クロが囚われてる!?
以上!
「・・・ダメだ。逃げられん」
クロがいるのはそこそこ広い和室。中央で木柱に縄で繋がれている。縄と柱には沢山の札が貼ってあり、この札の力によって、クロは能力を使えないでいた。
『情けないなぁクロ。ボロボロじゃねーか』
「うっさい。モドキ、お前の能力が使いにくいんだよ」
端から見れば、独り言を言っているように感じるが、クロは自分の中に住み着いている存在と会話をしている。
クロはその存在をモドキと名付けた。正体は邪神の負の部分だけが集合し、意思を持って力を行使する何者とも言えない存在だ。
『使いにくいとか言ってる時点でお前は力に使われる者だよ。それじゃ強者にゃあなれねーな。お前には強者になってもらわなきゃならねーってのによ』
「いや、難しいからね。イメージに集中するだけってのは分かりやすいが、少しでも関係ないことが頭をよぎるとそれだけで力が激減するのは酷いだろ?」
『それをなし得てこその強者だろうがバカ野郎。俺様の能力が強いのは前の満月にならなかった時に証明されてんだろ?』
「・・・」
クロにとってはあまり思い出したく記憶だ。
あの時のクロは消え入りそうな意識の中、圧倒的力を望んだ。その想いがモドキの能力を呼応させ魔物へと変貌を遂げることになった。
力を望み、殲滅を望み、勝利を望んだ。痛みを感じず、先を考えず、我を忘れた。その結果があの暴走とも呼べる戦闘なのだ。
「わかってる。あの時のことは嫌でも覚えてる。うっすらだけど。でもなぁ……あの感覚は掴める気がしないんだ」
『ざけんな!意地でも覚えろ!そうしないと計画が始まった瞬間に即詰みだろうが!』
「・・・なあ、俺がモドキの能力を使いこなすよりも、俺が…ッ!」
話をしている途中、誰かが近くにいる気配を感じ口を閉ざす。
気配が段々と近付いてくるを感じていると、この部屋を仕切っている障子の向こうに人影が一つ、スゥと現れた。
「は、入りますね~ 」
人影は障子を開けて、遠慮気味に入ってくる。人影の正体は緑髪に巫女服と言う特徴的な格好している少女。
「東風谷……早苗……」
「は、はい!なんでしょう!?」
「・・・」
何故か緊張している早苗。顔は強面の方だとは思うが、そこまでビビることはないと思う。けっこう傷付くよ。
早苗はクロから目を離さずに、ジリジリと前へ移動し、畳の上に正座するが、少し腰が浮きぎみだ。緊張のせいなのか、姿勢がみるからに逃げ腰で、たまに目が合うと驚いたように急いで目をそらす。
「そんなに緊張すんなよ。別に取って食おうって気はないから」
「は、はい!気を付けます!」
「ダメじゃないか……で、俺に用が?」
「はい、えっと、ありがとうございました!クロさんのお陰で博麗神社の巫女に挑戦状を突き付けることができました!」
「ああ、本当にやっちゃったのか」
「はい!これでうちの神社……守矢神社がこの幻想郷の頂点に君臨することになるでしょう!」
「お前は何をいっているんだ!?」
「え?」
突然訳の分からないことを大胆にも口走る早苗。何をどう勘違いしたらそうなるのか理解できずに、思わずツッコミを入れてしまった。さらに、その反応が予想外であると言わんばかりの表情でこちらを見る早苗。
「え!?え!?博麗神社を手中に納めれば幻想郷を征服できるって聞いたんですけど?」
「んな訳あるか!!なんでそんな話を信じた!」
「だだだって!博麗神社が幻想郷を支えてるって!違うんですか!?」
「いや、その話は間違ってないけど、博麗神社乗っ取ったからって幻想郷が手に入るわけないだろ常識的に考えて!!」
一瞬に静寂へ。
先ほどまで二人とも興奮して口論をしていて、いつの間にか顔が近いところにあっても気付かない。
そして、この静寂を崩すのは、落ち着きを取り戻した早苗だった。
「ほ、本当に本当ですか?今の話」
「本当に本当だ」
「そ、そんな~~~ッ!無駄骨じゃないですかぁ~~~!!?」
勘違いを理解した早苗は、空気が抜けた風船が萎むようにずるずると地面にへたりこむ。よほどショックのなのか、微かな呻き声をたまにあげて、一向に起き上がる様子を見せない。
「・・・どうしようか」
『ほっときゃいいだろ』
クロは少し居心地の悪さを感じながらも早苗が元気になるまで待つのだった。
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「ふぅ、妖怪退治終了~」
「なにが妖怪退治よ!」
「ただの通り魔じゃないか!」
霊夢がいるのは紅葉に囲まれた山の中。そばでは、似たような顔とカラーリングをしている少女が二人、打ちのめされて座らされている。
彼女達は秋静葉と秋穣子。通りずかりの神様である。
「第一私達は神様で、妖怪じゃないわよ!?」
「それなのになんで攻撃されなきゃならないんだ!」
「それよ」
霊夢が指さすのは大量の作物である。これは先ほどまで、ここで食事をしようとしていた秋姉妹の物である。
「あの食べ物がなにか?」
「私は生活の為に色々と節約してるの。だから、食事も最低限よ。いっつも空腹にしてるわ。それなのに、私の目の前で大量の食べ物を囲む姿をみせられたら、そいつらを倒すしかないじゃない?」
「全く共感できない理由だ!」
「ま、そんなご託はどうでもいいから、その食べ物寄越しなさい!」
「それが本音か!」
「渡さないなら、渡したくなるまで痛め付けるわよ」
「理不尽だ!!」
紅葉に満ちた山の中、神様の悲鳴がこだまする。
霊夢は少しずつ守矢神社へと迫っていた。
今章は戦闘少なめ。たぶん。
以上、DAMUDOでした~♪