鬱エロゲみたいな世界観で悲惨な運命を辿る魔法使い(少女)を助ける話   作:ヤンデレになる過程を楽しむ人

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魔法使い達4

 夜のビル街をバイクで駆ける。

 あの後六回ほど繰り返し、双子の魔法使いがどの方向から来たのか、怪人がどの方向から飛んできたのかを確めた。

 やはり時間のズレはあっても1分程度、場所に関しては全てあそこだった。

 あと何十周か確めてから次に進みたかったのだが、一度……最後の一周で怪人にバレて足を一つ持っていかれ、死にかけたのでこれ以上は意味も薄く危険であるとヘクスに告げられ進むことにした。事実、ヘクスが何かしてくれたお陰で片足一つ程度で済んだのだから弁明の余地もない、あれは即死もあり得たのだから。

 あの剣の怪人、常に周囲に警戒を張り巡らせているのか異常な程勘が良かった気を付けないといけない。

 

 そして、これから初めて双子の魔法使いに接触を図る。

 何度が観察を繰り返している内に、何となくだが性格も掴めた。

 うみがおとなしく見えて激情家、挑発に乗りやすいがそれは情の深さと比例しているようだ。

 ちこの方は口数は少なく冷静、うみが何時も前に出ているから分かりにくいが周りをよく見ているようで、話をするのならこっちにするべきだろう。

 

 うみとちこ、接触するのなら……難しいだろうが一対一でしたい。

 いくつか考えはあるが……一先ずは状況を見てからになるだろう。

 

 双子が居ると思われるエリアまで後少し、僅かな時間が出来た。

 近くを浮遊しているヘクスに少し前から、抱いている小さな疑問を投げ掛ける。

 

「そういえば、ふと思ったんだが……ハクやうみ、ちこの親というか家族は何処にいるんだ?」

 

「どうしてそんなことを思ったんだい?」

 

「いや、あの感じだと怪人側は魔法使いを殺す為なら手段を選ばないような奴等な気がしてな……言っちゃあれだが家族を人質に取るのが魔法使いにとって致命的なんじゃないかってな」

 

「成る程ねぇ……」

 

「あぁ、魔法使いも数いる訳じゃないみたいだし……それにだ、ハクの様子からして家族への心配というのが無かったような気がしたんだ」

 

「そうか、そう違和感を感じたか……よし、ムーヴ君。君の懸念点だけを解決する要所だけ伝えよう。魔法使いの家族を人質に取られたり、狙われたりする事はあり得ない。今回みたいな『空』と双子のような、魔法使いが人質にとられるというような状況は除外してね」

 

「あり得ない?」

 

 その言い方じゃまるで……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とも取れるんだが。

 んー、いや一先ずそっちの心配をしなくて良いという事だけを理解しておこう。それだけ分かれば充分だ。

 

 話が終わり、次に何を聞くべきかを考えようとした時。正面少し先の空にほんの少しの違和感を数秒だけ感じた。

 

「ヘクス、あれって」

 

「あぁ……見つかったようだね」

 

 冷や汗が流れる。

 あの規模の範囲を飲み込む魔法を使って探索をしているのは不味くないか? 

 現に中に入っていない俺からも分かる程だ。いくら暗闇で見えにくいと言っても怪人が気付かない筈がない。

 バイクを一旦側に止めて、既に画面がひび割れているスマホから時刻を確認、アプリから地図を出して現在位置とあのビル、軍事基地の位置関係を考えて……成る程、そういうルートで進んでいたのか。

 手帳に軽くその位置情報と時刻を記入してどう動くかを考える。

 

 周囲を探っているのはうみ、魔法は一定の間隔で展開している。

 話が出来そうなのはちこ、探知魔法の有無は不明でヘクスに聞いたとしてもこの時間軸では見ていないので答えられないだろう。

 取り敢えずは使っていないと考える。

 

 こっちの使える手は俺とバイク、そしてボアダムと拳銃そしてグレネード。

 流石にこんな夜中にグレネード程の音を出してしまえば怪人に気付かれる可能性が高いだろう。音を出来るだけ抑えた拳銃なら……わからない、セーフかもしれないがあまり使いたい手段ではない。

 

「ムーヴ君」

 

「何だ?」

 

「私も動ける、死ぬのが確定しているのは無理だがそれ以外なら手伝えるよ。なんなら距離制限内なら別行動だってしても良い」

 

「……大丈夫なのか?」

 

「私だけで運命に大きく干渉しなければ問題はないだろう。無理そうなら無理と先に言うから安心してほしい」

 

「いや、それもあるが……」

 

 ヘクスを危険な目にあわせて良いのか? そんな指示をして良いのか? 

 いや、駄目だ。それは駄目だ。

 何となくだが、俺の手でそれをしてしまえば……()()()()()()()()()そんな気がして止まない。

 自分でも理解している訳じゃない、どうしてか俺が今()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ヘクス、気持ちは助かるが───」

 

「なんだいその目は、君は私が使えない存在だと思っているんじゃないか?」

 

「違う、そうじゃない」

 

「じゃあどうして断ろうとしたんだい」

 

「それは……」

 

 言えない。

 自分でも理解できない何かが俺の言葉を、思考を止めている。

 それでもなんとか絞り出すように声を出す。

 

「ヘクス、君が死んだら……俺も死ぬんだろ? ならリスクは……そう、リスクは出来るだけ避けた方が良い……そうだろ?」

 

 喋りながら考え、どうにか絞り出し言葉を作る。

 嘘ではない、嘘ではないが真実でもない。

 逸らしてしまいそうになる視線を我慢してヘクスの目に固定する。

 

「…………っ」

 

 ヘクスは何故か苦虫を噛み潰したような表情で何かを思案している様だった。

 何が引っ掛かったのかはわからないが、今しかないと思い妥協点を作る。

 

「だから……そうだな、ヘクスが俺よりも強いし頭も良いのは分かっているがそれでも不足の事態というのはある。だからヘクスには普段潜んでもらっていて、ヤバそうな時俺が自殺する時間を稼いで貰う……ていうのが一番だと思うんだが、どうだろうか」

 

 実状的にも、心情的もこれが一番問題ない手段であると俺は考えている。

 何せ戦闘の手段が無いと明言しているヘクスだ、逃げる手段があったとしても、俺が近くに居たとしても、別行動して何かあった場合俺じゃ助けることは出来ない。

 俺が自殺する以外で死んだ場合終わりなのだ。……言葉にするのも思考するのも嫌悪感があるがヘクスが死んでしまった場合そこで終わりになる。自殺して逃げれる俺とは違う。

 

 うん、そういうことなら問題はない。

 

「そう、か……そうなるか。分かった、すまない困らせてしまったね」

 

 何かを思案している様子だったヘクスも何とか納得してくれた。

 しかし、何故急にそんなことを言い出したのだろうか。確かにヘクスに手伝って貰い、人手が二人分となった場合取れる手段は大きく増えるし、試行(自害)回数も減るだろう。

 だがそれだけだ。

 この段階ではまだ俺は詰んでいない。行き詰まりなど感じていない。

 確かに俺一人で何百と繰り返しこれは無理だと俺とヘクス双方で感じたならばそれを考える必要が出るかもしれない。

 だけどそれは今じゃない筈だ。

 俺達の目的は魔法使いの救出、最終目標はあの名前も知らない紫髪の魔法使いを救うこと。

 

 それだけの筈だ。

 

 思考に沈む俺は再び発現した『カイイキ』によって身体を包まれた事で意識を戻す。

 

「とにかく……双子に接触する。いけそうなら()()の方に、無理そうなら二人が一緒に居る時に」

 

「あぁ、問題ないだろう」

 

 お墨付きも貰った所で、俺は魔法が解除されてからバイクを動かして魔法が発現したその中心部らしき所に向かった。

 

 

 ▲▼▲▼▲▼▲

 

 

 街灯の光と月明かりが照らすビルが建ち並ぶ街中で、二人の幼い少女が()()()()()()()()()()()()()()

 うん、訳が分からん。

 

「足が動いていないように見えるんだがどうやってるんだ……?」

 

 俺達は今、彼女達の進行ルートを予測しその先にあるビルの一フロアで隠れながら双子の様子を伺っていた。

 何故わざわざそうしたかと言うと、あの魔法に引っ掛かった時直ぐにあの二人が俺から離れたような動きを見せたからだ。

 多分同じくバイクで移動している贄沼と勘違いしたのだろうが、その時の速度が思ったよりも早かったので追いかけるのは無理だと判断した。

 

 直ぐにルートを計算し、先回りして待機しているのが今に至る。あのバイクに迫る程の移動方法は乱発できないみたいで要所要所だけで使っているみたいなので何とか先回りできた。

 

 結構あのハートの怪人が待ち受けているビルに近づいてしまった為に音は極力出さないようにしたい。

 

「……止まったな、また魔法を使う気か? バイクぐらいの移動だと気付かれるがこの距離なら歩いて向かえるか」

 

「『大地』のあの移動魔法は結構身体に負担をかけていそうだからね。休憩を挟むと同時に索敵しているんだろう」

 

 ヘクスの解説を聞きながらビルの階段を駆け下りる。

 

「あれ、どういう魔法なんだ?」

 

「地面をさながら動く歩道(平面エスカレーター)のように動かして、そして足を土で固定しているんだろう。かなりの力業だよ」

 

「……風圧とかはどうしてるんだ?」

 

「ノーガードか、または何かしらで防御しているか、だね」

 

「ノーガードで進む脳筋であって欲しくはないかなぁ」

 

 ビルから出る直前くらいに『カイイキ』の発現を確認。動きをゆっくりとし、探知に掛からないようにしながらも双子の居る方向へ進み、見つけた。

 

 そこは大通りの交差点、車も人も通らないその大きく寂しい十字路に二人は居た。

 

 うみとちこはそこそこの距離を離れて休憩している様だ。

 というかあれは……警戒している? のだろうか。

 視線をそれぞれ別の方向へ向けながら座っている。

 

 さて、『カイイキ』は使われていないが他の魔法は使われている可能性がある。

 周囲を観察する。

 特におかしいものは見えない……少なくとも俺には、だが。

 

「ヘクス、何か魔法が使われた形跡とか分かるか?」

 

 分からないことは聞くことに限る。

 そういうことでヘクスに尋ねる。

 ヘクスは俺の問いに対して殆どノータイムで足元を指差した。

 

「下だ、不自然に土を被っている箇所が幾つか見えるだろう」

 

 暗闇を目を凝らして観察する。

 ……確かに植木がある所から溢れたようにも見える土が何ヵ所か見える、様な気がする。

 

「……分かりにくいみたいだね」

 

「うっ……いや、この暗闇だと仕方無くないか? 魔法と言うからにはハクやうみと同じくなんか、こう変な気配……オーラ? みたいなものも見えないし」

 

「込められている魔力がかなり微量だからね、魔力を感知出来る者も集中しなければ気付けないだろう」

 

 なら一応魔力は込められているのか……

 じっとその土を見て何かを感じれないかを期待するが……無理か。

 

 どうするか……

 一応考えはあるが成功するか怪しいからな、いや多分かなり低いだろう。

 

()()()()()()どうせ()()()()

 ここに来るまでのルートは確立できた。

 即死するような攻撃は飛んで来ないだろうし、失敗しても即敵対という訳じゃない。

 

 俺は考えを実行に移すべく、周囲に散らばる土の小さな固まりとも言うべき物がありその上で考える条件に合いそうな場所を探した。

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