鬱エロゲみたいな世界観で悲惨な運命を辿る魔法使い(少女)を助ける話   作:ヤンデレになる過程を楽しむ人

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軍事基地へ

 タイマーできっかり早朝5:30。

 

 装備品、一応の食料と飲料は整えた。

 

 俺は少しだけ軋むような気がする身体をほぐしながら後ろを振り向いた。

 

「準備はいいかな? 忘れ物とかは?」

 

「はい、問題ありません……といっても私はそもそも物を持っていませんので」

 

「そうか、じゃあ早速今から出るけど……気持ちは分かるがお願いだから何も言わないでついてきてくれ。じゃないと死ぬ、心が」

 

「は、はぁ……」

 

 昨日一日で使い慣れた愛銃と化したボアダムを肩掛けベルトに繋いで背負い、軍用ヘルメットをかぶって歩き出す。

 

 服は勿論所々破けている戦闘用の服だ。

 昨日は結局頼むことが出来なかった。

 

 いや、別に問題はないのだけど。

 

 バッグは置いていく、その代わり邪魔にならないミリタリーポーチと呼ばれる物に必要最低限の物を詰めている。

 

 食料品と飲料もここだ。

 

 階段を登り、棚を動かして地上に出る。

 

 そのまま歩き従業員の部屋、受付を過ぎて外に出た。

 

「──、───」

 

「────?」

 

 その間、少し俺から遅れた位置でヘクスは何やらハクと話していたようだが声量を最小限に絞られていた為か内容は聞こえなかった。

 

 だが短い会話で彼女達二人はお互いに真剣に、真面目な話をしていたのだと思う。

 

 あの様子だと周囲を気にしてる感じはしないし俺にとっても大助かりだ、その気はなくともヘクスには今度お礼をしよう。

 

 その時俺が俺として生きていたらになるが。

 

 そして、この建物から外に繋がる最後の扉の前で一度立ち止まる。

 

 腰にあるホルスターに差してある拳銃を一度取り出して安全装置を解除し、振り向いてハクと目を合わせる。

 

 また目線を逸らそうとしたハクだったがこちらの意思が伝わったのか逸らさずに話を聞いてくれる。

 

「ハク、君のその魔法は……あー、周りを警戒するとか出来るようなものかな?」

 

「……私の使う魔法の中に『クウイキ』と言う魔法があります。消耗はそこそこで使ってすぐに若干の変動はありますが半径1キロ以内の()()()()()()()()動いているモノと魔力、呪力を持つ存在を探知できます……」

 

 何それ反則?

 

 思ったよりもヤバすぎて若干顔を引きつらせているとハクは少し苦笑いをしながら続けた。

 

「ただ、流石に使っただけでは遠い場所、近い場所に何か居る……程度にしか分かりません。集中して探るという手順が必要になります。その間無防備になるので……余り使わない魔法です」

 

「なら、君自身が何かヤバいと感じた時か、俺が合図したらそれを使ってほしい」

 

「今じゃなくて、ですか?」

 

「余り存在を周囲に知らせるような行為はしたくなくてな……」

 

 出来れば怪人が近くにいてもお互いに気付かず、すれ違うのが理想だ。

 

 昨日の戦いでハクが使っていた透明化でやり過ごすことが出来るのなら理想だが……

 あの黒の怪人はハクの詳しい居場所は分からずとも近くに居ることが分かっているようだった。

 

「分かりました、余り魔法を使わない方が良いということですね」

 

「そうだな、そこら辺はヘクスにもお願いしたいんだが……」

 

「あぁ、私のこれは気にしないでくれ。魔力が漏れる事も気付かれる事もないからね」

 

「……そうなのか?」

 

 俺には全く分からないのでハクを見る。

 

 ハクはすっと目を細め、怪しいものを見る目でヘクスを見詰めながら答えてくれる。

 

「はい、今の魔女からは一切の魔力や呪力を感じ取ることは出来ませんね」

 

「そうなのか……」

 

 まぁ、そうでないと俺が近付いただけで怪人に気付かれるだろうからな。

 

 ……ヘクスと離れる事は出来ないし、もし超常的な力を使う度に魔力が漏れていたのなら姿を消していたあの時に既に問題が起きていた筈だ。

 

 しかもそれは普通の事では無いらしく、魔法使いであるハクには出来ない芸当らしい。

 

「だから安心したまえ、私は君の足を引っ張るような真似はしないさ」

 

「元より俺のが足を引っ張ってる気がするが……」

 

 話は終わり、俺はゆっくりと扉を開いて外の様子を伺う。

 

 慎重に周囲を見渡し。

 音を拾い上げ。

 臭いを確かめた。

 

 …………大丈夫、か?

 

 後ろに居るハクに待機するように指示を出し、少しでも身軽に動けるようにする為に無手で外に身体を乗り出す。

 

拳銃持ってても殺せるのは人間だけだからな…………

 

 数秒経過しても周囲から動くような気配を感じない。

 

 そのまま外に足を踏み出してハクの方へ振り向く。

 

「隠しているバイクを回してくるから少し待っててくれ」

 

「分かりました」

 

「ヘクスは……あのぐらいの距離ってどうなんだ?」

 

「うーん、そうだねぇ……ムーヴ君はどう思う?」

 

「多分ギリで大丈夫かなとは思ってるんだが」

 

()()()()()()だ、行ってくると良い」

 

「……? わかった、じゃあ行ってくるけどちょっと遠いところに置いたから少しだけ時間がかかるからこの辺の店で必要な物があるのなら物色しておいてくれ、この状況誰も文句は言わないだろ」

 

 また意味深な言い回しだったが、ヘクス本人から大丈夫と言質を取ったので俺は走ってバイクを停めている場所に向かった。

 

 あの鎧の怪人にバイクを見られていたのでそこから足が付く可能性を考え、離れた場所の関係ないビルの前にバイクを停めていたのだ。

 

 周囲を警戒して、音を出来るだけ聞き逃さないようにして()()()()()()の町を走る。

 

 気持ちが悪い。

 

 違和感しかない。

 

 動かないエスカレーターの上を歩いているような。

 そんな何とも言えない脳内の記憶と現実の違いが少しの拒絶反応を断続的に引き起こしていく。

 

 そして、ようやくバイクを停めているビルの前へと辿り着いた。

 

 バイクにまたがってエンジンをかけている時、ふとビルの自動ドアの横にある自動販売機に目がいった。

 

「そう言えば、電気は生きてるのか……?」

 

 電気が来ているということは発電施設も生きていると言うこと.

近くにある発電施設が何なのかは知らないが、大きなダムや山などの高所の土地が無いためにこの町を賄えるのは火力発電所か原子力発電所くらいだろう。

 

 手帳を取り出して気付いた事を記入していく。

 

 この町の違和感と一緒に、手短に記入していく。

 

 どちらにしろ火力発電所の場合なら人が居なければ来ている電力も持って今日までか明日の朝までだろう。

 

 もし原子力発電所ならば……な予感しかしないのでどこかで調べる必要があると思われる。

 

「……ヘクスなら知っているか?」

 

 引きこもって外の情報を一切手に入れて無かった俺とは違い、ヘクスは普通に活動していただろう。

 巻き戻す前の世界でどうなったかは、多分知っているだろう。

 

 そこまで考えてからバイクを走らせて二人の待つ場所に向かい始める。

 

 軍で使われているバイクの中でもこのバイクは音が静かな方なのだが、全くの無音なビル街では音が良く響いてしまう。

 

 滲み出る緊張感を何とか抑えながら、何事もなく二人の待つ場所へと辿り着く。

 

 着いた筈なのだが……二人の姿が見当たらない。

 

 どこかの店に入っているのだろうと辺りをもう一度見渡して見ると、こちらを手招きしているヘクスが視界に入った。

 

 どうやらコンビニに居るようだ。

 

 コンビニ……あの時の事を思い出す。

 俺が世界を巻き戻す切っ掛けになったあの出来事を。

 

 ほんの少し前の出来事の筈なのに……

 体感ではかなり前の出来事に感じてしまうのは気のせいではないだろう。

 

 バイクのエンジンを止めて手で押してヘクスがいる所まで歩く。

 

 ヘクスは居るがハクの姿が見当たらず、大丈夫だとは思うが聞いてみることにした。

 

「ハクは?」

 

「彼女なら今中で取り込み中さ、死にたくないなら入らないことをお勧めするよ」

 

「何でだ? まぁ、そういうのならここで待っておくことにしよう」

 

 俺はバイクに腰掛け、ヘクスに質問をする事にした。

 

 先程の発電施設の事と、もう一つ……何故このビル街から一切の生物が消え去ったかを。

 

「一つ、発電施設の事は少しだけ答えられるがもう一つの事はまだ私から口にする事は出来ない」

 

 ヘクスが言うことが出来ない、というと思い当たるのは……

 

「また運命に引っ張られるからか?」

 

「そうだね、多分私の口からそれについて言及した時点で私達の運命(ルート)としてそちらに()()()()()()()()()()()引っ張られる事になるだろう。そしてそれはこのタイミングでは余り望ましくない」

 

「まぁ、ヘクスの考えがあって言わないのなら俺は構わないんだがな」

 

「助かるよ、私としても君に抱えさせるタスクが君の許容限界を越えないようにしておきたいんだ。ただでさえ、だからね」

 

 ただでさえ……何だ?

 それを聞こうとして口を開くが声が出るよりも少しだけ早くコンビニの自動ドアが開く。

 ハクが何かしらの用事を終わらせて出てきたようだ。

 

「お待たせ致しました」

 

「あぁ、構わないよ」

 

 話が途切れてしまい、その事に関してヘクスが言い出すような気配もないので諦めてハクが何をしていたのかを確認する。

 

 荷物は増えてない。

 

 服装もパッと見では変わってない

 ……何か食べてた、ということも無さそうだ。

 

 見て分からないものは仕方無い。

 俺は諦めてバイクにまたがりエンジンを付ける。

 

 それと同時に手帳を取り出し、今の話を書き込んでいく。

 

 出立の準備をしていた俺にヘクスが近寄ってくる。

 

「先程の発電施設の話なんだけどね」

 

「あぁ」

 

「明日明後日になっても止まらないから安心すると良い」

 

「……成る程」

 

 それはつまり、管理する人がまだそこにいるということだろうか。

 

 それについては喋らず、また俺の上をふよふよと漂う。

 

 俺としてはその答えが知りたかったが余り時間を使いすぎるのも良くないと思い、手帳をしまって、少し離れた所で遠慮しているハクに近付いてくるように言いながらヘルメットを手渡して後ろに乗るように指示する。

 

「う、後ろですか」

 

「そうなる、悪いが今バイクしか用意できなくてね……嫌だろうけど落ちないように俺の腰に手を回してしっかりと体を固定してくれ。銃が邪魔だったら言ってくれ最悪折り畳んで運ぶから」

 

「いえ、大丈夫……今はもう大丈夫です」

 

 少ししてハクが後ろに乗り込み腰に手を回されたのを確認。

 ゆっくりとバイクを発進させる。

 

 ハクに負担を掛けないように少しずつ加速させ、誰も居ない町を突っ切っていく。

 

 今気付いたのだが、信号すら意味がないのだから当然予想よりも幾分か早く着きそうだ。

 

 ビル街をある程度抜けてバイクを走らせる事十数分、今の所問題はなさそ……っ!?

 

 今のは……何かにまみれていたが、確かに軍服を着た人が倒れてた?

 

 何であんなところに……嫌な予感がする。

 

「ハク! スマンがブレーキ掛けるから捕まれ!」

 

「えっ!? はい!」

 

「ムーヴ君?」

 

 クソッ!

 

 信号や他の車両が無いからって飛ばし過ぎたか!?

 

 ドリフトしながらのブレーキは後ろに人を乗せている為に危険なのでせず、ゆっくりと時間を掛けてバイクを減速し、転回をする。

 

 またバイクで走って、軍服の男が倒れていた路地の近くにバイクを停める。

 

 明らかにおかしい俺の行動にヘクスが疑問を持ったのだろう。

 浮かびながら俺の横に付く。

 

「ムーヴ君、どうしたんだい?」

 

「倒れてる軍服を着た人が見えた。昨日の戦いの余波で死んでるのならまだ良いが、軍事基地に何かあって逃げてきたのなら話は別になる」

 

「…………」

 

「ていうか、ここまで来るのに一切人影や死体なんて無かったのにいきなり出てくるとかおかしいだろ。他の所から来たにしろどちらにしろ調べておきたい。何が起きたか分からない、その分からないが俺は一番怖い」

 

「……成る程、納得したよ」

 

「あの、今軍事基地とか死体って聞こえましたが……?」

 

 バイクを停めてそのまま降りた俺に続いて、ヘルメットを外して降りたハクがそのショートボブの白髪をほぐしながら質問する。

 

 どうするか一瞬悩み、走りながら話すことにした。

 

 何かあった時、傍にいて貰わないと俺が死ぬからだ。

 

 つらい……

 

「成る程、分かりました。魔法で周囲を探りましょうか?」

 

「……頼む」

 

「了解しました……『クウイキ』っ!……私達以外にはヒットありません!」

 

 ハクが目を閉じて魔法を放った瞬間、俺の体の周りを何かが通りすぎていった感覚がする。

 

 懸念通りこれを使った場合向こうにも存在がバレると思った方がいいだろう。

 

 だが今は奇襲の危険性の方が怖い。

 

 俺は即死してしまえばそこまでで、ヘクスの様子から察するにまだまだやらなければいけないことが残っているようだからだ。

 

 ヒット無しとは聞いたが、念のため腰のホルスターから拳銃を抜いて何時でも撃てるようにしておく。

 そして、路地へと入る曲がり角を曲がり、その軍服の人間……その男がゴミ袋の上で大の字に伸びているのを発見した。

 

「死んでる……?」

 

 いや、息は……ある。こいつは死んでない。

 

 拳銃のトリガーに指を掛けながら男に近寄って、拳銃を持ってない方の手で頬を叩く。

 

 僅かながら反応、呻き声を漏らす。

 

「……っ」

 

「起きろ、何があった?」

 

「うみ……ちこ……」

 

「海? チコ?」

 

 何だ?

 何の話だ?

 

 俺は分からず、後ろに居るヘクスに聞こうとして振り返る。

 

 だが、心なしか青い顔をしたハクがすぐ近くまで寄ってきていた。

 

「今、うみとちこって言いましたか?」

 

「あ、あぁ……この男が呻き声でそう言っていたが聞こえてな」

 

 今にも掴み掛かってきそうな勢いのハクに若干気圧されながらどうにか説明する。

 するとハクは少しだけ息を荒くして、こう言った。

 

「その人を起こしましょう。効果は薄いでしょうが回復できる魔法も使います」

 

 尋常じゃない様子にその二つの単語はハクに関係があるのだと直感的に理解する。

 

 そして、それが意味する事も何となく想像が付いてしまう。

 

 その想像が外れているようにと願いながら声を振り絞る。

 

「……その、うみとちこって何なんだ?」

 

遥華野(はるかの)うみと遥華野(はるかの)ちこ、二人はそれぞれ『海』の魔法使いと『大地』の魔法使い……そして私の大事な妹分です」

 

 今現状、最悪の展開が予想される最悪の答えだった。

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