7s Sprinter   作:マシロタケ

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拝啓 勝手なあなたへ

お元気ですか?

 

…って言うのはやっぱりちょっとヘンですよね。

 

でも、私は元気です。

 

時間の流れはあっという間で、気は付けばもうあの天皇賞の日から結構な日にちが経っていました。

 

途方もない程に長いようで、あっという間と言うほどに短かったような日々でしたが、その間にいろいろなことがあったんですよ。

 

例えば、ギアちゃんとモモちゃん。二人とも晴れてGⅠ選手としてレースに出走したんですよ!

ギアちゃんは大阪杯へ、モモちゃんはフェブラリーS!

 

気合十分なギアちゃんは、最後の追い込みで後方に2バ身差をつけて見事な一着を!

モモちゃんは…寒さで調子が出なかったらしく、5着だったみたいです。でも、暖かくなってきたこの頃はとても調子がいいらしく、今は帝王賞に向けて猛特訓中だとか!

 

そして私は、函館スプリントSと葵Sを経て今はマイルCSに向けての調整中です。

マイル戦でも、あなたと編み出した中距離用の7秒が確りと通用するんですよ!それが終われば…次は高松宮記念に向けて。

 

レース、レースの日々が続いてますけど、それでも私は楽しんで走れてます。

 

…そうだ。レースといえば。

私この間、地元の地方競技場に招かれて、エキシビジョンレースをしたんですよ。

記録に残らない、デモンストレーションのようなレース。

なんだか地元のヒーローとして呼ばれたらしくて、私もちょっといい気分になってそのレースに臨もうとしたんですけど。

 

 

私はそこで、とんでもない相手と戦うことになりました。

 

 

その相手は…。

 

 

バクシンオーさんやスペちゃんよりも、もっともっと手強い相手でした。

 

その相手が誰かは、あえて言いません。結果も。

だってきっと、あなたも見てくれていたハズなんですから。一番の特等席で、きっとお酒でも飲みながら。

 

そういえば、ちょっと話が変わるんですけど、私最近新しい友達ができたんですよ。

その方は長永春華さんっていう方で…知っての通り、あなたの娘さんです。

 

たまに一緒にお買い物に行ったり、お食事に行ったりしてるんですよ。

 

春華さん、今は東京に一人暮らしで、一般企業に勤めてるみたいなんですけど、その陰でトレセン学園のトレーナーになるために、必死に猛勉強してるんです。

…あなたの背中を追いかけたいんだって。

 

…私と同じ。

私も、始まりはお母さんの背中を追いかけたい憧れからだったから。

 

だから春華さんにはとても頑張って欲しいって思ってますし、春華さんならきっとなれるとも信じています。

だって、あなたの血を引く、強い信念の持ち主なんですから。

 

きっとあなたに負けないくらいの、一流のトレーナーになってくれると、そう思ってます。

 

彼女の率いるチームがどんなチームになるのか、すごく楽しみですね!

 

 

 

…チームといえば。

 

 

そうだ。

 

 

これは言っておかなくちゃいけないってことがあります。

 

私、あなたが居なくなってから、随分と落ち込んだ日々が続きました。

一時期は、本当にターフに立てなくなってしまうくらいにまで。

 

でも、そんな私を助けてくれたチームがあったんです。

それがチームスピカ。

 

スピカの皆は、本当に凄くて、一人一人が誰にも負けない信念を持っていて、一人が迷えば、皆が一丸となって支えてくれる。

私もそれに、大きく支えられました。

 

チームスピカに所属してからは、とても楽しい日々が続きました。

またあの海で、皆とトレーニングして、レースがあれば皆で応援して、ファン感謝祭では…焼きそばを作って売って。

 

最近、私焼きそば作るの上手になったんですよ。ゴルシさんから免許皆伝をいただきましたから!

 

…そんな楽しい日々が、夢のように。

 

私は、スピカの皆が大好きです。

自暴自棄になってた私を、見捨てないで支えてくれた、沖野さんや皆が。

 

本当に皆には感謝してもしきれないほど、感謝しています。

 

 

…でも。

 

 

 

私は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スピカを脱退することに決めました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベテルギウスに戻ることを決意しました。

 

 

 

 

 

 

…こんなこと、またあなたにバカって言われちゃうかもしれない。

でも、私はもう一度ゼロに戻って、原点に戻ってやり直したいって、そう思ったんです。

 

もう一度、今度こそはあの子たちの先輩として大事なことを教えられるように。

今度こそは、ちゃんとチームの一員として、チームを前へと推し進められるよう。

 

…宮崎さんだって、一度は私を信じてくれた方なんです。

だから、もう一度だけ、私は宮崎さんを信じてみたいと思ってます。

 

スピカの皆には、本当に申し訳ないと思っています。

でも、沖野さんは、自分の信じた道を行っていいって、そう私に言ってくれました。

 

チームの皆も、笑顔で私を送り出してくれました…ゴルシさんだけは大号泣してましたけど。

 

ベテルギウスとしての再出発、迷いが全くないとは言い切れません。だけど、後悔はしていません。

 

これが私の。

 

 

 

ロックに生きるということだと、思ってますから。

 

 

 

…ちょっと長くなっちゃってごめんなさい。

本当は、まだまだ手紙に書ききれないほど、あなたに伝えたいことは沢山あるんですが、この辺にしておかないときっとあなたが『まだあるのかよ、なげーぞ』って怒っちゃうかもしれないから。

 

でも最後にこれだけ。

 

 

 

本当にありがとう

 

 

 

 

 

大好きなトレーナーさん。

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたの超絶可愛い担当ウマ娘 レッドマーシャルより。

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