国王陛下の暗殺未遂事件を防いだ俺だったが、何の因果か陛下の娘であるユミナ王女より俺は求婚されてしまう。俺はそれに同意するのだが……。
王城での一件の後。俺は銀月に戻ってエルゼ達3人の事の次第を話した。
「ジャック殿が結婚でござるか」
「びっくりですね」
「ったく何やってんのよ」
3人とも、俺に対して呆れているような表情をしている。まぁ実際そうだろう。ユミナ姫の歳は12。今の俺を18か17としても、ハイスクールとミドルスクールに通ってるような歳の男女が結婚など、前代未聞だ。まぁ、実際にはまだ婚約者の段階なので、実際に式を挙げるのはまだまだ先になりそうだが……。
「色々あったんだよ。いろいろな」
俺はそう言って苦笑を浮かべる事しか出来なかった。
そして、そんな俺の左腕に抱きついているのは、ユミナ姫だった。そう、彼女は俺がリフレットに戻ると言い出した途端、付いて来たのである。昨日今日どころでは無い行動力に戸惑いながらも、まぁ良いかと俺は承諾しこうして連れてきた訳だ。
「ユミナ・エルネア・ベルファストです。今日からこちらでお世話になります」
「今日から一緒に暮すでござるか?」
「お父様からの命なのです」
「お姫様なのに?大丈夫な、なんですか?」
突然王族が傍に来たんだ。エルゼ達3人とも戸惑っているが、それも当たり前だろう。
「どうか敬語はおやめ下さい。世間知らずではありますが、足手まといにならないよう、がんばります」
相変わらずの行動力に俺が隣でため息をついていると……。
「まずはギルドに登録して、依頼をこなせるようになりたいと思います」
「「「えぇっ!?」」」
突然の言葉に3人が驚いている。
「本気かユミナ?冒険者がどういう職か知らない君じゃないだろ?」
「はい。重々承知しております。ですがこう見えてもある程度魔法は扱えますし、弓術の心得もあります」
俺が問いかけると答えてくれるが……。
「実戦経験は?」
「いえ。そこまでは」
「つまり、依頼を受ければそれがぶっつけ本番、か。使える魔法の属性は?」
「土と風、闇です。召喚獣は3種類ほど呼び出せます」
その言葉にしばし思案する。前を向けば、エルゼ達は俺の判断を待っているようだ。
改めて俺達の陣形を考えると、戦いはエルゼ、八重の前衛。俺の中衛。リンゼの後衛。つまり、2・1・1の形になる。いざとなれば俺も前衛になる事から考えて、支援の手が増えるのはありがたい。召喚獣も出せればこちらの手数も増やせる。
「分かった。とりあえず何か適当な依頼を受けて様子を見よう」
「良いの?」
俺の言葉にエルゼがそう問いかけてくる。
「ユミナが戦えるかどうかを見るのなら実戦を経験させる他無いだろ?俺が危なっかしいと判断したのならゲートで王宮へ送り返す。危なっかしい奴を連れて旅は出来ない。良いな?ユミナ」
「はい。ジャックさんがそう判断されたのなら、文句はありません」
「そうか」
と、俺は頷く。
「それと、ユミナは王族だ。俺達が依頼にでている間銀月に一人で置いておく訳にも行かないだろう。この前スゥの誘拐未遂があったんだ。主犯のバルサ伯爵が死刑になったとは言え、奴のようにユミナを誘拐して陛下へ要求を突き付けようとする輩がいないとも限らないしな。その点、俺が傍に居れば大抵の脅威からは守れるし、いざとなればBTもいる」
俺の主観的な判断だが、恐らく俺とBTの二人だけでも大規模な軍を相手に出来るだろう。BT曰く、『転生に際して私も幾分か性能がアップしています』といつだか言っていた。そして俺も、本来ならば生身のパイロットが使えないとされていた戦術アビリティである『興奮剤』や『フェーズシフト』が生身のまま使えるようになっていた。
更に言えばBTは瞬時にロードアウトを変更出来る。リージョンのロードアウトでスマートコアを発動出来れば、数百人を一斉にミンチに出来る代物だ。改めて思うが、俺達は色々と進みすぎている。技術的な物がだ。
まぁ、だからといって敵に同情する気などない。俺はパイロットだ。俺の前に敵が立ち塞がるのなら、そいつを殺すなりして進むだけだ。
「傍に居ると言うのなら、俺にはパーティの仲間としてユミナを守る責任があると思って居る。だから出来るだけ傍に居た方が良いんと思ってる」
「……そう」
俺の言葉に、エルゼはどこか不満気に頷く。他の二人もだ。俺が何だ?と首をかしげるその横で、ユミナは顔を赤くしていたのだが、俺は気づかなかった。
その後、俺達は明日ギルドへ行ってユミナの登録と、依頼を受ける事にした。
そして夜。ベッドで休んでいると……。
『ヴヴヴヴッ』
「ん?」
手首の端末が震えた。内容は通信だった。で、相手と言うのが……。
「何だ?神様か」
『おぉ、久しぶりじゃのうジャック君』
俺達をこの世界に転生させた神様だった。
『それより、見てたぞぉ。婚約おめでとうと言っておこうかの』
「何だ。見てたのか?」
『いやぁ偶々じゃよ。たまたま君が王城へ行くのを見てての。後の流れは大体知っておるぞ』
「そうかよ。ってか、神様は俺を見てるくらいには暇なのか?」
『まぁ暇じゃのぉ。ワシや他の神々たちものぉ』
「ん?他の神々?どういうことだ?」
『あれ?言っておらんかったかの?一応ワシが世界神として一番上に居るんじゃが、その下に色々な神が居るんじゃよ。恋愛神とか、剣神とかの。特に恋愛神なんかは面白がってたのぉ』
「おいおい。俺の第2の人生は神様方の娯楽じゃないんだぞ?」
俺は苦笑交じりにそう帰す。
『まぁ分かっておるよ。あぁそうそう。その世界は一夫多妻制だから、頑張れば嫁さんをたくさん創れるがのぉ』
「それってつまりハーレムだろ?んな事言われてもねぇ。前世が凄まじすぎて、そんな願望を語り合う悪友もいなかったからな。ハーレムと言われてもイマイチピンとこないな」
『そうかのぉ?まぁ、ジャック君の第2の人生は君自身の物じゃ。せいぜい、後悔しないように好きに生きれば良い。ではの』
そう言うと、神様からの通信は途切れた。ハーレム、ねぇ。大して興味は無い。そもそも婚約者のユミナがそれを許すか?許すとは思えないよなぁ。
なんて考えながら、俺は眠りに付いた。
翌日。俺は武器屋でユミナの装備一式を揃えた後、ギルドへ向かう。ちなみに俺はジャンプキットなどを全部装備したフル装備状態でだ。
そして、ギルドに付けば大半の連中が俺に怯えるか、俺に敵意や嫉妬心を向けてくる。理由は言わずもがな。綺麗どころのエルゼ、リンゼ、八重を、更に今日からユミナを連れているからだ。
だが、一部の連中が怯えてる通り、いつぞや俺1人の時にいちゃもんを付けられた。で、どうしたかって?簡単だ。ギルドの外で全員、最低でも1本、腕や脚をへし折ってやって更にボッコボコにぶちのめしてやった。もちろん、『二度目は腕1本貰う。三度目は確実に殺す』と警告してある。で、バカが1人再び襲いかかって来たので、宣言通りぶちのめした後、利き腕の右腕をぶった切ってやった。それ以降、俺に敵意や警戒心を向ける者はいても直接何かをしてくる奴らは居ない。このへなちょこ連中に、俺と戦って腕や命を差し出す勇気はないのさ。
そして、そうこうしている内にエルゼ達が依頼を決めた。内容はキングエイプという猿の魔物を合計5匹討伐することだった。
場所はこれまで行った事の無い場所だったので、まずは馬車を借りてそこへ向かった。
三時間後、目的地に到着したのだが、どうやってキングエイプを探すか、と俺が考えていると、ユミナが召喚魔法でシルバーウルフという魔獣を召喚し、彼等に探しに行かせた。
「召喚魔法か。なら、俺もユミナの安全のために先に呼んでおくか」
「え?呼ぶって、誰をですか?」
そう言って首をかしげているユミナ。
「まぁ見てろ。きっと驚くぞ?」
そう言って俺は端末に目を向ける。
「BT、フォール出来るか?」
「はい。座標は確認済みです。ロードアウトは何を選択されますか」
「ここは林の中だからな、取り回しを考えて、ローニンで行くぞ」
「了解。ロードアウト選択、ローニン。武装セット完了。いつでもフォール可能です」
「よしっ!来いBT!」
「了解、タイタンフォール開始します」
BTの声が聞こえた数秒後。ゴウッと言う音についで俺達の傍にBTの巨体が着地した。着地の最の爆音に驚いているユミナだが、いきなり現れたBTの巨体を見れば、彼女は更に驚いた。
「じゃ、ジャックさん?こ、これって……」
「ユミナがこうして出会うのは初めてだな」
俺は驚く彼女の隣を離れ、BTの元へ歩み寄る。
「改めて紹介しておこう。俺の相棒、バンガード級タイタン、BT―7274だ」
「改めまして、よろしくお願いします、ユミナ姫」
「よ、よろしくお願いします」
ぺこりとBTに頭を下げるユミナ。
「さぁ、行くぞ」
そして俺は手元にサブマシンガンのCARを取り出し歩き出す。それにエルゼ達、少し遅れてBTが巨大なショットガン、『レッドウォール』を手にして続く。
そして森の奥へ向かう道中、俺はユミナに召喚魔法について聞いていた。召喚魔法とは魔獣と契約する魔法らしい。そして契約の際には、場合によっては戦って力を示せ、だと言った条件がある魔獣も居るらしい。基本的に強い魔獣ほど、難易度の高い条件があるそうだ。
しかし、俺もユミナのようにそう言うのを使役出来るようになりたいな。先ほどユミナが召喚したシルバーウルフのように索敵が出来る者が居れば便利だ。
BTは間違い無く強い。そんじょそこらの魔獣など一ひねりだろう。だが、BTは1人しかいない。如何に強力な存在でも1人だけでは出来ない事もある。その点、言い方は悪いが手駒を増やすと言う意味では召喚魔法は使えるな。依頼が終わって帰ったら試して見るか。
と、そうこうしているとどうやらシルバーウルフが目標を見つけたようだ。だが数が多い。どうやら7匹ほど居るようだ。
「BT。奴らが見えたら迷わずアークウェーブで動きを止めろ。そして内2匹を撃破。その後はユミナのフォローを」
「了解。プトロコル2、任務を更新します」
「あとの5匹は、俺達で何とかするぞ」
そう言って俺は武装をCARからセミオート式のライフルである『G2A5』に変更する。
マガジンを装填し、初弾を送り込む。
「OK!」
「了解でござる!」
エルゼと八重はそれぞれガントレットと刀を装備し構える。
「フォーメーションは、エルゼと八重、BTのスリートップ。俺が中衛で援護する。リンゼとユミナはそれぞれ、魔法や弓による支援を頼む」
各自に指示を出しながら、俺は更にホルスターにリボルバーの『ウィングマン・エリート』を差し込む。
「わ、分かりました!」
「任せて下さいっ!」
リンゼとユミナがそれぞれ頷く。
「よし、ユミナ。シルバーウルフたちに言って連中をこっちへおびき寄せてくれ」
「はいっ!」
俺達はキングエイプを待ち伏せる形になった訳だ。そして……。
「来ますっ!」
ユミナが叫んだ直後、木々を越えてこちらへと走ってくるシルバーウルフたち。そしてそれを追って現れたのは白い毛むくじゃらの、巨大な猿の魔獣、キングエイプ。奴らは真っ直ぐこちらに向かってくるが……。
「BT!」
「了解、アークウェーブ、発動」
俺の指示を受け、BTが手にした、タイタンサイズの剣を振り抜く。すると地を這う青い白い雷撃が向かって来た先頭のキングエイプ2匹に命中し、痺れさせた。
「攻撃開始」
その隙に前に出たBT。そして振り下ろされたブレードが1匹を肩口から斜めにぶった切る。更にBTは腰元に止めておいたショットガン、レッドウォールを右手で抜き、片手で構え、痺れていたもう1匹に散弾の雨を見舞った。
『バスッ』という音と共に放たれた散弾がキングエイプの体をズタズタに引き裂く。
と、そこに残りのキングエイプが現れBTに襲いかかった。だが……。
「『フェーズダッシュ』、発動」
次の瞬間、BTが消えた。あれは亜空間に一時的に移動し敵の攻撃を回避するシステムだ。突然BTが消えた事で、戸惑うキングエイプ。だが、良い的だ。
『ダンダンッ!!』
俺のG2A5から放たれた弾が、2匹の膝を射貫いた。悲鳴を上げながら2体が膝を突く。
「ブースト、全開っ!」
「おぉぉぉぉぉっ!」
そこに飛び込んだエルゼと八重の一撃が、1匹の顔面を粉砕し、1匹の首を飛ばす。
『ダンダンダンッ!』
更にもう1匹をG2A5の弾が何発も射貫く。
と同時に、フェーズダッシュで下がったBTがユミナとリンゼの背後に現れる。これで残りは2匹。
「『雷よ来たれ。白蓮の雷槍、サンダースピア』」
「『炎よ来たれ。紅蓮の炎槍、ファイヤスピア』」
しかしそれも、ユミナとリンゼの放った魔法が貫き、呆気なく息絶えた。
俺は周囲を警戒しながらもBTにレーダーで周囲を確認させるが……。
「周辺状況のスキャン完了。周辺に敵性生物の反応無し」
「了解したBT、状況終了」
俺もBTも構えていた武装を下ろす。すると、俺の傍にユミナが小走りで近づいてくる。
「どうでしたかジャックさん?私は合格ですか?」
「あぁ。実戦経験をしていないと聞いていたから、初めての戦闘で怯えるかと思って居たが、それも無い。魔法の練度も申し分無い。……良いだろう。俺はユミナのパーティ入りを認める」
「本当ですかっ!?ありがとうございますっ!」
そう言って笑みを浮かべるユミナ。さて、その後は討伐確認の耳をいくつかそぎ落として、後はギルドにこれを提出するだけだ。
しかし……。
「これで女性4人に対して男が俺1人、か」
「何か問題でも?」
俺がポツリと呟いていると、独り言だったのだが聞こえていたのかリンゼが声を掛けてきた。
「あぁいや。問題、かどうかは微妙だが。男1人でこんなにたくさんの美少女を連れてるんだ。まぁたいろんな奴らからやっかみ受けそうで、ちょっとな」
まぁ、襲いかかって来たらぶちのめすし、最悪彼女達に手を出したのならば、殺す。いつだか誓ったあの時のように、俺は彼女達を守るって決めているからな。
などと考えていると、何やらユミナ以外の3人が顔を赤くしていた。
「どうしたお前等?顔が赤いが熱でもあるのか?」
「え!?な、なな、何でも無いですよ!?」
と、咄嗟にそう言って否定するリンゼ。
「だ、大体あんた、何いきなり、思っても居ない事言ってるのよ。リンゼや八重はともかく、私なんて」
「ん?美少女がどうのって話か?だったら安心しろ。エルゼも十分な美少女だからな」
「え?へっ!?」
俺の言葉にエルゼは顔を真っ赤にする。
「エルゼは自分に自信が無いみたいだが、そう落ち込む必要は無いと思うぞ。お前も十分可愛いの部類に入ると思うぞ。なぁBT」
「……私には美少女の定義が分かりません」
「そうかよ」
俺はBTの相変わらずな答えに苦笑する。
「まぁ、そう言う事でな。実際何度か変な奴にいちゃもん付けられて、ボッコボコにした事もあるんだが、それがまた増えそうだなって不安なんだよ、っと」
言いながら、俺は耳をそぎ落とす。
「さぁ、証も十分集まったし、戻ろうぜ?」
「は、はいぃ」
俺は顔を赤くしたままの3人とユミナを連れて、町へと戻りギルドに報告をするのだった。しかし、随分の間3人は顔を赤くしていたな。褒められたのがそんなに恥ずかしかったのか?
なんて事を俺は考えていた。
数日後。俺は銀月の裏庭でユミナから召喚魔法を教わっていた。俺がこれについて知りたいと聞くと、喜んでと快諾してくれたのだ。
ユミナによれば、召喚魔法は相手の条件を叶える事で契約するらしい。例えばユミナがこの前召喚したシルバーウルフと契約した時の条件は『お腹いっぱい食べさせてくれる事』、だそうだ。この条件というか、魔獣の願いが叶えられなければ彼等は去ってしまうと言う。そしてもう二度と同じ者の前には現れないらしい。もし、どうしてもそいつが欲しいのなら死ぬ気で条件を叶えてやれ、と言う事か。
更に聞けば、この召喚に個人の素質は関係無いらしい。何でも素人がかなり高位の魔獣を召喚した例がいくつもあるそうだ。となると、運の要素が強いと言う訳だ。
俺はユミナに頼んで地面に魔法陣を描いて貰った後、そこに魔力を流し込んで、試しにやってみたのだが……。
魔法陣の上に現れたのは、白い虎だった。だが唯の虎じゃない。威圧感が半端じゃない。実際、俺のすぐ後ろでユミナが震えている。
だが、俺がフロンティアで経験してきた、殺気に満ちた戦場の空気に比べれば大した事は無い。俺は咄嗟にユミナを後ろに庇う。
「安心しろユミナ。俺が守る」
「じ、ジャックさん」
俺は戦闘態勢を表すように、即座にジャンプキットにアーマー、ヘルメットを装着する。ホルスターにはウィングマンがあるが、戦いになっとしてこの虎モドキにどれだけ通じるか。召喚された奴がいきなり襲ってくる事は無いらしいが、そうも言ってられないな。
『……お前か?我を呼び出したのは』
「ッ!?声っ!?」
頭の中に響く不思議な声に驚き、同時に俺はこの声が目の前の虎の者だと理解する。いや、感覚的に何となく分かってしまうと言うべきか。
「こ、この威圧感に、し、白い虎。ま、間違い無いです。これは、『白帝』です」
「白帝?」
『ほう?小娘、我を知っているのか?』
白帝と呼ばれた虎は、俺の背後に居るユミナをじろりと睨む。それだけでユミナは震え、先ほど呼び出されたユミナのシルバーウルフ、シルバも完全に戦意を喪失して尻尾を股下に隠している。
それを見た俺は……。
『ギンッ!』
『ッ!』
白帝に殺気をぶつけた。
それに驚いた様子の白帝。俺は更に殺気を強めながら、ホルスターに手を伸ばす。すると……。
『面白い奴だ。我の威圧感を受けて平然とし、尚且つ殺気を返して我を威圧するとは』
そう言って白帝の威圧感が低下していった。何だ?と思いながらも、俺も殺気を弱める。
「ユミナ、さっきこいつの事を白帝って呼んでたが、どういう奴なんだ?」
「びゃ、白帝とは、本来召喚魔法で呼び出せる最高位の存在で、その4体の内の1体です。白帝は、西方と大道の守護者であり、獣の王。白帝は、魔獣ではなく神獣です」
「神獣、獣の神と言う事か」
まさかそんなのがいきなり現れるとは。だが、ちょうど良い。
「おい、白帝。お前と契約するにはどうすれば良い?」
『何?貴様、この我と契約したいと申すのか』
「そうだ。彼女から召喚魔法について聞いている。一度現れ契約に失敗したのなら、二度とそいつの前に現れないそうだな?だったら出来るかどうかは分からないが契約出来るかどうか、挑戦するだけでも意味があるって事だろ?」
『ほう。この我が出す試練に挑むと?』
「失敗しても試練を受けなくても、どうせ二度と会えないのなら失敗を恐れずにチャレンジするしかないだろ。で、どうなんだ?」
俺の言葉に白帝は数秒目をつぶった後。
『良かろう。ならば貴様の魔力量を見せて貰う』
「魔力量を?何故だ?」
『貴様の魔力の量と質を見させて貰う。最低限、我が認める域までその質と量が達していなければ契約しても意味が無い』
「成程ね。で、どうすれば良い?」
「我に触れ、魔力を流せ。それも限界までだ。我が認める程の魔力量と質があれば、契約を考えてやらん事も無い」
「……良いだろう」
俺は静かに魔法陣の中に歩み寄り、白帝の額に手を置く。
「………行くぞ?」
『あぁ。いつでも来い。さぁ、試させて貰うぞ。人間』
「……ふぅ」
俺は神経を集中し、掌から魔力を白帝に流し込む。すると……。
『むっ!?な、なんだこの、圧倒的な純度の魔力は!?』
何やら白帝は驚いている。どうやら質は問題なさそうだ。俺は更に、車がゆっくりとスピードメーターを上げていくように少しずつ注ぐ魔力量を上げていく。すると……。
『待てっ!』
突如聞こえた白帝の言葉に、俺は魔力の供給をストップさせた。
「何だ?何か問題でも?」
「いや。問題は無い。無いのだが、お主は、これほどの魔力を我に注いでもまだ魔力に余裕があるのか」
「あぁ。全然問題無しだ。魔力を消費した事による倦怠感も一切無い」
『ッ』
俺の言葉に、白帝は一瞬息を呑んだようだった。
『我の威圧感にも動じず、剰え殺気をぶつけ返す事もそうだが、その魔力量。人ならざる領域である事は間違い無い。……名を、お聞きしても?』
「俺はジャック。ジャック・クーパーだ」
『ジャック殿。……我が主に相応しき方とお認めします』
そう言うと白帝はその場に蹲った。まるで俺に服従を誓うように。
「つまり、俺と契約すると?」
『はい』
「そうか」
これで神獣の1匹、白帝と契約出来た訳だが……。
「ん?そう言えば、契約を完了するにはどうすれば良い?」
『私に名を。それが楔となります』
「名前、か」
言われ、俺は考えたが。良いのが全く浮かばなかった。う~ん。ここは、シンプルイズベストって事で……。
「だったら、お前は今日から『アルファ』だ」
『アルファ、ですか?』
「そうだ。アルファは俺が知っている文字の中で物事の始まりを意味する。白帝、もといアルファは俺が初めて契約した相手だ。どうだ?不服か?ならもうちょっとちゃんとしたのを考えるが?」
『いいえ。そちらで構いませぬ。私は今日から、アルファと名乗らせていただきます』
こうして、アルファは俺の仲間となった。
ちなみにその後、アルファは常に現界、つまりこの世界に居たいと言う。本来召喚された魔獣などは呼び出した者の魔力を消費し続けながらこの世界で活動するため、こちらの世界に留まり続ける事は不可能だ。だが、俺はアルファを召喚し続けても、消費される魔力よりも自然回復する量が多いらしい。簡単に言えば、マイナスをプラスが上回っていると言う事だ。
「俺としては別に構わないが、流石にアルファがそこまでの大きさで町を歩くのはなぁ?」
「た、確かに。凄い騒ぎになりそうですよね」
俺の言葉にユミナが同意する。
『ならば、姿を変えましょう』
そう言った直後、アルファは小さな、子供サイズの虎になってしまった。
「神獣って凄いんだな。姿も変えられるのか?」
俺はアルファの前に屈み、その頭を撫でる。
『我を侮って貰っては困ります』
おぉ、何か声もさっきまでより可愛くなってるな。
『これでも神獣の……』
「きゃあぁぁぁぁっ!可愛い~~~~!」
と、言いかけたアルファだが、ユミナが思いっきり抱きしめた事でそれを遮った。アルファは必死に抗うが、子虎の姿ではそこまで力も無いのかユミナにされるがままだ。その後更にエルゼ達までやってきて、撫でられまくったアルファはすっかり神獣としての威厳を失っていた。
俺はそれを苦笑しながら見守っていたが、まさか神獣と契約出来るとは、なんて考えながら、女性陣に良いようにされるアルファを見つめていたのだった。
第6話 END
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