蒼の帝王   作:鈴見悠晴

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三次選考
試練を乗り越えた者達


世界選抜との試合を終えてから、これまでの体をいじめ抜くようなメニューから一転、とにかく語学を磨く時間を多くとらされた。

 

この時間は二次選考が終わるまで続くらしく、彼らはそれぞれ勉強を始めた。

英語を問題なく話すことができる王馬が教師役のような形になり、ほかのメンバーに教えていく形になった。幸運なことに真面目なメンバーで構成されていたこのチームは、ある程度は知識があり王馬の負担は少なかった。

 

海外の選手とのコミュニケーションは非常に大きな重要度を持つこのサッカーというスポーツでは、最低限サッカーのことは分かる程度の言語能力は必須。ひたすらに勉強と基礎トレーニングを積まされる日が数日たったころ、この退屈な日常を終わらせるアナウンスが鳴り響いた。

 

『ただ今を持って二次選考を終了。三次選考からその先に進むメンバーが出そろいました。速やかに中央ジョイントルームに集合してください』

何度か同じ音声が繰り返される中、準備を進めていったが、普段であればすぐに開くはずの扉が閉じられていた。その状況を不審に思っていると、今まで流れていたものとは違うアナウンスが流れた。

『突破者は7チーム、計35名。二次選考の突破順に入っていただくことになります、そのため少々お待ちいただく必要があります』

 

そのアナウンス通り待つこと数分、扉が開かれると行く先を表すようにその道だけがライトアップされていた。

真っ暗な建物の中、自分たちが進むべき道だけが真っ直ぐに照らされている。その道の先にはまた一つの扉があり、ゆっくりと開かれた先には1チーム、5人の選手が既に到着していた。

 

1stクリアチームは糸師凛、時光青志、蟻生十兵衛の二次選考1stステージを最速でクリアしたメンバーを中心に、蜂楽廻と潔世一を合わせた5人組。糸師凛を中心とした各々の強みを生かす完成度の高いチーム。

伊右衛門、二子、王馬と知り合いが多かったため、潔と蜂楽が嬉しそうに名前を呼んだ。

 

それに王馬が簡単に手を上げることで答えた。糸師凛と王馬翔の二人は一瞬視線を交錯させただけで、互いにたいした意識を持たない。非常に淡泊な最初の出会いだった。

 

彼らが全員部屋の中に入ると自分たちが入ってきた扉とは違う扉が開いた。

3rdクリアチーム、彼らは入ってくると同時に潔世一の方を見て自分たちが来たぞと示して見せた。

「チィース」

「来たぜ下手くそ」

「100万年ぶり」

凪誠士郎、馬狼照英、千切豹馬の三人が横並びになって入ってきた。彼らの表情からは自信がみなぎっており、それがここまで越えてきた試練を表していた。

 

潔や蜂楽と何か仲よさげに話し始めたところを見ると、おそらく同じチームで試合をしていたことが推測できる。彼らの談笑をよそに王馬にとっての待ち人がやってきた。

 

4thクリアチーム、烏を先頭に入ってくるとそのまま王馬の所にやってきた。

「なんや、ちょっと心配したか?」

いたずらでも成功したかのように笑う烏に容赦なく腹パンを喰らわせた後、王馬は嬉しそうに肩を何度も叩いた。

「俺がいないからな、正直来なくてもおかしくないって思ってたよ」

互いに冗談を言い合う二人をよそに雪宮が乙夜に柚といった元チームメイトと話を盛り上げている。

縁の多い4thクリアチームと2ndクリアチームだが、中には関わりのないメンバーもいる。王馬達のチームに敗れた後に加わっている青森のメッシ西岡と高校ナンバーワン長身の石狩はどこか所在なさげにしており、伊右衛門と二子が彼らと何かを話していた。

 

5thクリアチームのメンバーが入ってきたが、そのメンバーの多くは面識がなかった。そのため知り合い同士が固まっていた彼らからは、興味深げな視線が向けられていたが、國神が入ってきたとき、元チームZのメンバーが彼の元に歩み寄った。

 

特に千切や潔は話し込んでいることから、おそらく同じチームでこの二次選考を戦った事が推測できる。元チームZのメンバーがかなり多く集まりだしたその空間に、またしても元五号棟最強のチームZのメンバーが入ってきた。

 

6thクリアチームが入ってきたが、彼らの体よりも声が先に入ってきた。

「おい、押すな!!」

「バカ、俺が先頭だつってんだろ!!」

「おい危ないぞ、こけてしまう。と俺が言っている!!」

今までに無い騒がしい入場に、注目だけでなくあきれたような視線が集められる。

 

そんな視線の中、上がっていた声通りに、真ん中を争っていた男達三人が支えを失って崩れ落ちた。

右から、元チームZの我牙丸に雷市、そして元チームWの鰐間の三人が地べたに這いつくばって言い争っていた。

 

「おい、お前らいつまでも言い争ってないでさっさと立ち上がれ」

王馬のその一言で周囲からどのように見えているのかを意識したのか、鰐間と雷市が立ち上がろうとした。しかしその上に乗っかる形になっていた我牙丸が二人に体重をかける形で立ち上がることで、下の二人が潰れてしまった。

そのことでまた騒ぎ出した彼らを、全員があきれたような視線で見つめる中、最後のクリアチームが入ってきた。

 

7thクリアチーム

彼らの先頭に立って入ってきたのは三つ編みが特徴的な選手に、御影玲王の二人が先頭に立って入ってきた。

「玲王…」

凪の口からこぼれたその声に怜王がこちらを見つめたが、その目の下には黒いくまができていた。

 

そんな二人の後ろから、また二人の選手が軽口を叩きながら出てきた。見覚えのあるはげ頭、弩弓のドリブラー二人組、六平と利平の二人が部屋に入ってくると、近畿ユース組とも言える王馬を中心とした集団の所にやってきた。

「いや~危なかったわ、ギリギリの滑り込み。まぁセーフやろ」

そう言った六平に烏と氷織が冷たく当たる。

「落ちとったらよかってん」

「あの子らも大変や、君らの相手なんかしてられへん」

二人の言葉にわざとらしく傷ついた様子を演じる六平を無視して、王馬が利平に話しかけた。

 

「おい、最後の一人は?」

「ああ、多分すぐ……ほらあいつだよ。地獄の底に眠ってた最悪の悪魔だよ」

ゆっくりと入ってきた士道が全員を見渡した後、その視線が王馬でピタリと止まった。

ぞわりと背後を駆け上がるような寒気に視線を外して、僅かに残った35人を見渡すとともに、この試練を乗り越えられなかった男達に思いをはせていると、いつも通り絵心が液晶に映し出された。

 

 

「ひとまずお疲れと言っておこうか、才能の原石ども。さて……こちらの都合で少々申し訳ないが、予定が変わった。お前らの夢は青い監獄とともに消えるかもしれない」

唐突に告げられたその言葉に聞いていた人間全員があっけにとられる。

 

「どうもお偉方に相当にらまれてるらしい。だから俺は逆に挑戦状を叩き付けた。3週間後にU20日本代表とのスペシャルマッチだ。この試合に勝てば、お前達は日本代表のユニフォームを奪い取れる」

 

「といっても相手も負けるつもりはない。今回糸師冴が初招集を予告されている。お前らの役割はその当て馬……だと考えられてる。だが俺が現実的に断言してやる。今のお前らは日本サッカー界をひっくり返せる。全てをかけるときが来た、さぁ行くぞ才能の原石ども、時代を変えるのは俺たちだ」

 

その演説はこの世界でおそらく絵心にしかできない物だった。ここにいる人間全員がその言葉を静かに聞き入った。彼には間違いなく監督としての才能があった。少なくともモチベーターとしての役割としてはそこらのプロクラブで監督をやっている人間よりもずっと優れていた。その証拠にここにいた全員がU20日本代表戦に向けて燃え上がっていた。

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