神々の世界にファーさんがいるのは間違っているだろうか?   作:セフィム

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改訂版4話 パンドラ・ファミリア

 オラリオに響く大絶叫。

 地面に蹲るベルを後ろからついてきたアストレア・ファミリア団長であるアリーゼ・ローヴェルは、自分の弟のように可愛がってきたベルに急いで駆け寄る。

 

「ベル! 大丈夫、ベル!?」

「は、はい……大丈夫ですぅ」

「な、何なのよあいつ! 本当にベルのお兄さんなの!?」

「そうですよ……兄さんはお義母さんと同じで煩いのは嫌いな人なので……」

 

 ベル・クラネルの容姿や性格が実の両親に似ているのに対して、ルシファー・クラネルは義母であるアルフィアに容姿や性格がよく似ていた。

 

 アルフィアに似て騒音を嫌い静寂を好み、アルフィアとザルドが来る前は騒ぎを起こすスケベ爺を容赦なく家からたたき出したり落とし穴を作って叩き堕としたりした。

 それはアルフィアたちが来てからも変わらず、ザルドはその光景に思わず「アルフィア。お前、本当に子供を産んでないんだよな……ルシファーはお前に似て容赦がなさすぎるぞ」と呟くほどだ。

 

 ベルはアリーゼに手を貸してもらいながら立ち上がると、再びルシファーの下に駆け寄ると嬉しそうに笑って抱きついた。

 

「……兄さん。良かった、また会えて」

「……」

 

 ルシファーは沈黙したままだが、抱きついてきたベルを突き放すことはせずにただ黙ってその抱擁を受け入れた。

 その光景に面白いものが見れたと笑うパンドラと七年ぶりの感動の再開に微笑むソーンやアリーゼたち。

 

 数分にも及ぶ抱擁を終えたベルはルシファーから離れて笑顔を浮かべる。

 ルシファーは再会を喜び笑みを浮かべはしないが、懐から一つの分厚い本を取り出してベルに差し出す。

 

「兄さん。これは?」

「……『アルゴノゥト』の原典とされる手記を俺自らが書き写した本だ。内容は今市販されているものとは全く違う。お前に会った時に渡そうと思っていた」

「『アルゴノゥト』の原典!? アルゴノゥトは実在するの!」

 

 ベルの言葉にガネーシャ・ファミリアに所属する少女は本に穴が開くほど見つめ、遠くから様子を見守っていた人々も御伽話だけの存在だと思っていたアルゴノゥトのことに興奮する。

 

「実在するのだろう。事実そいつが綴った手記があるのだからな」

 

 淡々と言葉を紡ぐルシファーから本を受け取り大事そうに抱えるベルは、この本に書かれている物語も気になるが、今はそれ以上に兄のことが気になった。

 自分と別れた後の兄がどのような道を歩んで来ていたのか、後ろに控える女神や自分が来たばかりの頃に知り合ったソーンという女性たちとはどうであったのかを。

 

 話を聞こうとベルが口を開いたその時、それよりも先に口を開いた者がいた。

 

「すまない。水を差すようで悪いが少しいいかな?」

 

 声のした方に兄弟揃って目を向けると、槍を持った金髪の小人族が少し申し訳なさそうな顔をしながら立っていた。

 その後ろには緑髪のエルフ、さらに近くにはショートヘアーの少女が二人立っている。

 

「誰だ」

「はじめまして、僕はフィン・ディムナ。ロキ・ファミリア団長を勤めている、僕の後ろにいるハイエルフは……」

「リヴェリア・リヨス・アールヴ。同じくロキ・ファミリアの副団長を務めさせてもらっている」

 

 二人の名前とファミリア名にルシファーは、そっと目を細めるもすぐに視線を外してその近くにいるショートヘアーの少女たちにも視線をやる。

 

「……」

 

 暗にお前たちは誰だと問われ、慌てて自己紹介をする少女たちよりも先に後ろに控えていたソーンが彼女たちが誰なのかを説明した。

 

「彼女たちはガネーシャ・ファミリア。右から団長のシャクティ・ヴァルマとアーディ・ヴァルマ。あなたの弟さん、ベル君が所属しているアストレア・ファミリアと同じくこの街の治安とかを守っているファミリアよ」

「それで、何の用だ」

「いや、なに。突然正体不明の船、しかも空を飛ぶ船がやってきて無視するなど無理だからね」

「戯言はいい。用件だけを言え」

 

 ルシファーの言葉に思わず苦笑いを浮かべるもフィンは、直ぐに真剣な表情になる。

 

「君たちは何者だい? それにあの船は?」

「……」

「えっと彼は私たちパンドラ・ファミリアの団長、ルシファーでその隣に居るのが……」

「パンドラだ」

 

 フィンを見つめるだけで何も答えないルシファーに代わってソーンが説明する。

 今まで後ろでベルを観察していたパンドラは、フィンやリヴェリアにも目を向けるが直ぐに視線をベルへと戻す。まるで貴様らなど興味がないというように。

 

 余りにも自由奔放な二人にソーンとリヴェリアは思わず頬を引きつらせる。

 フィンは「君がパンドラファミリアの団長か……」と呟きながら値踏みするような目でジロジロと見つめているとソーンがあれ、と声を漏らした。

 

「私。アーディに明日私たちの団長たちが乗った空飛ぶ船が来るって伝えておいたんだけど」

「えぇ、私!?」

 

 まさか自分の名前が呼ばれるとは思っていなかったアーディは驚きの声を上げるが、確かに昨日の女子会でソーンがそんなことを言っていたなと思い出す。

 例えそうでも空を飛ぶ船など冗談にしか思えない故にアーディはその話を聞き流していた。

 

「あの船は俺たちパンドラファミリアの拠点(ホーム)であり、移動船だ。何か文句でもあるのか」

「いや、文句はないよ。君たち――――――」

「ルシファー」

 

 優しい旋律がフィンの話を遮った。

 皆が旋律、声聞こえた方へと視線を向けると、紫色の髪を黒い剣状のかんざしを差してポニーテールにしている小人族がルシファーのローブの裾を掴んでいた。

 

「ニオか。どうした」

「ルシファー、早く戻ってきて」

 

 彼女の名はニオ。先にオラリオでパンドラファミリアの名を広めた存在の一人である。

 オラリオに主神であるパンドラが不在だったこととレベルアップの報告もなかったために、二つ名を付けることはまでできてはいないが、その強さと武器にしている琴から非公式であるが皆から『繊細の魔奏者』という二つ名を持つ。

 またロキ・ファミリア団長のフィン・ディムナに続き小人族からの人気もかなり高い。

 

「向こうにはルシフェルが居るだろう。指揮系統には何の問題はないはずだ」

「彼の旋律もいいけど。あなたが、あなたの旋律を聞きながらがいいの」

 

 ニオはまるで駄々をこねる子供のようなことを言うと、必死に背伸びをしてルシファーの胸に耳を近づける。

 

「……落ち着く」

 

 カラン。と突然何かが地面に落ちた乾いた音が静かに、だが酷く大きく聞こえた。

 音の発生源は。先ほどまでルシファーと腹の探り合いをしていたロキファミリア団長のフィン・ディムナだった。彼の持っていた愛用の武器である槍が落ちた音だった。

 

「ニ、ニオ。そ、その、団長であるルシファー・クラネルとはどのような関係何だい?」

「どうかしたの、フィン・ディムナ? ルシファーと話している時は普通だった旋律が私と話をしている時、いえそれ以上に速いリズムでしかも物凄く乱れてるわ」

「ッ! そ、それは……!」

 

 ニオは、人の感情を旋律として聞き取る力を有する。

 それ故に今フィンが今どのような心境であるのかを手に取るようにわかってしまう。ニオに悪意はなかったとはいえ、この場にいる鈍感なベルやニオ以外の人物たちはフィンの心の旋律にニオにどのような想いを寄せているのか察してしまう。

 

 何ともいたたまれない空気。状況をわかっていないニオとベル以外はどうしたのかと首をかしげるばかりの中で、助け船を出したのは意外にも先ほどから笑いを堪えているパンドラだった。

 

「ふふ、ルシファー。せっかくの兄弟の再会なんだ、ホームかどこかの喫茶店で話して来たらどうだ? それにそちらは遠征か何かの準備をしていたのではないか?」

 

 パンドラは後方で待機してこちらを伺っているロキ・ファミリア団員たちに目を向ける。

 彼らの持っている道具や装備は正体不明の船、グランサイファーのことを確かめ万が一のための戦闘準備にしては荷物が多くテントや木材を持っている者もいる。

 まるで何処かへ行く寸前だったが、グランサイファーを見て持っていた装備をそのまま持って来た。という感じであった。

 

「あ、ああ、僕らはこれから深層に行く予定でね。君たちが危険人物ではない以上、もう問題はないだろう。では」

「お、おい、フィン!」

 

 まるで現実から逃げるようにしてその場を去り、ダンジョンに向かうフィンをリヴェリアや団員たちは急いで追いかける。

 

「どうしたのかしら?」

「疑問に思う前にまず離れろ。ベル、話は明日以降にしろまだやらなければならないことが山ほどある」

「う、うん。わかったよ兄さん。じゃあ、明日ホームに来てもいい?」

「あぁ」

 

 短く返事をしたルシファーは踵を返すとソーンやパンドラ、ニオを連れてホームに帰っていく。

 ベルもアリーゼと共にアストレアやファミリアのところに戻って行った。

四大天司の使徒登場はあり無し?

  • あり
  • なし
  • それより他キャラを出してくれ!
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