遊戯王-Dark World Princess-   作:ごん小狐

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オリジナル要素を多数含みます。
キャラ崩壊も盛り沢山ですので、苦手な方はブラウザバックを推奨します。
何でも許せる方のみ、お進み下さい。



第3話 入学試験、はじめてのデュエル

暗黒界では、今まさにデュエルアカデミア果天野校入学試験に挑むため、ユラの服やカバンを集めたり、さらには学校から事前に届いた案内資料を暗黒界の頭脳と呼ばれるメンバー達が目を通しながら議論をしていた。

 

「グラファ様!斥候のスカー!ただいま帰還しました!」

 

「おお、よく戻った。して、結界通路の首尾はどうだ?」

 

「ハッ!こちらをご覧ください!」

 

スカーはアカデミアの校内マップを広げ、数十カ所に印をつける。

 

「人目につかない場所を重点的に校舎内に12箇所、それから食堂棟に3箇所、屋外のグラウンドや敷地内に15箇所の計30箇所に緊急用の結界通路を設置しました!」

 

「うむ、上出来だ。次はレインから仕事を受け取ってくれ」

 

「ハッ!失礼いたします!」

 

「グラファ様!ブラウです!ユラ様防衛用の狙撃ポイントの件ですが…」

 

「ふむ、聞こう…ああちょっと待て。スノウ!明日の試験の案内をもう一度見たい。後で我の部屋に持ってきてくれ」

 

「かしこまりました。すぐご用意します」

 

バタバタと目まぐるしく動く暗黒界の住民達。デュエルアカデミア果天野校の入学試験は明日、それに向けた最終調整という事だ。

そんな目まぐるしく動く住民達を、ズールとレンジは少し離れた場所で見ていた。

 

「…ズールよぅ、ホントに大丈夫なのかねぇ?」

 

「ほう。鉄壁レンジとも言われたお前が今更何を弱気になっている?」

 

「だ、だってよ、お嬢が受肉して学校生活をしている間、アッシらは精霊体のままでお嬢の警護だぜ!?精霊体じゃ、庇えねぇじゃねぇか!」

 

レンジは自慢の巨大な手をギリギリと握りしめて悔しがる。

 

「それについては同感だが…我らも受肉してはユラのと一緒のときに人間共を怖がらせてしまう。そうなったらユラ様に近づく人間がいなくなってしまうだろう?仕方のないことだ」

 

「でもよぉ…お嬢に何かあったら、アッシは…」

 

「全く…大丈夫だ。いざという時は議会からお許しが出てその場で受肉できる…はずだ」

 

暗黒界の騎士ズール、暗黒界の番兵レンジ。彼らはユラの護衛役として精霊体のまま同行する。散々グラファ本人が行くと聞かなかったが、暗黒界の統治の問題や、精霊物体化術の魔力リソースの問題や「帰ってきたらおかえりが言えるんですよ!それでユラ様からただいまが聞けるんですよ!」といった説得があって、渋々了承した。

 

「案ずるなレンジ。お前の硬さは私がよく知っている。自信を持て」

 

「くっそぅ…お前そういうときだけそんなこと言うなよぉ…泣けてくるじゃねぇかよぉ…」

 

「ともかく、まずは明日だ。今頃ユラ様はグリン殿から我々の魂…カードを受け取っているはずだ」

 

「おっ、そういえばそうか…そいじゃ、ちょっと行ってくるか」

 

一方ユラはグリンから暗黒界のカード達を受け取っていた。

 

「これが…カード?」

 

ユラの目の前には見知った暗黒界の住民達の絵が描かれたカード達があった。どれも新品で、ユラの為に新調されたものである。

 

「はい。デュエルアカデミアの入学試験にデュエルがございます。そして学校生活中、幾度とお使いになられるであろうカードでございます…ちなみに、こちらはグラファ様が制作に関わっております」

 

「えっと、これを…どうするの?」

 

「まずはデッキ構築…は、今回グラファ様が行ってくださったようですね…ふむ、ちゃんとメタモルポットやサンダーボルト、ハーピーの羽箒も入ってる」

 

「???よく、わかんない…」

 

「ふむ、ではそうですね。ユラ様、このデッキに何のカードが入っているか、しばらく確認して下さい。我々がどのような効果で、どれくらいの強さかがデュエルでは非常に重要です」

 

「分かった」

 

そう言われるとユラは1枚1枚カードの確認を始める。が、正直やったこともないデュエルのカードを見ても、果たしてこれが強いのか弱いのが分からないでいた。

 

「…おっとすみませんユラ様。レイン様に資料を届けて参ります。ではまた…」

 

「あっ、グリン…行っちゃった……うーん、どうしよう…」

 

疑問を問いただせないまま、グリンは行ってしまった。途方に暮れかけていたとき、窓からヒョッコリとレンジが顔をみせる。

 

「よっ、お嬢!来ましたぜ…おぉ!そいつぁカードですかい?」

 

「うん…でもどうしたらいいかわからないの…」

 

「なあんだ、そんなことですかい?それで浮かない顔をしてたんですね?」

 

「レンジ、分かるの?」

 

曇っていたユラの顔が、明るくなる。それを見たレンジは自信満々に自分の胸を叩く。

 

「モチロンですぜ!さっ、ちょいと貸してみて下せぇ」

 

「うん!」

 

「まずは、召喚と特殊召喚ですな…えーっと…」

 

ユラはその日、グラファに「もう寝なさい!それともパパが添い寝をして、子守唄を歌ってあげようか?」と言われるまでレンジからデュエルの基礎を教わったのだった…。ちなみにその後また雷が落ちた。

 

ーーーーー

ーーー

 

翌日。デュエルアカデミア果天野校へ続く結界通路の前に暗黒界の住民が総出でユラの見送りに来ていた。

 

「ユラ様ー!頑張ってくださいー!」

 

「いつでも呼んで下さいね!俺ら、必ずユラ様の為に戦いますから!」

 

「ありがとう!みんな!行ってくるねー!」

 

ぶんぶんと手を振るユラに、暗黒界の住民達もそれを返すように手を振る。中にはバンザイをする者もいた。そんな中でも、グラファはいつも通りであった。

 

「ユラよ、ハンカチは持ったか?ほら、スカートの裾が少し捲れているじゃないか。カバンの中身は大丈夫か?受験票は?デッキは?怖い奴がいたらすぐにパパを呼ぶんだぞ?ソイツ、消すからな。あとパパのカードは持ったか?パパにいってきますは?」

 

「…パパ」

 

「何だ?怪訝な顔をして…もしかしてどこか痛いのか!?おい!誰か治癒魔法を!急がんか!」

 

「パパ、ウザイ」

 

「グボホォッ!!ユ、ユラぁ…」

 

いつも通り地面に崩れるように倒れるグラファを無視し、ユラはズールとレンジの待つ結界通路に歩いていく。だが、結界通路に入る直前に振り返り、

 

「パパ」

 

「ゲフ…カハッ…な、なんだ…ユラ…」

 

「ありがと、いってきます」

 

「!」

 

「あ、やべぇ。みんな耳栓しろよ、デカイの来るぞ」

 

ユラは結界通路へと足を踏み入れる。後ろでは大音量の咆哮が鳴っていたが、結界通路の中に響くことはなかった。

 

「へへっ、いよいよですなお嬢!」

 

「うん!2人とも、よろしくね!」

 

「御意。騎士ズール、レンジ共々、お供させていただきます」

 

3人は結界通路の先、白き光射す方へと歩んでいった…。

 

ーーーーー

ーーー

 

果天野町。人口30万人程で、日本のある県が5年前に大規模な都市計画をもって山を切り開いて作られた町。交通の便や、物流も問題なく流れており、海にこそ面してはいないが、大都市と大都市の間の流通ルートの中継拠点としても機能している。

この日、果天野町に昨年開校したデュエルアカデミア果天野校の入学試験が行われようとしていた。

果天野町のとある民家にて…。

 

「うわあぁぁ!遅刻じゃん!ママ!何で起こしてくれないのよ!」

 

とある金髪の少女が寝癖でボサボサになったままの頭でリビングに駆け降りてくる。

 

「全く、何度も起こしたわよ…その度にアンタが『あと5分〜』なんていうからよ」

 

「あーもう!!今日入学試験だってのにぃ!!ママ、ドライヤー借りるね!」

 

少女はバタバタと洗面台へ駆け込み、頭に寝癖直しのスプレーをかける。が…

 

「もぉぉ!!全ッ然!直んないじゃん!こうなったら!」

 

服を脱ぎ捨て浴室へ飛び込み、シャワーの栓を捻る。

 

「何なのさアタシの髪の毛!どうしてこんなふわふわなワケ!?ストレートが良かったんだけど!」

 

キイィィ!と金切り声を上げながら少女は寝癖のついた髪を濡らしていく。10分もすると寝癖は取れたのだが…

 

「乾かす時間無いじゃん!!」

 

「相変わらずねぇ、甘音(あまね)…ほら、早くご飯食べなさい。食べてる間ママがドライヤーしてあげるから」

 

「ごめんママ!あっ、今日アタシの好きなたまごパンじゃん!いただきます!」

 

この少女は名を新堂甘音(しんどうあまね)という。年齢は15歳。身長は160センチ、髪は金髪で背中の肩甲骨を覆う程の長さである。髪に自然にウェーブがかかるが、寝癖がよく爆発するのが悩み。

3年前に両親の都合でこの街に引っ越して来た彼女もまた、デュエルアカデミア果天野校に入学を志願しているのだ。

 

「うっし!食べ終わった!ママ、あとは走って乾かすから!」

 

「またぁ?アンタね、女の子がそれじゃダメよ?」

 

「だって間に合わないんだもん!」

 

食べ終わった食器をシンクへ入れ、ドタドタと2階の自分の部屋に駆け込み、服を早着替え。カバンを引ったくるように鷲掴みし、玄関までまたドタドタと走る。

 

「いってきます!」

 

幸いなことに甘音の家からアカデミアまで、そう遠くない。

 

「頑張れぇ!アタシの足ぃ!」

 

しかし試験会場では、すでに試験が始まっていた。

 

「ウッソ!間に合わなかったワケ!?」

 

会場では試験官と、受験生がそれぞれデュエルをしており、甘音はそれを受験票を握りしめて見ていた。そんな甘音に、受付担当官が話しかける。

 

「あのぉ、お困りですか?」

 

「あ、すみません…アタシ、寝坊しちゃって…」

 

「あらあら…ちょっと受験票、確認しますね……」

 

受付担当官は手持ちのタブレットと受験票を照らし合わせる。甘音の受験番号は87、試験会場内のDブロックでの受験だ。

 

「んー、どうやら、大丈夫みたいですよ?」

 

「マジ!?やった!」

 

「はい。今ちょうど貴女の前の番号の人がデュエルを開始するみたいですねぇ…まだ間に合いますよ、Dブロックへどうぞ」

 

「ありがとうございます!」

 

甘音はDブロックへ駆けていく、この試験会場では他の受験生がデュエルをしているのを会場にいる全員が会場特設のモニターで見ることができる。試験官が使うデッキは入学試験用のデッキで、内容は決められた中から毎回ランダムではあるが、ランダムということは、同じデッキが使用されるという可能性もあるので、受験生達はモニターに釘付けとなる。

 

「Dブロックのとこ、見といた方がいいよね…」

 

Dブロックでは、今まさにデュエルが始まろうとしており、フィールドには、試験官と黒いドレスの灰色の髪の少女がいた。

 

「では、試験番号86番、黒鉛ユラさん!これより入学試験デュエルを始めます。準備はよろしいですか?」

 

「は、はい!よろしくお願いしまひゅっ!」

 

少女は緊張しているのか、ガチガチであった。

 

「うわ、アタシも緊張しそう…大丈夫かな、この子…なんか見るからにお嬢様っぽい感じだけど…」

 

そんな甘音のような心配は、フィールドでも行われていた。

 

「(お嬢!リラックスリラックス!大丈夫ですぜ!アッシらがついてやすから!)」

 

「(ゆっくりと深呼吸です)」

 

「う、うん…だ、大丈夫!大丈夫…」

 

ユラは学校支給のデュエルディスクにデッキをセットした。その瞬間、カードはディスク内に吸い込まれ、シャッフルされて再びデッキのセット場所へ戻る。

 

「では!入学試験デュエル、開始!」

 

「「デュエルッ!!」」

 

ユラ LP:4000

試験官 LP:4000

 

「先攻は受験者の方からです。どうぞ」

 

「は、はい!いきます!」

 

一方暗黒界。

 

「グラファ様!始まりましたよ!」

 

「分かっておるわ!ええい!お前たち!邪魔だ!見えんではないか!」

 

しっかりと暗黒界に中継されていました。

 

ユラ:手札5枚

 

暗黒界の番兵レンジ

暗黒界の刺客カーキ

トランスデーモン

暗黒界の門

暗黒界の取引

 

「…っ、ええと…」

 

ユラの手が震える。昨日にレンジから大まかなルールの説明や、カードをどう使うかは聞いたが、いざ実践となると…。

 

「わ、私は!暗黒界の取引を発動!お互いのプレイヤーはデッキから1枚ドローして、1枚手札を捨てます!」

 

[暗黒界の取引]

通常魔法

お互いのプレイヤーはデッキから1枚ドローし、

その後手札を1枚選んで捨てる。

 

「分かりました。こちらから発動するものはありません…ではドローします」

 

「(さて、これで相手のデッキテーマが分かるといいが…)」

 

ユラ:ドロー→暗黒界の狩人ブラウ 捨てたカード→ブラウ

 

試験官:ドロー→??? 捨てたカード→ソードハンター

 

「(わっかんねぇなぁ…試験官だからか?アッシの少ない知識で思いつく限りじゃあ…うーむ、まさか無いとは思うが…)」

 

暗黒界の狩人ブラウ

効果モンスター

星3/闇属性/悪魔族/攻1400/守 800

このカードがカードの効果によって手札から墓地へ捨てられた場合、

自分のデッキからカードを1枚ドローする。

相手のカードの効果によって捨てられた場合、

さらにもう1枚ドローする。

 

ソードハンター

効果モンスター

星7/地属性/戦士族/攻2450/守1700

このカードが戦闘によってモンスターを破壊したバトルフェイズ終了時、墓地に存在するそのモンスターを攻撃力200ポイントアップの装備カード扱いとしてこのカードに装備する。

 

 

「暗黒界の狩人ブラウの効果!デッキからドローします!」

 

ユラ:ドロー→暗黒界の軍神シルバ

 

暗黒界。こちらは異様な盛り上がりを見せていた。

 

「よっしゃ!私が来た!」

 

「クッソォ!羨ましいなぁ…シルバ殿…」

 

「ハッハッハ!すまぬなゴルド殿!お先に行かせてもらうぞ!」

 

そんな有頂天なシルバをグラファは親の仇を見るかの様な形相で睨んでいた。

 

「ハッ!?グラファ様!?い、いえその…き、きっとグラファ様も今にユラ様の元に…」

 

「ほーん……で?遺言はそれだけでいいのか?シルバよ」

 

「ヒィッ!?ユラ様ー!早くグラファ様引いてー!」

 

そんな裏方事情は知らないユラは淡々とデュエルを進めていく。

 

「私は!フィールド魔法、暗黒界の門を発動!暗黒界の門の効果で、墓地のブラウをゲームから除外して、手札からシルバを捨てます!その後ドロー!」

 

ユラの後ろに巨大な禍々しい門が現れる。が、ユラはいつもの見慣れた門である故に驚きもしないし、むしろ実家が近い様な気がして少し落ち着く。

 

暗黒界の門

フィールド魔法

フィールド上に表側表示で存在する悪魔族モンスターの攻撃力・守備力は300ポイントアップする。 1ターンに1度、自分の墓地に存在する、悪魔族モンスター1体をゲームから除外する事で、手札から悪魔族モンスター1体を選択して捨てる。 その後、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

ユラ:ドロー→愚かな埋葬

 

「げっ」

 

ユラは露骨に嫌な顔をした。実はこのデッキでの愚かな埋葬の使い方を昨日レンジから聞いていたからだ。

 

愚かな埋葬

通常魔法

デッキからモンスター1体を墓地へ送る。

 

ユラは渋々愚かな埋葬を手札に加えた。

 

「…暗黒界の軍神シルバの効果発動…フィールドに特殊召喚します…」

 

暗黒界の軍神シルバ

効果モンスター

星5/闇属性/悪魔族/攻2300/守1400

このカードがカードの効果によって手札から墓地へ捨てられた場合、

このカードを墓地から特殊召喚する。

相手のカードの効果によって捨てられた場合、

さらに相手は手札を2枚選択して好きな順番でデッキの下に戻す。

 

 

暗黒界。

 

「えっと…すいませんグラファ様…いって、参ります…」

 

「行けば?別に?気にしてないし?お前を焼き殺そうなんて思ってないし?」

 

人間界。

シルバは暗黒界の門から飛び出す様に場に現れた。

 

「ウオォォォッ!!」(すいませんグラファ様ーー!!)

暗黒界の軍神シルバ:攻撃力2300→2600(暗黒界の門)

 

「(おー、シルバの旦那だ…アレ?心なしか顔引き攣ってない?)」

 

「(ふむ、確かに…もしや暗黒界で何かあったのか…?)」

 

そのままユラは嫌な顔をしながら、カードを発動する。

 

「…愚かな埋葬…デッキから、パパ…じゃなくて、暗黒界の龍神グラファを墓地に送ります…」

 

暗黒界。

 

「なんかさ、娘に墓地に送るって言われるのツラいんだが」

 

「その割にめっちゃアップ始めてません?」

 

「え、だって…出るだろ、我」

 

「まあ…そうでしょうね」

 

人間界。

ユラは迷っていた。果たしてこれが正解なのか…他にいい戦い方があるんじゃないのか…ぐるぐると思考が回る。

 

「…?受験番号86番、黒鉛ユラさん?ターンエンドですか?」

 

「あ、いえ…すみません…ちょっとだけ、考え込んじゃって…」

 

「分かりました。ですが過度な長考は減点対象となってしまいます。次から気をつけて下さい」

 

「すみません…!うぅ…こうするしか、ないの…?手札から、暗黒界の刺客カーキを召喚…」

 

ユラは手札から、カーキを召喚した。

 

暗黒界の刺客カーキ

効果モンスター

星2/闇属性/悪魔族/攻 300/守 500

このカードがカードの効果によって手札から墓地へ捨てられた場合、

フィールド上のモンスター1体を選択して破壊する。

 

…ここで1つ余談なのだが、ユラのデッキには、融合、シンクロ、エクシーズ、リンクのカードは一切入っていない。そもそも入っていたとしても、今のユラでは使いこなせるかも怪しい。一度に全ては頭がパンクしてしまうだろうというレイン達の考えがあった。

 

「…私は、墓地から!暗黒界のグラファの効果を発動!カーキを手札に戻して……パパを特殊召喚!!」

 

暗黒界の龍神グラファ

効果モンスター

星8/闇属性/悪魔族/攻2700/守1800

このカードは「暗黒界の龍神 グラファ」以外の自分フィールド上に表側表示で存在する「暗黒界」と名のついたモンスター1体を手札に戻し、墓地から特殊召喚する事ができる。

このカードがカードの効果によって手札から墓地へ捨てられた場合、相手フィールド上に存在するカード1枚を選択して破壊する。相手のカードの効果によって捨てられた場合、さらに相手の手札をランダムに1枚確認する。確認したカードがモンスターだった場合、そのモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。

 

 

暗黒界。

 

「よしッ!!今行くぞ!ユラ!」

 

人間界。

場に現れたカーキが一瞬にして手札に戻ると、ユラのデュエルディスクの墓地から、黒い煙と共に、グラファのカードが現れ、暗黒界の門をこじ開けるように開き、グラファが降臨する。

 

「ゴォオァァァッ!!」(ユラァァァ!パパが来たぞぉぉぉ!)

 

「…パパうるさい」

 

「」シーン

 

暗黒界の龍神グラファ:攻撃力2700→3000(暗黒界の門)

 

会場は騒然とする。この世界ではこういったテーマごとのレベルの高いモンスターや、光モノのレアカードは高値で取引きされている。それに連なって専用の補助カードもある程度の値段はするのだ…例えば先程の「暗黒界の門」。この世界では1枚5000円は下らないだろう。

 

「な、なんだよ…アイツマジもんの金持ちのお嬢様なのかよ…グラファだぜ?俺初めて見たわ…」

 

「…なあ、でも、確かさっきグラファをパパって…言ってなかったか?」

 

「へっ、大方あのグラファ、パパにおねだりして買ってもらったんだろ」

 

ヘラヘラと笑う他の受験生達。すると…

 

「(お前ら、顔覚えたからな?)」

 

「!?お、おい!?今グラファがこっちを指刺さなかったか!?」

 

「き、気のせいだろ!?」

 

グラファに睨みを効かされ、怯える受験生たち。そんな彼らをつゆ知らず、Dブロックではデュエルが進む。

 

「私は、先攻なので…ターンエンドです…」

 

ユラ:手札3枚

暗黒界の番兵レンジ

暗黒界の刺客カーキ

トランスデーモン

 

フィールド

暗黒界の門

暗黒界の軍神シルバ

暗黒界の龍神グラファ

 

「分かりました。では、私のターン。ドロー!」

 

試験官は慣れた手付きで手札を確認し、1枚のカードを放った。

 

「魔法カード、死者蘇生を発動します!」

 

「(何ッ!?)」

 

「(初手からかよ!?)」

 

死者蘇生

通常魔法

自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

「私は、自分の墓地のソードハンターを対象とします。何かありますか?」

 

「あ…いえ、大丈夫、です…」

 

「分かりました。ではソードハンターを特殊召喚!」

 

ソードハンター:攻撃力2450

 

試験官の場に数多の剣を携えた剣士が現れる。攻撃力は暗黒界の門で強化されたシルバには及ばない。が、しかし…

 

「そして、ソードハンターに魔法カード、デーモンの斧を装備。攻撃力を1000ポイント上昇させます」

 

デーモンの斧

装備魔法

①装備モンスターの攻撃力は1000アップする。

②このカードがフィールドから墓地へ送られた時、自分フィールドのモンスター1体をリリースして発動できる。このカードをデッキの一番上に戻す。

 

ソードハンター:攻撃力2450→3450

 

「(まずい!グラファ様の攻撃力を上回った!)」

 

「(し、しかも召喚権がまだ残ったまま!マズイですぜ!お嬢)!」

 

「っ、わ、分かってるよ…でも、今の手札じゃ…」

 

焦るユラとは対照的に、試験官は更に続ける。

 

「次に、通常魔法…二重召喚を発動します」

 

二重召喚

通常魔法

このターン自分は通常召喚を2回まで行う事ができる。

 

「そして処刑人マキュラと、重装武者ーベン・ケイをそれぞれ通常召喚します」

 

処刑人マキュラ

効果モンスター

星4/闇属性/戦士族/攻1600/守1200

このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。

このカードがモンスターゾーンから墓地へ送られた場合に発動できる。

このターンに1度だけ、自分は罠カードを手札から発動できる。

 

重装武者ーベン・ケイ

効果モンスター

星4/闇属性/戦士族/攻 500/守 800

このカードは通常の攻撃に加えて、このカードに装備された装備カードの数だけ、1度のバトルフェイズ中に攻撃する事ができる。

 

試験官の場に、一つ目で両手に大きく鋭い爪を持った悪魔の様な姿のモンスターと、武蔵坊弁慶を思わせる戦士が現れた。この時、レンジは嫌な予感がしていた。

 

「(ま、まさか…ベンケイワンキル…?いや、まっさかそんな…人間の入学試験でこんなの…)」

 

会場のモニターを見ていた甘音もこの事態に気づく。他のブロックと見比べても、余りにレベルが違う。

 

「ハァ!?なんなのさあのデッキ!ちょっ、流石にあの黒鉛ユラって子、可愛そうすぎるでしょ!」

 

ユラにとっての過酷な事態は更に続く。

 

「更にここで、通常魔法…痛み分けを発動。私は処刑人マキュラを墓地へリリース…受験番号86番黒鉛ユラさん、何も発動がなければ貴女のモンスターを1体、墓地へリリースして下さい」

 

痛み分け

通常魔法

自分フィールド上に存在するモンスター1体をリリースして発動する。

相手はモンスター1体をリリースしなければならない。

 

「えっ…そんな…」

 

痛み分け、自身で自身のモンスターを墓地に送る選択をしなければならないカード。先程までブラウなどを手札からカードとして墓地に送っていたが、今回は…フィールドの、ソリッドビジョンとはいえ、いつも見ている彼らの背中が、ユラを苦しませる。

 

「(まずい、お嬢が固まった!)」

 

「(グッ…あの場にいない私が憎い…ユラ様…申し訳ありません…!)」

 

「あ、あ……」

 

ユラの頭の中では、様々な感情がぐちゃぐちゃに絡まり合っていた。困惑、悲しみ、恐怖…そして、焦り。

またも固まるユラに、試験官が声をかけようとした時だった。

 

「(…お嬢……!?シ、シルバの旦那!?)」

 

なんと、敵に向いている筈のシルバが、ユラの方へと振り向き、歩み寄っていた。ユラの目の前まで来ると、シルバは跪いた。

 

「シル…バ…?」

 

「(ユラ様、よくお聞き下さい)」

 

「!?シルバ!?喋れるの!?」

 

「(ハッ、ユラ様に近づけば召喚されているこの状態でもユラ様とだけですが、会話は可能だそうで……ユラ様、私めを、墓地へリリースして下さい)」

 

「で、でも…」

 

「(ユラ様、このままではルールに反して負けてしまいます。ご決断を…私めを残すより、グラファ様を場に温存する方が、ダメージは…ほんの少しですが、多くなります。ですから、ここは私が)」

 

「そんな…そんなことで…」

 

「(…ええ、そんなことで、です。少しでもライフが多い方が逆転の可能性はございます)」

 

跪くシルバを見守っていた試験官だが、後に控える他の受験生たちの時間もある。心を鬼にして、話しかける。

 

「…受験番号86番、黒鉛ユラさん…決まりましたか?」

 

「ッ…わ、私は…」

 

「(…ユラ様!お早く!)」

 

「わた、しは……暗黒界の…!軍神シルバを…送ります!」

 

その瞬間、ユラのフィールドからシルバはどんどん消えていく。

 

「ごめん、シルバ…」

 

「(大丈夫ですよ、ユラ様、ではこれにて!ご武運を!)」

 

そう言い残し、シルバは消えていった。

 

「(…シルバよ、大義であった…さて、問題は我か)」

 

「続けます。処刑人マキュラの効果、このターン私は手札からトラップカードを発動できます…何もなければ、このままバトルフェイズに移行しますが…」

 

「何もありません…」

 

「分かりました。ではバトルフェイズ!」

 

フィールド

ユラ:暗黒界の龍神グラファ

 

試験官:ソードハンター、重装武者ーベン・ケイ

 

「まず、ソードハンターで暗黒界の龍神グラファを攻撃!」

 

「(来るか…ここは、致し方なかろう)」

 

「…っ…」

 

装備されたデーモンの斧を振りかざし、ソードハンターがグラファへと斬りかかる。その直前。

 

「(ユラ、暗黒界の皆を信じなさい。皆はお前を必ず勝利へと導いてくれるはずだ)」

 

「パ、パパッ!」

 

次にユラが目にしたグラファの姿は、真っ二つに斬られ、消えるその様であった。

 

「…………」

 

ユラ:LP4000→3550

 

絶句、さすがにこの光景には言葉は出なかった。ただ呆然と立ち尽くした。が、まだバトルフェイズは終わっていない。

 

「ここで私は処刑人マキュラの効果で、手札からトラップカード、力の集約を発動。ソードハンターに装備しているデーモンの斧を、重装武者ーベン・ケイに装備します」

 

ソードハンター:攻撃力3450→2450

重装武者ーベン・ケイ:攻撃力500→1500

 

「更に重装武者ーベン・ケイは、通常の攻撃に加え、装備カードの数だけ攻撃を行えます。よって現在は2回の攻撃が可能です」

 

「ダ、ダイレクト、アタック…!」

 

「重装武者ーベン・ケイで2回のダイレクトアタック!」

 

ベン・ケイがデーモンの斧で2度ユラを切り裂く。しかし、なんとかユラのライフは残っている。

 

ユラ:LP3550→550

 

そしてまだ、ユラは諦めてはいなかった。グラファの言った『暗黒界』が、まだデッキにいるからだ。

 

「まだ…負けてないっ」

 

「(……お、おいズール!何とかならないのかよ!アッシは見てらんねぇよ!)」

 

「(分かっている!だが…信じろ。まだ手はある!)」

 

「…私はこれでターンエンドです。ターンエンド時、ソードハンターがこのターンに破壊した暗黒界の龍神グラファを攻撃力200アップの装備カードとしてソードハンターに装備します」

 

ソードハンター:攻撃力2450→2650

 

試験官:手札1枚

????

 

フィールド

ソードハンター(装備:暗黒界の龍神グラファ)

重装武者ーベン・ケイ(装備:デーモンの斧)

 

 

ユラは深く深呼吸をし、デッキに指を乗せる。

 

「…私の、ターンッ!!ドロー!!」

 

ユラ:ドロー→闇の誘惑

 

「…えっと効果は…よし、手札から闇の誘惑を発動!2枚ドローッ!」

 

闇の誘惑

通常魔法

自分はデッキから2枚ドローし、その後手札の闇属性モンスター1体を除外する。手札に闇属性モンスターが無い場合、手札を全て墓地へ送る。

 

ユラ:ドロー→手札抹殺、暗黒界の鬼神ケルト

除外カード→トランスデーモン

 

 

「手札からトランスデーモンを除外して、そのまま手札抹殺!お互いに手札を全て捨てて捨てた枚数分…ドローです!」

 

手札抹殺

通常魔法

手札があるプレイヤーは、その手札を全て捨てる。その後、それぞれ自身が捨てた枚数分デッキからドローする。

 

ユラ:手札4枚を墓地へドロー4枚

手札

暗黒界の尖兵ベージ

暗黒界の龍神グラファ

暗黒界の取引

暗黒界の術師スノウ

 

試験官:手札1枚(アームズホール)を墓地へドロー1枚

 

「私は手札から捨てた暗黒界の刺客カーキの効果でソードハンターを破壊し、暗黒界の鬼神ケルトの効果で特殊召喚!」

 

暗黒界の鬼神ケルト

効果モンスター

星6/闇属性/悪魔族/攻2400/守 0

このカードがカードの効果によって手札から墓地へ捨てられた場合、

このカードを墓地から特殊召喚する。

相手のカードの効果によって捨てられた場合、

さらに自分のデッキから悪魔族モンスター1体を自分または相手フィールド上に特殊召喚できる。

 

「グオゥアッ!」(よっしゃ!任せて下さいよユラ様!!)

 

暗黒界の鬼神ケルト:攻撃力2400→2700(暗黒界の門)

 

「さらに、暗黒界の取引!お互いにドローして捨てます!」

 

ユラ:ドロー→暗黒界の尖兵ベージ 捨てたカード→ベージ

 

試験官:ドロー→???? 捨てたカード→不意打ち又佐

 

「そして暗黒界の尖兵ベージを特殊召喚!」

 

暗黒界の尖兵ベージ

効果モンスター

星4/闇属性/悪魔族/攻1600/守1300

このカードがカードの効果によって手札から墓地へ捨てられた場合、

このカードを墓地から特殊召喚する。

 

「グゲアァ!」(ベージ三兄弟が長男!ベジタここに参上!」

 

暗黒界の尖兵ベージ:攻撃力1600→1900

 

「暗黒界の門の効果!シルバを除外して、手札から暗黒界の龍神グラファを捨てて、1枚ドローします!」

 

ユラ:捨てたカード→暗黒界の龍神グラファ ドロー→バトルフェーダー

 

「暗黒界の龍神グラファの効果!フィールド上のカードを…だから、えっと、重装武者ーベン・ケイを破壊!」

 

試験官のフィールドに最後に残ったベン・ケイはグラファの手によって、闇に引き摺り込まれるように消えていく。

 

「…えっと、一応残った召喚権で、もう1体ベージを通常召喚。そのまま2体のベージを手札に戻して、2体のグラファを墓地から特殊召喚します!」

 

「「グルルルル…」」(どうも、再びパパです)

 

暗黒界の龍神グラファ×2:攻撃力2700→3000

 

「これは…打つ手はありませんね…」

 

ユラのフィールドに並んだケルトとグラファ達を見て、試験官が声を漏らす。試験官の最後の手札は「増援」…返すことの出来る手札ではなかった。

 

増援

通常魔法

デッキからレベル4以下の戦士族モンスター1体を手札に加える。

 

「バトルフェイズ!全員で、プレイヤーへダイレクトアタック!」

 

「「((行くぞケルト!ユラの勝利の為に!))」」

 

「(は、はい!…グラファ様、今2人だからめっちゃエコーかかってるみたいな声してる…)」

 

2体のグラファが口から青紫の炎を吐き、ケルトは自慢の拳でなぐりかかる。が、ケルトの拳が届く前に…。

 

試験官:LP4000→0

 

「(え?)」

 

「勝負あり!入学試験デュエル、勝者は受験番号86番、黒鉛ユラ!」

 

ケルトの拳が届く前に、デュエルは決した。

 

「(ええぇぇぇ!?ちょ、え?待っ、あっ!消えかかってる!せっかくユラ様に呼んでもらえたのに!)」

 

「「(すまんなケルト。我だけでよかったわ))」

 

「(グ、グラファ様ァー!)」

 

そういうとケルトは一足先に暗黒界へと消えていった。グラファは消えたのを確認すると、ユラへ近づく…この時にはグラファは元の1体に戻っていた。

 

「(おめでとう、ユラ。今日は帰ったらパーティだな…っと、ユラ?どうしたんだ?)」

 

ユラはグラファに抱きつき、ソードハンターに斬られた場所を撫でていた。

 

「パパ…!ごめんね…痛かった…?」

 

「(なんだ…心配しててくれたのか?大丈夫だよ。パパ達は倒されたら次に呼ばれるまで暗黒界に戻るんだ。本当に傷付いているわけじゃないよ)」

 

「よかった…ずっと、ずっと気になってて…」

 

「(ありがとうユラ…おっと、そろそろパパも先に暗黒界に戻っているよ。さ、試験官の人が待っている)」

 

「ん…わかった…じゃあね、パパ。また後で」

 

「(ああ)」

 

グラファはそっとユラの頭を撫で、消えていった。が、会場は静まりかえっていた。

 

「えっと、ごめんなさい…お待たせ、しました?」

 

「……あ、あぁいえ…し、しかしその、黒鉛さん?貴女、今…」

 

「?あ、えっと…みんな傷付いてないみたいなんで、大丈夫です。試験はこれで終わりですよね?」

 

「へっ!?あ、あ、はい…え、その…」

 

会場にいた全員が、先程のグラファとユラの抱擁を見ていた。全員があのような光景を見たのは初めてで、先程自分が見た事は果たして事実だったのか、頭が混乱する。

 

「試験官さん、ありがとうございました!私初めてのデュエルで…ちょっと怖かったけど、楽しかったです!」

 

そういうと、ユラはレンジとズールの元へ走っていった。その背中を見送る試験官達はまだポカンとしている。

一方で、近くで見ていた甘音はワクワクしていた。

 

「スッッゴイじゃん、あの子…それに、多分とってもカード達のこと大事にしてるんだろうな…」

 

甘音は自分のデッキケースからデッキを取り出しながら立ち上がる。

 

「うっし!次はアタシの番!アタシだって、この子達のこと、大好きなんだから!」

 

そう言いながら、甘音はユラとすれ違いながらDブロックの試合場へ入っていった。

すれ違い様に甘音が見たユラは、まるで誰かと楽しく話しているように見えた。

 

 

第3話 完

 

 

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