【美容室】帰りのラナーは守護領域で鏡の前に立ち、改めて自分の姿を確認していた。リ・エスティーゼ王国でも一流の床屋に自身の整容を任せていたが、比較にならない完璧な出来栄え。しかしラナーは〝ヘッドマッサージ〟や〝耳掃除〟といった他のオプションを全て断り、散髪と結髪のみを頼んでいる。
何故ならば……
「じゃあクライム。お耳の掃除をお願いしてもいいかしら?」
「はい!畏まりましたラナー様!」
……クライムに行ってもらう方が何億倍も気持ちがいいことを知っているからだ。
流石にクライムは散髪の能力までは有しておらず、身だしなみを整える上で最低限度は
「で、ではラナー様!始めさせていただきます!」
ベッドに座るクライムの膝に頭を乗せ、ラナーは膝の温もりにそのまま寝入りたくなる安寧を覚える。しかしクライムの手が自分の耳に触れるとその眠気は覚醒へ、覚醒は快感に変貌していく。
「んあ……。はぁ……。」
カリ……っと耳道内に木の乾いた感覚が過ると、ラナーの背筋に電撃が走ったような強烈な快感が襲う。思わず
「ら、ラナー様。その……。い、い、痛みませんでしょうか?」
まるで背徳的な行為のような錯覚に陥っているクライムの緊張と倒錯感に満ちた声を聴くと更に快感が増すため、〝耳掃除〟中は素直に快感に身を委ねるようにしている。もちろん目の前に鏡を置き、クライムの瞳が見られるよう準備も忘れない。
「……ん。……く、あ、はぁ………。ぃ……。」
こしょこしょこしょこしょ、カリ……カリ……、つぅ~~~~~~。
と愛しいクライムの操作する木の棒が耳の中をすべっていくたび、ラナーは思わず垂れてしまいそうな自分の涎でクライムの膝が汚れないよう演技しなければならない。その我慢があまりにもどかしい。自分の全てをさらけ出すのは流石に品が無く〝クライムの知るラナー〟ではない。だが快感に身を委ねている今、声まで抑える真似はしない。
そして、そんな自分の姿を見て、顔も耳も真っ赤に染める可愛い犬の姿にゾクゾクと二重の快感を覚える。息づかいも荒くなっており、頭の中はさぞ倒錯的な葛藤でいっぱいになっていることだろう。世界で今一番幸せなのは自分だろうという傲慢な考えさえ浮かぶ。
「ラナー様……。お、終わりました。」
左右の〝耳掃除〟を終え、クライムは息を荒くしながらラナーに告げた。しかしその瞳は未だ倒錯的な背徳感と恐怖に怯えた両方を湛え、顔を真っ赤に染めている。
そう、まだ半分しか終わっていないのだから。
「ありがとうクライム。とても気持ちよかったわ。今度はわたしがクライムの耳掃除をしてあげる。」
笑顔を向けて無邪気に話すと、案の定クライムが全身を赤に染め上げ全力で拒否をする。何をそんなに怖がっているのだろう。確かに何度か耳掃除をした事でクライムの弱点は〝すべて知り尽くして〟いる。
クライムがここまで怯えているのは、前回の〝耳掃除〟で、自分のドレスをヨダレでベトベトに汚したせいだろうか?いくら命令しても全身身悶える事を我慢出来なかったせいだろうか?それとも気が付かないふりをしてあげたが〝粗相〟をしでかしたせいだろうか?
「さぁ横になって、クライム。」
今度はラナーがベッドに座り、慈悲深い笑顔のまま膝をぽんぽんと叩く。命令しているというのに、クライムは凍り付いたように赤面し固まったまま動かない。飼い主の言う事を聞けないなんて悪い犬だ。ラナーはこの細く短い木の棒で徹底的に〝躾〟をしてやろうと心に決めた。