鬱エロゲみたいな世界観で悲惨な運命を辿る魔法使い(少女)を助ける話   作:ヤンデレになる過程を楽しむ人

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『空』の魔法使い5

 既に何回目かも分からないほど繰り返したこの戦いに、終止符を打つ方法を思い付いた。

 

 頭おかしくなる程戦い続け、やっと思い付いた正直これしかないという事もあって狂気のような作戦。

 だが前回の一周全てを考える時間に費やして作った作戦である。

 

 その為の下地……というか俺の屍を積み重ねているので、運が良ければ一回で成功できるだろう。

 

 運が良ければ。

 

 だから今回の作戦の為、必要なバイクを今までの間で確かめ確信に至ったバレない距離に停め、それを全速力で手で押して行く。

 

 時間的猶予は短い。

 

 だが気が遠くなりそうな程繰り返されたこの間だけは、寸分違わず体内時計で計る事が出来る。

 

 即ち五分。

 

 この間にバイクを持ち所定の位置まで運び、射撃の準備を整える。

 

 これを出来るルートを既に把握している。

 体が疲れる以外の問題を起こさずにやり終える。

 

 そして直ぐに民家の屋根をよじ登り、ボアダムを屋根の天辺に固定する。

 

 既に百何十と撃ち続けたこのスナイパーライフルのクセは完全に理解している。

 

 だからこの初弾は確実に当たる(当てる)だろう。

 

 そしてそれからが本番である。

 

 準備は出来た。

 

 後は五十メートルも無いであろうこの場所に居ることに気が付かれる前に──あの黒の怪人を撃ち殺す。

 

 大きく息を吸い込み、止める。

 

 体の震えを殺して、スコープを覗き込んで照準を合わせる。

 

 狙うは黒の怪人の頭、その頂点。

 

 ヒビがそこまで入っているので高さを付けたここから一撃でぶち抜くという算段だ。

 

 ……合わない。

 

 まだ……まだ。

 

 もう少し…………今ッ!

 

 激しい音を立てて弾丸が放たれる。

 

 放たれた弾丸は吸い込まれるようにして怪人の僅かしかないヒビに直撃。

 

 激しい音を立ててその頭部を弾けさせた。

 

 怪人殺し。

 もはや何の感慨も浮かばない。

 

 急いで身を翻して家から飛び降りる。

 

 背後から轟音と共に家の屋根が弾け飛んだことを知らせる木材の破片が降り注ぐ。

 

 結構前に知ったんだがこれただの投石なんだぜ?

 

 狂ってる。

 

 勢い良く地面に衝突する直前に受け身を取り最低限のダメージに押さえ、更に転がる事で更に衝撃を分散。

 

 死ぬ程体が痛いが心は慣れたもので、すぐに立ち上がり傍に置いてあったバイクへまたがる。

 

 更に轟音。

 

 どうやら当たってないと確信を抱いたのか更に投石を続けているようだ。

 木造の家が豆腐にデコピンをかましていくように崩壊していく。

 

 数秒、恐怖と戦いながらエンジンをかけることに成功。

 最初から速力全開で飛ばしていく。

 

 道路を足が地面に擦れるほどのコーナリング。

 十字路を曲がって『空』の魔法使いを目指す。

 

 既にそこそこの速度が出ているが満足に加速できていない。

 その隙をあの鎧の怪人が見逃す筈もない。

 

 当然のように俺の位置を補足、その常軌を逸する脚力で距離を詰められる。

 

 ここが正念場。

 

 今まで気が狂う程に繰り返し得た情報から推理して出した結論を試す時が来た。

 

 左手をフリーに、腰に回しあるものを取り出す。

 レバーを握り、ピンを腰にある今度は左に差しておいたナイフの柄に引っ掛けて引き抜く。

 

 彼我の距離目測にて僅か十メートルと少し。

 ならば有効距離内だと取り出したあるもの──フラッシュバンを鎧の怪人に投げ付けてやる。

 

 ピクリと反応を示した鎧の怪人の動きが止まる。

 

 過激な反応だ。

 瞬間的に防御体勢を取る鎧の怪人を見てそう思う。

 

 だがそれは知っている。

 思考を頭の隅で流しながら、フラッシュバンから目を背けて更に再度左手を動かす。

 

 一瞬、爆音と閃光が周囲全てを支配した。

 

 勿論バイクで通り過ぎたとはいえ、比較的近かった俺も音の被害で耳がおかしくなる。

 

 耳栓も持ってこれば良かったと後悔しても後の祭りだ。

 既に取りに行く余裕なんて無かったのだから。

 

 だがどうにかして左耳だけは防御することに成功。

 平衡感覚が完全に死ぬことは防ぐ。

 そして、それはまだやめない。

 

「キ、貴様ァァ!」

 

 そして、背後から地響きの様な踏み込みの音と同時。

 

 もう一つ、防がれると確信して地面に転がしたフラッシュバンが起動し、今度こそ鎧の怪人の目を焼いた。

 

 その証拠に強烈な踏み込みの音の後に聞こえた音は、地面に叩き付けられるような音とゴロゴロと転がるような音だった。

 

 派手に転けたんだろう、ザマァ見ろ。

 

 そしてそのままどっかに行ってろ。

 

 バイクに追い付こうとした勢いのまま転けたんだ、少しは遠くに行ってくれることを祈りながら進む。

 

 フラッシュバンが有効なのは賭けだった。

 

 こいつら怪人は人間のスペックを遥かに越えている。

 視力聴力共に人間のものよりも遥かに高い。

 

 だがそこは摩訶不思議な魔法とやらで防御されていたり、何なら普通にスペックで耐えきられる可能性もあった。

 

 今までで試すことが出来れば良かったのだがこいつらは、特に鎧の怪人は、警戒心が強く直撃させることが今まで成功したことが無かったのだ。

 

 近くに投げれば切られるし、少し離れた場所に投げれば距離を取られる。

 

 もし、耐えきられていたら……ここで起きた一回目の巻き戻しの再演と成っていただろう。

 

 だが俺は賭けに勝った。

 

 そして、ようやく左手が解放された所で『空』の魔法使いの元へと辿り着く。

 

 そして、これは壊し方を知っている。

 

 物理で壊れる。

 

 つまり……バイクをドリフトしながら停車させて腰から拳銃を抜き放ち発砲。

 

 二発、三発、四発と撃ち込んだ所で魔方陣にヒビが入る。

 

 更に二発、撃ち込んだ所でようやく魔方陣が砕けて消えた。

 

 そして、固定され磔にされていた『空』の魔法使いが解放され地面に落ちる──前に拾い上げる。

 

 呻き声を上げる魔法使いを担いで背中に背負う。

 

 だがそれに抵抗するように彼女は暴れる。

 

「おろしてっ!」

 

 錯乱しているのか、それとも普通に俺が怖いのか……

 後者ではないことを祈りつつ、聞いてくれる事を祈りながら説得をする。

 

「助けに来た、時間がない直ぐに移動する耐えてくれ」

 

「ちがう!」

 

「悪いが話を聞いてる暇は「うしろぉ!」……は?」

 

 まさかと思い後ろを振り向く。

 

 そこには、頭が半分以上吹き飛ばされながらこちらに向かって何かを振りかぶる黒の怪人の姿。

 

「ジネ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」

 

「鬱陶しいんだよッ!!」

 

 思わず叫びながら一度腰に直してしまった拳銃を抜き放ち速射する。

 

 胴体一発、頭部に一発。

 完璧な射撃。

 

 そこまでしてやっと黒の怪人の赤い二つの光が消え失せる。

 

 しかし奴の体の動きは止まらずそのまま投擲を繰り出される。

 

 死ぬ。

 これは躱せない。

 自殺も間に合わない、弾も無い。

 

 あそこで黒の怪人に撃たず、自分を撃っていれば良かったのだろうか。

 

 そうすれば今度は油断することもなくしっかりとトドメを刺してから行動できただろう。

 

 もっと上手くやれたのかもしれない。

 

 だがその選択は既に遅すぎる。

 体は銃の反動でまともに動かない。

 

 ならば……仕方無い。

 

 せめて『空』の魔法使いの盾に成ろう。

 少しはこの子の生存率も上がるだろうと覚悟を決めて、ハクを抱え込んでその身を差し出した。

 

 そして、投石が放たれる。

 

 

 

 ▲▼▲▼▲▼▲

 

 

 

 

「…………生きてる?」

 

 あの死の感覚がいつ来るのかと待っていたのだがいつまで立ってもその衝撃が来ない。

 

 恐る恐る後ろを見る。

 

「は? 何だ、これ」

 

 俺達は透明な半円形の壁に守られていた。

 

 いや、これは見たことがあるような気がする。

 

 そう、これは確か……この子の──

 

「風魔法……『クウヘキ』」

 

「ありがとう、助かった」

 

「でも、もう……無理……」

 

「……おい! …………寝ただけ、か」

 

 急にぐったりとし、意識を手放すハクに思わず死んだのかと焦る。

 が、どうやら寝てしまっただけのようだ。

 

 それにしても、これが魔法か……

 家を簡単に破壊するような威力の攻撃を無傷で防げるのか。

 

 一息付いて腰が抜けそうになる、が今度こそ本当に距離を取らないと不味い。

 

 あの鎧の怪人にフラッシュバンを食らわせてから既に一分近く経過している。

 

 俺はバイクにまたがり、『空』の魔法使いを背中に背負う。

 

 しかし、バランスが取れないので落とさないように慎重に行くべきかと考えていたその時。

 背中の彼女が誰かに支えられているように安定する。

 

 そして、それをしてくれる誰かに俺は心当たりがあった。

 

結末(エンディング)を越えるまでは出禁にされてたんじゃなかったけ? ヘクス」

 

「もう越えたよ。さっきので最後だったみたいだ。だからもう私は動ける」

 

「じゃあこのまま頼んでも良いか?」

 

「勿論受け持とう。散々とほったらかしにしてしまったからね」

 

 この世界ではたった十分にも満たない別れ。

 だが俺にとってはまさしく丸一日会っていなかったような感覚。

 

 ヘクスに支えて貰いながら俺達は逃げるようにこの場を去っていった。




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