7s Sprinter   作:マシロタケ

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2000mの世界
海へ


「マーシャルさんったら、少し甘いのではないんですこと?」

ガタガタと路面の影響を受ける、荷物を大量に積んだバンの後部座席で、メジロマックイーンは腕を組んで不満を垂らしていた。

 

「まぁ、本人がそれでいいってんならもういいじゃん。それに、そんなにプリプリしてると~?」

トウカイテイオーがニヤっと笑う。

 

「このゴルシちゃんが黙ってないぜ!」

そういってゴールドシップがマックイーンの膨れた頬をプニっとつついた。

 

「ちょ!ちょっとお二人とも!」

不意を突かれたマックイーンはムキっと赤くなる。

 

「お前ら、あぶねぇから大人しくしてろ!」

ルームミラーにてその様子を見かねた沖野はため息交じりにそういった。

 

「でも、確かに私も甘いと思うわ。自分の名誉をあれだけ汚されたのに、私なら絶対黙ってない。それを許しちゃうだなんて…。」

スカーレットは窓枠に肘をついて、外を眺めながらそういった。

 

「俺は最高にカッケェと思うけどな。自分の敵に手を差し伸べられるなんて、俺にはマネできねぇや。」

ウオッカはスカーレットの真横で、彼女とは反対の方向を向きながらそう言った。

 

「でも何はともあれ、マーシャルちゃんが無事に復帰できてよかったです!」

スペシャルウイークは遠足ばりに用意した菓子を食しながら言う。

「そうね。あれだけの強い精神…私も見習わなくちゃ。」

とサイレンススズカは前を走るものが何もいない、フロントウインドウを眺めながら満足そうにそういった。

 

「で?そのマーシャルセンパイは?」

とウオッカが訊く。

 

「現地で合流だ。俺たちのほうが先に着く。ちょっと遅れてくるそうだから、待ちになるな。」

そういったときだった。

 

彼らのバンの背後からウオンウオンと唸るようなサウンドが忍びよってくる。

沖野はバックミラーでその音の元を視認する。

彼にはその音の正体がすぐに分かった。

 

「…ウソだろ。俺たちのほうがずっと早く出てるハズなのに。」

そのサウンドは益々音を重ね、もはやバックミラーを見ずとも、すぐ背後にいることが感じ取れるほどに迫った。

 

「…?なに?」

スカーレットが窓枠を覗き込む…その瞬間。

 

一台の白いポルシェが、爆音と共に圧倒的なスピードで、そのバンをまるで止まっているカメのように抜き去っていった。

 

バンのフロントガラスには、そのポルシェの背中が。

唸るエキゾーストサウンドはドップラー効果でまた違ったサウンドを演出する。

そしてそのマフラーからは、後ろを走るバンに合図をするかのように、ボッと一瞬火を噴いた。

 

「トバしすぎだろ…大城さん。」

沖野は唖然とした。

 

「ちょ…ちょっとなんなのあれ?」

スカーレットも一瞬の光景に目を丸くした。

「911…GT3ってマジかよ!やっべぇ!スッゲェ!!」

ウオッカは食い入るようにその車の背中を目で追った。

「それってすごいの?」

「知らねぇのかよ!ポルシェの新型だぞ!510バリキを誇るバケモンだよ!100km/hまで3秒…それでしかもターボなしっていうんだからさ!」

「さ…3秒!?」

 

その加速力は、彼女らの世界では途方もない。

次元が違うとはまさにこのことか。

 

全員が唖然としている中、それをよしとしない者もいた。

「おい!何やってんだよ!抜かれちまってんじゃねぇか!!それでもアタシらのトレーナーか!?」

そういってゴールドシップが自分の席を抜けて、運転する沖野に背後からつかみかかった。

 

「ゴールドシップさんの言う通りですわ!レースに生きる者、ただで抜かされて黙っていられませんわ!」

急にスイッチの入ったマックイーンも言った。

「先頭の景色が…。トレーナーさん…。」

スズカも縋るように言う。

 

「バカいうなお前ら!!あんな車とじゃあ比べもんになるか!!」

 

――――――――――――

 

「飛ばしすぎですよトレーナーさん!」

「はっはっは!何が悲しくてあいつらのケツ追っかけてなきゃいけねぇんだよ!」

そういって大城はエンジンブレーキを使って静かに減速する。

 

バックミラーからはすでに、スピカたちが乗ったバンは消えていた。

 

「まったく!またお巡りさんに怒られても知りませんよ!」

「心配御無用、警察にも知り合いは沢山いるのヨ。」

 

二人がそういった時だった。

 

車の窓の外から民家や鉄道などが一気に消え失せ、一面光り輝く海が広がった。

 

「うわぁ…海だぁ…。」

その光景に、マーシャルの目は光り輝き、尻尾は無意識に揺れる。

「海だぁって、お前海育ちだろ?」

「海育ちはそうですけど、堤防とかばっかりでビーチはあんまりないんですよ。だからちょっと楽しみなんです!」

「ほぉ、そりゃ結構。今回は嫌というほど泳いで走ってもらうぞ。」

「はい!」

 

――――――――――――

 

「よォ!遅かったな!アクセルペダルでも折れたか?帰りは牽引してやったほうがいいか?」

海岸の駐車場で、ポルシェを背に煙草を咥えた大城は、やっとたどり着いた沖野達に向かってそういった。

 

「こんにゃろお!小島ぁ!!」

ゴールドシップが大城にガンを飛ばす。

 

「勘弁してくださいよ大城さん…。マーシャルは?」

「先に準備してるさ。お前らもとっとと行ってこい。」

そういって大城は煙草の火を消した。

 

――――――――――――

 

「…沖野よぉ、お前どれがいい?」

「そうですね…お、あそこの長髪黒髪美人なんて悪くないっすねぇ。」

「ああいう清楚っぽいの、お前好きだよな。だが、ああいうのは稀に地雷だぞ。」

「大城さんはどうだっていうんですか?」

「そりゃあまぁ、出るトコでてて、ちょっと遊び慣れてるカンジってのがオヤジの心を擽るもんなのよ。」

 

その時、白くしなやかな体のラインに、豊満なそれ(・・)を引っ提げた、大人の余裕香る女性が、アロハシャツにサングラスをはめてビーチベッドに寝そべる二人の前を横切る。

 

二人はその女性の背中を目で追う。

「…悪くねぇ。」

「…ですね。」

 

そういって二人が視線を前に戻したとき、そこに水着姿のウマ娘たちがズラッと腕を組んで並んでいた。

 

「何…してるんですの…お二人とも?」

マックイーンが静かに言った。

 

「そりゃま、目の保養よ。海に美人は付きモンだろ?」

「ほぉ…私たちが事前準備に励んでいるというのに、当の指導者であるあなた方は…鼻の下を伸ばして、いいご身分ですこと。」

 

「いや、ま、マックイーン!落ち着けって!」

沖野はマックイーンの殺気を感じた。

 

「大体!美人なら目の前にいるではありませんこと!」

マックイーンの声と同時に、スピカメンバー+マーシャルはふんとドヤ顔を決める。

 

「…なぁ、沖野あそこのブロンドギャルなんてどうだ?」

「マジすか。あれ子連れでしょ?」

と大城と沖野の目線は海のギャルたちに戻る。

 

「…いい加減に…なさい!!!」

そういってトレーナー二人は、担当ウマ娘たちに蹴り上げられ、海へダイブしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「…お前褐色美人と白肌美人ならどっち派だ?」
「…白肌ですかねぇ。」
二人は海にプカプカ浮きながらそう言った。
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