鬱エロゲみたいな世界観で悲惨な運命を辿る魔法使い(少女)を助ける話 作:ヤンデレになる過程を楽しむ人
『1、俺が自死することで世界は逆戻りし、決められた地点で再開する。
だが俺が自死以外の死因であった場合は不明。要注意。おそらくそのまま死ぬ?
2、この世界には運命と結末があり、それに絡め取られた者はいかなる行動を以てしてもそれらから抜け出せないという。ヘクスによると俺はその縛りには無いと言う。
→力あるものは確実に存在していると言うヘクスの言葉から推測するに、俺には
3、当初の紫色の髪の毛をしたあの娘を助ける為に先ず初めにすることが他の魔法使いを助けることだった。ヘクスはバタフライエフェクトやら何とか言っていたが良く分からない。簡単に説明された時に、「全く関係の無いような場所、時、人物に起きた事柄が様々な要因を以て干渉してくる」らしい。
なるほど、わからん
4、怪人について───』
「何を書いてるんだい?」
「ん?」
俺は手帳に書き込む手を止める。
目の前の地面すれすれを寝転ぶ様な体勢で浮かぶヘクスを見た。
俺の書く次に繋ぐ為の手記が気になったのか、先程まで目を閉じて眠るような状態を取っていた彼女の瞳が気だるげに開かれている。
「ちょっとな、今まで聞いたことを俺なりに纏めていたんだ」
「ちょっとど忘れしたくらいなら説明くらい何度でもするぜ?」
「いや、これは俺用じゃなくて……いや、何でもない。まぁ、趣味みたいなものだよ」
「ふーん……」
話が終わると、ヘクスはまた目を閉じて寝ているように微動だにしなくなる。
なぜ浮いているのかを聞くと「地面に寝たら冷たいし固いじゃないか」と返してきた。
空中は柔らかいのだろうか。
俺達は基地で物資を調達した後、持っていたバイクの鍵を使いバイクで移動。
ヘクスの指示する場所、そこが良く見える場所……とあるビルの屋上に来ていた。
初めはそんなつもりは無かったのだが、町の住民は避難警報で粗方退去しており空き巣が入り放題のスカスカ警備状態になっていたからである。
勿論鍵はかかっていたが、それはヘクスのお得意の魔法とか言うやつで解錠。
無情にも不審者である俺に屋上までの侵入を許してしまったと言う訳だ。
まぁそこまで来て、何故俺がこのような手帳に書き込む余裕がありヘクスが寝ているような時間があるかと言うと……今はまだ時間じゃないから、らしい。
どうやら
だからこそ早めにポイントを陣取っておき、何が起きても対処できるようにするのだ。
無論、狙撃銃の組み立ても終わって最低限の迷彩も施した。
調整自体もヘクスが距離、風速、角度、湿度等の必要な情報を数字で伝えてくれたのでそれが正しいものならほぼ完璧に調整が終わったと言っても良い。
後は時間によって変わる気候情報を取り入れながら順次微調整をするところなのだ。
それも撃つ前にヘクスが伝えてくれる事になっているので俺としては本気で何をすれば良いのか分からなくなる。
これ俺いるぅ?
いるぅ、らしい。
この綺麗な魔女さんの操り人形になっていれば魔法使い達を救えるというのなら話は簡単なのだが、どうやらそれも無理らしくどうしても俺自身が考えないとダメらしい。
あの感じだともしかしたらヘクスは今回を既に捨てているかもしれない。
ここで何があったのかを俺に見せる為に。
そして、俺がどうすれば良いのかを考えるために。
まぁ、当然だろう。
巻き戻しの条件が限られているのだから、即死を免れるように予防線を張り続けるのは正しい。
基地から出るときに盗んだ装備で身を包んではいるが、怪人相手には意味をなさないと考えた方がいいだろう。
そこまで考えて、俺は手帳に聞いたことと考察を書き記す作業を始める。
現在時刻1500、そろそろ前回の俺達が初めて怪物と遭遇する時間になる。
因みに俺が世界を巻き戻せるのが1350までだ。
大体書き終わって最後に一言だけ書き示して手帳を閉じる。
そして双眼鏡を取り出して周囲を観察しようかと考えているとまた、ヘクスと目が合った。
違う、見ているのは今懐に仕舞った手帳の方か。
「……なんだよ」
「いや、そんなにそれが大事なものなのかと思ってね」
大事な物かと言われればそうだけど、だからと不用意に気を遣われても困る程度かな。
無くなっても書き直せば事足りるのだから。
「そんな事よりも、そろそろ準備しなくても良いのか? 何が起きるにしろその寝転がった体勢じゃ何も出来ないだろ」
「……それもそうだね。
ヘクスが宙でふわりと体勢を戻すとほぼ同時、遠方から銃声が鳴り響く。
銃声は最初一人分だけだったのがどんどんと重なって大きくなり、遠くに居る筈の俺の耳にすら地響きと勘違いするような力強さがあった。
「あの後軍の末路は君の知っての通り。ただのライフルでは火力が足りず怪獣に蹂躙されていくだけ。前の世界で軍が半壊状態に陥った理由の大部分を占めている
「本来そっちを防ぐように行動した方が後々に繋がると思うが……それをせずにこちらに来るように助言したのは、防ぐのが元より無理だからなのか、それとも魔法使い一人分の価値は軍隊に匹敵するものだからなのか……両方か」
「それはノーコメントとしておこう。さて、来るぞ。良く見ておくんだ」
そう言ってヘクスの指差す方向を急いで観察する。
先ずは双眼鏡を使わずに目視、動きがある場所を双眼鏡で覗いて正確に観測する。
そして、それは直ぐに見付けることが出来た。
黒く虫のような甲殻で全身を包み、赤く見える瞳のような部位。
大きさは憶測だが大体2メートル位だろうか、手足2本ずつ人型なのに虫のようなフォルムを併せ持つその姿は双眼鏡越しに生物として全く違う存在だと理解させられてしまう。
先程から口のような部位が動いているが俺は読唇術なんて修めてない。
そもそも人の形と違う口からどうやって読めば良いかも分からないのでそこから情報を得ることは出来ない。
だが雰囲気からして誰かに話しかけている、ということだけは理解できた。
やがて黒い虫のような怪人が何かを投げる。
急いでその何かを双眼鏡で追いかけ、それが人間であると理解する。
何かマズい、そう感じ取り直ぐ近くに設置してあったスナイパーライフルに体を移す。
そして急いでレンズを覗き込み……人間の体が真っ二つに千切れ飛ぶ姿を直視してしまった。
まるで映画のグロシーンを見てしまったかのような感覚。
だが飛び散る肉片や内臓のリアルさがそれを現実の事だと脳に訴える。
人が死んだ。
当然のように、軽々しく人が死んだ。
とても常軌を逸した死に方をまさしく目の前でされたと言うのに……俺の心は死んだように動かなかった。
まるで、既に見てきたから慣れてしまった様な感覚。
何度も何度も見てきただろうと言わんばかりの既視感。
そして、お前もやった事だろうと脳の奥から訴えかけられる何かの声。
それらを全て無視して──寧ろ手が震えない事を好都合だと考え──スコープで怪人を覗き込む。
少し角度を変えたせいか、それともようやく他に注意が回るようになったからなのか、その怪人の足元に未だ複数の捕らえられた人間が居ることが分かった。
もしかして、あの中に魔法使いが……いや、まさか既に殺されたあの人間が……
その考えに至った瞬間、さっきまで死んでいたと勘違いしてしまいそうだった心が揺れ動く。
指先が熱を持ち、反射的にスコープの照準を怪人の脳天に合わせる。
「大丈夫、あの中に『空』の魔法使いは居ないよ」
冷えた。
自分でも驚くほどに、俺の中で煮えたぎっていた何かが急速に冷え込んでいく。
そして、気付く。
俺は今、魔法使いが死んだと思ったから取り乱しかけた。
人が死んだにも拘らずまるで映画のワンシーンを眺めていた様な心境だったのにも関わらず。
魔法使いが死んだかも知れないと言う可能性だけで今、熱を持って暴走をしかけた。
直ぐに手帳を取り出して明記していく。
今起きた事柄とそれによって自覚できた自分の変化を。
急いでいたため殴り書きになってしまったが気にする余裕は無い。
「…………」
書き終わると同時、直ぐに顔を上げてスコープを覗き込む。
そしてまた一人、怪人が何かを呟いた直ぐ後に殺される。
今度は別の方法で、顔面を殴打されザクロの様に弾け飛んで死んだ。
その最後の断末魔が遠く離れたここまで届くくらいに壮絶に、殺された。
「何だ、何をしているんだ……?」
「……」
ヘクスは答えない。
答えられないのかもしれない。
そしてこうしている間にも処刑とも言える惨殺行為は進んでいく。
また一人、二人と殺され、また次かと思った瞬間。
変化が起きた。
今度の怪人の殺し方は、最初の時の様に蹴りで真っ二つに切断しようとしているようだった。
迫る蹴り、逃げられない人間、何時まで続くのかと考えていた俺の目の前で、風が吹いた。
風が動いたのが
意思を持った風──のように見えた──が次の犠牲者になる筈だった男を抱えて一気に距離を取る。
怪人の足元に転がされていた、まだ生きている何人かもその風に運ばせて少し遠くまで飛ばされる。
そして、飛ばされた男と怪人の真ん中、まるで男を守る壁になるようにナニかが、現れる。
その姿は少女。
雲のような白い髪を肩までで切り揃えたショートボブという髪型、長袖にショートパンツという出で立ち。
小柄な体躯を宙に浮かせ息荒く怪人を睨み付ける姿を見て俺は確信を持った。
「あの子が……」
「そう、あの子が『空』の魔法使い『空成ハク』。絶対にここで死ぬという