呪術廻戦xBLEACHっぽいなにかでクロス 作:かりん2022
「伏黒 恵。ここへはどのような要件で来た」
「伏黒……? こちらの俺は伏黒というのですか? 俺は平行世界の禪院 恵と言います。こちらへは人探しに来ました。ご迷惑はかけません。滞在中の宿泊費は呪霊の討伐でお支払いします。しばらくこちらへ置いてはいただけませんか? 捜索のための資金も融通いただきたい」
「平行世界……? にわかには信じられんな。誰を探しに来た?」
その次の瞬間、禪院 恵はぞっとするような殺気を滲ませた。それを、笑顔できれいに隠す。
「……機密任務ですので。ご心配なく、人探しの術は心得ています」
「ふん。殺しに来たのか」「まさか。連れ戻しに来ただけです。傷一つなく連れ帰るつもりです」
「そのわりには物騒ではないか」
「……次期当主にも挨拶をしたいと思うのですが、甚爾さんはいらっしゃいますか」
「甚爾は呪力を持たない。それに十年も前に死んでいる。まさか、貴様の世界では甚爾は呪力を持っているのか?」
「そうですか。では、次期当主は何方(どなた)で何方(どちら)に?」
「今の所、直哉かこの世界のお前だな。呼ぶか?」
「今、連絡が取れる場所にいるのですか? それなら是非会いたいですね」
「いや、大抵はこの家にいるが」
「……出奔してないのですか?」
「いや。先程から聞いてばかりだな。こちらの質問にも答えろ」
「いえ、あまりに差異があるので、いらない情報でこの世界を混乱させたくありません。それに、平行世界のことなど知った所で意味などないでしょう」
「意味は儂が決める。構わん、話せ。直哉はそちらでは出奔したのか」
「甚爾さんを慕っていましたから。甚爾さんがいないなら、禪院家を捨てているものかと」
「そうか……。そこまで慕っていたか。恵は直哉とは親しかったのか」
「『甚爾さんの一番は僕や』なんて言われて、さんざんケンカを売られました。後、甚爾さんに出す食事の毒味をさんざんやらされました。最初の頃は本当、毒かと思いました。甚爾さんを甚爾さんと呼ぶのも、あの人の我儘が原因です。まあ、甚爾さんに媚び売っとけば守ってくれましたから、良かれ悪しかれでしたけど」
「そ、そうか。……そんなに甚爾が好きだったか?」
「心酔してました。俺の世界では、ですが」
「そちらの次期当主は甚爾か」
「厳密に言えば、現在次期当主は決まっていません。俺は死神の血を引いてますし、甚爾さんも直哉さんも死神の力を得てしまって、禪院家で死神の力保持者をどうするかがまだ確定してないので」
「死神の力?」
「説明が難しいですが、呪力によらない異能のようなものです。甚爾さんも直哉さんも、禪院家を捨てて別の異能者団体に一度所属しています。二人共無理やり連れ戻してますが最終的に甚爾さんはあちらに持っていかれました」
「お前はその異能者団体には所属してないのか。こちらの世界の直哉が目覚める可能性は」
「俺は禪院家の者という自負がありますから。死神の力は受け渡しできる異能なので、目覚めるとかはありませんね。死神同士なら目視で同類か判別できるので、それも含めて一度見ておきたいなと」
「追ってきたのは甚爾……いや、直哉か? 直哉だな」
「わかりますか。直哉さん、ほんっとうに諦めてくれないので困ってるんですよ。あの人が帰る家は禪院家以外にないのに」
「こちらとは逆だな。こちらではお前が出ている」
「そうですか。……直哉さんは、連れ戻そうとしてくれてますか?」
「いいや。接点は殆どないな」
「そうですか。こっちの世界でも相手にされてないんですね。一度でいいから視界に入れてほしいです」
恵は目を伏せる。
「そんな事はないが……。平行世界に来るというのはその死神の力か」
「そうです。呪力も死神の力も剥奪しておいたのに、これ以上どうしたら良いのか……。記憶の剥奪はかなり不安定になっていたのでしたくないのですが。方法がそれしかないならどうにも」
「直哉はそんなに禪院家を嫌がっているのか?」「……はい」
「逆に諦めるということはないのか? そこまで嫌がっているなら、連れ戻しても使いみちはあるまい」
「は??? あの人が? 禪院家を捨てて? 死神の女とでもゴールインして幸せに? そんなの俺が許すと思ってるんですか? だるまにして記憶全部奪ってでも阻止するに決まってるでしょう??? 禪院家の嫡男のくせして呪術師全てを馬鹿にするようなあの態度が許されると??? そう多くは望んでないんです。死神のことを忘れて呪術師として生きろって、それだけなんです。別に呪術師としてなら、どれほど幸せになろうと祝福しますよ。でも死神だけは駄目です。絶対に許さない」
「……あやつの敵を作る才は、そちらの世界でも変わらんか」
「あの人、自分をチワワだと思っているドーベルマンですからね。自分を強い強いって自称してるけど、実は自分の強さも影響力も何も信じてなくて、無力だと思ってる。だから容易く誰にでも吠えて噛み付いて大惨事起こして、あまつさえ忠誠心の向きどころが禪院家ではなくて死神とか、ほんと馬鹿な犬ほど可愛いって言っても限度があるかと。……すみません。少なくとも、俺の世界の直哉さんはそんな人です」
「いや、自分の力を信じてない、か。……確かに、そうなのかもしれん。そんなにその異能者団体が好きなのか、直哉は」
「大好きですよ。腹立たしいくらいに。彼らのためなら直哉さんは何でもします」
「わからんな」
「本当です」
「いや、恵。お前、そこまで直哉が問題を起こしながら、何故、直哉に拘る?」
「……良くも悪くも、強烈な人ですから」
下げた視線には、複雑な感情が揺れ動いていた。