7s Sprinter   作:マシロタケ

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後悔

「..そうか、なら君は、本当はマーシャルのことを誘いたかった。だが、ローズの威圧に押されて言えなかった。そういうんだね?」

「はい..。あの..私って」

「まぁ、そうだな。状況を俯瞰し、客観的に見たことを鑑みると、そういう目を向けざるを得ないことは確かだ。..だが、私たちも広い視野で捜査は進めるつもりだよ。」

「......。」

 

いつもは落ち着けるはずの美浦寮の自室。

だが、今日だけは異様な雰囲気に包まれる。

 

ここ数日、体調不良として自室に伏すドライブのもとへ、生徒会が出向いていた。

その傍らには、フロイドスピリットの姿も。

 

本来ならば彼女の回復を待って、聴取すべきではあるはずだが、事は緊急を要している。そのため、ルドルフたちは自らの足で彼女の部屋へと赴いた。

 

「..なぁ、会長さんよ。もうその辺にしてやってくれよ。..こいつ、具合が悪いんだよ。そんなところで、お前も容疑者だって言われるのは..ちょっとツライんじゃないか?」

「承知の上だ。だが..一人のウマ娘の人生がかかっている。申し訳ないとは思うが、協力は要請したい。」

 

そういってルドルフは立ち上がる。

 

「また今度、詳しい話を聞かせてもらおう。失礼する。」

そういって彼女らはその場を後にする。

 

残された部屋には、スピリットとドライブ。

 

「..なぁ。ドライブ。俺は..お前を信じてる。..信じてるんだ!..でも..聞いておきたい。..お前、本当に..何も知らないんだよな..?」

「....はい。」

その言葉に、スピリットはふうと息をつく。

 

「..わかった。具合がよくなるまで練習は休んでいい。」

 

そういってスピリットも部屋を後にした。

 

スピリットの胸がざわめく。

本当はもっと聞きたいことがあった。

 

なぜお前は..俺に黙ってマーシャルを誘いに行った?

 

俺は..具体的な日にちも何もまだ言っていない。..圧倒的に情報が足りないはずなのに、なぜ彼女を誘いに行った?

 

そして、なぜマーシャルを誘ったことを俺に秘密にしていた?

 

考えれば考えるほど...その彼女の整合性の取れない行動に疑念が孕む。

だが、聞けない。..聞いてしまえば..最後に来る言葉は何なのか..。

怖くて聞けなかった。

 

――――――――――――

 

ばたんとドアが閉まる。

こつこつ..と足音が遠ざかっていく。

 

「...はぁあ!!」

ドライブは急に腹を抑えてベッドに倒れこむ。

「うう..うぅ..。」

胃が...ねじれるように痛む。

 

生まれて今まで感じたことのないほどのハイストレス。

彼女は大汗をかきながら、悶えた。

 

(...今日は..生き延びた。...もういやだ...こんなの...いつまで..。)

 

生徒会が来ることはローズから事前に連絡があった。

口を滑らせればすべてが終わる..でも、隠し通しても、いつそれが明るみに出るか..まるで死刑執行を待つような日々..。

 

どっちに転んでも..救いはない。

 

(ごめんなさい..神様..もうこんな..悪いこと..しませんから...お願い..許して...ゆる..して)

そういってドライブはそっと瞳を閉じた。

 

―――――――――――

 

「..会長よ、ヤツ..相当臭うぞ。」

「私も同意見です..受け答えや、説明に筋が通っているように感じませんでした。..何か知っている。そう見るのが妥当かと。」

 

ルドルフは足を止める。

 

「ブライアン、エアグルーヴ。私たち生徒会というのは、どういう存在でなくてはならない?」

「..どういうって。」

 

ブライアンは、また始まったといわんばかりに腕を組む。

 

「..中立的立場でしょうか?」

そういったのはエアグルーヴ。

 

「その通り..確かにスーパードライブ..彼女の不審な点はいくつか考えられる。だがそれは、彼女がクロだと決める証拠には何もなり得ない。..仮に彼女を引っ張ったとしよう。..もしそれが誤認だったら?..私たちは自らの手で、無実のウマ娘を叩き潰すことになる..。どう間違っても、それだけは避けなければならない。軽挙妄動は..悲劇しか生まない。慎重さを失念すれば..私たちは終わりだ。」

「じゃあ、物的証拠がありゃいいワケだな?言い逃れができないほどの。」

「..そうだな。」

 

――――――――――――

 

『あ!来た来た!!』

マーシャルが寮を出てすぐだった。

 

マイクとカメラを持った大人たちが、獲物を捉える。

 

『レッドマーシャルさんですよね!?ぜひお話を!』

マスコミたちのその目はギラついている。

 

この娘の発言一つ一つが金になる。

なんてことない言葉一つでも、料理さえすれば、大衆が喜ぶ刺激のあるものとなる。

 

「あの...話せることなんて」

『お!ということは、ドーピングは本当ってことかな!?』

「ち..ちが!」

彼女がそう言い終える前に、フラッシュがこれでもかと彼女を襲う。

 

「や..やめ..て..」

彼女はその場に沈みそうになる..そこへ。

 

「おい!やめろ!なにやってんだお前ら!!」

彼女の親友たちの姿が。

 

「こんのバ鹿どもめ!!あんなデマ信じてんじゃねぇよ!大人だろ!?」

「..皆さんもうやめて!マーシャルちゃんはそんなことする娘じゃ..絶対にないですから!」

トップギアとモモミルクは身を挺して彼女を守った。

 

..だが、金の成る木を前にした大人たちは、想像以上に汚かった。

 

『じゃあ君たちに聞いてみようか!ぶっちゃけ..マーシャル選手のドーピング..見たんじゃないの?』

「お..お前ら..本気で聞いてんのかよ..。」

 

その狂気にトップギアは目を丸くする。

 

『じゃあそっちの君はどうかな?..本当は君も..やっちゃあいけないモノとか..やってたりしない..?』

「そんな...そんなわけ..!」

 

二人しても、この大人たちの妙な圧に顔を歪めた。

 

『ま。こんなGⅠも出たことない連中に聞いても仕方ないか。ほら、どいたどいた僕たちはマーシャル選手に用があるんだよ!』

記者は二人を押しのけて、マーシャルを引きずりだそうとする。

 

「やめろ!!」

その手に、必死に抵抗する。

 

その時..。

「おい...んなトコ屯われてちゃあ..ゴルシちゃん号が通れねぇじゃねぇかよ。なんだ?..レッドカーペットにでもなりてぇのか?」

「まったく..精査もせず..やすやすと情報を鵜呑みにして..恥ずかしくありませんこと?」

「君たちさ..ほどほどにしておかないと..カイチョーが黙ってないんじゃないかな..?」

「おうおう...マーシャル先輩のことそれ以上コケにすんのなら..俺らが相手になってやってもいいんだぜ?」

「まったく...アンタたちホントバ鹿?..あの走りが薬でどうにかなるわけないことくらい..ちょっと考えればわかるでしょ?」

 

そこに現れる..マスコミや記者すらも凌駕するほどの狂気さを兼ね備えたチーム..スピカ。

 

「..マーシャルさん、立てる?」

「だ、ダイジョブですよ!私たちが守ってあげますから!」

「..スズカさん..スペさん..。」

 

マーシャルはスズカの肩を借りてようやく態勢を立て直す。

それを護衛するかのように、スペシャルウイークは人参を構えて記者たちへ向く。

 

『お、おい!...マジかよ...ゴルシだ..。』

『ゴルシかよ...。』

『おい!カメラ隠せ!!ぶっ壊されるぞ!!』

『ちくしょう!..ゴルシめ!』

 

そのスピカの覇気を感じた記者たちは、慌てふためくように去っていった。

 

 

「..助かったぜ。サンキュー、スピカ。」

「何もしてませんが。」

 

トップギアはふうと汗を拭う。

 

「..それにしも、大変なことになってるね。」

テイオーはスマホを開く。

 

「まったく..誰かを陥れる行為など..卑劣極まりませんわ!」

マックイーンはそう憤った。

 

「しっかしよぉ、んなスッゲェ薬がマジであったらどうなんだろーなー。」

自慢のゴルシ号の上でゴールドシップはつぶやく。

 

「おふふひはんへはふへも!ひんひんはへはへば(お薬なんてなくても、ニンジンさえあれば!)」

スペシャルウイークは構えていた人参をほおばりながらそう言った。

 

「...なぁ、マーシャル、俺、思うんだけどさ。」

そう口を開いたのはトップギア。

 

「やっぱ、アイツ、ローズってやつが俺怪しいと思うんだよ。..あいつなら動機もあるし、なんたって一番最初に動画見せつけてきたのもあいつだろ?それまで誰も知らなかったような動画を!」

「落ち着いて..ギアちゃん。」

モモミルクは彼女を宥める。

 

「なぁ!ぶん殴ってでも白状させようぜ!」

「お!いいな!アタシもやるぜ!」

そういってゴルシは腕をまくる。

 

「ゴールドシップさん!おやめなさい!..あなたもですよ、トップギアさん。あなたの言ったことは全て憶測です。証拠もなく、自分の信じたいように解釈を起こして行動すれば、あなたもこの動画に踊らされる人々と同じですわ。」

 

マックイーンは冷静にそういった。

 

「....。」

トップギアは何も言い返せず、口をつぐむ。

 

「..ですが、このような愚行を犯したものには..必ず報いがあります。個人を..ひいてはレースに携わる全てのウマ娘たちを侮辱したその罪は..決して軽くはありませんことよ..?」

 

マックイーンのその怒りは..誰よりも深く..熱かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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