「はっ……」
デスラーは目覚めた。そこは知らぬ狭い無機質な個室だった。
「ここはいったい……」
デスラーは、ベッドのそばに置いてあった写真立てを持ち上げた。中央に白いひげを生やした中年の男と、若い男女が両隣に写っている。
「ふむ」
デスラーは、写真立てを元の位置に戻すと、ベッドから起き上がった。
しかし、身体に違和感がある。手足を見てみると、まるで自分の身体では無いようだった。何となく顔に手を触れると、ふさふさとしたひげをたくわえている。蒼白になったデスラーは、慌てて辺りを見回した。すると、洗面台らしきものを部屋の隅に見つけた。そこには、鏡があったので、恐る恐る自分の顔を見た。映っているのは、先程見た写真立ての中央に写っていた男に間違いが無かった。真っ青になったデスラーは、部屋の出口から飛び出し、廊下を走り出した。
「わ、私は一体、どうしてしまったんだ?」
デスラーは、廊下を走る途中で、一人の中年の男に呼び止められた。
「何をそんなに急いでるんだ? 沖田」
どうやら、この男は、この身体の人物について良く知っているようだ。デスラーは、その男の両肩を掴んだ。
「わ、私は一体、誰なんだ?」
相手の中年の男は、一瞬驚いたような顔になったが、すぐに笑顔になった。
「ふざけているのか? 沖田」
何度もそう呼ばれる名。どうやら、自分は沖田という人物らしい。
「私は、オキタというのかね?」
相手は、次第に恐れを抱いたかような表情に変わっていった。
「お前、俺の名はわかるか?」
デスラーは首を振った。
相手は、そのまま、しばらく動かなくなった。
「俺の名は土方だ。そして、お前は俺の親友、沖田十三だ」
デスラーは益々混乱していた。
「私の名は、オキタジュウゾウ? そして、君は、ヒジカタと言うのかね?」
驚愕した土方は、デスラーの肩を叩いた。
「すぐに、佐渡先生の所へ行こう」
佐渡のいる病院に行くと、そこには先客がいた。
「む……。沖田に土方か」
芹沢は、診察室に入ろうとしているところだった。
「丁度いい。一緒に中に入ってくれ」
中には、佐渡と原田がいたが、それ以外に、藤堂長官が一人診察室のベッドに腰掛けていた。
「藤堂長官? 何処か、お体に悪いところがあるんですか?」
土方は、藤堂に話し掛けたが、彼は、黙っていた。
「あー。土方。すまんがー、そっとしてやってくれんか」
佐渡が、申し訳無さそうに間に割って入った。
「芹沢さん、このメンバーなら、伝えてもかまわんかね?」
芹沢は、黙って頷いた。それを受けて、佐渡は、デスラーと土方の方を向いた。
「藤堂長官はじゃな……。今朝から記憶喪失になってしまったようでな。診察してみたが、原因はまだわかっとらんのだ」
「何ですって!?」
土方は、激しく驚いていた。
「まー、驚くのも無理はないが……」
土方は、デスラーの肩を押して、佐渡の方へ近寄らせた。
「先生。実は……この、沖田もなんです。自分の名も、俺の名もわからんと言っていて……」
「な、なんじゃと!?」
後ろにいた原田も、口元を抑えて目を丸くしている。
デスラーは、自分と同じ記憶喪失だという初老の藤堂という男に興味を持った。恐らく、この沖田とそれ程年齢も違わないだろう。
その藤堂が、おもむろに口を開いた。
「先生。まずは、ここが何処なのか、教えてもらえないかね?」
「ここは病院じゃよ」
「それはわかっている。まず最初に知りたいのは、ここが何という惑星か、ということだ」
一同は、再び驚かされた。
「そ、そこから!?」
呆れる佐渡を押しのけて、土方が説明した。
「長官。ここは、地球という惑星です」
「地球……。知らないなぁ。何という星系かね?」
「太陽系です」
「名前がついてないのかね? だいぶ、未開の惑星なんだね……。近くに住む異星人の住む星系の名を幾つか教えてもらえないかね?」
土方は、その質問に、口を開けたまま喋れなくなっていた。
デスラーは、男の質問に感心していた。確かに、ここは異星の惑星だ。近隣の星系を尋ねるのは、自分が一体何処にいるのかのヒントになるだろう。
気を取り直した土方は、質問に回答し始めた。
「残念だが、我々は、まだ太陽系外の探査はあまり行っていないので、異星人を見つけていない。だが、ここに侵略して来た異星人ならいるが」
デスラーはその話に食いついた。
「私も、知りたい。その異星人の名は?」
土方は、デスラーと藤堂の方を交互に見て、ため息をついた。
「それも知らんのか……。ガミラスだ」
「……は?」
「その侵略者は、ガミラス。我々の地球を、人が住めない惑星に変えてしまった、凶悪な異星人だ」
デスラーは、その話に驚愕していた。
よりにも寄って、我が軍が侵略中の惑星だとは……。
藤堂は、複雑な表情をすると、質問を続けた。
「この銀河系の名は?」
「天の川銀河だ」
それを聞いた藤堂が納得したように呟いた。
「と、いうことは、ここはテロンか」
デスラーは、衝撃を受けた。
この、藤堂という男。もしや、自分と同じ様にガミラス人の誰かではないか? この冷静な口調。誰か知っている男に似ている気がする。デスラーは、それを思い出そうと必死に考えた。
ふと、一人の閣僚の名が思い浮かんだ。デスラーは、恐る恐る、小さな声で言った。
「……タラン?」
それを聞いた藤堂は、真っ直ぐにデスラーの顔を見た。しかし、誰だか分からなかったようで、首を傾げている。
デスラーは、何とか二人で話が出来ないか咄嗟に考えた。
「ご、ごほん。す、すまないが、少しだけ、トウドウ長官と二人で話してもいいかね? 記憶障害同士、何か思い出すかもしれんのでね」
佐渡は、頭をかいた。
「記憶の無いもの同士で話してもなぁ。まぁいい。原田くん、隣の医務室が空いてるじゃろう。そこに通してあげてくれんか」
「分かりました」
ようやく二人きりになったデスラーは、辺りを見回して、誰もいないことを確認した。
「君は、ヴェルテ・タランではないかね?」
藤堂は疑いの眼をしたまま黙っている。そして、逆に質問をして来た。
「そちらは、どなたですか?」
デスラーは、咳払いをした。
「私は、デスラーだ。アベルト・デスラー」
藤堂は、驚きの余り後ずさった。
「総統?」
デスラーは、藁をも掴む気持ちで大きく頷いた。
藤堂は、訝しげな表情で、デスラーを眺めた。
「……分かりました。信じ難い事態ですが、信じましょう。何しろ、私自身がそうなので」
「や、やはり、そうなのか……!」
藤堂=タランは、難しい顔をして、悩んでいる。
「どうした、タラン?」
タランは、とんでもないことを言い出した。
「恐らく、本国では、私はこのトウドウという男になっていると推測されます。当然、総統は、オキタという男に。論理的に考えて、間違いないのではないでしょうか?」
デスラーは、あまりのことに衝撃を受けて、しばらく固まっていた。
「ま、まずい……。あちらでは、私の命をつけ狙う者が沢山いる。もしも、これがばれたら、たちまち殺されてしまうぞ」
タランは、酷く冷静に答えた。
「はい。そうなったら、もう二度と、元の体へは戻れないでしょうね」
「な、なぜ、君はそんなに冷静なんだね!?」
タランは、きょとんとした表情をしている。
「そんなことを言われましても、仕方がないじゃありませんか。とにかくこの事実を受け入れて、この人物になりきって生き延びるのが先決でしょう。きっと、向こうでも、同じようにオキタとトウドウは考えて、生き延びてくれると、私は信じます」
デスラーは、がっくりと肩を落として、項垂れていた。
そうして、沈黙が続くと、隣の部屋の診療室の声が聞こえてきた。
「……間もなく、イスカンダルの使者が来るという、大事な時に、あの二人がこんな状況では……」
芹沢は、頭を抱えている。土方も原田も、今回のことに、言葉を失っていた。
タランとデスラーは、聞き耳を立てて大人しくしていたが、その言葉を聞いて、青ざめていた。
「い……今の、聞きました? 総統」
デスラーは、髪を掻きむしった。
「ああ……。スターシャの、悪い癖が出たようだ」
ガミラス星――。
その頃、ガミラス星では、沖田も、自身の異変に気がついていた。
「わしは……。ベットで眠っていたはずだが……」
沖田が目覚めたのは、正に風呂に浸かっている最中だった。そして、水面に映る自身の姿を見て、蒼白になった。
「これが、わし……?」
その姿は、どう見ても、三十代位の若者だった。しかも、真っ白になった筈の髪が、金色に輝いている。
「まるで、若い頃のわしじゃないか。わしは、若返ったのか……?」
もちろん、そんな筈は無く、沖田は若い頃の自分を美化していただけだった。
沖田は、満更でも無さそうに、自分の顔に触れて確かめた。
「髭がない。髪もさらさらだ。……そうか、これは夢、なのだろうか?」
更に周囲を眺めると、そこはかなり大きな温泉の大浴場のような施設だった。
「夢にしては、リアル過ぎるな。それに、地下都市に、こんな施設あっただろうか? 何とまぁ、贅沢な。人々が日々の暮らしも困窮しているこの戦時に、こんな物を作る余裕は無いはずだが……」
沖田は、とりあえずここが何処なのか確かめようと、湯から出て脱衣所を探した。タオルも無く、全裸のまま辺りを探ると、カーテンのような仕切りがあり、その向こうが脱衣所だろうと、そちらへと水を滴らせながら歩いて行った。
そして、そのカーテンのような仕切りを腕で退かすと、やはりそこは脱衣所だった。脱いだ衣服を保管しておく棚や、鏡やドライヤーのようなものがある台が見受けられる。しかし、風呂のサイズに対してやけに狭い。まるで、一人だけで利用する設備のように見える。
その時、奥に最初から控えていたと思われる、三人の女たちが目に入った。慌てた沖田は、咄嗟に局部を隠そうとタオルを探すもどこにも無い。沖田は、途方に暮れて、もじもじと股間を手で押さえるしか出来なかった。そうしている間にも、あられもない姿を晒した沖田の元に、女たちはすぐに集まってきた。そして、特に気にする様子もなく、持っていたタオルで、沖田の身体を拭き出した。沖田は、突然のことに呆然として、なすがままに身体を拭かれていた。
こ……これは、いったい……。
「総統」
そう言った女は、彼の衣服を背後から袖に通し始めた。
「ん? ……あ、ああ、すまない」
沖田は、諦めて大人しくそれを受け入れた。その間、女たちを観察すると、見たこともない青い肌で、何れも美女ばかりだった。
そうか……これは夢……だな。うん。
沖田は、少し照れたような表情で、うんうんと頷いた。先程、総統と呼ばれたことは、取り敢えず後で考えることにした。
しかし、そんな時、勢い良く出入り口の仕切りの布が捲られると、そこからまた新たな女が駆け込んで来た。
「総統……!」
他の女たちとは、少し肌の色が違い、紫がかっている。短く後頭部へと纏めた髪も、同じような薄い紫色をしている。彼女の尖った耳の尖端を確認した沖田は、今度こそ確信した。
……そうか。この連中は……、異星人だ。
いよいよ夢に違いないと思い始めた沖田は、その女の方をじっと眺めて観察した。現れた女の方は、険しい表情をしていたが、沖田と目が合うと、急に顔を赤らめて後ろを向いた。
「こ、これは、失礼しました。お着替え中とは知らず、ご無礼をお許し下さい」
沖田は、どうしたものかと考えたが、まずは、この女から情報を得るべきかと思案した。
何故、地球に異星人がいるのか? そもそも、ここは地球なのか? 自分のこの姿は、いったい誰なのか? など、疑問は沢山ある。この女に尋ねてみよう。そうすれば、これが夢なのか、現実なのかもはっきりするだろう。
そんなことを考えている間に、いつの間にか下着まで女たちに履かされ、着替えは終わっていた。バスローブのような着物は、身体を優しく包み込み、着心地も良かった。
耳の尖った方の女は、後ろをちらりと見て、着替えが終わったことを確認すると、大きな声で怒鳴った。
「お前たち、仕度が済んだのなら、下がっていろ! 私は、総統と緊急の要件がある!」
女たちは、そそくさと、その場から離れると、黙って出口と思われる仕切りから出て行った。
ふう、と大きなため息を漏らした女は、ちらりと沖田の方を見つめて、再び顔を赤らめている。
「し……失礼しました。どうしても、急いで確認しなければならないことがありまして、このような所まで押しかけてしまいました」
沖田は、どう受け答えしたものか迷い、すぐに返答出来なかった。下手に自分から質問するよりも、彼女の話を聞いてからの方がいいのかも知れない。
相手の女は、きょろきょろと他に誰もいないことを確認し、沖田に顔を近づけると小声で話した。
「実は……。バラン星近くの銀河間空間で、新たなアケーリアス文明の遺跡を発見したという報告を受け、先程から、ミレーネルと共に現場と超空間ネットワークを接続して確認しておりました。遺跡の設備や機能を確認する為に、私たちはそれを使ってみることにしたのです」
……バラン星? アケーリアス文明の遺跡? ミレーネル?
知らない単語が、少しの会話の中で、次々と出てくる。これは、一筋縄ではいかないと、沖田は黙って話を聞くことに徹した。
「その装置は、私たちジレル人の精神感応力を拡張し、人の心を別の心と交換することを可能にするものでした。私とミレーネルは、最初は自分たちの意識を交換したりして実験してみました。そして、装置が確かにそのような機能を果たすことを確認しました。そこまでは良かったのですが、ミレーネルは、試しに総統と私たちの心を交換出来るかやってみようと言い出しました。私は危険だから止めようと言ったのですが……」
沖田は、話の流れから、自身の身に何が起こったかを察し始めた。
心を交換……? そんなことが可能なのか??
耳の尖った女は、先を言いづらそうにしているが、事実の確認の為にも、話をちゃんと聞く必要がある。
「……続けてくれ」
沖田の言葉に、その女は、少し青ざめたような色を見せたが、頷いて先を話始めた。
「その実験は、やはり失敗でした。ミレーネルは、遠い異星で、総統の心が初老の男性と入れ替わるのを感知しました。その場所までは、特定出来なかったのですが、その男性は、まるでザルツ人のような肌の色でした」
初老の男……。もしかして、わしか……?
しかし、また知らない単語が出てきた。ザルツ人とは、人種のことだろうか? 沖田は、さらなる疑問を感じていた。
しかし、そんな沖田の思考は、女の言葉で遮られた。
「総統……。大変ご無礼を承知の上でお尋ねしますが……。ご自分のお名前は、お分かりでしょうか?」
女は、目を潤ませて沖田を見つめている。それは、間違いであって欲しいと願っているようだった。
何と答えようか迷った沖田は、ついぽつりと声を出した。
「わしの、名前……?」
その時、女は「わし」、という単語にぴくりと反応した。
「総統は、そんなことを言わない……。まさか……。やっぱり……!」
女は、その場で座り込むと、突然泣き崩れた。そして、おいおいと泣きながら、謝罪の言葉を口にした。
「総統……。もっ……申し訳ありません……! 私は、取り返しのつかないことをしてしまいました……!」
沖田は、女を不憫に思い、その肩に手を置いた。
その瞬間、女は沖田を睨むと、その手を振りほどいた。
「私に触るな! お前は、いったい誰だ!」
沖田は、女の激しい反応におされて後退った。
「わ、わしは……」
女は、銃を抜くと沖田の顔に突き付けた。沖田は、その銃口を見つめて青ざめた。
「わ、わしの名前は……」
「お前の名は!?」
答えに困窮した沖田は、ふと気がついた。先程までの女の反応を見るに、この身体の人物に特別な尊敬のような感情を抱いているようだった。ならば、自身の身の安全を考えれば、その事実は、取引に使えるだろう。
沖田は、急に冷静になると、その銃口を、そっと腕でゆっくりと退けた。
「そんなものを向けて、誤って発砲したら、この男が死ぬかもしれんのだぞ」
女は、はっとそれに気付くと、ぶるぶると震えだし、思わず銃を床に落としてしまった。
「く……お前が、総統で無ければ……」
女は、悔しそうに俯いていた。
「……手荒な真似をするつもりはないの。私は、総統を元に戻したいだけ。あなたも、自分の元の身体に戻りたいでしょう?」
沖田は、頭をかいた。どうやら、そろそろ現実に起こったことと、認めなければならないらしい。これが夢で無いのであれば、早急に元の身体に戻る必要があった。地球では、戦える優秀な人材が大幅に減っている。沖田の不在は、土方や山南への負担も大きくなるだろう。
「もちろんだ。お前も、この男のことが大切なのであれば、わしに協力すべきだな」
女は、開き直ったのか、少し冷静さを取り戻したようだった。
「分かった。私の名は、ミーゼラ・セレステラ。あなたの名は?」
「沖田だ。沖田十三」
「オキタ……。変わった響きだ。どこの星の住人なのか、教えてくれる? やはり、ザルツ人なの?」
沖田は、首を振った。
「私は、地球人だ」
「チキュウ……? 聞いたことの無い星だ」
沖田は、困惑していた。地球外生命体など、ガミラスのことしか知識が無かったからである。この女、セレステラにとっては、異星人との交流は普通のことなのだろう。沖田は、先程から気になっていたことを質問した。
「セレステラ……と、言ったな。まずは、教えて欲しい。いったい、ここはどこなんだ?」
セレステラは、目を細めて沖田の方を見た。そして、その言葉を口にした。
「……この惑星は、大ガミラス帝星」
沖田は、それを聞いて驚愕していた。
「……今、何と言った?」
セレステラは、更に目を細めた。
「ここは、ガミラスよ」
沖田は、衝撃のあまり、足元をふらつかせた。
「よりにもよって……敵の本拠地だと……!?」
「敵……? もう、この銀河では、ガミラスに敵対する種族は、ほとんど居ないはずだけど。反乱を起こしている国、ってことかしら?」
沖田は、何と説明すれば彼女が理解出来るか悩んだ。しかし、出来るだけ素直に説明した方が分かってもらえるかも知れない。
「我々地球の異星人とのファーストコンタクトは、君らガミラスだった。他の異星人は、まだ出会ったことがない。君たちとの最初の出会いは不幸なものだった。偶発的に戦端が開かれ、エスカレートした結果、我々の地球は、君たちが放った遊星爆弾によって、人々が生存出来ない惑星に変えられてしまった」
セレステラは、その話を聞いて、記憶を辿っていた。
ガミラスとファーストコンタクトをして、遊星爆弾で攻撃している国……。
セレステラは、はっと気がついた。
「もしかして……。私たちは今、この銀河の統一をほぼ達成し、別の銀河に領土の拡大をしようとしているのだけど……。今、その条件で戦争中の惑星は一つしかない」
セレステラと沖田は、視線を合わせて見つめ合った。
「その惑星の名は……テロン。あなたのいう、チキュウである可能性が高いわ」
沖田は、別の銀河と聞いて青くなった。
「こ……、この銀河系の名は?」
「大マゼラン銀河」
沖田は、絶望的に遠い距離に愕然とした。そして、足元をふらつかせて、近くにあった椅子に腰を落とした。
「ま、まさか……。わしは、そんな遠い場所にいるのか……」
セレステラは、屈んで沖田の手に触れた。
「大丈夫。この入れ替わりを元に戻すには、互いに直接身体を接触させる必要があるの。私が、あなたの星、テロンへ連れて行く。私は、本物の総統を取り戻さなければいけないから」
沖田は、顔を上げて彼女を見つめた。
「それは、本当かね? 私は、帰れるのだな?」
「……敵対する国家に、しかも銀河を超えて総統のお身体を連れて行くのは、いろいろと問題があるけれど、あなたと私が協力すれば、不可能では無いわ」
沖田は、彼女の言っていることを理解した。ようやく、希望が見えてきた。
「ならば、取引は成立だ。君は、わしを地球に連れて行く。そして、君は、総統を取り戻す」
沖田は、彼女に右手を差し出した。
セレステラは、その手を怪訝な表情で見つめた。
「これは?」
沖田は、にこりと笑った。
「我々の星では、こうして手を握り合うことで、約束を交わしたり、友情を確認したりするんだ」
セレステラは、首を傾げていたが、自分の右手をその手に重ねて握った。
「なら、約束して。この入れ替わりが、周囲にばれたら、総統は失脚する。総統の命に関わることなの。だから、これは、私とあなただけの秘密」
「いいだろう」
二人は、手を握りしめて、互いの望みを叶えるべく、決意を新たにした。
セレステラは、思い出したように言った。
「ごめんなさい。言うのを忘れていたけど、もう一人、同じ目に合っている人がいるの。後で、会わせてあげる」
もう一人、と聞いた沖田は、いったい誰だろう? と、考えを巡らせた。しかし、それよりも気になることがあった。
「先程から、総統、と呼んでいるが、この男はどういう人物なのかね?」
セレステラは、急に悲しそうな顔をすると、ため息をついた。
「……大小マゼラン銀河の統一を果たし、共栄圏を築いた、我が大ガミラスの偉大な指導者よ。アベルト・デスラー総統。それが、あなたの身体の持ち主」
沖田は、またしても驚かされて、気を失いそうになった。
続く…
注)
・宇宙戦艦ヤマト2199を元にした二次創作小説です。一部、若干のキャラ崩壊がみられますが、予めご承知おき下さい。
・以前、私がPixivに投稿した「君の本当の名は」を元にし、これに大幅に加筆しています。
・pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。