7s Sprinter   作:マシロタケ

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閑話:母とトレーナー

『やっぱり、あなただったんですね。大城さん』

「俺もたまげたよ、まさかお前の娘だったとはな」

 

大城の教官室改めトレーナー室。

 

椅子にふんぞり返って、スマホを耳に当てる。

 

『あら、あの子ったら私似なんですもの、すぐに分かったでしょ?』

「イイヤ、あんま似てねぇよ…せいぜい、バカげたクソ根性くらいだわな。」

『ま、ご挨拶だこと。私はあなたのこと、すぐにわかっちゃいましたよ。娘が手紙に書いてくれていたトレーナーさんの特徴、あなたしか居ませんもの。』

「ナンだ、イケメン高身長でダンディーなオジサマとでも書いてあったか?」

『いいえ…自由気ままで勝手な人…とだけ。』

「…かぁ。母娘揃って、ロクでもねぇ目をしてやがる。」

『そうですか?私はよく的を射ていると思いますけど?』

 

大城は鼻で笑う。

 

「…そうか、お前が卒業しちまって、そんなに経ってたのか。…俺もオヤジになるわけだ。ほかの連中、ヨロシクやってんのかね。」

『ええ…あの時が少し懐かしいですね。あなたの無茶なトレーニングには、いつも驚かされました。』

「でも、その甲斐はあったろ?」

『ええ…秋の天皇賞がとれたのも…きっとあの日々があったから。』

 

電話の相手は言葉を切る。

 

『ねぇ…大城さん?』

「なんだ?」

『娘は…マーシャルは本当に…強くなれますか?』

「誰に向かって言ってやがる。レッドクラウンというバケモンを育てあげたのは誰だ?」

『…ええ、そうでしたね。私…娘をトレセンに入学させるか…最後まで悩んだんです。あの娘、肺が弱いから。体を、心を、壊してしまわないか…心配で…心配で。』

 

電話の相手は、過去に栄光を勝ち取ったウマ娘。しかし、今そこから聞こえてくるのは、娘を心配する一人の母だった。

 

「たとえ体が弱くとも、勝ち筋が無いわけじゃねぇ。…それに、一番大事なことは…最後まで信じぬくことだと、俺に教えたのはお前だろ?」

『....大城さん』

「安心しろ。マーシャルは…お前の血を受け継いだウマ娘だ。体力はともかく、根性は筋金入りだ。きっと俺が成るとこまで連れてってやるさ。」

『娘を…お願いします。』

 

電話越しに、涙の落ちる声が微かに聞こえた。

 

『…そうだ、それはそうと…大城さん?』

「なんだ?」

『あなた…

 

 

 

 

 

娘のお尻をひっぱたいたというのは本当ですか?

 

 

 

 

 

 

大城はすぐさま電話を切り、スマホを投げ捨てた。

「…相変わらずおっかねぇ…ダンナが気の毒だ。」

 

そういって大城は背もたれに踏ん反りかえり、煙草に火をつけた。

 




30分後、

生徒会室の真ん前で
『私は校内で煙草を吸いました(4回目)』
というプラカードを持って立たされている大城の姿があったとかなかったとか。

「…ジロジロみてんじゃねぇ」
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