぎ払うと、俺はBTに射撃中止を命令する。で、侵入者の顔を拝みに行くと……。

 

「ん?こいつは……」

見覚えのある茶髪頭の死体が転がっていた。こいつは昨日俺に突っかかってきた似非騎士の1人だ。……成程、ニールの言葉を無視して報復にでも来た訳か。

「……バカな連中だ」

 

俺は死体に向かってそう吐き捨てると、骸の処理を始めた。家の敷地の適当な所に魔法で穴を掘って、そこに骸を放り込んだ。その後、BTにスコーチロードアウトを装備させて、穴に燃焼トラップを放り込んでからテルミットをぶち込んで燃やした。

 

骸の処理をしていると、騎士団がやってきたが不法侵入でぶっ殺したと説明した事と、目の前に広がる、燃える骸の山に顔色を悪くしてそそくさと帰って行った。

 

その後、飛び散った血の掃除などをしていると朝になってしまった。正直こう言うのはユミナ達には見せたくなかったので、俺が良いと言うまで絶対に家から出てくるなと厳命してある。……まぁ、銃声やらなんやらで俺が何をしたのか、大体の事は察した様子だった。

 

なので、一応事情は説明しておいた。が、すると4人とも納得した様子だった。

 

「……怒ったり気分を悪くしないのか?理由はどうあれ、人を殺したんだぞ?」

「確かに、それは事実です。ですが侵入してきた彼等もそれは自業自得です。それに、彼等が屋敷に侵入したら何をしていたか分かりませんし。それに、自分や自分の大切な人に害を為そうとしたんです。私達でもそんな相手には武器と殺意を持って戦います」

「「「うんうん」」」

ユミナの言葉に頷く3人。

 

「住居不法侵入に、下手をすれば殺人未遂どころか殺人罪になっていたかもしれませんから。十分正当防衛が成立するだろうと私は考えています。それに、ジャックさんの話を聞く限り彼等は問題児だったようですし。ジャックさんや私達に手を出せばどうなるか、良い宣伝になったのではありませんか?」

「……逞しいなぁユミナは」

全く、言ってる事が物騒なお姫様だなぁ、なんて俺は苦笑しながらも、内心安堵していた。折角告白までされたんだ。こんな事で、あんな奴らのせいで関係が悪化するのは避けたかったからな。

 

とまぁ、そんなこんなでユミナの言うとおり今回の一件は俺の正当防衛という形になった。無論連中の家族はそれで納得しなかった。しかし、元々連中が色々やらかしていた上に、荒くれ共を雇って襲撃までしようとしたんだ。連中の家族は全てが最悪の場合お家取り潰し、良くて爵位の降級、と言った罰を受けたそうだ。

 

ざまぁないな。貴族の地位に胡座を掻いてるからだ。と、この話を聞いた時に俺は内心思った。……しかし、俺がユミナと結婚したら、王家の仲間入りって可能性もあるのか。…………今のうちにBTとかから社交マナーとか学んどいた方が良いのか?実際そう言うのとは無縁の生活だったし。なんて俺は思うのだった。

 

 

それから数日後。八重の刀を受け取りに行ったり、俺は俺でミリシアの設備を使って何とかスペクターの量産を行っていた。

 

機械歩兵であるスペクターは人間の兵士と違って換えが効く。なのでいざと言う時の戦力として量産を進めていた。武装もある程度量産したし、近接戦闘用に俺の格闘技能のデータをインプットしてある。素手の1体でもそんじょそこらのチンピラ数人を楽に相手取る事くらいは出来る。

 

とは言え、ここの物資も無限じゃない。素材の確保をそろそろ考え始めないとな。この前の戦いで手に入れたミスリルゴーレムの素材も、量はたかがしている。将来的に素材の調達方法も考えないとな。

 

 

と、そんな日常が過ぎていったある日の事だった。

 

朝早く、俺はエルゼ達と共に朝食を取っていた。すると……。

『バァンッ!』

「見つかったわよっ!場所はサンドラ王国の南東、ラビ砂漠よっ!」

突如としてやってきたリーン。どうやら遺跡の場所が見つかったらしいが。

 

「おいおい。落ち着けよ。悪いがこっちは食事中だ。それに、話を聞くからまぁまずは座れ。ライム、リーンにお茶を」

「かしこまりました」

 

その後、俺はリーンと話をした。彼女の話によれば、そのサンドラ王国の南東にある砂漠、ラビ砂漠でニルヤの遺跡と似たような構造の遺跡が以前存在したそうだ。現在は砂に埋もれているらしい。

 

「サンドラ王国、ねぇ。BT、世界地図を出せるか」

「分かりました」

 

俺が端末に声を掛けると、空中に地図が表示された。ユミナ達やリーンは馴れたものだが、ラピスやレネは心底驚いていたが、まぁ良い。

 

「サンドラ王国は、ベルファストから見て南東に位置します。ガウの大河を越えてミスミド王国領内を通過。大陸中央にある大樹海と呼ばれる森林地帯を更に南東方向に進んだ先に、サンドラ王国があります」

「陸路じゃ何日かかるか分からないくらい長い道のりだな」

「はい。計算によると、馬車を用いた往復の場合1ヶ月以上はかかると計算されます。また、大樹海には道と呼べる物は皆無であるため、それ以上の時間を要する可能性もあります」

 

となると、陸路は無理だな。まぁそれなら、空路で行けば良いだけの事だ。

「エルゼ、リンゼ、八重、ユミナ。食事が終わったら用意してくれ。すぐにミリシアに上がって、また空母で空の旅だ」

 

こうして、俺達は再び遺跡調査のために動き出した。

 

その後、俺達はミリシアに上がりミリシア級航空母艦でラビ砂漠を目指して移動を開始した。艦長席には俺が座っている。最初はサラがやると言って居たのだが、操る感覚を覚えておきたいので、俺が操縦している。速度はかなりの物だが、それでも数時間はかかる。ちなみに、操艦は音声コマンドと思考制御を合わせた物だ。思考制御はタイタンのニューラルリンクに似ていたので問題無く操れた。

 

「ふむ。現地までは精々2、3時間と言った所か。ユミナ」

「はい?」

「お前達は適当にくつろいでて良いぞ?」

「そうですか?あぁでも、そうは言われても、この船の中ではやる事がありませんね」

そう言ってため息をつくユミナ。

 

「それもそうか。じゃあとりあえずサラ、皆にお茶の用意出来るか?」

「でしたら艦内の食堂で用意してまいります。少しお待ちを」

「あぁ。頼む」

 

その後、サラが用意してくれたお茶を飲みながら、俺達は艦橋で話をしていた。内容はこれから向かう遺跡についてだ。

 

「一体どんな遺跡が待ってるのかしらね?私としては図書館が望ましいけど」

「確か、バビロンは全部で9つ。確か庭園の他にあとは、研究所、格納庫、図書館、城壁、塔、工房、錬金棟、蔵、だったか?」

「はい、その通りです」

「つまり、その図書館へと通じるゲートであるか。可能性は8分の1、と言う事でござるな」

サラが俺の言葉に頷くと、顎に手を当て、うぅむ、と言わんばかりに声を漏らす八重。

 

「そう言えば、ジャックはこれと言って特に欲しいバビロンはあるの?」

「そうだなぁ。個人的には格納庫か研究所、と言った所だろうな。対フレイズを想定すると、一番欲しいのはその二つだ」

そうエルゼの問いかけに答える。

 

それからしばらく、お茶をしながら話をしていると……。

 

『ピコンッ』

「ん?」

不意に、船のセンサーが何かに反応した。

「どうしましたか?」

俺はリンゼの言葉を聞きながらも、思考制御で船体各部にあるカメラ映像をモニターに映し出した。

 

「眼下の砂漠地帯に生体反応を検出した。今モニターに出す」

そう言って空中にモニターを表示する。

 

そこに映し出されたのは、砂漠を行く10人の人影だった。ラクダに荷物を載せ、それを引きながら日除けの外套らしき物を纏って、10人がどこか力無く砂漠を進んで居る。

 

「あれは、遭難者か何かか?」

「えっ!?な、なら助けないとっ!」

「待ちなさい」

リンゼの言葉をリーンが遮る。

 

「あれがただの遭難者とは限らないわよ?こんな所を進んで居るのだから、下手をすれば悪人や罪人、盗賊って可能性もあるわよ?それでも助けるの?それに、助けるとしてもこの船の存在を知らせる事になるわよ?今はかなりの高度を飛んでいるから人に気づかれないようだけど、高度を下げれば確実に気づかれるわよ?」

「そ、それは……」

リーンの言葉に戸惑うリンゼ。

 

「どうしますか?ジャックさん」

そんな中で俺に問いかけるユミナ。……確かにリーンの言うとおり、ここで高度を下げれば船の存在が知られる。どうしたもんか、と考えていると……。

 

「ッ!?」

レーダーに新たな反応があったっ!しかもデカいっ!?

 

「警報っ!レーダーに感ありっ!地中を何者かが高速で移動中っ!間もなくあの集団と接触しますっ!」

直後端末から響くBTの警告。と、その時。

 

モニターの中で、砂の中から巨大な芋虫のような魔獣が姿を現した。

「あれはっ!?」

「サンドクローラーね。砂と一緒に獲物を丸呑みにする魔獣よ」

リーンの説明を聞いてるが、ヤバそうだ。タイタンよりデカいぞあれはっ!

 

そしてモニターの中でサンドクローラーが一団に襲いかかった。武器を持った数人がすぐさま応戦するが、分が悪いようだ。ラクダも既に食われた。

 

「ちっ!あのまま見過ごすのも後味が悪いっ!サラッ!艦の操縦を変われっ!」

「はっ!」

俺はシートをサラに明け渡し、自分はジャンプキットにアーマー、そして武装である『サイドワインダーSMR』を取り出す。

 

「BTっ!彼奴らの近くにフォール出来るかっ!?」

「可能です。ロードアウトは?」

「接近戦を考慮してローニンロードアウトで行けっ!俺もある程度高度が下がったら降下するっ!」

 

「了解っ、タイタンフォールのスタンバイ開始。降下座標を確定中」

よしっ、これでBTの準備も出来たな。

 

「サラっ!高度を下げろっ!俺もある程度高度が下がったら甲板上から降下するっ!」

「了解っ!コース修正、降下開始っ」

 

「良いの?相手は遭難者と決まった訳じゃないわよ?」

「そうだな。だから襲ってきたら倒すなり捕まえるなりする。本当に遭難してるのなら助ける。それだけだ」

そう言って俺は艦橋を出て行こうとする。

 

「お気を付けて」

「あぁ、行ってくる」

そして出て行く時、ユミナと短くそんな言葉を交しながら、俺は艦橋を出た。

 

 

~~~~

一方、眼下の砂漠では3人の冒険者たちがサンドワーム相手に苦戦を強いられていた。他の7人には離れるように行って逃がしたが、3人が倒れれば残りの7人も奴に食われて終わりだ。

 

と、その時だった。

 

『ズズゥンッ!』

突如として彼等の背後で何かが落下してきた。落下の時の衝撃で砂塵が舞う。

 

「な、何だっ!?」

「まさか挟まれたのかっ!?」

 

落下してきた何かが分からず、新たなサンドクローラーかっ!?と考え3人は冷や汗を流した。

 

だが……。

 

『バッ!』

 

砂塵の中から飛び出してきた巨人は、3人を無視してサンドクローラーに突進していった。巨人、BTの体当たりを避けきれずに吹き飛ぶサンドクローラー。それを、3人が呆然と見上げていた。

 

だが、サンドクローラーもそれだけでは倒れなかった。すぐに起き上がり、BTを飲み込もうと向かってくる。だが……。

 

『バスバスッ!!』

BTの手に握られていた巨大なショットガン、レッドウォールが火を噴き、無数の散弾がサンドクローラーの皮膚を穿つ。

 

『キシャァァァァァァァッ!?!?』

悲鳴を上げてのたうち回るサンドクローラー。

 

「な、何だ、あの巨人は」

BTとサンドクローラーの戦いを呆然と見守る3人。と、その時、彼等の周囲が突然陰った。何だ?と空を見上げると……。

 

「えっ!?えぇぇぇぇっ!?ふ、船が飛んでるっ!?」

そこにあったのはミリシア級航空母艦の船体だった。呆然と船を見上げる3人。

 

と、その時船体の淵から一人の人影が飛び降りてきた。クーパーだ。彼は降下しながらもサイドワインダーSMRをぶっ放す。

 

マイクロミサイルの雨がサンドクローラーの体に命中し、爆発し肉をえぐり取る。更に悲鳴を上げるサンドクローラー。

 

と、そこにBTがダッシュで近づき……。

『ズバッ!』

 

背中に背負っていた大剣、ブロードソードでサンドクローラーの頭を落としてしまった。

 

 

~~~~

汚い血液をまき散らしながら倒れたサンドクローラーは、ビクンビクンと体を震わせたあと、やがて動かなくなった。

「目標、生体反応無し。完全に沈黙しました」

「了解だBT。念のため周囲を警戒してくれ。俺は……」

 

サンドクローラーから視線を後ろに向けると、これと戦っていた3人と、少し離れた所に居て戻ってきた7人が戸惑うような様子で俺達の方を見ていた。

 

「大丈夫か?」

「あ、あぁ。助かったが、アンタは?」

声からして女か?長剣を手にしていた1人が声を掛けてきた。

「俺はジャック。ジャック・クーパーだ。たまたま上からアンタ達が襲われてるのを発見してな。こうして救援に来た」

「う、上ってのはあの空に浮かんでる船、の事か?」

大きな斧、戦斧を掲げた男も戸惑いながら空の空母を指さしている。

 

「あぁ。俺の船だ。それより、アンタ達名前は?」

「私はレベッカ。冒険者だ」

「俺も同じ冒険者で、ローガンだ。こっちはウィルだ」

「ど、どう、も」

フードを取るレベッカとローガン。レベッカは褐色肌の女性で、ローガンは無精髭が特徴的な男だ。だが、最後の1人、ウィルはまだ子供らしさがあり、しかも持ってる長剣が長すぎて扱いに苦慮しているようだ。……ウィルはまだまだ新人と行った所か?

 

しかし、ウィルと他の7人はフラフラだな。レベッカ達もかなり消耗しているようだ。とは言え……。

 

「なぁ、俺としてはアンタ達を助けても良いと思って居る。アンタ達が望めば、あの空に浮かぶ船に案内する。食事と水も提供しよう」

俺が話を切り出すと、7人が喜びながらも戸惑った様子だ。と言うか、7人とも声からして女か?

 

「だがその前に聞いておきたい事がある。お前達には、俺と俺の仲間に危害を加える気はないか?」

「あぁ、無い。命の恩人でもあり、水と食料を提供してくれるのなら、そんな恩を仇で返すような前はしないし、彼女達にもさせないと約束しよう」

レベッカの言葉にフード姿の7人がコクコクと頷く。

 

「分かった。……だが、これだけは言っておく。少しでも怪しい動きを見せた場合、容赦無く拘束させて貰う。良いな?」

「分かった」

「よし。ならまずは、落ち着いて話をするために船に上がろう。こっちだ」

 

そう言って、俺はゲートを開き、彼女達を空母の艦内へと案内した。

 

その後、サラに頼んで軽食と水を用意させた。軽食、と言っても内容は艦内に備蓄されていた戦闘糧食、つまりレーションに入っていたビスケットやチョコだ。もっとも、レベッカやローガン達はチョコにも驚いていた。……しかし、冒険者である3人以外、つまりあの7人全員が女性だった。しかも、首におかしな形の首輪をされていた。……とは言え、その事を聴ける雰囲気ではないので、とりあえず彼女達がある程度腹を満たすのを待った。

 

そして、彼等の腹が膨れた頃を見計らって、俺が話題を切り出した。ちなみに、先にエルゼやリンゼ、ユミナ達の紹介だけはしてある。まぁ、ユミナがベルファストの王女である事はまだ伏せてあるが。

 

「それで?何だってローガン達はあんな場所を彷徨っていた?順番に話してくれないか?」

俺が問いかけると、レベッカ達3人は顔を見合わせ頷いた。他の7人は、どこか緊張した面持ちだ。

 

「ジャック。まずはとにもかくにも、私達の話を最後まで聞いて欲しい」

「何故だ?」

「……我々は、理由はどうあれサンドラ王国の法に触れる行為をした。だからこそ、捉え方次第で私達は罪人と言う事になる」

 

罪人、と言う単語に俺の周りのエルゼやリンゼ、八重達の表情が険しくなる。

 

「それでもどうか、最後まで話を聞いてくれるか?」

「良いだろう。アンタ達をどうするかはその話とやらを最後まで聞いてから決めるとしよう」

「ありがとう」

 

そう言って頭を下げた後、レベッカ達は話を始めた。

 

サンドラ王国には、かつて存在した大魔法使いが大量生産に成功したアーティファクト、『隷属化の首輪』という物が流通しているらしい。

 

元々は凶悪な獣を従えるための物だったが、それはいつしかやがて、人に使われるようになった。その結果、サンドラ王国では奴隷制が存在している。普通は犯罪者や借金を理由に身売りされたものが、人権を剥奪され奴隷に身をやつすらしい。

 

だが、非合法な奴隷も存在する。それが彼女達だ。

 

盗賊が襲撃した村落などで捕まった若い、或いは容姿端麗な女性を奴隷商人が非合法に買い取り、奴隷として商売道具にして売ろうって事だ。その奴隷商の護衛を引き受けたのがレベッカ達3人という訳だ。元々ギルドを通さない言わば非正規の依頼だったため、3人とも依頼が奴隷商の護衛だとは知らなかったそうだ。

 

そして、依頼の中で彼女達が非合法な奴隷だと知り、義憤に駆られた3人は何とか彼女達を助けようとした。奴隷商を始末するタイミングを見計らっていたが、肝心の奴隷商は盗賊の襲撃を受け、最初の矢を頭に食らって絶命。

 

盗賊を退けた3人は、彼女達を国外に連れだそうとした。非合法とは言え、奴隷は奴隷。首輪をされてしまえば、そいつにもう人権なんて物はない。戻っても結局は新たなご主人様を待つだけだ。

 

だからこそサンドラ国外に逃げようとしたのだが、砂嵐で遭難し砂漠を彷徨っていた。

 

と、これが彼女達から聞いた話だった。

 

「成程な」

俺は小さく頷く。その傍では、ユミナ達が眉をひそめていた。奴隷制があるのはサンドラ王国だけのようだ。そのため、ベルファストやイーシェンで育った彼女達が不快感をあらわにするのも分かる。

 

「その首輪、外す事は出来ないのか?」

「外す方法はある。が、それには主人が必要なのだ」

「……成程。基本的に物扱いの奴隷は、文字通り主人の持ち物。主人が手放さなければ自由は無い、か」

「そうだ。だが彼女達の主は、先ほど盗賊に襲われて死んだ奴隷商だ。今の彼女達には主がいない。だから命令を受けて自由を奪われる事は無いが、それは同時に解除する人物もいない、と言う事だ」

 

隷属化の首輪は、装着者が無理に外そうとすると激痛が走り、最悪死ぬらしい。更に首輪を通して主人から送られる命令は絶対。どこまで逃げようとも、戻ってこいと命令されれば、本人の意思にかかわらず、彼等、或いは彼女等は命令に従うしかないそうだ。

 

「ジャックさん。どうにか、してあげられませんか?」

その時、リンゼの言葉が聞こえる。更に視線をやれば、他の3人、ユミナ達も俺に目を向けていた。4人とも、彼女達の境遇に同情しているのだろう。

 

まぁ、分からなくもない。家族を殺され、村を焼かれ、不条理に奴隷に落とされたんだ。

 

やれやれ。と考えながら俺は端末に目を向けた。

 

「BT、何か良い案はあるか?」

「はい。現在私に提案出来る案は二つあります。一つがメインの提案。2つ目が、メインが失敗した場合の代替案です」

「了解した。だが教えてくれ。リスクを考えた場合、1つ目と2つ目、彼女達のリスクが高いのはどっちだ?」

「リスクが高いのは1つ目です。こちらは、首輪にデータナイフを突き刺し、データナイフを介して私が首輪のシステムをハッキングし、パイロットを主と設定します」

「大量生産品とは言えアーティファクトだぞ?ハッキング出来るのか?」

「残念ながらアーティファクトに関するデータが不足しています。ですので、可能性は未知数です」

「……それだと彼女達が危ない。仮にハッキングがミスして首輪が暴走したら彼女達の命に関わる。もう一つの方法は?」

「そちらは、無属性魔法のアポーツを使用する事です。ですがアポーツによって引き寄せる事の出来る物体の正確なサイズデータが無いため、こちらも成功確率は未知数です」

「だが、そちらの方が安全だろう。第2の案の方から試すぞ」

「了解」

 

これでとりあえず、案は決まった。と、レベッカ達の方を向くが、10人とも何やら驚いていた。

 

「……どうした?何を驚いている?」

「い、いや驚くだろっ!?何だその腕輪っ!?声がしたぞっ!?」

声を上げ驚いているローガン。

 

「声がしたが、誰の声だ?聞き覚えがあるような気がするが……」

「覚えも何も、さっきサンドクローラー倒した時にあってるだろ?お前達を助けた巨人の声だよ」

「あっ!」

レベッカの問いかけに答えると、ウィルが声を上げた。

 

「っと、お前の自己紹介がまだだったな。BT、挨拶を」

「了解。はじめまして、私はBT―7274。先ほど貴方方の前に現れた巨人、と定義出来る存在です。現在は別の地点からパイロット、クーパーの端末を介して貴方方の観察と、こうして会話をしております」

「あ、あぁ。どうも」

半ば放心しながらもレベッカが反応する。

 

「さて、早速だが首輪の除去を試みる」

 

そう言って、俺は1人の少女に近づいた。そして……。

「『アポーツ』」

無属性魔法のアポーツを発動させた。すると、彼女の首に巻かれていた腕輪がいつの間にか消え、俺の手の中に収められていた。

 

「おぉっ!?」

それにローガンが驚く中、俺は手の中の腕輪を握りつぶした。……機械歩兵のストーカーとかも殴れるのがパイロットだ。アーティファクトだろうが、大量生産品。握りつぶすのは訳無かった。ベキベキと音を立てながら割れる首輪。

 

「相変わらず凄いパワーね、ジャック」

「ブーストした時のエルゼほどじゃないさ」

そんな軽口をエルゼとたたき合いながら、俺は他の6人の首輪も回収し、踏み潰すなりして粉々に砕いていく。

 

そんな中で、ウィルが、ウェンディと呼ばれた、7人の中で最年少の少女と抱き合いながら喜んでいる。成程、旅をする内に恋仲に、って奴か。

 

さて。

「お前達はこれからどうするんだ?」

「とりあえず、サンドラの国以外を目指すつもりだ。どうせあの国には戻れないし、どこか安住の地を求めて旅を続けるつもりだ」

「そうか。だが宛はあるのか?」

「いや、今の所は無い。とりあえず、まずは樹海を越えてミスミドにでも向かうつもりだったが……」

 

レベッカはそう言って苦笑する。そう言えば装備の大半はさっきのサンドクローラーにラクダ諸共食われていたな。

「装備が無い以上、移動は難しい。すまないが、どこか街の近くまで送っていっては貰えないだろうか?もちろん可能な限り礼はする」

「そうか。だが、礼は要らない。こちらも勝手に首を突っ込んだんだ。それより、明確な行き先が決まっていないのなら、ベルファストはどうだ?」

「ベルファスト?何故だ?」

 

「ベルファストなら俺もある程度支援が出来るからな。それに、俺はベルファストの公爵家や王族とも親交がある」

「えっ!?クーパーさん、一国の王族と仲が良いんですか!?」

俺の言葉にウィルが驚いているが……。

 

「あぁ。と言うか、彼女に至っては俺の婚約者で、正真正銘ベルファスト王国の姫君だぞ?」

 

「「「「「え?えぇぇぇぇぇぇっ!?!?!?」」」」」

 

俺がそう言うと、レベッカ達だけでなく7人も驚いた様子だった。実は彼女達については、軽く俺から名前を教えたくらいの紹介しかしてなかった。

 

「改めまして。ベルファスト王国現国王、トリストウィン・エルネス・ベルファストが娘、ユミナ・エルネア・ベルファストです」

そう言って挨拶をするユミナ。

 

「なっ!?ほ、本物っ!?」

「と言うかおいっ!今、婚約者って言わなかったかっ!?」

「って事は、クーパーさんは、本物の王女の婚約者だから……っ!?」

 

「「「「「次期ベルファスト国王っ!?!?!?」」」」」

 

レベッカ達はそう言って驚くと、何といきなり床の上で土下座を始めたぞ。って言うか、まさか俺が次期国王だからって萎縮してるのか?やれやれ。

 

「なんでいきなり土下座する流れになるのか知らないが、頭を上げてくれ。あと椅子に座れ」

「い、良いのですか?」

「良いも何も。俺は今の所国王になる気はない。それに堅苦しいのは嫌いなんだ。だからこれまで通りで良い」

「え、えぇっと、では」

 

そう言って椅子に座り直すレベッカ達。すると……。

「ジャックさん、ちょっと」

「ん?」

 

ユミナがレベッカ達に聞かれないように俺に耳打ちした。

「皆さん、大丈夫です」

恐らく魔眼で彼等を確認したのだろう。彼女が言うのなら、問題無いな。

「分かった。ありがとうユミナ」

「いえいえ。これもジャックさんの伴侶の務めですから」

そう言って笑みを浮かべるユミナ。

 

さて、と。

 

「ベルファストの王女からもOKを貰った。お前達をこれからベルファストの、俺の屋敷に案内する。何か質問は?」

「なら、ちょっと良いか?」

そう言って手を上げるローガン。

 

「助けてくれるのはありがたいが、大丈夫なのか?彼女達は元奴隷だ。それを国内に引き入れたとあっちゃ、アンタの瑕疵にならないか?」

「俺の経歴に傷が付く、と?だがまぁ、その心配は無い」

「どうして?」

 

「簡単な話だ。俺は『奴隷など拾ってない』」

「「「「「「「え?」」」」」」」

俺の言葉に奴隷のウェンディたちが首をかしげる。

 

「俺はただ、砂漠を彷徨っていた旅人であるお前達を拾った。そして、お前達がベルファストを目指していたから、送り届けた。それだけだ」

「い、いやいやっ!待ってくれ。それはどういうことだ?言ってる意味がよく……」

 

「そうか。なら説明するが、彼女達が奴隷だと言うのなら、首輪は?」

「「「え?」」」

「隷属化の首輪は主以外外せないんだろう?だが、その主は死んでる。つまり彼女達は本来首輪を外せない。……なのに、見ての通り首輪をしてない。つまり、誰かが彼女達を元奴隷だと言っても、その奴隷だった証拠が無い。違うか?」

俺は首をかしげるレベッカ達に説明した。

 

「成程。確かにジャックさんの言うとおりです。本来外せないはずの首輪を彼女達はしていない。つまり、彼女達を元奴隷だと言っても、証拠が無いって事ですね」

「そう言う事だリンゼ」

俺はリンゼの言葉に頷く。

 

「奴隷の証があの首輪だけだとしたら、首輪をしていないお前達はもう奴隷じゃない。そして、お前達が奴隷だったと言う『事実』は、ここに居る全員が腹の中に飲み込めばそれで問題無い。違うか?」

「確かに、それはそうですけど。でも、なんでこんなに回りくどい事をするんですか?」

 

「一言で言えば、彼女達の将来のためだ」

俺はウィルの言葉に応えた。

 

「元奴隷、と言う立場が職探しの上で不利になる可能性もある。だからこそ、元奴隷という立場は極力排除したい。つまり、この場に居る人間以外には極力知らせるべきではないって事だ。それに……」

 

俺は彼女達を見回す。

 

「もうこの世界にお前達が奴隷である証は存在しない。つまり、お前達は皆、『1人の人間』だ。だからこそ元奴隷なんて立場、さっさと捨てちまえ。お前達は今日、奴隷から人間になった。だからこそ、奴隷だった自分を忘れろ、捨てろ。ここからが、お前達の新しい人生の出発点だ。そう言う事だ」

 

それが俺の言葉だった。すると、彼女達が静かに涙を流しはじめた。ん?怖い事を言った覚えは無いんだが?

 

と思って居ると……。

「皆さん、嬉し涙を流してるんですね」

「嬉し涙?なんで?」

ユミナの言葉に俺は首をかしげた。

「それはもう、ジャックさんの言葉が響いたからですよ」

「そうか?そんなに凄い事を言ったつもりは無いんだが?」

 

「ジャック殿ご自身にはそうかもしれないでござるが、彼女達にはとても温かい言葉だったと思うでござるよ」

うんうん、とユミナに同意するように頷く八重。

 

「流石ジャックさん、です」

「た、たまにはカッコいい事言うじゃないの~」

頬を赤く染めているリンゼと、同じくそっぽ向きながらも頬を赤く染め俺を褒めるエルゼ。

 

「そう言うものか?」

 

と、俺は少し首をかしげるのだった。

 

 

 

その後、レベッカ達は一度ゲートでミリシア級空母からベルファストの屋敷へと連れて行った。ライムに、彼等をもてなすように指示をしておく。

 

レベッカ達には、サンドラ王国でやる事があるので、そっちが片付いたら戻ってくる。その後でゆっくり今後について話をしよう、と言ってある。

 

さて、空母に戻るか。と思ったその時だった。

 

『マスターッ!緊急連絡ですっ!』

端末から響く、空母を任せているサラの声。

 

その声色は、かなり焦りを含んでいた。どうやら、トラブルはまだ続くらしい。

 

俺達は急いでゲートを通り、空母へと戻った。

 

     第18話 END




現在タイタンフォール2のオンラインプレイが出来なくてがっかりしてるうぷ主です。まぁキャンペーンが出来るだけマシと言えばマシなんですが。EAも対応してるんだかどうだか。そして個人的にはタイタンフォール3、出して欲しいなって思う今日この頃です。

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