Half Days? No, I aren't Killd Days!――某国特殊工作員の危険な12時間――パイロット版 作:ハトメヒト(ヒットマン)
スーツにサングラスをつけた特殊工作員は、男に監視されながら祭壇の――嫌、SMチックな十字架の上にくくり付けられている。
手も足も枷でくり付けられて身動きひとつ出来ない。何故こんなことになってしまったのかは、聞かないで欲しい……。
顔から火が出るほどに、恥ずかしいドジを踏んでしまったからに他ならない。
某国の特殊工作員であって、25年間も任務を失敗をせず成功してきたのに、あろうことか、カルト教団が仕掛けていた落とし穴に落ちた。
何が起こったのか分からず呆気にとられ、上手く受身を取れずに気を失うとは、
不覚だ! 屈辱だ! 不名誉だ! 特殊工作員としてのプライドや経験や技術なんて、ドジ踏んじまえば、こんなものかと叫びたくなるものだ。
はぁ……チクショウ! SFJの長官に『とあるカルト宗教団体を調査し可能であれば壊滅させろ』と依頼が来て、いつも通りに12時間以内に仕事をきっちり済ませて、彼女との甘くアバンチュールなデートを楽しもうと思っていたのに、こんな、こんな馬鹿げたカルト宗教団体に捕まる俺って一体……。
今にも俺は、泣きたくなる。
それに12時間後には、儀式の生贄にされるんだぞ! 本当なら彼女とイチャラブなデートが待っているのに、12時間後には地獄へ死神とデートってな……はぁ、本当に泣きたいぜ。
それに加えて「第一この状況で笑えるか?」って常人の人に聞かれても、正直に言うが笑える訳がない。
大体よぉ周りが可笑しすぎる。
(まぁカルト宗教団体だから大体は、分かっていたことだが――)
俺が、生贄にされることに関して、嫌な顔をしているにも関わらず「嬉しいですか!? ねぇ本当は嬉しいんですよね?」とか「生贄にされるなんて貴方は、本当に幸せ者ですよ」なんて、うっとりとした顔をしながら、俺に向かって言ってくるなんてな。
常人の遥か斜め上を行っていたな、もう本当にこんな所にオサラバしたい。泣いて良いよね? 泣きたい。
生贄にされるから基本的人権は無視されて遺書は書かせてもらえないんだろうな、カルトだし。
恋人のマリーに連絡すら、させてくれないだろうな、カルトだし。
マミィに、最期の言葉を言わせてもらえないんだろうな、カルトだし。
「…………」
特殊工作員は少し考え込むと、怖くなったのか大声で叫んだ。
「嫌だあぁぁぁああああ死にたくないよマミィィィイイイ!」
「うるせぇ、ダマレ!」
「グフッ!」
見張りの男が、特殊工作員の腹に蹴りを入れた。
「なんで、こんな奴のお守りをしなきゃならないんだ!? 教祖様の命令で、あまりいたぶりはしないが、今度デカい声でも出してみろ半殺しにしてやるからな!」
それを聞いた特殊工作員は、口から血が混じったつばを見張りの男の顔めがけて、吐き飛ばした。
それが見事にクリーンヒットしたのを見て、特殊工作員は内心ガッツポーズしていた。
(見たか、さっきのお返しだ! 本当ならボディーブローやらジャーマンをかけて即座に半殺しにしてやるところだったんだが)
「き、貴様ァ!」
「おっとそこまでだ第一俺は、大声を出しちゃいな……」と言い切ろうとしたその時だった。またも蹴りを入れられ、特殊工作員は悶絶した。
「さっきはよくもやってくれたな! 野郎、もう許さねぇ半殺しにしてやる!」
男はそう言って近くにあった。ムチで特殊工作員を叩こうとしたが
「止めるのだ!」
という威厳のある声でムチを振るおうとしていた見張りの男を止めた。
そう奴がやってきたんだ。このカルト教団のボスであり絶対的な首謀者。高尚なローブで身を隠してはいるが、女達を侍らせ、夜な夜な、いかがわしい事をやるペテン師(うらやまけしからん)
「よぉライプニーツいいやカルト教団の男教祖様とでも言えば良かったかハハハ」
遠くの方で特殊工作員は叫んでいた。
「バーナード、今日の私は紳士的で今の所は、機嫌が良いのだがな」
「はい、教祖様いかがなさいましょうか……?」
などと無視して話を始めた。
「おーいなんで無視なんですかね? もしもーしライプニーツくーん」
特殊工作員は叫ぶが無視して話は進む。
「ここで彼の死に方を決めたいと思う」
「ほう、それは名案ですな」
「私としては、最初は某国が条件さえ飲んでくれれば、彼を無事に送り返してあげようと思ったんだ」
「教祖様としては寛大なご配慮だと存じます」
「が、しかしだ。某国はそれを断った。だから生贄にしようと思うのだ」
はぁ!? あのクソ長官、俺を切りやがったな、なんだよ人一人ぐらい助ける気はないのかよ。ああそうかよ、助かったらあの長官の羞恥写真や汚職の証拠をネットにばらまいて懲戒免職まで追い込んでやる!
「ご立派なご判断だと思われます教祖様」
「死に方は、少々苦しむソフトな死に方を選ばせてあげようと思っている……」
無視されるのにしびれを切らした特殊工作員は大声で叫んだ。
「おいクソ教祖話を聞いてんのか!? 勝手に死に方を決めるんじゃねぇよ!」
「今、何と言ったんだい!?」
クソ教祖がSMチックな十字架に近づいてきた。さっき言ったこと聞き返して来た。
「もう一度言ってやる! 耳の穴かっぽじいてよく聞きやがれ『おいクソ教祖話を聞いてんのか!? 勝手に死に方を決めるんじゃねぇよ!』って言ったんだ」
それを聞くと教祖は、少し考え込んだ。
「……良し! 死に方は、ソフトではなく、絶望を味わい苦しみながら死なせることにしよう……。そうだな、裏手の倉庫に拷問道具が一式揃っていたな?」
「はい揃っております教祖様」
「まず最初は、爪でも剥がしてあげよう、道具を準備し、聴衆を集めろ」
「かしこまりました教祖様」
見張りの男は、牢屋から出て行ってしまった。
いきなりの事で特殊工作員は唖然としていたが、ため息をつくと
「ま、マジですかぁ~!?」
「うんマジだよ。この僕を怒らせたんだもんね。きっちり落とし前つけさせてもらうよ君の悲鳴でね」
教祖の目がマジだった。笑いに狂気が見える。今まででこんな笑いをした奴は一人しかいない。ターク……? いやそんなはずはない。タークは俺が殺したはずだ、生きているはずはない。
「お、おいライプニーツ! お前本当は、タークなんだろ!?」
「ターク……? あぁタークですか? アレは私の弟ですよ。それが何か?」
「いや何でもない……」
「おやぁ~? 私に隠し事ですか!? それは関心しませんね。まぁ爪を剥がした後で、じっくりと自白剤の効力を味わってもらいながら洗いざらい吐いて貰うとしましょう」
こうして地獄にも似た12時間が始まったんだと思う(死神も一緒に連れて)。