7s Sprinter   作:マシロタケ

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先生

レッドマーシャルのドーピング疑惑ってあれなんだったの?

 

ただのデマ。

 

あれまだ信じてるヤツいるの?

 

ブロワイエが云々だから~とか言ってるやつ結構いるみたいだけど、普通にデマってわかるだろこれ。

 

俺のマーシャルちゃんを汚しやがったクズの特定はよ。

 

いやいやドーピングっしょあんなんw

 

論文も読めないガキはネット使うのやめたほうがいいよ。

 

動画の編集で捏造って相当悪質だよな。マーシャルちゃん、恨まれる娘には見えないんだけどなぁ…。

 

トレセン内のヤツの犯行ってマ?

 

面白可笑しく記事にしてたマスゴミども、どうなるかなぁ。URAに楯突いた代償は重いだろうなw

 

あの動画って編集だったの?

 

どこをどう編集してるかって解説してるサイトあるからオススメ。結論から言うと粗だらけの素人編集。

 

――――――――――――――

 

「いい傾向だ。」

そのネット掲示板を泰司は満足そうに見る。

 

「そうか?」

大城は一つのスレッドタイトルを指さす。

そこには『レッドマーシャルのドーピング隠蔽!!URAとトレセンの闇が深すぎる…』

といったものが。

 

「まぁ、こればかりはどうしようもない。7~8割。その程度の人たちの信用を勝ち取ればいい。あとは、まだそんな噂を信じてる奴は異端だという風潮が出来上がればこっちのもんだ。」

「はん、気に入らんな。」

大城は未だに残るマーシャルへの中傷めいた文言に不満を垂らす。

 

「あとは放っておいて問題ない。水が有害だというヤツだっているんだ。やりあうだけ無駄さ。マイケルジャクソンにだってアンチはいる。あとはどう上手くやっていくかさ。」

「そうか…」

 

大城は靴底でタバコの火を消すと、携帯灰皿へしまった。

 

「…で、犯人はちゃんと白状したのか?」

「まあな。救えねぇクズだったよ。」

「そうか…なら、ネットの大海原へ出航させて、皆からのお仕置きを受けさせるか?」

泰司は例のデータをモニターへ映す。

 

「それは…やめろ。」

「なんでだよ?」

泰司少し意外そうに言った。

 

「やられたらやり返す、こいつらはそのくらいのことをした。ならば相応の報いがあってもいいだろ。」

「そこでンなことやったら、俺らも同じ穴の貉だ。」

大城は冷静にそういった。

 

「それに」

大城はハードに腰を据えた。

 

「どんなに救いようのないクズでも…どんなに腐れ外道だろうと、あいつらは俺の教え子だ。道を踏み外したんなら、キチンと導いてやらねぇといけねぇ。まだ右も左もわからねぇガキを見捨てて、突き放すのは簡単だ。だが、あいつらはここで死ぬワケじゃない。罪を犯したのなら、これからどうその罪と向きあって生きていくか、何をすべきなのかを…教えてやらなきゃいけねぇのよ。」

「…ハク、あんた先生みたいなコトいうんだな。」

「バーカ、俺は先生なんだよ。」

 

大城は背を向けた。

 

「どうしてそこまでするんだ。あんた…トレーナーなんだろ?教官は降りたんじゃあ。」

「俺も、高校退学になりかけた身なのよ。ここまで陰湿じゃないが、相当なコトはやった。だが、そんな俺を見捨てない先生(バカ)がいた。だから俺はいまここにいる。」

「見捨てない…か。やっぱあんた、冬時(トウジ)さんの弟だよ。」

「兄貴の話はやめろ。兄貴がフィリピンにいるってんだから向こうまで出向いたってんのに、未だに見つからねぇ。無駄足もいいトコだった。」

「でも、俺やアシュリーに出会えた…だろ?」

 

二人は窓越しに一人の褐色肌のウマ娘を見る。

まだ幼いが、その元気さだけなら現役の誰にも負けていない。

 

「アシュリーも大きくなったらトレセンに入学したいってさ。そしてハク、あんたにトレーナーをしてほしいんだと。」

「…まずは日本語を覚えさせろ。タガログ語を理解できるやつはほとんどいねぇぞ。」

 

大城は戸に手をかける。

「そうだ。お前…カネはチャラでいいや。」

「本気かよ。」

泰司は目を大きく見開く。

 

「まぁ、よく仕事はした。それに、いまさら金返してもらっても、使い道がねぇのよ。」

そういって大城は出ていこうとする。

 

「待ってくれ!」

泰司は引き出しを探る。そこからは少しの厚みを持った封筒が。

 

「まぁ、少し貯めてた分はあるんだ。せめてこれだけでも…返すさ。」

「はっ、んなんじゃGT-Rどころか新車の軽も買えねぇよ。」

大城は鼻で笑った。

 

「マジでいい。そのカネ、アシュリーに使ってやれ。」

そういって大城は裏路地のアジア街を後にした。

 

車まで向かう道中、大城は思った。

道を踏み外した二人を導くというのは、あの二人に手を差し伸べることと同義であると。

それを被害者であるマーシャルが納得するのかどうか。

 

あくまで今の大城はマーシャルのトレーナーである。

だが、教官としてのプライドも捨てられずにいた。

 

トレーナーとしてか、教官としてか。

その葛藤が彼の中で渦巻いた。

 

―――――――――――――

「なに…してるの…」

 

大城が去った後の生徒会室に、驚嘆の文字が浮かぶ。

ローズの前にひざまづいたマーシャルは、あろうことかそのままローズを抱きしめていた。

何も言わず、ただ黙って、哀れみの目を綻ばせず。ただ…ただ…。

 

「せん…ぱい…なんのつもりなんですか…。」

ローズのその問にマーシャルは一切答えなかった。

 

エアグルーヴやブライアンも思わず組んでいた腕を崩した。

「どういうことなんだ?」

「まるで…わからん。」

 

ルドルフは肩越しに横目でその光景を見た。

「それが…君の答えだというのかい。マーシャル。」

 

「やめてよ…どこまで私を…惨めにすれば…気が済むの…!」

ローズの瞳から、再び大きなしずくがあふれ出す。

 

「やめて…やめてよぉ…」

そしてローズは再び咽び泣いた。

まるで小さな子供のように。

 

まるで分からない。

私はあなたを陥れようとしたんだ。

この世界から殺そうとしたんだ。

 

取り返しのつかないことをしたんだ。

会長が言ったように、一歩間違ってたら、あなたはもうここにすらいなかったんだ。

 

私はあなたから殺されても文句が言えないほどのことをした。

なのにどうして、なんで。

 

あなたはそんなにも、私を慈しむの。

 

 

私はどこで…間違えたんだろう。

 

 

 

 




『大城トレーナーはヅラだった!?脱税疑惑や担当との淫行行為も!?』
「…ケッサクだな。」
「…マジでぶっ殺すぞ」
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