心を閉ざしたウィザード   作:疾風海軍陸戦隊

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彼は一歩だけ彼女たちと進む

海岸で素振りをする溝呂木。だが気持ちは晴れない。ずっともやもやした気持ちばかりだ。

 

「くそっ・・・ダメこれは」

 

俺はそう言い刀を鞘に納め、少し歩いた時、少し開けたところがあり俺はそこに寝転んだ。何も音がなく静で聞こえるとしたら鳥の音か風で動く草の音だけだ。

この世界に来て数週間。一向に元の世界に戻れる方法は見つからない。

だが、こうして寝そべっているうちにこう思った。

なぜ俺は元の世界に戻りたいのだろう・・・・考えてみたら、帰って、それで俺はどうするんだろう。

離れていた両親になんて言えばいいんだ?また、なにもないつまらない学校生活を送れれば、それで満足なのか?戦争が無く平和で安全でけれどそれ以上に退屈なあの世界に・・・・・・

 

「・・・・・」

 

考えれば考えるうちに俺はわからなくなっていった。そう言えばこうして深く考えたのも初めてだったかもしれない

 

『もっと自分の気持ちになって自分を開放しろ・・・・』

 

「自分の気持ちに素直・・・・か」

 

俺がそう小さくつぶやくと

 

「何してるの?そこで?」

 

と、突然に声が聞こえをレは起き上がり、あたりをきょろきょろ見渡す。空耳か?

 

「こっちだよこっち」

 

「ん?」

 

すると木の上でまた声がし手見上げると、そこにはエーリカがいた。しかもパンツ丸見えの格好で・・・・・このせかいでソレはパンツじゃないらしいが、元の世界にいた俺にしてはいまだに慣れなかった

 

「・・・・なにしてるんだよ」

 

「ルッキーニたちとかくれんぼしていたんだよ」

 

「かくれんぼ・・・?」

 

 あ~そう言えばルッキーニの奴が誘っていたな・・・・・

 

「それで木の上に隠れてたのか?」

 

「うん、かくれんぼのついでに昼寝しようと思ってさ」

 

・・・どんだけ自由人なんだよ。

 

「・・・そこで寝て大丈夫なのか?身体痛くなるだろ」

 

「大丈夫大丈夫。それで溝呂木は何をしてたの?」

 

「ただたんに寝転がってただけだ。それよりいいのかよ。隠れないで?」

 

「大丈夫大丈夫!」

 

とそう言い彼女は気から飛び降り俺のそばに来ると

 

「隣いい?」

 

「好きにしろ」

 

俺がぶっきらぼうにそう言うと彼女はニシっと笑い俺の隣に座る。そしてそれからは話すわけでもなくただ座っていた

 

「・・・はぁ」

 

俺は溜め息をついた。

 

「溜め息は幸せが逃げるよ」

 

その迷信ってこの時代からあったのか?

 

「溜め息程度で逃げる幸せなんかいらねーよ。それに、あんただって溜め息くらいつくだろ?」

 

「まあ、そうだけどね。・・・君の場合、その溜め息程度が積み重なって、こんな異世界に飛んじゃうなんて不幸が起こっちゃったのかもしれないよ?」

 

「・・・」

 

「・・・でも、君みたいな良い人が不幸になるなんて、納得いかないねぇ」

 

はぁ?俺がいいやつ?

 

「・・・お前、俺の何を見てきたんだよ。俺が良い奴になんて見えるか?」

 

「見える見える。・・・この基地の中じゃ、誰も君の事を悪い奴だなんて思ってないよ」

 

「・・・」

 

「悪い奴だとは思ってないけど・・・」

 

「・・・なんだよ」

 

「このままだと、嫌な奴に格下げされちゃうかもしれないよ?」

 

「・・・それでいいのに。そのほうが楽だよ」

 

そう・・・・その方が楽だ。仲良くなれ合いなんてすれば帰りにくくなるし、何より帰る際に涙の別れとかしんみりするよりは今のままでいればなんの後悔も無く帰れる

 

「ダメだよ。君が良くても、私達がよくない」

 

「・・・」

 

「そんな別れ方じゃなくてさ、どうせなら、もっと、惜しむような別れかたをしようよ。私は、そんな、お前が居なくなってせいせいするぜ、みたいな別れ方はしたくないんだ。だからさ、溝呂木。お互い、爽やかな別れかたをするために、君には私たちを受け入れて欲しい」

 

「・・・受け入れてるさ」

 

嘘を付いた。・・・二ヶ月経った今でも、俺はこの世界の何も受け入れてなんていない。

 

「嘘付け」

 

・・・やっぱり・・・魔女って、心読めるんだな。

 

「・・・バレたか。俺って、そんなにわかりやすいか?」

 

「うん。凄く。・・・で、どう?」

 

「・・・考えておく」

 

「うん。それでいいんだよ。・・・まあ、ようするにさ、無理して突き放そうとしないで、今を楽しく、気楽に生きようよってことだよ」

 

「あんたみたいにか?」

 

「あ、それはやめといたほうがいい。口うるさい軍人にしょっちゅう説教を食らうことになるから」

 

「だな・・・俺もそれは御免だよ」

 

「・・・・・あ」

 

「ん?なんなんだよ?」

 

「今笑ったね?」

 

「はぁ?」

 

彼女の言葉に俺は目を細める。笑った?俺が?そんなはずない。俺がそう思っていると・・・・

 

「あっ!中尉ミッケ!!」

 

そこへ、ルッキーニとシャーリーがやってきた。そう言えばこいつら、かくれんぼしてたんだよな?

 

「おっ!溝呂木もいたんだ?」

 

「いちゃ悪いかよ?」

 

俺がため息交じりにそう言うとルッキーニが俺に近づいて

 

「ねえねえ溝呂木~中尉と一緒に何してたの?」

 

「ただ座ってただけだ。こいつとは偶然会ってただけだ」

 

そう言い俺は立ち上がりその場を去ろうとすると

 

「ねえねえ、溝呂木も一緒にかくれんぼやろうよ?」

 

「・・・」

 

『貴様は他人への思いというものが不足している!』

 

不意にバルクホルンの言葉を思い出す・・・他人の思いを放り投げるのは、軍人云々の前に、人としてどうなのかって話だよな。と、言うよりこの先やることもないし

 

「はぁ・・・・ま、いい暇つぶしにはなるかな」

 

「やったーっ!!」

 

俺がそう言うとルッキーニは、満面の笑みを浮かべ声を上げる。そんなに嬉しいことなのか?

まあ、そんなこんなで俺も彼女の遊びに付き合うことにした。

え?やってみてどうだったって?

 

・・・・・楽しかったに決まっているだろ

 

 

 

 

 

そして夕暮れ、かくれんぼが終わり、俺は部屋に戻ろうとすると

 

「溝呂木君」

 

ミーナに声をかけられた。すると彼女は笑顔で

 

「ルッキーニさんと遊んであげたんですって?」

 

「まあな」

 

「・・・ふふっ、良かった」

 

「良かった?」

 

「ええ。少しは打ち解けてくれたみたいで嬉しいわ」

 

・・・本当に、この世界の奴らは、わけがわからない。

 

「なあ、教えてくれないか」

 

「なにかしら?」

 

「なんで、みんな、俺なんかに、こんなに良くしてくれるんだ?」

 

「・・・どうしてかしらね。私にもよくわからないけど、放っておけないっていうか・・・とにかく、みんなあなたのことは単なる戦力とだけ考えてるわけじゃないのは確かよ。私も含めてね」

 

「軍隊なのに変わっているな?もう少し規律がうるさくておっかないと思っていたんだが?」

 

「確かに軍隊のイメージはそうだし基本はそうね・・・・でも私的にはそんなに厳しくしないで家族のような関係でいたいのよ。もちろんあなたともね」

 

と微笑んでそう言う中、俺は返事も返さずに部屋に戻った。それを見たミーナは少し微笑み

 

「まだまだだけど、一歩だけ進んだかしら?」

 


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