もりや!
以上!
「ジャンジャジャーン♪天才発明家、
「イラッときたわ」
クロの救出の為、妖怪の森に現れたと言う神社に向かっている霊夢。道中、色んな妖怪と遭遇しては倒してを繰返していた。そしてまた、今も一匹の妖怪と遭遇した。
緑色の帽子を被り、髪を左右で結っている妖怪の少女。特に目が行くのは彼女が背負っている大きなリュックサックだ。そして、そのリュックサックからプロペラと機械的な腕が二本伸び出ていた。
霊夢は今まで色んな格好の妖怪を見てきたが、こんな奇妙な物を背負って現れた奴はいなかった。
───ああ、面倒臭そう……。
そう思うばかりである。
「ねえあんた。邪魔しなかったら喧嘩を売ったことを見逃してあげるから、そこどきなさい」
「いやいや、それで済まないんだよ、こっちは」
「え?なんでよ」
「お前、雛をいじめただろ?」
「雛って誰よ?」
「えっとね~、緑色でフリルの付いた赤いリボンを頭に着けてる不思議な子……でわかるかな~?」
「……もしかして、前にやった回る奴かしら?」
「あ、そうそう!よく回ってるよ、くるくるって!」
伝えたいことがうまく伝わったのが嬉しいのか、にとりは嬉しそうにケラケラと笑う。
やっぱりアイツか。倒してきた奴らの中で一番奇怪だったからよく覚えている。関わると面倒臭そうなことになりそうだなと思ったわね。
記憶を蘇らせて思い出している霊夢に話を続けるにとり。
「雛は私の友達なんだよね。だから仇討ちってことが倒させてもらうよ!」
「面倒な奴は面倒な奴を招くのね。類は友を呼ぶってこのことを言うのかしら?」
霊夢はぼやきながらもそこはプロ。真剣な表情になり、にとりの迎撃に出た。
───────────────
「はい!あがりです♪」
「やっぱり早苗は強いな~。あ、私もあがりだ♪」
「と言うことは、残ったのは私とクロか……」
「言っとくけど、負ける気は毛頭ないぞ、神奈子……」
場所は変わって、守矢神社。
囚われのクロはゲームを通じて、早苗、諏訪子、神奈子と名前で呼びあう仲になっていた。
因みに、今行っているゲームはババ抜きである。
「うぬぬ……」
「 」
ポーカーフェイスを貫くクロの手札は二枚。
ハートのエースとJOKERである。
対する神奈子の手札はダイヤのエース。
そして、神奈子は今、クロの手札のどちらか一枚を選ぶかで唸っている。
遊びと言えど勝ち負けがある以上、神としてのプライドが神奈子を負けることを許さない。
同じく、その気迫に呼応するようにクロの負けず嫌いが呼び覚まされ、勝つことに必死となっている。
と言うのは表向きの話。
クロは眼に宿す燃える闘志の裏ではゆっくりと謀略の闇が広がっていた。
仕込みは上々。【塗り潰し】で無効化。【塗り替え】でバレないように偽装。我ながら恐ろしい力だと思うよ。
『全部俺様の力だがな!』
モドキか……。
『どうだクロ?女の子とのゲームは楽しいか?なんなら、一人ぐらいヤっちゃいなよ♪ヤりなよ……ヤれよ!』
うるさい。少し黙れないか?
『くくくッ、軽く一蹴か。にしても器用だよな~お前』
なにがだ?
『こうやって俺様と話をしながら、三人とゲームに興じ、ちゃっかりことを進める。一般人のやる芸当じゃねーってことよ』
慣れやすいだけだと思うけど。
『それだけじゃねーな。恐ろしいほどの学習能力。それを無意識にやっちまう。くくくッ、相棒が優秀で嬉しいね~♪』
褒めんな。
「こっちだ!……おっしゃーーー!」
神奈子が意を決してカードを引くと、歓喜の声と共に二枚のカードを捨てた。
俺の手札はJOKER。
「あーあ、俺の負けか……」
「悪いなクロ♪」
「て言うか早苗強すぎじゃね?ほぼ毎回勝ってるぞ」
「私、運はいいんですよ♪」
「なになに~?負け惜しみかな~?」
「男らしくないな」
「え?なんで俺、一斉に攻められてんの?」
「ところでさあ、クロって私達と一緒で外から来たんだよね?」
「あれ?俺、そのこと言ったっけ?」
「言ってはないけど、話の内容からそう思っただけ。でも、そうなんだ」
「あの……聞いてもいいですか?」
早苗がさっきまでの楽しそうな雰囲気から一変して、暗い声色で話かけてきた。
「なにをだい?」
「クロさんは……帰りたいと思ったことってありますか?」
その真剣な表情に一瞬で言葉が出なくなる。
早苗がなんでこんな質問をするのか、少しわかるような気がする。なら、しっかり答えないと。
「そりゃあるよ。俺、なにも告げないまま幻想郷に来ちゃったから、一言だけ家族に言いたいなぁ。帰る気はないけどね」
「なんでですか?」
「約束したんだよ。だからさ」
「約束、ですか」
「ああ」
『今はその子を裏切っているわけだがな』
その方がシロの為だからさ。
「それって一体誰と……」
そこまで早苗が口にしたところで、突如大きな爆発音が響いた。
「な、何事だ!?」
神奈子は外の状況を確認しようと急いで戸を開ける。
すると、近くの山から黒煙が上がっていた。
「もしかして霊夢が?」
「なるほど、噂の博麗の巫女か……。早苗、博麗神社を明け渡すように交渉してきてくれ」
「わかりました。……緊張します」
先程より真剣な面持ちになった早苗は煙が上がった場所へと向かおうとする。
「ちょっと待ってくれ」
すると、出発を呼び止めようにクロが声を掛けた。
早苗は足を止めて振り返る。視界に入ったクロは真面目な表情でこう言った。
「負けたら、全力で謝っとけ」
「え?なんでですか?」
「早苗が傷物にならないようにするためだよ」
「なんでそんな不穏なこと言うんですか!?」
「そりゃ、おまえ……霊夢はこれまでの異変で、数々の強者を倒してきたからな。その度に相手をボッコボコにしてるのを俺は見てる。だから、早苗も同じ目にあうと思うと可哀想で……」
「か、神奈子様~……私、やっぱり行きたくないです~」
「いやいや!頑張れよ!?頑張って行ってきなよ!?」
「そんな殺生な~」
早苗は粘りに粘り、霊夢との交渉を拒むが努力の甲斐むなしく、泣く泣く行くことになった。
早苗がいなくなり、さっきまでの騒がしさが嘘のように静かになった部屋。残された、神奈子、諏訪子、クロの三人はしばらく早苗が飛んでいった方を見詰めていた。
「あ~、見えなくなったな。……じゃあ、気長に待つとするか」
「なら、お菓子でも食べてよ~。あ、クロも食べる?」
「貰えるなら」
「オッケ~♪ちょっと待っててね~」
神奈子と諏訪子が出ていき、クロだけになった部屋。
クロは一回タメ息を吐いて、首を回して解すともう一度息を吐いて呟いた。
「さて、そろそろやるか」
誰が見ても独り言にしか見えない彼の呟きに返答する者は彼にしかわかりえない、狂喜の笑顔をしていた。
『ああ♪やろう♪』
眠い