鬱エロゲみたいな世界観で悲惨な運命を辿る魔法使い(少女)を助ける話 作:ヤンデレになる過程を楽しむ人
『海』の魔法使い遥華野うみ。
『大地』の魔法使い遥華野ちこ。
二人は双子で、ハクが面倒を見ている同じ中学の後輩だという。
……今まで出来るだけ気にしないようにしてきたが、この子達はこの世界に生きるただの子供だ。
それに俺達の命の全てという重荷を勝手に背負わせている。
俺達大人が死ぬ程頑張れば怪人を倒せるというのなら。
力を持った子供にこんな危険な真似をさせることもなかった。
だが無理だった。
しかし、死ぬ程頑張ればその手助けくらいは出来る。
先ずは情報だ。
二人が何処にいったのか、何があったのか。
……最低でもその情報は聞き出したい。
一応電話は繋がらないのか試してみたのだが、電波は生きているのだがどうにも向こう側が出てくれないようだ。
ハクの焦り様は悪化した。
ハクが両手を倒れている男に当てて回復魔法らしいモノを使っている。
簡単な説明をして貰ったところでは魔力を含んだ空気で包み込み、吸わせる事で自然治癒力が格段に上がるらしい。
そしてこの男──
魔法使いの情報、今あった出来事、その時間帯を手帳に記入しながら
「今回の件について何か知っているか?」
手帳をしまい込んで、拳銃を片手に返事が来るのを待つ。
すると、触れるほど近く。
耳元で囁くような返事があった。
「そうだね、これも知っている。君が『空』を助けなくても発生していた彼女達の
ヘクスが姿を消してた上で更に俺にしか聞こえない声量で喋っている、何か意味があるのだろう。
俺もそれにならって出来るだけ小声で返事をする。
「どれくらいなら聞いても大丈夫だ?」
「何が起きたのかと誰がやったのかは難しいね」
「そうか、じゃあ……『大地』と『海』の魔法使いについてもう少し詳しい情報は貰えないか?」
「そうだね、このくらいなら大丈夫だろう……魔法使いはそれぞれ何かを冠する名前を持つというのはもう分かっていると思う。
その何かこそが、その魔法使いを魔法使い足らしめる重要なワードになっている。ほら、『空』の魔法使いが空気やそれに類するモノを操っているのは見ていてだろう?」
『空』『海』『大地』、それらが今分かっている魔法使いの固有名称だ。
ならば『大地』は何となく分かる、地面を操れるのだろうと予想が立てられるのだが……『海』は何だ?
水を操る?
何か違う気がする。
「予想は幾らでも立てると良い。私に答え合わせは出来ないがヒントは渡すことは出来る。縛りが緩くなったとはいえど
「了解、まだ慌てるような事にはなってないし、ヘクスの姿は見えないけど話すことが出来る。正直これだけでも充分過ぎるよ」
「終わりました、直に目を覚まします」
話が一段落したと同じタイミングでハクが声をあげる。
少しだけ息を乱しているハクに少しだけ不安を抱いてしまう。
だがそんな不安を他所に、ハクの宣言通りに贄沼の目蓋がピクピクと震える。
「……っ」
そして、ゆっくりと頭を押さえながら体を起こした。
「起きたか、起きたところ直ぐにで悪いんだが話を聞きたいんだが」
「誰だ、お前ら……っ!」
「うみは!? ちこはどうしたんです!?」
未だに頭を押さえ、どこか痛むのか立ち上がれない様子の贄沼にハクが掴み掛かる勢いで突っ込もうとするのを何とか押さえる。
「うみ、ちこ……っ! やべぇ、行かねぇと……」
だが、その言葉には効果があったようで贄沼は立ち上がろうとして、足が力に入らず派手に転びかけたので何とか支える。
この様子では双子の魔法使いに何かがあった事は確定で、ハクが後ろで取り乱しているのが分かる。
やべぇ、抑えきれるか?
「いいから落ち着いてくれ! 俺はともかくこの子は魔法使いだ、何か出来るとしたらこの子しかいない! だから話を聞かせてくれ」
「あぁ……? 魔法使い……魔法? ならあの子達と一緒って事……いや待て、名前は何て言うんだっ!?」
「ハクです!」
「ハク……空成ハク! 糞がっ! やっぱ無事じゃねぇか!」
贄沼はいきなり取り乱し、俺は驚いてしまい手を離す。
そのまま贄沼は元居たところ。
つまり大量のゴミ袋の上に倒れ込む。
「どうして私の名字を知っているのですか?」
「あの子達が言っていたからだよ……自分達の大切なお姉ちゃん、ここに集まる筈なのに何でいないんだって……そうか、あんたがそうだったか。何で昨日までに帰って来てくれなかったかって恨み言を吐きたい気分だが……」
「……っ」
「まぁ、帰れる状態なら昨日の内に帰ってきてるわな、どうやら本調子じゃねぇみたいだしよ。よし……いいか、今から何があったか話すが俺に向かってその魔法とやらを撃つんじゃねぇぞ? 死んじまうからな」
ハクの目線が厳しくなる。
この男の言い方ではこれからハクがこれ以上に取り乱すであろう事がその口から告げられると言うことだからだ。
魔法使いが力を持つ少女である。
つまり肉体は勿論、精神的にもまだ不安定な子供であると理解しているような口振りだ。
ハクを見る。
息は荒く、興奮しているように見える。
それ程その双子が大事な存在なのだろう。
家族、もしくは友人、親友。
そのような関係があり、そこまで熱を持てる事に俺は少しだけ憧れを覚えた。
俺には全て、消え去ったものだからだ。
まぁ、今でも後悔など微塵も感じていないのだが。
ともかく、贄沼の話を聞く為にハクに気分を落ち着けるように言う。
ハクは少しの間深呼吸を繰り返し、やがて贄沼に向かって「お願いします」と言った。
「時間は掛けずに手短に話すぞ」
贄沼にそう言ってこれまであった事を話し始めた。
まず、贄沼は軍に所属している軍人で町に現れた化け物を討伐するために何故か基地の人員全員で向かった。
後から思えば明らかにおかしいのだがその時は気付けず後方の方に居た贄沼は、非戦闘員と一緒に化け物が見える位の少し離れた場所で正気に戻ったという。
逃げようにも周囲の人が邪魔で逃げれず、戦おうにも前にも人がごった返して居たので撃つにも撃てず。
結局怪物が近くに来てから戦い始めたものの銃弾もろくに効かずで何も出来ず死ぬところだった贄沼達。
そこに不思議な力を使う双子が現れた。
つまり『海』と『大地』の魔法使いである二人に助けられたという。
そこから何故か近くに居た民間人を引き連れ、その双子の魔法使いと一緒に基地まで逃げきったらしい。
基地には同じ様に正気に戻った軍人が何人か居て、そこの人達と避難所を作り民間人を受け入れ出したのだという。
「そこまではまだ良かった。確かに不安を思う民間人の声もあったが、まだ全然問題なかった。武器を持った軍人が守ってくれているという安心感があっただろうからな」
「魔法使いの存在じゃなくてか?」
「あぁ? あんな子供にそんなストレスが掛かるような真似をさせる訳がねぇだろ。確かにそうするべきだって声はあったが……どうにかして抑え付けた」
「そうか……」
「続けるぜ?」
その後、双子の魔法使いが贄沼に言ったのだという。
「ハク姉さんが居ない」「何かあったのかもしれない、探しに行きたい」、と。
その時の時刻は夜の19時過ぎ、夕方まではその内帰ってくるだろうと思っていたらしいのだが完全に日が落ちてしまい、双子との約束を一度も破ったことの無いハクが来ていない事に強い不安を覚えたのだという。
「当然行かせる訳には行かなかった。というか探していないだけで民間人の中に居るかもしれないという可能性もあったからな。あの子達も、俺等が色々協力をお願いしていたから忙しくて探せてなかっただろうしな」
「協力?」
「バリケードの設営や近くに化け物が居ないか確かめて貰ってたんだよ。不思議な力、魔法とやらでそれが出来るって話だったし……他にも聞きたいことは色々あったしな」
「…………」
「睨まないでくれ空成の嬢ちゃん、これでも負担を最小限にしようと色々やったんだよ。けどな、分かるだろ? 魔法にしか出来ない事があったし、それ以上にあの怪物に対しての対策を立てる事は急務だったんだよ」
結局殆ど無駄だったが……と呟いた贄沼は深いため息を吐き出してから続きを喋り出す。
その後の事、完全にハクがこの場所に居ないと確信を持った夜の22時。
我慢の限界が来た双子が軍事基地を抜け出そうとし、それを見付けた贄沼が追い掛けた。
そこで言い争いが発生、時間を稼いで仲間が来るのを待とうとしていた贄沼の思惑を双子の魔法が越えてそれに動揺した贄沼を置いて二人は夜の町へ向かっていったのだという。
「どうやって移動してるのか全く分からねぇんだが……こっちはバイクで移動しているのに見失っちまってな」
「はぁ、はぁ、はぁ──」
「ハク?」
ハクの様子がおかしい、息が荒く今にも倒れてしまいそうになっている。
贄沼はこれを予期していたのか、頭を掻きながら申し訳なさそうな声で「続けるぜ」と言う。
ハクの様子は気になるがここで話を終わらせてもそれはそれで後から問題になる。
倒れても直ぐに支えられるように近くに移動してから贄沼に続きを促した。
贄沼が双子を見失った後、二時間ほどバイクを走らせておかしな音を聞いたという。
嫌な予感がした贄沼は、速攻でその音の発信源へと向かい、近くにバイクを投げ捨てて未だに音が聞こえる屋上へ足を運んだという。
そして、そこには……屋上のフェンスにもたれ掛かる人型の化け物の姿──おそらく怪人──が居た。
「人の形をした化け物、うみの方から聞いていたが怪人だっけか? 胸にドデケェハートマークがついているのを見た時はふざけてんのかとは思ったが……それを見た瞬間一目で分かったよ……こいつが
そのまま贄沼は屋上へと繋がる扉の前で隠れて屋上の様子を窺い、見付けた。
「うみと、ちこが居た。怪人の前で頭抱えて泣きじゃくってた。訳が分からなかった、だが何かをされたのだろうって思ってな……覚悟を決めて……扉を開けて鉛弾をぶちこみに行ったんだ」
「無茶をするもんだ……」
「何だ、お前も知ってたのか……ってそりゃそうか、魔法使いと行動してるんだアイツ等のヤバさは知ってるか。
まぁ、ご想像の通りだ。銃弾は通じず、一切の回避、防御行動を取らずに受け止められた。ていうかアイツ元々俺が隠れてたの知ってやがったな、驚きもしなかったからな」
「それで、どう……なったのですか」
「…………」
分かるだろ?
と俺に視線を送る贄沼。
勿論分かるさ。
視線を返すがそれと同時にハクを見る。
ショートの髪が少し風になびいている。
ここに今、風が吹いていないのにも関わらず。
このまま話を止めれば、それこそ吹き飛ばされるであろうとは簡単に予想が付く。
「嬢ちゃん、俺との約束覚えてるよな……?」
「どうなったのですか」
「……はぁ、俺の力不足だ。撃ちながら二人に逃げるように叫んだんだが……泣きじゃくってるあの子達にそう言っても動ける筈ないわな。呆気に取られたような顔は見えたんだがその後直ぐに怪人に捕まってな、怪人がその時あの子達に何か言っていたその言葉は覚えてる……確か、『これも、お前達の罪だろう? 苦痛だろう?』だったか、意味分からんかったが、そのままにしておくのはヤバいと思ってどうにか否定しようとしたんだが……そのまま屋上から投げ捨てられてな」
「それからは……」
「悪い、分からん。そこからずっと俺は寝てたからな。屋上に居ないのなら──」
贄沼が言い切る前に、ハクを中心に突風が吹き晒した。
俺は予想外の状況に体勢を崩して転けかけたが透明な誰か。
というかヘクスに支えられてどうにか立ったままでいられた。
贄沼はというと元々倒れた体勢だったからか突風の影響は最小限で舞い上がったごみを被るだけで済んでいた。
そして、突風の中心であったハクの姿は……もうそこには無かった。