7s Sprinter   作:マシロタケ

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夏合宿トレーニング!

私はどうやら、砂場というものを甘く見ていたらしい。走りにくいなんて生易しいものじゃない。

ターフのような路面からの反発を得られずに、思うように前に進めない。

地面を蹴っ飛ばそうにも、柔らかく深い砂に力が吸収されてしまう。

 

それに、足場が全く安定しない。

少しでも気を抜こうものなら、砂に足を持っていかれて、強制スライディング。

 

ダートすらも走ったことのない私にとっては、未知の感覚だ。

でも…上等!

 

不利な条件こそが、私を強くしたんだ。

重い蹄鉄だって、不慣れな呼吸法だって、7秒だって!

 

――――――――――――

 

「マーシャルさん!もう少しですわ!」

ゴールでは、マックイーンがドリンクとタオルを持って手を振っていた。

 

「ほらほら!がんばれ~!急がないと…ゴルシが追い付いちゃうぞ!」

と、マーシャルと並走をするテイオーがいう。

 

マーシャルはちらっと横目で後ろを見る…そこには。

 

「はーっはっはっは!!!待ちやがれってんだ!!お前のレッドをパープルかバイオレットにしてやる!!」

といいながら、まるで砂の上を走っているとは思えないほどの地響きを立てて、ゴールドシップが迫ってきている。

 

「ひ…ひえええ!!」

後ろを向いたことを後悔したマーシャルは、その場から全力スプリントモードへ入る。

 

その際、思いっきり蹴り上げた砂が…ゴルシの目へゴールイン。

 

「めがあああああああああああ!!」

 

そのままゴールを切ったマーシャルだが、そのゴルシの断末魔を聞くやいなや、マックイーンからのドリンクも受け取らずに彼女のもとへ。

 

「ご、ごめんなさい!!ゴルシさん!大丈夫!?」

「大丈夫ですわマーシャルさん。この方の目は鋼鉄でできておりますから。」

 

そういってマックイーンはポンとマーシャルの肩をたたいた。

 

――――――――――――

 

「…ふぅ。」

一通り走り込みを終えた一行はペタリと日陰に身を寄せ合う。

 

「もうちょっとあっち行けよ、暑いだろうが!」

「何よ!あんたがそっちに行きなさいよ!」

「ゴールドシップさん、もう少し離れていただけると…。」

「いやぁ、マックイーンの二の腕冷たくて気持ちいいんだよぉ。」

「え!ほんと?じゃあボクも!」

「ちょっとお二人とも!」

「マーシャルちゃん、お水大丈夫?」

「うん…ありがとう。スペちゃんの分は?」

「えへへ、もう全部飲んじゃった!」

 

そこへ、沖野の姿が。

「よぉし、お前ら十分にクールダウンしておけよ!この次は水中トレーニングだ!」

「よっしゃあ!涼しくなるぜぇ!」

ウオッカが雄たけびを上げる。

「バカね。水中こそ熱中症の危険があるのよ。ノンキでいいわね。」

「うっせぇんだよお前はグチグチ!」

「…お前らが一番熱いぞ。」

 

そんな彼女らのやり取りをよそ眼に、マーシャルは周りをキョロキョロ。

「沖野さん…私のトレーナーさんは?」

「え?大城さん?…さっきまでその辺にいたんだけどなぁ、煙草か?」

「もしかして…あれじゃあ。」

 

そういってスズカがそっと指をさす。その先に大城はいた。

若い女に囲まれて。

 

「はぁ?女子大生だと!?サバ読んでんじゃねぇだろうなお前ら。」

「ホントだって!そういうオジサンはどうなの?」

「俺か?…まだアラフォーよ。」

「絶対嘘!」

 

そういって若い女たちに相手に満更でもなさそうな大城に、ウオッカとスカーレットが動いた。

「…やるぞ。」

「…ええ。」

そういって腕を鳴らして。

 

「「うおおおらあああ!!」」

と、ダブルラリアット。

 

「ぐわああっ!!」

どさっとその場に沈んだ大城を見た女子大生たちは、悲鳴を上げながら一目散に去っていった。

 

「…なにしやがんでぇお前ら。…もっとオヤジをいたわれってのよ。」

「何してるってのはセンセのほうだろ!?マーシャル先輩が頑張ってるってのによ!」

「ダイジョウブだよ。あいつは…ほっといても頑張んのよ。」

そう首をさすりながら大城はいう。

 

その大城を冷ややかな目で見ながら、マーシャルは言った。

「トレーナーさん。…真面目にやってくれないと、椿さんにいいつけちゃいますよ!」

「あ…そりゃマジ勘弁。」

 

――――――――――――――

「…トレーナーさん。どうして私だけ、競泳トレーニングに浮袋付きなんですか?」

「なんでってそりゃあ、お前途中でスタミナ尽きて溺れ死なれちゃたまらんだろ?」

「そうだとしても…。」

その浮袋は、ピンク色のちょっと可愛らしいデザインの入ったものだった。

 

「もう少し、シンプルなのなかったんですか?」

「いや、自前用意するハズだったんだが、忘れちまってな。そこの海の家で売ってたヤツなのよ。…小学生用の。」

「しょ…小学生用…。」

その言葉に唖然とする。

 

「まぁちょうどいいみてぇだし、いいじゃねぇの。死ぬよりかは。」

「私のこと、いくつだと思ってます…?」

「いいから行ってこい!」

そういってトンとマーシャルの背中を押した。

 

(私…こんなものなくったって!)

そう憤るマーシャルだったが。

 

「…大丈夫?」

「お、生きてら。」

「浮袋…ちゃんと空気は入ってますね。」

数分後に、マーシャルは海岸であおむけ。

 

「…お前って、スタミナ不足以前に、カナヅチだったのか…。」

大城は呆れたようにそう言った。

 

 




「その浮袋、記念にやるよ。」
「…ほしくないです。」
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