神々の世界にファーさんがいるのは間違っているだろうか? 作:セフィム
ルシファーたちパンドラ・ファミリアがオラリオに来てから翌日、ベルは自身と同じファミリアの姉二人を連れてとある開店前の喫茶店に来ていた。
「ここね! ソーンが来るように言ったお店は!」
「そうだけど、アリーゼさん……このお店まだ開店してないよ?」
ベルたちが喫茶店に来た理由、それは兄ルシファーに会うためだ。
今朝朝食の準備中にルシファーと同じファミリアに所属し、アストレア・ファミリアと仲の良いソーンが来訪し、目の前の喫茶店に来るように伝言を伝えたのだ。
そしてやってきた喫茶店の扉には来週オープン予定と書かれた紙が貼られていた。
しかし、ベルのスキル
「あの男が指定した時間はこの時間なのだろう? なら問題ないだろ、さっさと入るぞ」
アリーゼともう一人、ベルについてきた姉、アストレア・ファミリアの副団長ゴジョウノ・輝夜はグズグズと躊躇するベルに変わって扉を開けようとしたその時、喫茶店の扉が開いた。
「おや、時間通りですね」
「に、兄さん!?」
扉を開けて出てきたのは銀髪の美青年だ。
アリーゼは昨日会ったルシファーの性格が大きく変わったことに驚き、ベルはスキルのこともあって目の前の青年が誰なのかと大きく混乱していた。
ベルのスキル、家族を探し、愛する者はレベル応じて家族の居場所を特定でき、家族ステータスアップ微付与。さらに家族が近くにいれば自身のステータスアップと微早熟することができるものだ。
家族の居場所がわかる。故にまだ店内に兄の反応があり、目の前の青年からは反応がない。
「あなたは……誰ですか? 兄さんじゃない、ですよね」
ルシファーではない。そのベルの言葉に輝夜はすぐさま戦闘体制にはいった。
昨日、大勢の前でルシファーとベルが会うことを約束したのだ。何処かの馬鹿またはアストレア・ファミリアに恨みを持つものが腹いせにベルに酷いことしようと計ったのではないか?
そんな考えが輝夜の脳裏に過る。
戦闘体制に入った輝夜によってピリついた空気になっているというのにルシファー似の美青年はマイペースに言葉を紡ぐ。
「えぇ。私はあなたのお兄さん、友ではありません。初めましてベル・クラネル、私の名はルシフェル。パンドラ・ファミリア副団長を務めさせてもらっています。さぁ、どうぞ中にお入りください」
「ルシフェル? 名前まで似てる」
「別に不思議なことはありません。世界には同じ顔をした人間が三人はいると言いますから」
「そうだとしても似すぎだ! 貴様本当に何者だ!」
ベルとルシフェルの間に割り込み警戒を解かない輝夜をルシフェルは困った顔をしながらどうするべきか考える。
「えっと……あなたはソーンから報告のあったゴジョウノ・輝夜でしたね。何者と言われましても私は私ですから」
「まぁ、いいじゃない輝夜。それを含めて話してもらいましょう!」
吞気にそんな事を言うアリーゼに思わず睨みつけそうににある輝夜だが、二人は視線だけで会話をする。
――――もしもの時は、すぐ対処すればいいじゃない。
――――だが、遠目からしかあの男を確認していない私でもこのルシフェルとかいう者は容姿が似すぎているぞ!
――――それを含めて聞くのよ。それにあのソーンがわざわざ私たちを嵌めるようなことをすると思う?
――――確かにソーンがこんなことをするとは、思わないが……
――――ね! まぁ、一応警戒はしておきましょう。
時間にして約5秒。一瞬でやり取りをしたアリーゼと輝夜は警戒を怠らずにゆっくりと店内に入って行く。
店内は木目調を基調としたシックに纏められており、アストレア・ファミリアの行きつけである豊穣の女神という酒場に何処か似た温かみと優しさ、親しみやすさがある。
そんな店内を包み込み香り立つ珈琲の深い匂い。
珈琲の匂いを肺一杯に吸込みながら、店内にいるルシフェルを探し当ててアリーゼたちは思わず息を吞んでしまう。
そこには、暖かい日の光が当たる窓際のテーブル席に座るルシファーが居た。
居たのだが、ルシファーは実の弟のベルからしても身内贔屓無しに美形である。昔義母と共に村近くの大きな町に出かけた際は老若男女問わず見惚れさせ町中の女性に声をかけられていたほどだ。殆どはルシファーの拒絶と辛辣な言葉、アルフィアの睨みで鎮圧されたが……
美の女神に並ぶ美の男神。そう言っても過言ではほど容姿に優れたルシファー。
日の光に当てられ鈍く光る銀髪に真剣な眼差しで手元にある書類に目を通す姿は、それだけで絵になりアリーゼと輝夜、ベルを釘付けにした。
「ルシファー様。珈琲が入りました、それとこちら試作のケーキです」
「あぁ」
カウンターの奥から出てきたコーヒーサーバーを手に持つ茶髪の少年。彼もまた劣らず容姿が整っているが故にルシファーと二人並んでも絵になってしまう。
「友よ。皆を連れてきた」
呆然とルシファーと茶髪の少年を眺めるアリーゼたちを連れ戻したのは、隣にいるルシフェルの一声だった。
「時間通りだな……どうした、突っ立ってないで座ったらどうだ」
「え、えぇ」
未だ呆然とするアリーゼたちを放ってルシフェルは「私は一時拠点に戻る。サンダルフォン、すまないが友を頼む」と言い残すとそそくさと店を後にする。
アリーゼたちは、恐る恐るルシファーの座る席へと着席する。
「えっと、兄さん。このお店は?」
「これはそこのサンダルフォンが店をしたいと言い出したからな。それにベリアルとシェロカルテが便乗して、色々な過程をへて喫茶店兼万事屋兼質屋になった」
「「「(色々な過程って何!? そしてこの店って三つも兼任してるの!!?)」」」
ルシファーが軽く視線をサンダルフォンに向ける。
「初めまして、俺……私はサンダルフォン。この喫茶店兼万事屋兼質屋、『青空亭』の喫茶店を取り仕切っています」
「私はアリーゼよ! で、こっちが輝夜とベルよ!」
「あ、あぁ。よろしく」
アリーゼの元気溌剌さに思わず気圧されてしまうもルシファーのアイコンタクトでカウンターの奥へと消えてしまう。
だが、奥から珈琲のよい匂いが店内を満たす。
五分もしないうちにカウンターの奥から戻ってきたサンダルフォンの手には珈琲の入ったカップと色とりどりのケーキが載ったトレーを持ってくる。
「それで、何から聞きたい」
「えっと、まずはルシフェルさんのことから聞きたいな」
そうしてベル、輝夜はルシファーからルシフェルと何処で出会ったのか、どのような冒険をしてきたのか。時間の許される限り質問をして話を聞いていった。
アリーゼはというと出された珈琲とケーキの美味しさに殆ど話を聞いてなかったとか……
ルシファーとベルたちが喫茶店『青空亭』で過ごしていたのと同時刻、オラリオの中央に聳えるバベルの塔の地上三十階。
そこでは、急遽開かれた緊急の
神会。それはもとをたどれば一部の神々が始めた退屈しのぎのために開いた一種の集会だった。
最初はただの歓談。だが奔放な神たちが一定周期で一か所に集まるそこは時代が流れるにつれて目的は変わっていき、いつしか駄弁の場が神々の情報共有の場になって行った。
そこにギルドまでも提携して巻き込む『催し』企画するまでになり、諮問機関として認められた神会は一定の力を有し、その影響力は冒険者にも及ぼしている。
そんな神会の会場は、非常に緊迫した空気が流れていた。
いつも馬鹿騒ぎや悪乗りで茶化したりして、自身の娯楽を満たす多くの神々がこの時だけは姿勢を正して始まる時が来るのを黙って待っている。
もしこの場にロキ・ファミリア団長のフィン・ディムナやフレイヤ・ファミリア団長のオッタルがいれば目を疑っていただろう。
それほどまでに異様な光景だった。
そしてついに神会の始まる時間となり、会場の入り口からコツコツと靴の音が響き一柱の女神が姿を現す。
女神の登場に会場に居る神々は思わず息を吞んでしまう。
ほとんどの神々は整った容姿をしているが、その女神はこの場に居る神々の中でも群を抜いて整っていた。まさに
「よく集まりました、オラリオに住む神たち。わざわざ私の子たちのために緊急の神会まで開いてくれて感謝します」
ポニーテールにした長い銀の髪を揺らし会場に集った多くの神々を見渡しお礼を言う。
しかし、礼を言われた神々の誰もが心の中で、そんなこと微塵も思ってないだろ、と叫んでいた。
今回緊急神会を開く要因となった存在、パンドラ・ファミリア。
その主神たる災厄の女神、パンドラ。
天界に居た頃からパンドラは有名だった。彼女は神なのに神を嫌っている変わり者として神々の間で知られていた。特にオリュンポス系統の神々の相性は最悪で逆にパンドラが心を許している神など片手で数えるほどしかいない。
最初は、変わり者の神であるパンドラを揶揄おうとちょっかいをかける神は多くいた。
その神は誰一人例外なくパンドラの美しい美貌と巧みな話術、時には歌声で惑わされ次々と悲惨なめへと合わされていった。
時には大勢の神たちの前で恥をかかされ。時には友好だった仲を引き離され。時に戦争の火種になった時ですらあった。
そんなことをされて怒らない神はいない。
己の権能を。知略。武力。己の持つ力を使ってパンドラに仕返しをしようとした。
だが、その全てはことごとく失敗した。
逆により酷い仕打ちに合い神威や権能を奪われそうになった者や本当に殺されそうになった者だっていた。
それ以降、パンドラに関わろうとする神は一部を除いてほとんどいなくなった。
では何故、この場に多くの神々が集ったのか。
中には神会に全く参加しない神や都市在住ではない世界中を転々とす神だっている。
それは神々の好奇心だ。あのグランサイファーという船は何なのか、団長であるルシファーとは何処でどのように出会い、レベルはいくつなのか。
それともう一つ。こちらが神々にとって重要だ。
神会は冒険者たちに大きな影響力を持っており、その一端に称号の進呈がある。
基本的に称号の進呈は碌なものが無い。例えばへファイストス・ファミリアの
故に今回の称号進呈に余りにも痛すぎる名を付けてパンドラに天界での恨みを少しでもぶつけようとする魂胆で緊急だというのに多くの神々がこの神会に来たのだ。
「では司会は、このパンドラがやらせてもらいます。称号の進呈前にあなたたちにこれを配りましょう」
そう言ってパンドラは紙の束を席に座る神々に配る。
最初はパンドラの何かの企みかと身構える神が多かったが、紙の束に目を落とすと思わず固まり穴が空くのでないかというぐらい真剣に紙の束、書類を読み込む。
そこらからパラパラと紙同士が擦れあう音を響かせる中でパンドラは、嘲笑うような笑みを浮かべる。
「貴様らに配ったのは我がファミリア全メンバー、三十六名のステータスだ」
「……おいパンドラ。これは事実なんか?」
発言をしたのは赤髪糸目の女神。二つある迷宮都市最大ファミリアの片割れロキ・ファミリアの主神ロキだ。
配られた資料を上から手の平を叩きつけ、微笑むパンドラをロキは鋭く見据えた。
「おかしいやろ。ダンジョンの外でレベル9が一人。レベル8が三人。レベル7が十人以上なんて」
配られた資料にはパンドラ・ファミリア全員のレベルとステイタスが載っている。
非戦闘員であるノアやシェロカルテ、戦闘に興味のないユグドラシルはLv.2ほどだが、それ以外の団員たちはルシファー同様に異常にレベルが高く、最低ラインがLv.5など冗談にしか聞こえない。
「おかしい? 私は事実を述べただけだが?」
「ッ! しらばっくれるのいい加減せぇよ! ダンジョン外にてレベル4以上になることは
「そうだそうだ!」
「パンドラちゃ~ん、嘘はよくないよ~」
「私たちの子がレベルあげるのにどんだけ苦労してるのか知ってるの?」
「だいたいレベル9なんてどう考えても嘘だってわかるだろ」
「言ってやるなよ。パンドラは友達が少なすぎて他のファミリアがだいたいどのくらいのレベルかわかんないだよ」
「だよな~。可哀想なパンドラ」
ロキの言葉に他の神々も同意してパンドラを非難する。
「うちらの『恩恵』はこういうんもんやない。都市外でレベル5以上いけるんなら、世話ないっちゅう話や。それができへんから世界中の人々がオラリオに集まって神から恩恵を貰い命をかけてレベルを上げとんのやぞ!」
パンドラを非難する声がより一層増える。
中には資料を破ったり投げ捨てたりするものだっている。会場に散らばる資料の一枚がパンドラの足元とまで飛んでいく。
その紙を拾いパンドラは目を落とす。
書かれていたのは己の夫ルシファーの資料だ。
★ルシファー・クラネル
★レベル9
★スキル
・イヴ・オブ・シダクション
一定時間の間、自身の周りにバリア付与。
数分ごとに体力及び精神力を微回復。体力及び精神力が満タン時は防御力を微アップ。
・アウェイクニングス
闇属性魔法使用時に自動で追加攻撃。
★魔法
・パラダイス・ロスト
広範囲に闇属性のレザーの雨を降らせる。
・イブリース
ランダム属性の魔法攻撃
・サタナス・ヴェーリオン
詠唱:【
音による不可視の攻撃
スペルキー:【
その場に残っている音の魔力を起爆
もちろんこの資料には書いていない能力やスキルだって多くある。
だが、馬鹿正直に書けば自分たちの終末計画がばれてしまう恐れがある。故にルシファーと幹部たちで話し合いをしながら情報を最小限にして能力値から妥当だと思われるレベルを書いた。
「説明せぇやパンドラ。まさか
禁止されている『
会場が静寂に満ちる。
しかし、その静寂は女神の笑い声によって破れる。
その笑い声の主はもちろん会場の中央に立つパンドラだ。
「ふ、ふふふ、ふはははははは!」
「な、何や? 何が可笑しいんや!?」
「はは……いやなに流石道化なだけあって私を笑わせるとは中々面白かったぞ」
「なんやと!」
「一々嚙みつこうとするな、神の品性に関わるぞ? それにしても
神々を嘲笑い
「そもそも貴様らは何の根拠を持って我が夫たちのレベルを否定する? オラリオの外にもモンスターはいる。確かに取るに足らないものばかりだが、中には存在するのだ強力なモンスターがな」
そう言ってパンドラは。過去戦った強力なモンスターをつらつらと述べていく。
アルテミスの眷属たちが大昔に封印したアンタレス。
ゼウスが人間の女のために送り、いつしか魔物となってしまったアルデバラン。
ハデスの下から逃げ、その時の人間たちが封印したケルベロス。
海の中であらゆるものを吸込み食い散らかしてしまうカリュブディス。
モンスターの突然変異から生まれたキメラ。
大昔ヘラクレスという人間が討伐するも怨嗟によって蘇ったレグルス。
「我々はその怪物を倒してその
「……そんな作り話をうちらに信じろって言うんか?」
確かにパンドラが述べたモンスターの半数以上は実在する。多くの被害を生み出している。
だが、ロキたちはそれをはいそうだったのですか。と鵜吞みにはできない。
しかし、ここでパンドラのことを真実だと肯定する神物がいた。
「悪いがロキ、それは俺が保証するぜ」
「ヘルメス……!」
肯定したのは帽子を被った男神ヘルメス。
彼はファミリアと共に世界中を飛び回る存在だ。世界を飛び回っていれば嫌でも問題となっていたモンスターのことも耳に入る。
それは問題のモンスターが討伐されたとなればより耳に入るだろう。
「私もパンドラの言葉に噓偽りがないことを証明しよう」
「俺もキメラの時は居合わせた。パンドラの言うことは真実だ」
「ぼ、僕もパンドラのことは真実だと証明します」
ヘルメスに続きパンドラの話を肯定する神々が現れる。
彼らは皆、普段オラリオにいない都市外で働くファミリアの主神たちだ。
さすがに複数の神々が証言するのであれば、ロキたちはもう何も言うことはできない。
言ったところでただの言いがかりに過ぎなくなってしまう。
「ミカエルやニオ、シエテたちから報告は受けているぞ。ロキ、それにフレイヤ」
パンドラに名を呼ばれロキとフレイヤの都市最大ファミリアの主神は思わず身構えてしまう。
「貴様らはこの七年間一体何をしていた? 【勇者】や【猛者】たちが最後にレベルアップしたのは七年前の【静寂】と【暴食】を倒して以降無しだ。若手の育成をしていたとしてもダンジョンで未踏領域に進出した訳でもない。何だ? お前たちは自身の子たちを
「ッ!」
「言ってくれるわね……!」
「事実だろう。それで私に不正したのではないかと疑う。そんなに認めたくなかったか? 己の眷属の上を行く我が夫たちが」
何も言い返せない。だって全て事実なのだから。
フレイヤはともかくロキは頭が切れる一方で私情や私怨に捉われやすい性格だ。故に認めたくなかった自分たちの子が一番だと、信じていたかったのだ。
「本当に我が夫たちとは大違いだ。夫たちは広い世界をよりよく生きて行くために自分たちの知恵を絞り、行動してきた。その結果の一つがあの空飛ぶ船、グランサイファーだ」
勢いの乗ったパンドラの口は止まらずルシファーたちが成してきた偉業を述べていく。
科学と呼ばれるものを見出してそれを基本に色んなものを解明して、発明してきたこと。
そこから鋼鉄の走る生き物やより良い作物を育てるための農耕技術を編み出して革命を起こした。
ポーションに頼ることなく傷を病を治す薬や医術を作り出して西の大国で流行った病を治したこと。
今やオラリオやラキア、テルスキュラ、メレンを除いてパンドラ・ファミリアを知らぬ者などいない。
ロキはパンドラの言葉は全て噓だと思いたいが。それを
「さて。話が長くなってしまったが、いよいよ命名式だ。それでは始めるぞ」
パンドラに天界での恨みを少しでも晴らそうとやって来た殆どの神々やパンドラの不正を疑っていたロキたちは意気消沈してしまいパンドラ・ファミリア全員の二つ名は、パンドラが他の神たちに発言権を一切与えることなく終わってしまった。
四大天司の使徒登場はあり無し?
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あり
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なし
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それより他キャラを出してくれ!