『やっぱり、あなただったんですね。大城さん』
「俺もたまげたよ、まさかお前の娘だったとはな」
大城の教官室改めトレーナー室。
椅子にふんぞり返って、スマホを耳に当てる。
『あら、あの子ったら私似なんですもの、すぐに分かったでしょ?』
「イイヤ、あんま似てねぇよ…せいぜい、バカげたクソ根性くらいだわな。」
『ま、ご挨拶だこと。私はあなたのこと、すぐにわかっちゃいましたよ。娘が手紙に書いてくれていたトレーナーさんの特徴、あなたしか居ませんもの。』
「ナンだ、イケメン高身長でダンディーなオジサマとでも書いてあったか?」
『いいえ…自由気ままで勝手な人…とだけ。』
「…かぁ。母娘揃って、ロクでもねぇ目をしてやがる。」
『そうですか?私はよく的を射ていると思いますけど?』
大城は鼻で笑う。
「…そうか、お前が卒業しちまって、そんなに経ってたのか。…俺もオヤジになるわけだ。ほかの連中、ヨロシクやってんのかね。」
『ええ…あの時が少し懐かしいですね。あなたの無茶なトレーニングには、いつも驚かされました。』
「でも、その甲斐はあったろ?」
『ええ…秋の天皇賞がとれたのも…きっとあの日々があったから。』
電話の相手は言葉を切る。
『ねぇ…大城さん?』
「なんだ?」
『娘は…マーシャルは本当に…強くなれますか?』
「誰に向かって言ってやがる。レッドクラウンというバケモンを育てあげたのは誰だ?」
『…ええ、そうでしたね。私…娘をトレセンに入学させるか…最後まで悩んだんです。あの娘、肺が弱いから。体を、心を、壊してしまわないか…心配で…心配で。』
電話の相手は、過去に栄光を勝ち取ったウマ娘。しかし、今そこから聞こえてくるのは、娘を心配する一人の母だった。
「たとえ体が弱くとも、勝ち筋が無いわけじゃねぇ。…それに、一番大事なことは…最後まで信じぬくことだと、俺に教えたのはお前だろ?」
『....大城さん』
「安心しろ。マーシャルは…お前の血を受け継いだウマ娘だ。体力はともかく、根性は筋金入りだ。きっと俺が成るとこまで連れてってやるさ。」
『娘を…お願いします。』
電話越しに、涙の落ちる声が微かに聞こえた。
『…そうだ、それはそうと…大城さん?』
「なんだ?」
『あなた…
娘のお尻をひっぱたいたというのは本当ですか?
大城はすぐさま電話を切り、スマホを投げ捨てた。
「…相変わらずおっかねぇ…ダンナが気の毒だ。」
そういって大城は背もたれに踏ん反りかえり、煙草に火をつけた。
30分後、
生徒会室の真ん前で
『私は校内で煙草を吸いました(4回目)』
というプラカードを持って立たされている大城の姿があったとかなかったとか。
「…ジロジロみてんじゃねぇ」