蒼の帝王   作:鈴見悠晴

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日の丸を背負う蒼い戦士たち

最終試合になった第六試合を終えて、多くの選手が王馬と絡みたがった。チームメイトとしてプレイできたメンバーは勿論、敵としてプレイした選手に、見ることしかできなかった全員を魅了するそう言ったプレイを見せた王馬は一躍人気者になった。

 

食事をとっているところや風呂に入っているところにまで群がるように集まっていた。

 

夕食中、王馬のすぐそばには自然な流れで糸師凛が座っていた。トライアウトをチームメイトとして戦った凛がそのままその位置を陣取り続けた。食事をする際にも向かい合った席に座っていた凛に、王馬は最初こそきょとんとした顔を見せたが、特に何も言うことはなかった。

最初はこの二人が話していただけだったが、途中で士道が王馬の横を陣取った。

 

敵として計二試合を戦った士道は王馬と一緒にサッカーをやってみたかったようで遠慮を見せることなく、饒舌に話しかけていた。

 

普段は仲のいいチームメイトと一緒にいることが多く、対戦相手からこのように話しかけられる経験がない王馬は、その熱量を裁けずにどんどんと距離を詰められていく。それが気に喰わないのか、凛が二人の会話に割って入る。

凛と士道の二人がエスカレートしていくのを見かねて、烏が救いの手を差し伸べようと動いたことで事態は一気に動き出した。

 

仲のいいメンツからすればフォローに行っただけだが、第三者からすればまたしても王馬に話に行った奴に見えた。烏を追いかけるようにどんどんと話に行く連中に、食堂はカオスに包まれた。

もううんざりしたかのような表情を見せて、逃げ出そうとするも退路も失われていた。あきらめたかのように腰を下ろすと突然アナウンスが行われた。

 

「王馬翔、今すぐ応接室に来い」

 

まだ代表戦のメンバー選考までずいぶんと時間を残していたが、絵心の声で呼び出された王馬に特別疑問を抱える人間はいない。

ここまで特別な選手であれば、間違いなく王馬を中心にしたチーム作りをするだろう。そうなると選手から意見を聞くこともあるだろう。そんなほかの選手の予想とは反した待ち人が応接室に座っていた。

 

扉を開けて、部屋に入るとそこには王馬も顔だけはよく知った男と、気の弱そうな優男が座っていた。

「…糸師冴」

 

「あっ、冴くん来たよ」

落ち着きなく周囲を見渡していたマネジャーのジローラン・ダバディが部屋に入ってきた王馬に気づいた。

 

王馬と糸師冴の二人がにらみ合うかのように見つめ合っている間で、ダバディは王馬の方に歩み寄っていき、手を差し出した。

「僕はジローラン・ダバディ、彼のマネージャーをしている。彼の紹介はいらないだろ」

 

「糸師冴、糸師凛の兄貴。日本のサッカー界を背負う天才にして至宝。……よく知ってるよ」

目の前に出された手を握り返しながら、その目は一切ダバディを見ていなかった。そんな状況に手を離されたダバディは道を空けるかのように横にずれていった。

 

「初めましてだな、王馬翔。まさか日本にまだお前みたいな才能が残っているとは……俺の目標を知ってるか?」

「……バロンドールか?」

「ストライカー贔屓の個人賞に興味は無い。世界一の証明、チャンピオンズリーグでの優勝が俺の目標だ」

 

その言葉を聞いた王馬はつまらないやつだと言わんばかりに、失望の表情を見せた。チャンピオンズリーグの優勝はたいそうな目標だ。だが優秀なチームメイトがいれば、彼の所属しているチームならばはっきり言って現実的目標の枠を出ない。

 

「だが、お前がいるなら話は別だ。俺がワールドカップを掲げるために、お前がいる。俺に“夢”を見せてみろ」

 

最初は数メートルの距離があったが、気づけば手を伸ばせばと同距離まで近づいていた。

 

「俺がお前を届かなかった景色に連れて行ってやる」

 

差し出されたその糸師冴の手を王馬はどれくらいの時間見つめていただろうか?そばで見ている人間からすれば一瞬だったかもしれない。しかし、当人達の間では凝縮された長い時間がたっていた。

 

そして最後に王馬はそっと差し出された手を握った。

この日、日本に生まれたことを間違えた天才と、今まで日の目を見ることがなかった天才が日本の表舞台に並び立つ最初の一歩を踏み出した。

 

この出会いから数時間後、最終戦終了から6時間が経過し、全員が集まっているセントラルルームで潔は見当たらない王馬を探して部屋を見渡した。見つからない事に疑問を感じていた潔の目の前の扉が開いた。

「ご機嫌よ~才能の原石ども。これよりU-20日本代表に挑む11人を発表する。」

 

部屋に入ってきた絵心が持っていたタブレットを操作すると、目の前の液晶に大きくフォーメーションが映し出された。そのフォーメーションは3-5-2、攻撃の中心になる男達であるツートップが光った。

「このチームの中核にふさわしい二人、糸師凛と士道龍聖。お前達二人がこのチームを引っ張るツートップだ」

 

絵心の言葉に選手達が明らかにざわつき始める。発言した絵心自身もこうなることを予測していたのか、このざわめきを正面から受け入れて、収まるのを待っていた。先を話そうとしない絵心に烏が手を挙げて質問した。その質問はこの場にいる人間全員の疑問だった。

「何で王馬じゃないんか、ちゃんと説明してくれや。まずあいつ今どこにおんねん。選手は全員ここに集合とちゃうんかい?」

 

その言葉を予想していた絵心はタブレットを操作し、液晶にU-20日本代表のフォーメーションが表示された。4-2-3-1を基本とした陣形、堅守をウリにしたこの世代の日本代表、その中心に王様として迎え入れられた糸師冴が表示された時、凛が歯をかみしめた。

「堅守速攻、日本人らしいその献身制を生かした鉄壁のディフェンス。点を取れない彼らは一人で攻撃を変えられるチャンスメーカーである糸師冴を迎え入れた。そんな彼が日本サッカー協会に要求したのが自分が満足できるFWを用意することだ」

 

絵心の言葉と連動して、液晶に映し出されていたワントップがピックアップされて光り出した。

 

ここまでの流れでそこにいた大半の人間が理解した。

ワントップとして表示されていた閃堂が真っ白に変わり、そこに王馬の顔が表示された。

「不世出の天才、日本に生まれた万能型ストライカーが糸師冴の選んだ相棒だ。今から発表するメンバーはA代表でも遜色がない二人の天才に打ち勝つために選出した」

 

腕を横に振ることでU-20日本代表フォーメーションを消して、ブルーロックチームをもう一度表示した。

この3-5-2システムは勿論ツートップの攻撃を中心にしているが、この二人の舵取りをするトップ下がかなりのタスクを担っている。

そのことを理解でき、なおかつトップ下に適性を持つ人間は少し緊張感を持った。

 

「まずキーパーは我牙丸吟。反射神経や瞬発力と言ったキーパー適正値でトップを叩きだしたお前が、このチームの守護神だ」

 

「おー、そういう感じね……了解」

虚を突かれたような反応を見せた我牙丸だったが、彼自身もどこかで予想できていたのかそこまで拒絶感もなかった。

 

「3CBがこのチームの土台になる。強力な前線が安定した結果を出すために、戦える人間を選出した」

前線が相手のゴールに向けて放たれる弾丸ならば、ディフェンスラインである彼らはそれを支える両腕だ。絵心が銃弾を放つようなジェスチャーとともに液晶上のスリーバックが光った。

 

「右に伊右衛門送人、左に蟻生十兵衛。幅とスピードをとるためにウイングバックが高い位置をとるこの陣形ではお前達の1対1が勝敗の鍵を握る。そして中央に雷市陣吾、運動量と攻撃参加でチームを最終ラインから支えられるリベロ」

運動量とテクニックを持つ雷市を中心にした最終ライン、本来前線でのプレイを求める三人も無言でその先を促した。自分たちが王馬を止めるという難易度の高いタスクをどのようにこなすのかと言うことを彼らは今から考えていた。

「彼らを前線と繋げながら、チームのバランスをとる。ダブルボランチは烏旅人と氷織羊の二人だ。リベロの雷市、両ウイングバックとの連動。多くのタスクをこなせるテクニックに何よりも高い戦術理解が要求される。そして彼らの横、サイドレーンを上下動することが求められるウイングバックは、右サイドが千切豹馬、左サイドが雪宮剣優に任せる」

 

おそらく最も重要なラストピースであるトップ下を残して、先発メンバー発表した絵心は全員を一度見渡した。

「この残されたポジションは本来王馬が入り、スリートップを形成する予定だった。しかし引き抜かれていった結果、このポジションを任せられるのは、お前しかいないと判断した。糸師凛のパートナーとして、士道と共存し、王馬の代役をこなして見せろ。潔世一」

 

「……はい!!」

 

「これがブルーロックイレブン、世界をひっくり返して見せろ」




ブルーロックアニメ化決定しましたね。
楽しみなのは勿論なんですけど、個人的にはリバプールとのコラボが熱かったですねー。

この作品なんですが、原作でU-20日本代表線が終わるまでは一旦更新をストップさせていただこうと思っています。
気長に待っていただければ幸いです。
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