「ねぇラナー。ワンちゃんとの生活はどうかしら?楽しく過ごせている?」
「はい、アルベド様。この前は1週間寸止めをし続けるという〝躾〟を行いましたが、寸前で止めた際の何とも切なそうなこちらに訴えかける表情といい、獣欲を理性で抑え込む瞳といい、一週間後のご褒美にようやく〝粗相〟が出来た失神するような快楽に悶え苦しむ恍惚の表情といい、とても満足した日々を送らせていただいております。」
「羨ま……そう、充実しているようで何よりだわ。アインズ様からは貴女を慈悲深く扱えと仰せつかっているからどのような生活を送っているか興味があったの。」
ラナーとアルベドはナザリック第九階層応接室で軽いお茶会を開いていた。アルベドの後ろには、本日のアルベド当番のメイドが佇立し、机には紅茶と焼き菓子が置かれている。
「さてラナー、貴方アインズ様の寵愛を受けるに際してあのヤツメウナギ……シャルティアに面白い意見を述べたようね。」
ラナーは思わず紅茶を吹き出し陶器を落としそうになる。シャルティア様と行った雑談の場にはソリュシャン様しかおられなかったはずだが、どこから情報が漏れたのだろう。シャルティア様は寛大な方であるから――誰もその意見に同意する者はいないが――思わず口にしてしまった他愛もない持論だが、魔導王陛下を心から愛しているアルベド様の前で同じ話をすればとんでもない不敬であると罰を与えられる可能性がある。とはいえ嘘をつくわけにもいかないだろう。ラナーは刹那の間に覚悟を決め笑顔を作り、シャルティア様にも述べた持論を展開した。
「あ、はい。お世継ぎのお話ですね。魔導王陛下は
「確かに……アインズ様はわたくし共を愛してくださっているけれど、欲望をもってこの身体に触れていただける悦喜なる機会は一度もなかったわ。」
「お世継ぎづくりに当たって魔導王陛下自身はとっくにお気づきかとは思うので、わたくし如きが口にするのは大変に恐れ多い話なのですが……。以前シャルティア様が何者かに洗脳された際、魔導王陛下は<
「なるほど……。」
ラナーは笑顔の裏を冷汗で濡らし、つばを飲み込む。ラナーが話しているのは至高の御方であらせられる魔導王陛下の玉体にシモベに過ぎない自分たちが改造を加えるという大罪だ。アルベド様からどのような罰が下るだろうか……。不敬罪としてこの場で殺されるのではないかという恐怖さえ脳裏に浮かぶが。
「面白い意見ね。しかしナザリックで<
予想外の反応を見せたアルベド様にラナーは思わず目をパチクリとさせてしまう。ラナーと御付きのメイドの目があったためか、アルベド様の興奮は数秒で収まり、アルベド様はわざとらしくひとつ咳払いをした。
「こほん。大変面白い意見だわ、ラナー。アインズ様へその尊き指輪を使っていただける輝かしき日が来るために何をすればいいと思うかしら?」
「大変恐れながら、お世継ぎに関してわたくしが何か口を出せる立場にはございませんので……。」
「そ、それもそうね。失言だったわ、今の失態は忘れなさい。」
「かしこまりました。」
アルベド様の反応にラナーは安堵のため息を吐きかける。〝噂をする覗き魔がいるかもしれない〟というのは至高の主アインズ・ウール・ゴウン魔導王陛下のお言葉だが、今後自分が持論を述べるときはどんな場所でも油断しないようにしよう。そう心に喝を入れた。