あたり一面黒一色に細かな白い光の点が散りばめられた、まるで夜空の中のような空間。
暗いが明るさのあるその場所では二つの影が飛び回り激しく輝く光を生み出していた。
「さあさあ、どんどん避けなさい!貴方の命が尽きるまで!」
影の主の一人、八雲紫は歓喜の声をあげる。
「ぬかせ!負けんのは……テメーだあああ!」
もう一つの影の主である俺は声を張り上げる。
手に力を集中して、黒光球の弾幕を紫に放つ。
「ふっ、無駄よ。」
紫は右手を突きだす。すると、紫を守るように結界がはられた。
紫へ放たれた弾幕は結界に阻まれ届くことはなかった。
「クソッ!」
「毒づいてる場合じゃないわよ。必死で踊りなさい、でないと足、救われるわよ?」
俺のとは比べ物にならない位の弾幕が放たれた。
目を見開き少しでも視野を広げる。
無駄な動きは最小限に抑えて動く。
僅かなスキマを縫うように上下左右前後に、場合によっては体の向きを変え逆さまになったりする。
余裕がある時は苦し紛れに弾を一発放つが、まったく当たる気配がしない。
いったいどうしろってんだ!?
ガッ!
「!!」
避けようと動こうとすると、石に躓いたようにバランスを崩す。
躓いたのではない、足が動かないんだ。いったいなぜ?
俺は倒れながらも足元を見る。
これか!
ズズズズズ
異様な雰囲気を醸し出すモノ。
八雲紫の能力である【スキマ】が俺の足を深々と呑み込んでいた。
足が掬われる(物理)かよ!
「うがっ!」ドンッ
「だから言ったでしょ?足、掬われるって。」
前に倒れこんだ俺が見上げた光景は、視界のほとんどを覆い尽くす弾幕と、そのスキマから見える紫の冷たい微笑だった。
ズドドドドドドドドドドン!
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弾幕がクロを呑み込むと辺りに煙があがる。
私───紫はこの戦いを見ていた橙の近くへと降り立った。
橙は私には目もくれず、ただ一点、クロがいた場所を見つめている。
私も同じ場所へと目をやる。
「・・・人間なんてこんなもんよね。貴方ならって期待したけど。」
「紫様は何でこんなことしたんですか?」
橙が私に疑問を投げ掛ける。
橙はクロのことを気に入っている様だったし、無理もない。
「この戦いは必要なことだったのよ。彼がどんな存在なのか認識するためのね。……私はそうだと思っていた。いつの間にかむきなっちゃって……ご覧の通りよ。」
「・・・」
橙は何も喋らない。
「安心しなさい、殺してはいないわ。一応、私のお気に入りだからねぇ。今回で彼に危険な力はないってわかったし。……あったとしても、彼が幻想郷を脅かすような事はしないと思ったわ。これからは、私が彼を育てるつもりよ。期待は薄いけど。だから・・・、橙?」
何かがおかしい。あの橙が大切な人が目の前であんなことになっているのになぜ平気で居られるの?
「紫様、油断しない方が良いですよ。クロしゃんって他人の為になると、とんでもないことやっちゃいますから。」
・・・この子は何を言っているの?
「あ!来ました!では、私は離れますね。戦いに巻き込まれたら嫌ですから。それでは紫様、頑張ってください!」
そう言うと橙はタタタッと走っていってしまった。
「いったい、何なのよ……?」
多少納得が出来ないが、橙の言ったことが気にならないと言うと嘘になる。
私はクロへと視線を向ける。
煙が大分収まり、クロが姿を現す。
「……ん?」
そこにあったのは、人の形ではなく、黒い半球物の姿があった。
「何なのよ……これ。」
初めて見る半球物に私は驚きと好奇心の色を隠せないでいた。
いったいこれは何なのか。知りたくて知りたくて堪らないッ!!
「橙が言ってたことがわかったわ。クロ、貴方は他の人間とは違う。今まではどうだったか知らないけど、これからはこちら側に居るべき人間よ。」
私はその物体から少し離れた場所に腰を下ろし、運命の一瞬を待ち焦がれるわ。
まるで、遠足前夜の少女の気分ね。
─────────────────
【???】
クロ、君は初めましてだね。
・・・あんた、誰だ?いや、誰だってのは違うな……まあ、いいか。俺に用か?
シロの力を受け取れないレベルにまで育ってるね。まあ、あの子自体は強くないし、封印されてから永遠に近い時間を過ごしているから、仕方ないか。
シロ……の中にいる奴か。てか、質問をスルーするな!
おや?気付いたのか、我の存在に。凄いな君は。……それで、用と言うのはだな、クロ。シロの力が受け取れない今、我の力を貸そうと思ってな。
ああ、そう言うことか。
不満かい?
別に……強くなれるなら何でもいい。
本音は?
自分自身の能力覚醒したらなーーー!!
かなり切実だな、主は。……では、さっさと始めようか。手を出してくれ。
こうか?
ああ、それでいい。
ギユッ
手を握り会う。
……なあ、一ついいか?
なんだい?
シロが封印されてる理由って……。
お察しの通りだよ。我が原因だ。使い方一つで簡単に神を殺せる力。今、君に渡した能力こそがそれだ。だから頼む、正しく使ってくれ。
……あんた、悪い奴じゃないな。ご期待に沿えるかわからんが、努力しよう。
ありがとう。早速使い方を頭に叩き込む。
…………よし、行ってくるわ。これが終わったら、また会おう。
ふふ、待っていよう。初めて三人で話し合えるから楽しみだ。
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どれくらい待ったのだろう。その時が訪れた。
目の前の黒い物体にヒビが入り、中から力を形にした光が漏れる。
その瞬間、さっきまで感じられなかった力を感じた。
「この感じ……凄まじい重圧ね。」
次の瞬間、パンドラの卵は砕けちった。
─────────────────
「・・・」
「気分はどうかしら?」
最初に目に入ったのは最後に見た顔だった。
「戦闘中にパワーアップなんてカッコイイことするわね。」
「紫、今度は負けねーぞ。」
「ふふ、自信満々ね。いいわ、見せて頂戴。……貴方のその力!」
紫は手のひらに一枚のカードを召喚し握り潰す。
──結界「光と闇の網目」──
白い結界が無数に現れ俺の周りを囲うように移動する。
そうして出来た、光の円柱の中に閉じ込められた。
結界は横一列ずつ回転し始める。
同時に結界の角から青と赤の弾、真ん中からレーザーが俺に向かって放たれた。
「スペカか、こんな感じでいいのか、な!」
俺は目の前にカードを召喚し手の甲で割った。
──九苦「隠壱ヶ射千」──
俺の周りに黒い球体が現れ、そこから槍の様な弾幕が放たれた。
黒槍は四方に飛び出し、向かい来る全ての弾をかきけした。
そして、白き結界へと当たる。
バリイィィイイン
白き結界と黒き槍は互いに消滅した。
白と黒の破片が降り散る中、俺は紫へと視線を向ける。
「本当に不思議ね。何が貴方をここまで強くさせるのかしら?」
「約束だよ。」
「そう。」
少しの会話の後、互いに一枚のカードを召喚する。
きっとこれで、ラストだ。
紫も何となく感じ取ってはいるだろう。
俺と紫は同時に動いた。
── 魍魎「二重黒死蝶」──
──九苦「杭千ヶ苦」──
最後には、黒色が形を作ったモノ同士がぶつかり合った。
そこには黒しかなかったが、幾千もの色彩を見ることが出来た。
それは【黒】と一括りでは表せないモノだった。
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「はぁはぁ……はぁはぁ。」
「ゼェハァゼェハァ。」
博麗霊夢と八雲藍の戦いは続いていた。
互いに肩で息をするほど疲労している。
しかし、彼女らはこれしきのことで休んではいられないのだ。
ボロボロになった体に鞭をうち立ち上がる。
「夢想封印!!」
「ユーニラタルコンタクト!!」
両者、力を振り絞り最後の技を繰り出す。
二つの技はぶつかり合い爆発する。
「ぐっ……!」「うっ……!」
爆風は収まる。
彼女達は今一度立ち上がろうとする、歯をくいしばり膝を震わせながらも両足で地面を踏む。
「ま、負けられない!橙の為にも負けられない!」
「クロを返してもらうまで絶対に倒れるもんですか!」
「藍、橙の為はいいけど、今はクロの背中で寝てるわよ?」
「霊夢、嬉しいこと言ってくれるじゃないか!」
「「・・・え?」」
霊夢と藍は声のする方に顔を向けると、自分達が求めていたモノが見つかった。
安堵するが、すぐに表情は怒りの色へと変わった。
「クロ!あんた何処に行ってたのよ!心配したんだからね!!」
「紫様!今まで何をなさっていたんですか!橙が大変だったんですよ!」
二人の気迫にクロと紫は少し戸惑う。
「取り合えず落ち着け。橙が起きちゃうだろ。」
「「あ・・・」」
「ようやくね。……さっさと本題に行くわよ。」
そう言うと紫は藍の方を向く。
「藍、私は白玉楼へ向かうわ。貴女はこの巫女の用件を聞いといて。私に用があるみたいだから。じゃ、そういうことで。」
紫はスキマを開き、その中へと入っていった。
「これで良し、かな。……はい藍さん。橙をよろしく。」
「え、あ、ああ。」
「よし、そんじゃ霊夢、また後で。」
そう言い残すとクロもスキマの中に消えていった。
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「これで満足?」
「ああ、ありがとう。」
「仕方ないわよ。私、負けちゃったんだから。」
「いや~、スミマセンね♪」
「うわっ、ウザッ!」
「どうもっす。」
「褒めてないわよ。」
「もうすぐ着くぞ。準備は?」
「万端よ。」
「よし、行くか!」
俺は紫の肩を押し、白玉楼の門を潜った。
見届けよう、何にも変えられない友人の大切さを知った少女の姿を。
どうもDAMUDOで~す。
眠いです。
観覧ありがとうございました。それではまた!
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