7s Sprinter   作:マシロタケ

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疑惑と騒動

「あっはっはっは!!見た?あいつの顔!もう、ほんとケッサク!」

 

寮に帰り着くまでの帰路、ローズは上機嫌だった。

 

「なに...これ...だってさ!!..ああ、ほんといい気味!」

ローズはその昂ぶりを抑えきれなかった。

一杯食わせてやった。..彼女の気分は、何時振りか晴れやかだった。

 

「..ねぇ、ほんとに大丈夫..なんだよね?」

ドライブは、その動画が気がかりで仕方なかった。

「..はぁ?まだ気にしてんの?..もう消したんでしょ?..大体限定機能付きの捨てアカウントだし、拡散もせいぜい小規模。..気にすることなんてなんもない。..ま、それでもアイツは..しばらく大きいカオできないだろうけど!」

「そ..それなら..いいんだけど。」

 

ドライブはしきりにアカウントを確認する。

..消した。...ちゃんと消した。

..大丈夫..ばれない..バレない。

 

そうだ..ちょっとした悪戯なんだ。

こんなの..よくあるじゃないか..。

 

そう自分に言い聞かせて..ドライブはタブレットを閉じた。

 

だが..二人は甘く見すぎていた。

..ネット社会の..恐ろしさを。

 

 

―――――――――

 

ねぇ!見た!?

 

..うん!..これ....ほんとうなの?

 

..やばいよね..うわ!めっちゃ拡散されてる!

 

そんな...マーシャルさん..信じてたのに..。

 

..私!こんなの信じない!!

 

..でも..さ。..ぶっちゃけ...ありえそうじゃない?

 

 

「...由々しき事態..だな。」

「..会長。」

「エアグルーヴ..君は..この騒動..どう見る?」

 

生徒会室...そこに生徒会のメンバーは集結する。

そして、彼女らはタブレットで..騒動の原因となっている動画に目を落とす。

 

それは...マーシャルが部室に制服のまま来たところから始まる。

カメラのレンズは、彼女の死角になるところで、彼女を捉えているアングルだ。

バッグを置いて、練習着に着替えようとしたそのとき、誰かから彼女は呼ばれる。

 

バッグをその場にしたまま、彼女は姿を消す。

そうすると、カメラは急に動き出し、彼女のバッグをカメラ片手のまま、探る..そうすると..彼女のバッグの中から..怪しい小瓶が。

 

白い錠剤が大量に入ったそれを..正面に向ける..ラベルには..ドーピング剤を臭わすような英文が。

 

カメラは、急に慌てだす。

彼女が戻ってきた。

 

急いで、最初にいたポジションに身を潜めて..というところで動画は終わっている。

 

投稿のコメントには。

「最強のスプリンター、レッドマーシャルの疑惑」とだけ書かれていた。

 

そして厄介なことに..その動画は数万件の拡散を経て..世界中に流れて行っていた。

 

エアグルーヴは口を開く。

「この動画..信憑性に欠ける、と言うのが率直な感想です。..不可解な点が多すぎます。..何もかもが都合よく動いてる。誰かが仕組んだ可能性が高い事案..かと。」

「私も、概ね同意見だよ。」

 

シンボリルドルフは沈着な表情を一切崩さない。

 

「..ドーピング程度でこの世界の頂点に立てるんなら..今頃全員がダービー覇者だろうな。」

ナリタブライアンも腕を組んで、呆れたようにそう言った。

 

「..だが、事は大きくなりすぎている。..彼女を疑うわけではないが、話を聞く必要はありそうだ。..エアグルーヴ、ブライアン。レッドマーシャルと..彼女のトレーナー..大城白秋を..招いてくれ。」

二人は、静かに頷いた。

 

――――――――――――

 

「トレーナーざん!!わだじ...こんなごと..やっでない..!!」

大城の教官室。

マーシャルは、ソファに掛ける大城の懐に身を埋めて、嗚咽を漏らしていた。

 

「わかってる!!...ちきしょう...誰が...こんなナメたマネを...!」

大城は強く歯を食いしばっていた。

 

「クッソ!!」

ガンっ!と対面ソファの間にある、低いテーブルの脚を蹴っ飛ばした。

 

「どうしよう..もう....私....。」

「心配すんな。...俺がどうにかする。」

そういって大城はマーシャルの頭を優しく撫でた。

 

「...とりあえずは..身の潔白を証明することが最優先だ。..お前には悪いが..尿検..血液検査..一通り受けてもらう。..無実を証明するんだ。」

「......はい。」

 

いくらGⅠ覇者とはいえ..精神面では、未だ思春期なマーシャル。

身の潔白の証明とはいえ、そんなことをしなければならないのは..苦痛だった。

 

そこに、ノック数回。

トレーナー室の戸が開く。

 

「..失礼する。..会長がお呼びだ。..先生。」

「ああ..俺も今から行くところだった。」

 

―――――――――――――

 

「私...!私....!」

「無理に喋らなくていい。..大丈夫。」

 

シンボリルドルフを前に..上手く言葉を出すことができないマーシャルに対し、ルドルフはそっと彼女を介抱するかのような声色で..優しく説いた。

 

「この動画...おそらくだが..フェイクだろう?我々も..この動画に対して拭い切れないものが多すぎると感じている。ラベルに記される英文も..まるで直訳でもしたかのような半端なものだ。」

「ハナシが早くて助かる。」

生徒会室のソファに我が物顔で掛ける大城は言った。

 

「..この動画..この日..何か妙な心あたりは..?」

「ええと..ええと..。」

狼狽していて..記憶がすぐにスッと出てこない。

 

マーシャルはスマホを開く..その日のスケジュールを確認するために..その時

 

「ひっ!!」

そういってマーシャルはスマホを落とした。

 

その妙な彼女の動きに、誰もが気を取られる。

 

「..どうしたんだい?」

ルドルフは..彼女の落としたスマホを拾った...その画面には..SNS「ウマッター」の溜まりに溜まった彼女への通知が数十..数百..。

 

そこにピックアップされたメッセージ文には...。

 

 

ドーピングウマ娘、とっととレースから降りろ。

 

バクシンオーにドーピングで勝ったのか?恥ずかしくないのか?今すぐトロフィー返納して一生ターフに出てくるな!

 

 

やっぱそうだったんだww前からアヤシーとは思ってたケドww

 

 

こいつの母親もドーピングやってたんじゃね?

 

 

...彼女に対する..山のような誹謗中傷。

そのあまりにも心無い投稿に..ルドルフの顔は思わず歪む。

 

マーシャルは..胸を押さえて..その場に蹲った。

「大丈夫だ..私たちは、君の味方だ。」

ルドルフは..そっと彼女を抱擁した。

 

「...このクソ野郎共め。..マーシャル..お前しばらくネットを見るな。」

大城は、ルドルフからマーシャルのスマホを受け取る。

誹謗中傷の中には..大城に対するものもちらほらと。

 

「言いてぇことがあんなら..直接言いに来やがれってんだ。」

そういって大城はマーシャルのスマホの電源を切った。

 

 

――――――――――

 

「その日は確か..呼ばれたんです。」

「誰にだい?」

 

しばらくして、落ち着きを取り戻したマーシャルは..思い出せる限りのことをシンボリルドルフへ打ち明けた。

 

「スーパードライブさん...私がまだ、ベテルギウスにいたころの後輩..です。」

「どういった用件で?」

「..ベテルギウスで..食事会を計画してるっていうお話があったんだそうで..私もどうか..って。」

「ベテルギウス..か。...ブライアン!事実確認を!」

「おうよ。」

 

そういうと、ブライアンはひょいと腰を上げて、生徒会室を後にする。

 

「もう少し詳しい話を聞かせてほしい。理事長が、本日不在でな、戻ってこられる前に、できる限りの状況整理を..辛いだろうが..頼めるかい?」

「..はい。」

 

――――――――――

 

なんだか今日は妙に校内が騒がしい。

どうやら、あの動画が話題になっているようだ。

 

..思ったよりも知れ渡ってしまっているな。と彼女は感じた。

ドライブが動画を消すタイミングが遅かったのだろうか。

 

「ねぇ!ねぇ!ローズ!この動画知ってる?」

「キョーミない。」

 

そういってクラスメイトを跳ねのけて、ローズは寮に向かう。

 

今日の練習は気が乗らないからサボリだ。

 

そして、校舎を出た瞬間。

「ローズ!!」

誰かが彼女を呼び止める。

 

「..ドライブ?..どうし...」

ドライブはローズの腕を引っ張って、物陰へ。

 

「や...やばいよ...ローズ。」

息が上がりきって、口をガクガク震わせながら、彼女はそう言った。

 

「やばいって..あの動画のこと?..あれって消したんじゃ。」

「拡散されてる....転載されたんだ....!」

 

そういって、ドライブはタブレットを見せる。

そこには..消したはずのあの動画が..10万を超える拡散付きで..。

 

コメント欄では..論争に次ぐ論争。

 

要は...大炎上していた。

 

「は..?..はぁ?...なにこれ...。え?..消したんでしょ?...なんでこんなこと...。」

ローズは状況が理解できず、目を丸くする。

 

「わからないよ!!...どうしよう...私たち..これバレたら...終わりだよ!」

 

ローズは一瞬の沈黙の後..頭をくしゃくしゃにかきむしった。

 

「なん..で...。..し...しらない!!...わたし...知らない!!」

そういってローズは逃げるように去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

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