蒼の帝王   作:鈴見悠晴

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幕間

チームYに勝利したチームZはその喜びを爆発させる祝勝会を開いていた。

普段ならランキングで固定されていた食事内容に加えて、試合でゴールを決めると得られるゴールポイントを消費して得られるステーキというご馳走を皆で分け合う。小さくも彼らにとっては豪華な祝勝会を行なっていた。

 

全員が肉や魚などメインディッシュに飛びついていく。

五十嵐や成早が語彙力を失ってうまいbotになっている横で王馬が近くにいた伊右衛門に皿を渡した。「肉と厚焼き卵を取ってきてくれ」そう頼んでくる王馬にさすがに自分で行けと言いかけた伊右衛門だったが、王馬が眠たそうに目をこすりながら船をこいだ姿を見て、無言で皿を受け取った。

 

頼まれたら断れない優しい男、伊右衛門は間違いなくこの試合で一番活躍して、頭を使っていたのは王馬だと自分に言い聞かせて注文されたものだけでなく野菜などの栄養バランスを考えて盛り付けてくれていた。

 

「結局王馬がチーム得点王か。俺なんてこの二試合シュートすら打ってないよ」

 

しみじみという五十嵐の言葉に活躍こそした物のゴールを決めるどころか、シュートも打てていないほか数名が言葉を失っていた。

 

「そうだぜ、結局俺も一点しか決めてないんだ。複数得点は王馬に潔だけ、そのへんどうなのよ?王馬」

 

「動きが甘いんだよ。精々自己主張しろよエゴイストども」

 

普段のピッチ上で見せる見下したような態度ではなく、ふわりと柔らかい笑みを浮かべているその視線にはどこか優しさがあった。

 

「でも、雷市お前良かったよ。不慣れなボランチでよく上下動してくれてた」

 

「だからこそ、もっとパスよこせよ!!絶対後2,3点取れたぞ」

 

「お前と俺じゃサッカー勘が違うんだよ。それはつまり持ってるヴィジョンが違うって事だ。もっとゴールを決めたきゃ俺を黙らせるほどの動きをしろよ。俺からこのチームの主役を奪って見せろ」

 

前半の言葉は確実に雷市にむけられた物だったが、後半はこの場にいる全員に向けられた物だった。

 

このチームの主役は確実に王馬で、自分たちは脇役だという事実を突きつけながら奪い取って見せろと発破をかけた。下手をするとチームが崩壊しかねないその発言だったが、そこには王馬の信頼があった。それでも野心を宿した視線に釘を刺すことを選んだようだが

 

「別に自分勝手にやれってことじゃないぞ。まぁ言わなくても分かってると思うが……」

 

そこには僅かに不安が見え隠れした。

 

結局この日はブルーロックが始まってからチームZの人間にとって一番笑った日になり、ほとんどの人間が試合の疲れと、楽しみすぎたことによりぐっすりと眠る中、潔は眠ることができずにそっとモニタールームに向かった。

試合前日の寝られなかった物とは全く違う。あの日は不安だったが、今日は興奮している。重たいからだと覚醒している頭のギャップにまるで熱に浮かされているようにその歩を進めた。

 

今日の試合は間違いなく自分がサッカーを始めてから一番良かった試合だった。

だからこそ最後のミスがどこまでも心に残っていた。普段だったらやらないだろうドリブル突破の判断、シュートまでの運びは完璧だった。最後のシュート、あれを決めきれないというところが、今の自分の実力をこの上なく示しているように潔は感じていた。

 

モニタールームの扉を開くとそこには先客がいた。同じサイドで自分のことを支え続けてくれていた千切がそこには座っていた。

 

「……潔か、何しに来た?」

 

あぐらをかきながら振り向いてこちらを確認する千切の問いかけに、邪魔してしまったかもしれないと若干申し訳なさそうに答える。

 

「いや……ちょっと寝れなくて」

 

「……俺もだよ」

 

気まずそうに答える千切がさっきまで見ていた映像は4点目の前のシーン、千切のサイド突破のシーンだった。

 

「千切、お前こんな早く走れたんだな。測定の時でもこんな速く走ってなかっただろ」

 

そういえばという表情を浮かべて、横に座りながら足の速さを褒める潔に千切は苦笑をしながら答えた。

 

「いや、全然駄目だよ。ボールタッチは乱れてるし、バランスが崩れてる。でもまあ、最低限だけど悪くはなかった」

 

そこにある笑みはこれまで見てきた千切の笑顔とは違った。本当に本心から出ているその笑顔は安心したようで、照れくさそうで、そして何よりも嬉しそうだった。

 

「自分だけの武器が使えた時ってさ、なんて言ったら良いのか分からないけどすっげぇ気持ちいいよな。昨日王馬に言われたんだよ。ポジショニングが良い、見えてる世界が俺に近いって。最初は何を言ってるのか分からなかったけど、試合中に分かったような気がしたんだ」

 

言葉を探しているような潔の嬉しそうな表情を眺めながら、千切はなんとなく何が良いのかを理解していた。彼らの後ろで彼らとパスを交わしていた千切だからこそ分かっていた。この二人はただ相性が良いというだけのものではないほど連動していたから。

 

「信じられないだろうだけどさ、どこにいてほしいとか、どこにボールが来るかとかがなんとなく分かる気がしたんだよ」

 

「分かるよ、お前は多分空間認識能力が高いんだよ。このシーンでもしっかりと首を振って回りを確認してる。どこに誰がいるのかを分かってるから、予想できるんだよ。」

 

それが潔の言いたかったことだったようで、自分の言いたかったことが伝わったことに嬉しそうにしてる潔に千切は残酷な言葉を続けた。

「だからこそ、きっとお前はこれから苦労するよ。お前が世界一を目指す限り、絶対に王馬はその先にいる。サイズは近いけど、身体能力には大きな差があるし、技術なんて言わずもがなだ。お前はこれからあいつのことを追いかけないといけないんだ。俺にとっても超えなきゃいけない壁だけど、お前にとっては完全に上位互換だろ」

 

本当はここまで言うべきか迷ったが、それでも一度話し始めると止まらなく、最後まで言い切ったところで若干後悔しながら向き合うと、そこにいる潔は笑っていた。

 

「分かってるよ。でも俺はここでなら、ブルーロックでならあいつを超えられる気がするんだよ。憧れてるのは止めだ。王馬は俺が越えるべき壁で、ライバルだ。俺は絶対に世界一になってみせるよ」

 

そこには純粋に挑戦を楽しんでいる笑みを浮かべた男がいた。

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