そんな中、無数の人影が!
以上、あらすじ
黒い世界。
ここが何処かだなんて言い切ることのできない【不安定な場所】。
それでも分かりやく言うなら、八雲紫が使っているスキマの中の世界に似た場所であると言うこと。
そこに一つの人影があった。
『あ~あ、だから呑まれるなって言ったのによぉ~。クロの奴、ちゃんとしてくれよ』
こいつに名前はない。穢れの象徴から生まれた穢れの塊である。
子どもか大人か、男か女か、生物かどうかも怪しい。しかし、こいつは今、クロの近くて遠い場所にいる。
クロが魔物となり暴れているのは、こいつがクロに力を貸したからだ。本人はこうなるとは思っていなかったようだが。
『どうしよっかな~。クロがこっちに来ねーと、俺様は何もできないしな』
口では毒づきながらも、顔はニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべている。どうやら、こいつはこの状況を楽しんでいるようだ。
楽しみ半分焦り半分と言った処だろう。
『やはり貴様の仕業かぁ!!』
突然声が響いたと思ったら、なにも無かった場所から光が差し込むようにヒビが入り、そこから何者かが、この黒い世界に侵入してきた。
『・・・おや、珍しい客がくるもんだ。どうしたんだい、宿主様よぉ?』
『しらばっくれるな!』
ヤツの対応に激怒しているのは、ヤツと姿形が同一の人物、草薙禍津だった。唯一違う処は、本人の方が優しい顔立ちをしており、ヤツの方が全体に黒色が掛かっている。
『しらばっくれるな!って何をさ?』
『貴様がクロに近付いたせいで、クロが不安定になってしまった!あれはもう、クロであってクロではない、生物の枠を外れた化け物だ!』
『いやいや、俺様も力を貸してやっただけでこんなんになるなんて思っても無かったんだよ。そこはわかってくれって』
『ッ……クッ!』
禍津はヤツの言っていることが本当だと感じとると溢れだしそうな気持ちを抑えて黙り混む。
『まあまあ、宿主様よぁ。体の全部が呑み込まれた様じゃないみたいだから何とかなるって』
『・・・』
『それに、シロっちのお気に入りなんだろ?シロっちのお気に入りは皆強かったから、きっとアイツもかなり強いって♪』
『ふんっ……!』
ヤツの言葉に禍津は鼻を鳴らして目を閉じる。それを横で確認するとヤツも目を閉じる。
『さてさて、どうなることやら……♪』
そして、一言呟いた。
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永遠亭前の激戦地。
元はクロだった魔物が暴れており、近くで鈴仙が遠距離攻撃して注意をそらす。
「一体、私は、どうして?」
それを遠くから眺めている人物、永琳が死ぬ寸前だったかの様な若干、放心状態の顔をしていた。
永琳は先程、あの魔物の攻撃で無に還る筈だった。
しかし、気が付けば自分は生きており、親愛なる弟子の鈴仙が代わりに魔物と戦っていた。そして、
「永琳、情けない顔してるわよ?よっぽど大変だったのね。まあ、あれは厄介所の騒ぎじゃないわよね」
隣に立って話し掛けてくるのは、自分が仕えている姫。
「気持ちよく寝てたのに起きちゃったじゃないの、ねぇ?」
蓬莱山輝夜、その人だった。
どうやら、自分は姫様の力に助けられた様だ。
「取り合えず、暫く休みなさい。後から手伝ってくれれば良いわ。その間は私と鈴仙だけで……どうやら、だけって訳でも無いようね♪」
「え?」
輝夜の言葉に永琳はどういうことか尋ねようとすると、
「フジヤマヴォルケイノ!!」
突如響いた声と共に、魔物がいる場所に火柱が上がった。
「ッ!!?」
魔物は、突然現れた火柱に驚き、一瞬怯んでしまう。その間も火柱は増えていき、魔物を包み込むように炎が呑み込んだ。魔物の影が火柱の中でもがく姿見える。火柱はその後も火力を上げ、太さを増していき、魔物の影が見えなくなる頃には、炎塔と呼べる代物になっていた。
「おーーーい、輝夜あああ!」
先程の声の主が大声で叫びながら、輝夜の前に降り立った。
その主こそ白く長い髪、赤いもんぺが目立つ少女、藤原妹紅その人だった。
「あら妹紅、久しぶりじゃない?元気してた?」
「お前に心配されるような体してないんでね。輝夜こそ元気してたか?」
「私も元気よ。今すぐ、貴女を殺してしまいたい程ね。でも今は……」
「わかってる。あっちだろ?」
そう言って妹紅は後ろを注意を促すように振り向いた。
彼女が見つめる先には、彼女が作り出した炎塔が空に昇っているだけだった。
しかし、感じる。あの中に穢れの塊が蠢いていることをしっかりと。
「ッ!」
炎の中から、ヤツの右手が現れた。
相も変わらず、鮮血の様な赤に夜の様な黒の2色で彩ってある、この世の物とは思えない異形の右手。それに沿うように装着されている漆黒の黒骨。その黒骨は星光を浴びて、鉱物の様な光沢を放つ。
「ちょっと見ただけだったけど、気持ちの悪い見た目してるよなぁ、あれ」
「そうね。確かに見るも耐えない醜い姿してるわ」
「二人とも、あれの元の姿は私達と同じ人型よ。そんなこと言わないであげて」
「あら永琳。貴女随分あれの肩を持つわね?気になるの?」
「ええ。ああなる前に私に一撃当てていきましたから。悪い子でも無いようですし」
「ふうん、なるほどね。わかったわ、彼は私達に任せて貴女は休みなさい」
「そう言って貰えると助かります」
そう言って、永琳は後ろに歩き始める。途中、何かに気が付いた様に輝夜達の方を向いた。
「一つ言い忘れてました。あれ、殺せませんし、殺されますよ」
「へぇ~、面白いじゃないか」
「なるほど。だから貴女、傷口塞いでないのね」
「お気を付け」
それだけ言い残すと満足したように、また歩き始めた。
輝夜はそれを見送り、前に向き直る。
「さて、殺りましょう妹紅」
「ヘッ、互いを殺し合うのならたくさんやったが、協力して戦うのは初めてだな」
「足引っ張らないでよね」
「それはこっちの台詞だ!」
そんな、闘志を高め合う二人の肩を叩く者が。
「あの~」
「「ん?」」
二人は振り向き、その人物を確認する。
「ああ、鈴仙か」
「あら鈴仙、奇抜な髪型ね。イメチェン?」
「髪は妹紅さんのせいです」
鈴仙の髪はさっきの炎でギャグ漫画よろしくのチリチリボンバーヘアーとなっていた。申し訳程度に顔を出しているウサ耳が、じわじわとツボを刺激する。
「「・・・プッ」」
「あーー!今、二人とも笑いましたね!」
「いや、悪い、ちょっと、プッッ、~~~ッ!」
「ちょっと、そんなに…「ガルゥアアアアアアアアアアア!!」ギャアアアア!」
他愛ない会話はそのまま続くこともなく、一つの咆哮によって中断された。
咆哮の主は、既に上半身を炎塔から出しており、此方をギロリと睨んでいた。
「おお、あれから力業で脱け出すかぁ、スゴいな」
「いやいや!感心してる場合じゃないですよ!?」
「それもそうだな。なら、まず私が、ん?」
魔物の元へ向かおうとしていた妹紅は突如、足を止めた。
「ど、どうしたんですか?な、なにかマズイことでも?」
「いや、マズイことはない。むしろ、最高だ」
「あら、それはどういう、……あれは何かしら?」
輝夜がなにかに気付き呟くと、鈴仙もその方向へと目を向ける。
そこには白い輝きを放つ何かが此方に向かってくる光景だった。
「な、なんですか!?」
「安心しろ、援軍だ」
妹紅の呟きが二人の耳に聞こえたのと同時に、白い輝きは魔物がいる部分を炎ごと呑み込んだ。そして、その光は大地を焦がし、辺り一帯を消し飛ばす。
「ギャアアアアアアア!!」
「鈴仙、お黙り」
本日、何度目かもわからない鈴仙の絶叫を輝夜は一言たしなめる。
「あいつらも着いたか」
「その通りだぜ!」
その言葉が発せられた方から、箒に乗った二人の人物が現れた。
一人は、先程喋った金髪に大きな黒い帽子が特徴の女の子、霧雨魔理沙。もう一人は、ロングヘアーと青い服が特徴的な女性、上白沢慧音だ。
二人は妹紅達の前に降り立ち、声を掛けた。
「なあ妹紅、あの変なのに攻撃しちゃったけど、良かったか?」
魔理沙は魔物がいた攻撃地点を指差し、妹紅に聞いてきた。
「特に問題ない。しかしお前のその技、相変わらずの威力だなぁ」
「おう!私の戦闘スタイルは【パワー重視】だぜ!」
「その割りには足も速かったよな」
「「ちょっといいか(しら)妹紅」」
魔理沙と話している妹紅に、慧音と輝夜が話し掛ける。
「ん?なんだよ」
「「あれ」」
二人は、ほぼ同じ動作で指差す。そこに、妹紅も視線を動かすと。
「もう立ち上がるか」
妹紅は一言呟いた。
魔理沙のマスタースパークにより作られた窪みの中心が盛り上がっていき、そこから魔物の首が姿を現した。
「ガルゥアアアアアアアアアアア!!」
咆哮。
怒りの色が強いその咆哮にその場の何人かの背筋に悪寒を走らせる。
「あ、あれ?私、なんかやっちゃった?」
「まあ、急にあんなの当てられたらキレるでしょ」
魔理沙の問に輝夜がつっこむ。
そうしてる間にも魔物は、暴れるように体を地中から引っ張り出そうともがく。
右腕を抜き出し、右腕を抜き出し、最後に下半身を出す。そして、空から光球が降り注ぐ。
「夢想封印」
*スガガガガン*
魔物の頭上から浴びせられた光球により土煙が舞う。
その光景を見ていた輝夜達。いざ戦闘だと言わんばかりの空気の中、突如起きた出来事にポカーンと呆気を取られていた。
そんなことも露知らず、魔物への追撃は更に続く。
*パカァ*
煙舞う場所の上空に幾つものスキマが開き、その中から大量の弾幕と謎の物体が落ちていく。
激しく降り注ぐ雨の様な攻撃は暫く続き、攻撃が止むとスキマが閉じた。スキマが無くなり綺麗になった場所より遥か上から、巨大な岩石が飛んできてそこに突っ込んだ。
*ズシーーーン*
次々と決まっていく追撃の嵐に、輝夜達は最早固まって成り行きを見守る状態となっていた。
そんな中、魔理沙だけが前に歩を進めながら口を開いた。
「あの技……夢想封印。それにスキマ!てことは、霊夢!!」
「呼んだかしら?」
その言葉と共に魔理沙の元に四つの人影が降り立った。
紅白で統一された巫女──博麗霊夢が魔理沙に怠そうな顔で手を挙げて「元気?」と聞いてきた。
彼女の後ろには紫ドレスに金髪ロングと言う姿の妖怪賢者──八雲紫と、小柄な体と橙色の髪。頭から生えている二本の角が特徴の鬼──伊吹萃香の姿があった。
そしてもう一人、萃香の後ろから飛び出した影は、ウサ耳を揺らしながら鈴仙に飛び込んだ。
「れええぇいッせえええええええん!!」
「え?ちょっとてゐ!?」
飛び付いた影──因幡てゐはそのまま、鈴仙の首にぶら下がるよう手をかけ、胸にごしごしと顔を擦り付けた。
「あああああああん!鈴仙!わだじいいごになるがらッ!もう、ひとりにじないでぇえ!!」
「どうしたのよてゐ!?うわっ!服が鼻水やら涙でベトベトぉ……」
「いいじゃんいいじゃん!服の一着や二着!私の苦しみに比べたら!」
「なんなのよ!あんた、一体どうしたって言うの!?」
「あ、あの鬼がぁ…「ちょっと失礼するよ」ヒッ!!」
てゐの頭を後ろから鷲掴み、鈴仙から引き剥がす萃香。その萃香を見るなり、てゐは顔を青ざめて叱られた子どもの様に黙ってしまった。
それを見た、自分がこの三人から逃げ出したことを思い出した鈴仙は「あぁ」と呟き、無理矢理笑顔作り、心の中で「ごめん」と謝った。
「なあお前達。ここにいた、白髪の医者みたいな格好したやつ知らないか?」
「え?あ、ああ、それって師匠のことですよね?師匠ならあちらの竹藪の影で休んでいます」
「そうか。ありがとう」
萃香は目的の情報を聞き出すと、鈴仙にペコリと頭を下げ、永琳の元へと走っていった。
「鈴仙、ちょっといいかしら?」
「ふぁ!は、はい!」
走っていった萃香の様子を伺っていた時に、突然輝夜に呼ばれた鈴仙。思わず変な声が口から飛び出す。
「貴女、彼女達の知り合いなの?」
そう言って、輝夜は霊夢達に指を差す。
「え?あ、ああ、その~、知り合いって言えば知り合いなんですかねぇ?」
「ん?はっきりしないわね?」
少し不機嫌そうな輝夜に、なんの躊躇もなく霊夢が話し掛ける。
「そいつ、私達を襲ってきたから返り討ちにしてやって捕まえたのよ。そのちっこいのと一緒に」
「へ~そう。貴女達捕まったんだ」
「いやッ!えと、あの~ですね……すみません」
「そう。まあいいわ。取り合えず貴女達は敵なのね」
「まあ、そうなるわね」
「お話は聞いてあげたいけど、今最優先で片付けないといけないことがあるの。良かったら手伝ってくれないから?」
「それって、あれのことかしら?」
霊夢が指差す先は、魔物が下敷きになっている場所。
「ちょっと見た程度だけど……あれ、一体何なの?」
「言えることは何も無いわ」
霊夢の質問に、輝夜は両手を軽く上げ、お手上げのポーズをとる。その答えに満足できないのか、霊夢は輝夜を見つめ続ける。
「本当よ。あれついて一番詳しいのは、長くて戦っていた永琳だと思うから、詳しく聞きたいなら永琳に聞いてちょうだい。ちょうどよく、貴女のお友達の子は永淋に会いにいったみたいだし」
「ふ~ん、そう」
なにやら、霊夢と輝夜の間に不穏な空気が流れる。
この二人はなんとなく馬が合わないようだ。
それに気が付いたのか、霊夢には魔理沙が、輝夜には妹紅が少し声を掛ける。
そんな状況に興味もなく、魔物がいる場所を見つめている紫。
(なにかしら、この嫌な感じ。悪い予感と言うか、胸騒ぎと言うか、兎に角嫌な感じ。気持ち悪いわ)
顔をしかめながら紫はその場所を見守っていた。すると、
「た、大変だーーー!!」
萃香の大きな声が響いた。突然響いた声に皆、竹藪から走ってくる萃香に目を向ける。
萃香は永琳を担ぎながら、血の気が引いた顔で此方に走ってきた。
「どうしたのよ?」
友人が珍しく尋常じゃない顔を見て、先程の悪感もあった紫は思わず声を掛けた。
息を切らしながら近くに来た萃香は、担いでいた永琳を下ろすと落ち着きのない声で喋り始めた。
「た、たたた大変なんだよおおお!!」
「落ち着きなさい萃香。なにが大変なのよ?」
「いや、あのさっきの!あの、変なやつ!」
「変なやつってさっきの……ッ!?」
その瞬間、地面が激しく揺れ、地面に亀裂が入る。
窪みの中心にドンと立っている岩石にも少しずつ亀裂が走り、全体に行き渡った瞬間、豪快な音を立てながら岩石は崩れ落ちた。
ガラガラと転がる岩達の中心に奴が立っていた。
「あ、あいつ!あいつだよ!」
「萃香、いい加減落ち着いて説明しろよ!」
魔理沙が萃香のテンパり具合に苛立ち始め、声を荒げる。
「だから、あいつが、クロなんだよ!!」
『え?』
その場にいた何人かの表情が固まる。
「え?どう言うことだよ萃香。あれがクロだって?冗談も程ほどに…「本当よ」ッ!?」
魔理沙の言葉を遮るように地面に座り込む永琳が喋った。
「彼、その子と、あとてゐも一緒に永遠亭に来たの。満月を本に戻してくれって。私たちも事情があったから断ったのよ。そしたら、その場の勢いで戦闘になっちゃってね。最後、私が麻酔薬で眠らせたんだけど、突然彼の体から黒い光が溢れだして、その光が彼を包んだと思ったら、ああなってたのよ。私も目を疑ったわ。でも、本当なの。あの魔物が……彼なの」
「う、嘘だろ?な、なんであんな風になってんだよ!?」
「わからないわよ」
永琳の一言に皆が黙る。
そんな中、その静寂を打ち破るように慧音が口を開く。
「で、どうすればいいんだ?彼を元に戻すにはどうすればいい!」
声を荒げる慧音。クロと真っ向から真剣勝負した彼女はクロをもう他人とは考えていなかった。故に、彼を助けたいと強く願っている。
「検討もつかないわ。そもそも、倒すことさえできないのよ」
「どういうことかしらそれは?」
「そのままの意味よ。あの魔物は死なないの。体を木っ端微塵に使用が再生する。まさに不死身ね」
「そう。なら、私に考えがあるわ」
紫の言葉に皆が顔を上げる。中には紫の言葉に希望を持ったような表情をしている者もいた。
紫は更に続ける。
「クロを助ける方法はただ一つ。彼に封印術を掛けるのよ」
「封印術?」
「ええ、恐らくクロ自身のではない何らかの力が働いているとしか思えないのよ。なら、その力を封印して押さえ込めば、きっとクロも元に戻るはずよ」
「なんでそんなことわかるのよ」
「なんとなくよ。私がそうであって欲しいって願っているのかも知れないわね。でも、可能性は十分あるわ。どう?乗ってみない?」
紫の言葉に皆、顔を合わせる。そして、最初から決まっていたかのように霊夢が答えた。
「やるに決まってんでしょ!」
『うん!』
その言葉を聞き、紫は微笑浮かべて魔物の方へと体を向けた。そして、高らかに声を上げる。
「なら、気合い入れなさい!行くわよ!」
今ここで、歴史に残る激戦が始まろうとしていた。
どうもDAMUDOです。
魔物の対策は封印で落ち着きました。しかしまあ、魔物強くし過ぎた感じがあるんですが……なんとかなるか。
書いてて思ったんだけど、こうも同じ場所にキャラがいると全員をうまく使うってやっぱり難しいですよね~。プロってスゲーな。