満ちない満月
とある森の中の屋敷。この屋敷の主人の名を黒影クロと言う。
彼はとある妖怪三人組からこの屋敷を譲り受けた。
「おいっしょと」
俺は自宅の縁側の近くに机を運ぶ。
時刻は夕方。もうすぐ夜になる。
夜になる前には準備を終わらそう。
「あとは、酒とつまみか」
台所から作っておいた煮物とスルメ。そして、
「おお、これこれ」
思わず笑みが浮かぶ。
高級酒【満月】。
里にある酒屋のおっちゃんが、何でも屋の仕事の報酬としてくれた試作品だ。
「ああ、どんな味なんだろう。楽しみだなチクショウ♪」
今日は満月。
最近、知り合った萃香と話をしているときに月見酒の良さを散々語られ試したくなったため、こうスタンバっているわけだ。
「よし!準備は万端!さて、夜までひとっ風呂と洒落こみますか!」
こうして、夜まで時間を潰す俺であった。
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日が完全に落ち、夜も更け、夜空には美しく輝く月があった。
これで月見酒ができる。と思った矢先ある事態に気付く。
「どういう……ことだ……!?」
月は完全な満月となっておらず、一部が欠けていた。
つまり、これは満月であって満月にあらず!出来損ないの三日月だ!
「あ、きっと何かが月の前にあって影になってるんだろ、うん。きっと時間が経てばちゃんとした満月に。……待ってみよう」
それから暫く経ち。
「まるで意味がわからんぞ!!」
どれだけ時間が過ぎようが月が満ちる気配を見せない。
いや、それ以上に不可解なことがある。
「なんで月や星の位置が変わらない。夜が明けないのか?」
まるで時間が止まったかのように夜が明けないのだ。
一体誰がこんなことをする?
「そういや、紫に稽古つけてもらった時に話してたな。満月ってのは妖怪にとって大切ななもの何だっけか?」
となると、誰かが満月を満ちない様にして、紫が夜が明けない様にしてるのか?
紫が動いているんだとしたらこれは……
「異変、ですか。よし、やるか。このままじゃ月見酒が出来ないしな」
無論、シロや禍津のためでもあるぞ。
俺は部屋を片付け、出掛ける準備をする。
「お~い、クロ~、いるか~」
この声は……
台所から縁側に向かうと、もう顔見知りになった友人の鬼がいた。
「萃香、悪いが飲み会ならやらんぞ。今から出掛けるんでな」
「今回は飲み会のお誘いじゃないよ。あんたの用事ってあれだろ?」
そう言って、萃香は指を天に指す。
その指先が示すものは月だ。
「なんなら私も連れてってよ。月見酒しようにも満月じゃなきゃ意味がないんでね」
「動機が一緒なのに運命を感じるよ……うんじゃ、一緒に行きますか」
「いいね~、そうこなくっちゃ♪」
「でもどうやって犯人見つける?」
「ん?しらみ潰しに探す」
「やっぱそれか」
「いいじゃんいいじゃん、夜は長いんだしさ♪」
こうして、俺と萃香の異変解決の旅が始まった。
DAMUDOです。
さあ、永夜抄の始まりです。こうご期待!