神々の世界にファーさんがいるのは間違っているだろうか? 作:セフィム
昨日起きたミノタウロスの事件から翌日、ルシファーは星晶獣二匹を連れて昨日待ち合わせ場所にしていた迷宮前の広場で弟のベルとその仲間でアストレア・ファミリアを待っていた。
「兄さーん!」
遠くから弟、ベルの声が聞こえた。
そちらを向けば笑顔でこちらに走ってくるベルとその後ろを額に青筋を浮かべながら追いかけるアストレア・ファミリア副団長、輝夜の姿があった。
「お待たせ! 兄さん!」
「この駄兎さん。いくらお兄さんが好きだからとはいえ先に行かないもらえますか」
「うぅ、ごめんなさい。輝夜さん」
目が完全に笑ってない笑顔で叱られたベルは、しゅんと落ち込んでしまう。
その姿にため息をついた輝夜は、次は気をつけるようにと言うと視線をルシファーの後ろに佇む二人に向ける。
「なぁなぁ、ルシファー。はよ紹介してな」
すると、待ちきれないとばかりにルシファーの後ろに控えていた獣人族の女性はベルたちの前に出るとキラキラと瞳を輝かせる。
「……こいつはユエル。そして後ろに控えている奴がランスロットだ。お前の戦闘スタイルと似た存在だ、参考にしろ」
「ウチはユエル。アンタがルシファーの弟のベルやね。うわー、兎みたいでかわええな!」
「ユエル、彼に失礼ですよ。仲間がすいません、私はランスロット。ベル君、君の戦闘スタイルのアドバイスをということで来ました。よろしくお願いします」
今回ルシファーは、ナルメアの代わりに二人の星晶獣を連れていた。
一人は、大きな狐の耳と尻尾。耳には大きな鈴をつけた和風ジャージを着たレベル6、【狐火】の二つ名を持つ獣人族の少女。
ルシファーが造った星晶獣の中でも自由奔放、好奇心旺盛で掴みどころがないユエルはベリアルに続く問題児でもある。
もう一人は、濡れたような黒髪に切れ長の青い瞳を持つイケメン。その瞳と同じ青い鎧を身に纏う彼はレベル6、【氷の双剣士】の二つ名を持つヒューマンの青年だ。
二人の共通点はベルと同じ双剣でスピードを活かした戦闘スタイルを持っているため、何か参考になるかと思い連れてきたのだ。
「こ、こちらこそよろしくお願いします!!」
「ふふ、よろしくなベル。ほんなら早速行こうか」
「あ! ちょ、ちょっと!?」
「ユエル! 待ちなさい!」
ベルの手を握ってダンジョンに向かって駆けて行くユエルにランスロットは急いで後を追う。
その光景にユエルを連れて来たは間違いだったかと、ため息をつくルシファーは輝夜と共に後を追う。
ユエルの突発的で自由奔放な行動に不安を抱いたルシファーだったが、それはなんとか杞憂に終わった。
いきなり深い所まで降りるのかと思いきや5階層にて軽くベルの動きの確認をしていた。
「なるほどな~。ベルは
「えっと、何処か駄目なところがありますか?」
倒したコボルトの魔石を拾い終わったベルは、戦闘を見ていたユエルとランスロットから助言を貰おうとするも二人の顔には何処か困ったような顔を浮かべている。
「いや、問題があるというか~。なぁランスロット」
「ふむ。ベル君はナイフ、双剣のメリットを知っていますか?」
「え? は、はい! ナイフは小回りが利いて、双剣だと連続攻撃ができることです」
「そうですね。他にも守りが固くなるなどありますが、ではデメリットは?」
「えっと……わかりません」
双剣を使うデメリットを答えられず一気に落ち込むベルにランスロットは思わず苦笑してしまうもユエルと共に優しくフォローする。
「大丈夫やでベル。ベルは冒険者になったばっかなんやから」
「そうです。誰しも最初から出来る人などいません、それはルシファーも例外ではありません」
「兄さんも?」
「えぇ。科学の開発では何度も失敗したりして、成功に繋げたのですから」
その言葉を聞きベルは視線を輝夜と共に襲い来るモンスターを軽くあしらっているルシファーへ向ける。
ベルにとってルシファーは完璧な存在だった。
そんなルシファーが失敗する姿など想像することができないが、同じファミリアのランスロットが言うのであればそうなのだろう。
「だからなベル、そんに落ちこまんでええよ。うちらがベルを強くする、いっぱい教えるからな」
「はい!」
「では、双剣のデメリットは連続攻撃を主体としているので決定的な一撃がありません。ですから大型モンスターとかには基本不利です。ベル君は体格の事もあるので尚更です」
「じゃあランスロットさんやユエルさんはそこをどうしてるんですか?」
「ウチたちは仲間の協力や技術、強力な魔法を使って補っとる」
「仲間の協力と技術ついては問題ないでしょうが、強力な魔法は……ルシファーに頼むしかないでしょう」
「兄さんに?」
ランスロットの言葉にベルだけではなく授業を見ていた輝夜までもが思わず頭の上に?マークを浮かべてしまう。
別にベルに魔法が無い訳ではない。むしろ義母と同じ超絶強力な威力を持ちながらも超短文詠唱で発動できるぶっ壊れ魔法を持っている。
しかし、今のベルのレベルと魔力ステイタスでは輝夜たちを苦しめたほどの威力はない。
では一体どうするのか。未だ?マークを浮かべるベルとは反対に輝夜は魔法を手っ取り早く手に入れる唯一の方法に心当たりがあった。
「もしや
魔導書。それは作製にレアアビリティ神秘を用いて作られる魔道具のさらに上の魔道具。
レアアビリティ神秘に高ランクの魔導のアビリティも必要とする作るのがとても難しい魔道具であるが、その力は強力で魔法を強制的に発現させたり、スロット数を増やすことができる貴重なアイテムだ。
強力かつ作るのが難しいため、魔導書一つで数千万ヴァリスを軽く越える値段がつく。
もしやルシファーは魔導書を作ることができるレアアビリティを持っているのか、それとも買い与えるのか。
そう考える輝夜だが、それはランスロットによって否定される。
「いえ、魔導書を使わずとも魔法を使うことができます」
「な!? そんなことは絶対にありえない!!?」
「ありえないだと? 何を根拠にお前はそれを否定する?」
輝夜の否定を嘲笑うルシファー、何処か雲行きが怪しくなる。
「魔法とは超常現象だ。最大三種までの魔法を獲得できるが、大多数の者は発現しないまま生涯を終える。
「常識に囚われた面白味のない見解だ」
「何?」
「神時代前から魔法を扱う事のできるエルフやヒューマンは居た。なら魔導書や恩恵に頼らずに魔法を使う何らかの法則、方法がある。そして俺はそれを見つけものにした」
「戯言を抜かさないでもらえますか? そんなものがあればとうの昔から皆使っています!」
「そんな事までは知らん。大方神の恩恵に頼りきりになり忘れ廃れた、そんなところだろ」
「なら今すぐやってみせろ! そしてもし本当ならば私にも教えろ!」
白熱するルシファーと輝夜の議論は氷の剣士ランスロットに止められる。
「そこまでです二人共、ここで議論をするには些か危険です。それにベル君の戦闘訓練の時間が無くなりますし、ユエルが限界なので」
輝夜とルシファー、二人揃ってユエルを見るとベル揃って目を回していた。
「……魔法の話、後で私にも教えろ」
「フン……」
何処か険悪な雰囲気になっているが、戦闘訓練は続いていき七階層に到達した時にはベルの動きは最初の時とは打って変わって洗練されたものになっていた。
「うん、今日はこんなもんやろ」
「そうですね。どうですか、ベル君?」
「はい! かなり戦いやすくなりました! ありがとうございます!」
「そんならご飯行こ、ご飯! お二人さんもいいよな?」
ユエルはずっと後ろでベルの戦闘訓練を静観していた輝夜とルシファーに問いかける。
その問いにルシファーは好きにしろと、面倒そうに答え輝夜も笑顔でそれを了承したのだった。
ルシファーたちがダンジョンを出ると、外はもう暗闇に包まれ綺麗な月と星々がオラリオの街を照らしていた。
お腹を空かせた一行が訪れたのはアストレア・ファミリアがよく利用しているという豊穣の女主人というお店だった。
「……豊穣の女主人」
「兄さん?」
「何でもない。さっさと入れ」
「う、うん」
フードを目深く被っているルシファーに背中を押される形で店に入店するベルたちは、猫人に案内されて席につき、メニューから料理を選び注文していく。
すると、数分もすることなく美味しそうな料理が運ばれテーブルに並べられる。
それらをぺろりと平らげていくベルとユエルはさらに料理を注文するが、ユエルに至っては物珍しそうな料理を片っ端から頼んでいく始末である。
「ふふ、お仲間さん。いっぱい食べられるんですね」
ベルたちを眺めながら水を口に運ぶルシファーに声を掛ける薄鈍色の髪をしたウエイトレス。
彼女の手にはユエルたちが頼んだ料理が載ったお盆がある。
「こちらに料理置いて置きますね」
そう言って料理をルシファーの前に並べるも少女は、ルシファーの側を離れようとはしない。
それに眉をひそめるも特に気にすることなくベルたちを眺める。
「私、シルって言うんです。よろしければお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「………」
「あ、あの〜」
「………」
「無視でございますか? か弱い女子の話を蔑ろにするとは紳士としての品格を疑われますわよ」
「………」
「この、男……!!」
それでもルシファーは沈黙を貫き、興味がないと言わんばかりに手に持つコップを口につける。その行動に輝夜の額に青筋が増えていく。
シルという少女は、段々と苛立ちを募らせていく輝夜をなんとか宥める。
「ご予約のお客様、ご案内にゃー!!」
猫人の声が騒がしい店内に響き、その後ろからぞろぞろと小人族と緋色の髪を持つ神を先頭にエルフにヒューマン、ドワーフやアマゾネス、獣人族、ドラフなど多種多様の存在が入り席についていく。
「あれは、ロキ・ファミリアでございますか?」
「はい! お得意様なんですよ」
笑顔で輝夜とルシファーに説明するシルは、もう行きますねと言って仕事に戻って行く。
ルシファーたちのすぐそばに座り騒ぐロキ・ファミリアに苛立ちを覚えていると、赤髪で糸目でユエルと同じ変わった訛りを話す女神が音頭をとって手に持つジョッキを近くの人たちと叩き合わせてさらに騒がしくなる。
「団長、つぎます。どうぞ」
「ああ、ありがとうティオネ。だけど僕は尋常じゃないペースでお酒を飲まされているけど、酔い潰した僕をどうするつもりなんだい?」
「ふふ、他意なんてありませんよ団長。ささっ、もう一杯」
「ガレスー!? うちと飲み比べで勝負やー!」
「ふんっ、いいじゃろう、返り討ちにしてやるわい!」
「勝った方には、リヴェリアのおっぱいを自由にできる権利付きやあああァッ!」
『な、なにいいいいいいいいい―――ッ!?』
「じっ、自分もやるっす!」「俺もやるぜ!」「私もっ!」「リ、リヴェリア様……ッ?」「言わせておけ」
酔いが回りだしロキ・ファミリアは一気にお祭り騒ぎとなり、何度も何度もジョッキをぶつけ、料理を口に放り込み酒を流し込む。
「……チッ!」
「煩いのはお嫌いですか?」
無視された意趣返しに、クスクスと輝夜はルシファーを煽る。
その言葉にルシファーは輝夜を睨み口を開こうとした時、獣人の青年が大声で叫んだ。
「アイズ、そろそろ例のあの話を皆に披露してやろうぜ!?」
「あの話?」
「あれだって、遠征から帰る途中で逃したミノの大群!」
その話にロキ・ファミリアの団員たちは、「あぁ、十七層で現れたミノタウロスの大群のことね」「まさかどんどん上の階層に行くとはね」「マジ何なのよあいつら、遠征で疲れてるっていうのに」「大変だったよね~」と口々に話し出す。
「そんで居たんだよ! ミノに襲われたか知らねぇが、いかにも如何にも駆け出しのヒョロくせえガキがトマトのように真っ赤になって仲間に背負われてるのおよ!!」
その話にルシファーたちは、直ぐに昨日のベルの事だろうと察しがついた。
酔いが回っている獣人の青年は、ベルのことを嘲笑いながら仲間たちに話していく。その話にロキ・ファミリアの団員たちに、その話を聞いていた酒場の人間たちも笑い合い酒の肴にしあう。
酒の肴にされ、事実無根とはいえ蔑まれた白髪の少年は非力な自分を憎み、怒りを抱く。
「弱い奴は、何も守れねぇ! 俺たちの隣に立つ資格なんかねぇんだよ!」
その言葉が、最後の引き金になった。
少年は本能的に立ち上がり、急いで店を出た。
「ッ!」
「ベル!」
「ベル君!」
ユエルとランスロットが呼び止めるもベルの耳には届かずに走り去ってしまう。
その後を急いでユエルも追いかける。ランスロットも追いかけようとしたとき、ルシファーが口を開いた。
「ランスロット」
「! ルシファー!」
「ベルが向かう先はダンジョンだろう。自分が不甲斐なさを払拭するため無我夢中で戦闘に明け暮れるだろう、お前たちはベルが危険に陥った時に助けろ」
「ですが……! いえ、貴方様の命令とあらば」
ランスロットは、ルシファーと輝夜に一礼すると、ベルとユエルを追いかけるために店を出る。
残った酒場には――――
「ギャハハハ!!」
獣人の青年やその仲間たちの笑い声が大きく響き渡る。
「ッ!」
堪忍袋の緒が切れ、その場から立ち上がってロキ・ファミリアに殴り込もうとしたその瞬間、
ルシファーが静かに、だが酷く冷たい声で一言漏らした。
その声は何故か、騒がしいはずの酒場によく響いた。
「―――――不快な音を出す騒がしい雑音共が、そんなに死に急ぎたいのか?」
四大天司の使徒登場はあり無し?
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あり
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なし
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それより他キャラを出してくれ!