主人公の闇堕ちってやつですか?
迷いの竹林にある永遠亭の前に、今災禍の魔物が誕生した。
頭、背中、胴、腕、腰、足、身体の天辺から底辺まで綺麗に纏わりつき、装着されている漆黒の骨。その黒骨を纏っているのは、左右非対称の体を持つ二足歩行の魔物。
右側の肩から手にかけて筋肉が剥き出しになっているような、"異形の腕"をしている。それ以外の部分は紙に染み込んだ絵具のように身体の半分を浸食しており、身体の左側も呑み込みそうだ。既に、左の脚は黒く塗り潰されたように染まっており、獣のような形の下半身をしていた。顔には骨と繋がっている鬼の様な怪物を象った仮面を着けている。仮面は欠けていたり、ヒビが入っており、欠けている部分から覗く仮面の下は、深い闇が広がっており、そこには鈍く光る紅い眼光が永琳を捉える。
「本当にあの子なの?」
永琳は目の前で起きた光景に呆気を取られるばかりだった。
目の前の魔物はそんな永琳を獲物と決め、体を屈めて一気に突撃してきた。
「ッ!?あまり考えてる時間もないのね!」
永琳は光弾を放ちで網目状の弾幕を作り、牽制する。
魔物はそれに目を止めると、異形の右手を横凪ぎに振るった。すると、風の刃が幾つも生まれ、弾幕に放たれていった。風の刃は魔物の進路にある弾幕だけを的確に消してしまった。
「そ、そんな!?」
その滑らかな一連の動作に永琳は驚愕の声を漏らす。
魔物は開いた道を迷うことなく進み、異形の右手を永琳目掛けて突き出す。
永琳はそれを寸前で屈むように避け、体を起こす力を加えて魔物の胸部に鋭い突きのカウンターを繰り出す。しかし、胴に装着されていた黒骨のあばら骨部分が突然剥がれ、鋭く尖った先端が永琳目掛けて飛び出した。
「ッ!?」
予期せぬ反撃に永琳の反応が少し遅れる。なんとか避けようと、攻撃を中止し、無理矢理体を捻り横に飛び退く。
魔物は勢いを失うことなくそのまま後ろの竹の中に突っ込んでいき、次々と竹を薙ぎ倒していき、姿を消した。
永琳は膝を着きながら後ろを向いて、魔物が消えていった竹の残害を見詰めていた。
「はぁ……はぁ……くッ!」
肩に痛みが走り、苦悶の表情を浮かべる。
どうやら、完全に避けきれず肩に攻撃を受けてしまったようだ。
傷はそこまで深くないものの、痛みが酷い。戦いを長引かせればするほど、此方が不利になる。
そう考えに至った永琳は立ち上がり、一枚のカードを手に出現させた。それと、同時に……
「グォオオオオオオオオオオオ!!」
残害を吹き飛ばしながら、魔物が再び此方に突撃を仕掛ける。
魔物姿を確認すると、永琳は静かにカードを握り潰した。
──秘術「天文密葬法」──
カードは光の塵となりて天に集まり、別界の星空を創らん。
空に集まった光の輝きに、魔物は脚を止めた。興味深そうに見詰めている星空の小さな光の星々は互いに引き寄せあい、巨大な光の星々へと姿を変えた。
「くらいなさい!」
永淋は空を見上げて、脚を止めている魔物に狙いを定め、腕を振るう。
すると、空に輝いていた星々は魔物目掛けて墜ちていく。
自分に向かって来ていると理解した魔物は、その場から跳び後退した。
そして、十分な距離で右手を振るい、風の刃を放つ。
風の刃は星々に目掛けて飛んでいくが、星に当たった瞬間に霧散してしまい消滅した。
*ズガガガァーンッ!*
星々は勢いそのままに魔物がいる地点周辺に降り注ぎ大地を燃やす。
一帯に煙が上がり、魔物の状況を永琳は確認できずにいた。
「はぁ……はぁ、どうなの……やったの?」
息を切らしながら呟いた。
静寂、故に倒したのかと思いたくなる。
しかし、油断はできない。永琳の視界にあるのは、魔物の死骸ではなく、魔物の姿を隠している煙だけなのだから。
モクモクと巻き上がる煙を見詰めている。すると、ユラユラと煙の中で何かが動いた気配がした。
「ッ!!しぶとい!!」
魔物は生きていると察した永琳は、新しくスペルカードを取り出す。
すると突然、地面から何かが飛び出し、素早い動きで永琳のスペルカードを叩き落とした。
「ッな!?」
地面から飛び出した物の姿を見て永琳は絶句する。それは、あの魔物に纏わり付いていた、【漆黒の骸骨】だったのだから。
漆黒の骨は一瞬、永琳を一瞥すると、すぐさま落ちたスペルカードを回収し、引き裂いた。
「ど、どういう……ことなの……?」
訳がわからない、と言った風に驚きを隠せない永琳。
今目の前で動いているのは、あの魔物の能力を上げるための装飾の様なもの。それが、自律可動し、私の不意を突きスペルカードを封じた。一体……ッ!?
黒骨の分析をしている永琳の視界にあった、土煙がおさまっていく。
その中にある魔物の体がバラバラになっていた。が、バラバラになっている肉塊は近くにある肉塊とくっつき始めた。
まるで磁石の様に次々と肉塊くっついていき、大きな塊となっていき、最終的には……
「シャアアアアアアアアアアァ!!」
煙の中へと消えていく前の姿へ、戻っていた。正確には、骨の装飾は近くに立っているので、少し見た目が変わっている。
鬼の仮面に隠されていた顔は、影の様に底が見えない色をしており、二つの紅く光る眼光が此方を見詰めていた。
そんな相手の特徴を分析し、考える。
どんな未知な生物だろうと、全てを消せば死ぬことは通り。
しかし、この生物は死なない。私達の様に生物の枠を外れた存在。同じ死の概念が無い、不死。
そして、私達の様な不死をも殺す能力。先程から、肩にある傷口から流れる血が一向に止まる気配を見せなかった。
『私は、こいつらに勝つことができるのか?』
最終的には、そんなことを考えてしまう。
「は……はは、ハハハハハッ!」
半ば、心を諦めが侵食していき、永琳は枯れた無気力な声で笑う。
「グゥルルル」
「・・・」
魔物と黒骨は、動く気配の無い獲物へ狙いを定めた。
魔物は右手を突きだし、手のひらにエネルギーを溜める。黒骨は指先の骨を形状を変形刺せる。鋭く尖らせ、螺旋状に捻る。
そして、二匹の攻撃は放たれた。
黒骨の骨弾は回転しながら、永琳の体の所々を撃ち抜く。撃ち抜かれて作られた穴には黒い膜が張られ、傷口が治癒できない状態となり、血が流れ出す。
そして、永琳の目の前から黒いエネルギー砲がレーザーの如く、周りを焼き払いながら此方に向かってくる。そして……
呑み込まれた。
暫く、魔物の腕から放たれたレーザーは、その直線上にある物を焼き払った。
攻撃は次第に収まり、レーザーの通り道には抉れた大地が残るのみだった。
魔物は先程までいた、永琳の人影が無いことを確認すると黒骨と合体し、本来の姿に戻った。
「グゥオオオオオオオオオォォン!!」
自身の勝利を宣言するかの様な咆哮が暗い空に響き渡った。
「ッ!!?」
突然、魔物の目の前に、空中で此方に狙いを定めるように指を構えている人影が何体も現れ、驚愕する。
更に驚くことに、人影の姿は紫のロングにウサ耳。ブレザーにスカートと言う格好で、全ての人影の同じ格好をしているのだ。
「くらえぇぇ!!」
目の前に突然、同じ姿形の者が多数現れたことに混乱している魔物は彼女──鈴仙の攻撃に反応できなかった。
何人もいる鈴仙の指から光が一斉に放たれ、魔物を呑み込んだ。
何だか凄いスペックなってしまったな~、と見直しているDAMUDOです。
さてと、どうやって倒そうか?