霊夢は何かを探しているようです。
夜の黒色のように暗い暗い空間にある端が見えない階段の上空。
俺───黒影クロは博麗霊夢に連れられて、探し物を探す手伝いをしていたのだが……
「ふふ、言っておくが、私は手加減するほど甘くはないぞ。特に橙柄みのことはな!」
なにやら勘違いで戦闘がはじまり、九本の尻尾を揺らしながら八雲藍が迫り来る。
両腕をそれぞれ、袖からだし手に光球を作り出す。それは、どんどん膨張していき、ボクシンググローブのように手を覆った。
なるほど接近戦と言うわけか。弾幕を使わないのは俺の側にいる橙に被害が及ぶと思ったのだろう。
「やってやろうじゃないの!」
俺は霊夢達より前に出て、手を藍の方向へとつきだす。
空も飛べるようになったんだ。きっと【これ】もできるはず!
「くらいやがれぇ!」
俺は体の内から力を練り上げ、腕へと集中させる事を頭でイメージをする。
すると、手の平に黒色の光球が現れた。
「よし、このままぁ!行っけぇええ!!」
それを押し出すようにイメージすると、ボンッ!と黒光球が藍へと飛んで行く。
よし、弾幕を作ることに初めて成功した!さあ、そのまま直げk「ふん!バシッ」……。
藍は俺の放った弾を簡単に弾いた。まあ、そうなるでしょうな。さっきまで浮かれていた自分を殴りたい。
「まったく世話のやける。ほら、後ろに下がってなさい!」
霊夢は向かってくる藍の正面へと飛んで行く。
右手にお払い棒を持ち、左手を懐へと突っ込む。そして、その手を相手に向かって振るう。手に握られていたお札が藍へと飛んで行く。
「こんなものっ!」
この攻撃も藍の前ではダメージへとは繋がらない。しかし、霊夢は攻撃が弾かれた時に一気に距離を詰めた。
「くらえ!」ヒュッン
「くっ!」ガンッ
「やるわね……でも、まだまだ!」
霊夢は自分の攻撃を止められ相手の力量を察したようだ。
攻撃の勢いを緩めず激しく攻める。
お払い棒片手に降り下ろし、凪ぎ払い、的確に相手の意識の薄い部分を攻撃する。
藍はその猛攻により自分から手を出せないでいた。しかし、その顔には焦りの色は無く、冷静に霊夢の攻撃一回一回をいなす。
霊夢が頭目掛けて降り下ろせば、藍は右手で払う様にガードする。その力を利用して体を回し反対側に殴り掛かるが左手で受け止められる。
この様な攻防が続くなか新たな動きが見えた。
「ここか。」
「っ!」
さっきまで防御しかしていなかった藍が霊夢の攻撃をガードしすぐさま攻撃へと転じた。
突然の的確な藍の攻撃に霊夢は虚を突かれたが、藍の拳が当たる前に左手を前に出し受け止めようとする。だが、生身の手で受け止められる攻撃ではないはずだ。
すると、左手の平に光が集まり物体が出現する。陰陽玉だ。
バチィンィィン!!
激しくぶつかり合った拳と陰陽玉は火花を散らし、音を響かせ、戦いのワンシーンを締めくくった。
「なかなかやるな。」
「このくらい当然よ。」
「自信を持つことは良いことだが、行き過ぎると過信となり足元をすくわれるぞ。」
「説教は聞きたくないの。ほら、さっさと掛かってきなさい。」
「・・・なめるなよ。」
二人の闘いが再開された。
今度は互いに接近せず距離をとり、弾幕を作り出し放つ。
弾幕と弾幕が複雑に交差し、その複雑な光の網のなかに二つの人影が駆け巡る。
「・・・」
今の俺には手助けできる力がない。
シロの能力も不調、飛行も弾幕も覚えたての素人だ。
介入したところでただの足手まといになるのが目に見えている。
「クソッ……!」ギュウウウ
気がつけば思いっきり拳を握っていた。
本当に、本当に俺に出来ることは無いのか?考えろ考えるんだ。今の俺が唯一出来ることは考えることだ。勝利へと繋げる何かを思い付けばいいんだ!簡単なことだろ?なんでできないんだよ俺は!!
「クロしゃん!」
「っ!!……ちぇ、橙。」
俺の名を呼んだ女の子は覚悟を決めたような目で俺を見ていた。
「ど、どうしたんだ?」
「クロしゃん、私を人質にしてください!それで藍しゃまを止めましょう!」
「っ!何言ってんだよ!?お前はあいつの仲間だろ?なのに止めてどうする。」
「私は藍しゃまに戦って欲しく無いだけです。藍しゃまは私がいじめられたと思って戦っています。だから私が止めるんです!」
「……言っておくが、もし俺があいつの友人だって理由なら止めとけよ。あれは嘘だ。」
「知ってますよ。だってクロしゃん、どうみても初対面の反応じゃないですか。あれをみれば私でもわかりますよ!」
ニコニコと笑顔で俺にわかっていたと告げる。
「それに私は……クロしゃんの友達ですから。助けても貰ってますしね♪」
「……ありがとう。でいいのかな?」
「どうでしょう?なんでもいいんじゃないんですか?」
「なるほど。じゃあ、やりますか!」
橙のお陰で出来ることが見つかった。
橙を使ってあの戦いを終わらせよう。そうだ、元々戦わなくてもいいんだ。
自分が戦闘能力に目覚めたからそっちばかり気が行っていた。橙と戦った時だってそうじゃないか。こいつとの戦いを避けようとしていたじゃないか。
今更、そんなことに気づかされるなんてな。
「止めるぞ!手遅れになる前に!」
「でも勝負に水を指すのはいかがかしら?」
「っ!」
明らかにここにいた全員の声ではない声が聞こえた。
そう気付いた時にはもう遅く、俺の体は突如、謎の浮遊感に襲われた。
ドンッ「あだっ!」
急にお尻から痛みが……どうやら何処かに飛ばされお尻からダイナミックエントリーしたらしい。
「にゃああああ!」
「え!?っちょちょちょっお!」
上から落ちてきた橙をキャッチする。うわ、やっぱ軽ッ!
「ううん……あ、クロしゃん。ありがとうございます。」
現状を理解した橙が腕の中から離れて一礼する。
「気にすんな。しかし……ここはどこだ?」
「私のプライベート空間よ。」
ああ、そうだ。さっきこの声を聞いた後にこの場所に送られたんだ。
つまり、この声の主が……
「あんたが、俺を連れてきたのかぁああ?」
「どうしたのかしら変な声を出して。久しぶりに出会って舞い上がってるのかしら?」
振り向いた先にいたのは、俺が幻想郷で最初に出会った人物がいた。
濃い紫色の肩の開いた洋服を着こなして、手には一昔前のデザインの傘を持っていた。
全てを見透かしたような妖しい目を俺に向ける。
長い金色の髪は彼女をより高貴でミステリアスな存在へと昇華させる。
そして、その立ち姿は威厳と強さを感じさせ俺との実力の差を思い知らされた。
「あ、紫様!」
「橙、元気かしら?」
「はい!」
「・・・」
今、橙と軽いトーンで話しているのが八雲紫。幻想郷創設に大きく関わった大妖怪。
初めて彼女と会った頃の俺ではわからなかった……幻想郷の空気に慣れた、今の俺ならわかる。彼女の力の強大さが。彼女の気分次第で俺の命は終わる。
今の気持ちを一言で表すなら、【逃げたい】だ。
「さて、お久しぶりね。確か……黒影クロ、だったかしら、」
「これはどうも。八雲紫さんに名前を覚えてもらえて光栄だね。」
「どうかしらここは?とても心地好い世界でしょ?」
「幻想郷のことですか?確かに良い所ですね。」
「自宅も出来て、人間や妖怪の友人も多いようでなによりだわ。」
……なんで知ってんだよこいつは。
「では、本題に入りましょう。貴方の目的は何かしら?」
「霊夢の手伝いだよ。たぶん、あんたを探してるんじゃないか。」
「ええ、そうね。あの子は私に用があるんでしょうね。……でも、私が聞いているのは別のことよ。貴方の本当の目的は何?」
この女、どこまっで知っている。
正直にはなしたほうがいいのか?しかし、なんらかの都合で 邪魔をされても困りもんだ。
さて、なんて答えるか。
「……約束したんだ。助けるって。その約束を果たすのが俺の本来の目的だ。」
「嘘ではないようね。まあ、深くは追求しないであげる。」
「ありがたい。」
紫は何もない場所で腰を下ろした。
すると、あたかも椅子があるかのように座っている。
いったい何がどうなっている!?
よく見ると、彼女のお尻の下に何かがある。何も無かったはずの空中に何かがあってそれに腰を下ろしている。
何にしろ彼女の能力がなせる技ということはわかる。
「突然だけど、貴方にはどうしても許せないことってあるかしら?私はあるわ。この幻想郷が無くなってしまうことよ。」
「……そうか。」
「この世界の存在を脅かすモノなら、例え愛する者でさえ……消すわ。」
紫の眼光が鋭く俺を突き刺す。
人を殺せる目って言うのはこの事を言うんだな。
「……。」ギュゥ
この空気に耐えきれないのか、黙ったままだった橙が俺の服にしがみつく。
右手を橙の頭に乗っける。すると、橙はさらに力を籠めて俺に身を寄せる。
「だからなんなんですか?言いたいことがあるならさっさと言いなよ。」
「あら、辛抱強くないわね。女の話に男は黙って聞くものよ。」
「……」キッ
「そんなに睨まないで。言いたいことね、そうね~……一言で言うなら。」
そこまで言うと紫は立ち上がり、手に持っていた傘を俺に突き付けて言いは放った。
「貴方がその、存在を脅かす者なの。」
「は?何をいっているんだ?」
俺が世界の存在を脅かす?
さっきまで自分の無力さを呪ってたぞ。
「だから~、貴方には強大な力を秘めていて、その力が幻想郷を滅ぼしてもおかしくないって言ってるの。」
「そんなわけないだろ!なんで一般ピーポーだった俺が世界を……。」
「あらどうしたの?何か心当たりでも?」
心当たりがあった。
【シロ】。あいつ柄みのことか?ならあいつが封印されている理由って……。
いや、どちらにしろ、俺はあいつと約束したからな。今更、その決意に嘘はねぇ。
「幻想郷が滅んでも?」
「!!」
「どうしたのかしら?そんな驚いた顔をして。くふふ♪」
「お前……もしかして……」
「心が読めるかって?」
「読めるのか?」
「残念だけど私は覚妖怪じゃないの。」
読めないってことか。
「でも、そう言うことを聞くってことは何か思い当たることがあるってことかしら?」
ッ!しまった!
こいつにシロの存在を知られたら何されるかわかったもんじゃない!
「……で、さっきの続きなのだけど。貴方の力の全貌がまだわからないのよ。今回集めたデータじゃ情報不足でねぇ。直接会った方が手っ取り早いと思っていたら、貴方から来てくれて良かったわ。」
「つまり、俺の力を調べていたと?」
「そうなるわね。」
「さっき、今回集めたデータって言ったよな。もしかしてお前……」
「もしかしてなぁに?」
これは俺の予想だ、確実ではない。しかし、もしこの考えが正解なら……そう思わせぶる物言いをするあいつの考えが読めない。
「もしかしてお前が……今回の異変の……。幽々子を唆したのか!!」
「唆したなんて人聞きの悪い。私はただ、世間話の一環として【西行妖】のことを教えてあげただけよ。生前のこと、気にならない?ってね。」
「それを唆したって言うんだろぉがぁ!!」
俺の中の何かが切れた。
命の危機に晒されようが関係ない。こいつのせいで幽々子が辛い目に遭ったんだ。
一発殴らねぇと気がすまねぇ!
「歯ぁ食い縛れやぁ!!」
俺は無謀にも幻想郷の大妖怪にケンカを売ってしまったのだ。
やってしまったモノは仕方がない。……仕方ない。
「やっぱり、直接感じた方が手っ取り早いわね。」
紫がそう呟くとの足の近くに穴が開き、そこに傘を放り投げた。
「さあ、始めましょうか。」
どうもDAMUDOでーす。
妖々夢を書ききったら今までのやつ修正巡りしようかな。