本当の君の名は2198   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2199を元にした二次創作小説です。


(13) ひとときの、休戦

 アケーリアス文明の遺跡――。

 

 ミレーネルの首を締めていたセレステラ=ゼーリックは、心の中に響く弱々しい声を聞いた。

 止めて……セレステラ……!

 それを聞いた瞬間、ゼーリックは、手の力が自然と緩んで行くのを感じていた。彼の手から逃れたミレーネルは、その場にしゃがみ込んで、酷く咳き込んだ。

 ゼーリックは、震える自分の両手を眺めた。ほっそりしたその指は、彼の意思に従って、開いたり閉じたりすることは出来る。

「なぁ〜ぜだ……? 何故、力が入らんのだ? 俺の身体は、どうなってしまったのだ?」

 ゼーリックは、ミレーネルがぜいぜいと息をして呼吸を整えている間に辺りの様子を確かめた。

 洞窟のような穴倉で、小さな明かりが灯っている。薄暗い明かりの中央に、その場に似つかわしく無い大きく複雑な装置が鎮座している。装置の前に椅子が置かれており、多数のケーブルが伸びて繋がっている。装置には、何やらボタンやレバーがあり、意味する所のわからないランプの光がいくつか点灯していた。

 ゼーリックは、鏡面のように磨き上げられた装置の外装パネルに、自身の姿が映っていることにふと気が付いた。その姿がセレステラだったことに、彼は意表を突かれて、驚愕の表情で口を大きく開いた。彼の意思通りの表情に変化するセレステラの顔を見て、間違いなくそれが自分なのだと悟った。

「魔女め……! どんな手品を使ったというのだ?」

 そして、ふと見た足元には、ミレーネルの他に一人の男がいびきをかいて寝ていた。ゼーリックは、その男がデスラーその人だと確認すると、後退って身体を震わせた。

「ふふっ……。ふははははっ!」

 突然笑い出したゼーリックは、顔を暗く歪ませた。

「俺の身体がどうなったかなど、今は些細なことよ。デスラーを始末する絶好の機会ではないか!」

 ブワハハハ……!

 静かな洞窟内に、セレステラ=ゼーリックの笑い声が響いた。

 しばらくして、笑いがおさまったゼーリックは、ニヤリと口元を緩めた。 

「この姿で、奴を殺せば、やったのはセレステラということにな〜る」

 咳き込んでいたミレーネルは、弱々しく声を上げた。

「止めて。総統は、私たちの恩人。流石に殺すなんて、やってはいけない」

 ミレーネルは、地面に転がっていた自身の銃を、床を蹴って取りに向かった。それに気付いたゼーリックも、その銃を目掛けて飛びついた。二人は、しばらく銃を巡って争い、地面を転げ回った。

 結局、銃を手にしたのはゼーリックだった。

 銃をミレーネルに向けたゼーリックは、冷酷に言い放った。

「どうやれば、元の身体に戻れるのか、い〜ま直ぐに説明するのだ。そうすれば、命を助けてやらんでもない」

「あなたは、総統を殺して、元の身体に戻るつもりなんでしょう? 全部、セレステラのせいにして」

「その通り。そうなれば、この私が、大ガミラス帝星を支配する。言う事を大人しく聞くのであれば、命だけでなく、お前の願いを叶えてやるのもやぶさかではない」

「それは……本当なの?」

「もちろんだ」

 ミレーネルは、恐ろしい表情で自身を見つめるセレステラの顔をしたゼーリックを見つめた。

 デスラーがいなくなれば、彼への特別な感情を抱えたセレステラも、ガミラスに留まる意味を失う。しかし、自分には、恩人たるデスラーを殺す事など出来ない。それを、ゼーリックがやるというのなら、止める必要などあるのだろうか?

 ミレーネルの心は揺れた。

 そんな時、寝ていたはずのデスラーが、上半身を起こして大きくあくびをした。

「ふわぁ……よく寝た。二人とも、何をしておる」

 ゼーリックは、ミレーネルを放り出して、急いでデスラー=沖田の方へ向かい、その頭頂に銃口を押し付けた。

「何の真似だ? セレステラ」

「知れたこと。貴様は、吾輩に始末されるのだ!」

 寝ぼけたような顔をしていた沖田は、急に真顔になって、銃を向けたゼーリックの手を掴み、自身の方に抱き寄せた。

 ポカンと口を開いたゼーリックは、どういう訳か引き金を引く事が出来なかった。

「君は、そういう事が出来る女ではない。それは、このわしがよく知っておる」

 その言葉を耳元で囁かれたゼーリックは、全身に電気が走ったような感覚を覚えていた。

 こっ……これは……、どうしたのだ。

 デスラーに、この俺が……どうしてこんな気持ちを……!?

 顔を真っ赤に染めたゼーリックの姿を、ミレーネルも驚いた表情で凝視していた。

「もしかして……入れ替わったのに、セレステラの心が、あなたに影響を与えているというの?」

 ゼーリックは、抱き竦められた身体の言う事がきかないまま、呆然とした声で呟いた。

「ば……馬鹿な。この俺が、そんなことは……」

 ……断じて無い……いや、違う。そうだ。俺は、デスラーにずっとこうされたかったのだ……!

 混乱したゼーリックは、持っていた銃を、その場に取り落した。

 

 バラン星――。

 

 沖田=デスラーは、扉を挟んで、覗き窓から目を輝かせて自身を見つめるゼーリックの姿に、ゾッとするような悪寒が走っていた。それでも、この心に語り掛ける彼女の精神感応力は、これまでも何度か体験したことのあるものであり、確かに本人であると疑う余地は無かった。

「君は、本当にセレステラなんだね? 君も、入れ替わってしまったのか?」

 ゼーリック=セレステラは、嬉しそうに何度も何度も頷いた。

「やっぱり。総統なら、私の事を、直ぐに分かってくれると思っていました」

 目を輝かせて、見つめるゼーリックの姿をしたセレステラに、デスラーは目眩がしてふらついた。

 その時、異変に気が付いたシュルツが、デスラーへと話し掛けた。

「おい君。どうしたのだ? 何を話している?」

 セレステラは、覗き窓から顔を覗かせて、シュルツへと訴えた。

「聞いて! こんな姿になってしまっているけど、私はセレステラよ。アケーリアス文明の遺跡で発見した装置を使って、人格が入れ替わってしまったのよ!」

 シュルツは、困惑した表情で、ゼーリックの姿形を眺めた。

「いくら二等ガミラス人の私でも、あなたのことを見間違えようがありません。あなたは、ゼーリック元帥ではありませんか。そのようなお話を、私のような立場の者が、信じられるとお思いですか?」

「本当よ! 嘘じゃない! そして、ここに居る白い髭のおじいさんは、私と同じように入れ替わっている! この人こそ、デスラー総統なのよ! 本当なの、信じて!」

 シュルツは、ガンツとやれやれとした様子で、顔を見合わせている。

 セレステラは、がっくりと項垂れた。どうしても信じてもらえそうもない。

「ほ……本当なのよ。あなた、大佐でしょう? あなたの階級なら、そこにいる警備兵にも命令が出来るはずよ。お願いだから、私をここから出して! そうしないと、私も総統も、二度と元へは戻れない」

 遠巻きに見守っていた守と土方は、青ざめていた。

「土方さん……! まずいですよ。我々が偽の兵士だとバレてしまいます」

「……ま、まだ慌てるな」

 その時、デスラーのそばに控えていたタランは、守の後ろで隠れているユリーシャに話し掛けた。

「ここは、あなたに一言貰うのが、一番簡単ではないでしょうか?」

 ユリーシャは、後ろ頭をかきながら、シュルツたちの前に進んだ。

「これからが面白くなりそうだったのに……。わかった。仕方ないなぁ」

 ユリーシャは、突然ザルツ兵の制服をその場で脱ぎ始めた。あ然とするシュルツたちと、焦る守と土方の前で、イスカンダルの衣装が顕になった。

「私は、イスカンダルのユリーシャ。ザルツ人の大佐さん。それから、この牢屋を警備している兵士たちに命じます。この囚われの男の言う事は本当。私が保証する。だから、まずは出してあげて」

 突然現れたユリーシャの姿に、事情を知るもの以外は、何が何だか分からず混乱した。

「お、おい、ガンツ……」

「は、はい。確かに、イスカンダルの第三皇女ユリーシャ様に間違いないかと……」

 シュルツは、どうしてこんなことになってしまったのか、混乱したまま、自らの権限を行使した。

「おっ、おい! 警備兵、ユリーシャ様の言うとおりにしたまえ」

 警備兵たちは、口々に本物? などと口走りながら拘禁室の扉に近寄り、恐る恐るロックを解除した。

 中から飛び出してきたセレステラは、その大きな体でデスラーに飛びついた。

「総統……!」

 傍目には、白髪の初老の男が、ゼーリックに抱き締められているようにしか見えず、一同は背筋が凍るような感覚を覚えていた。

「セレステラ、やめたまえ! せっ背骨が折れる……!」 

 デスラーの悲痛な叫びに、セレステラは、慌てて身体を離した。

「もっ、申し訳ありません! つ、つい」

 デスラーは、恋する乙女のようなゼーリックの表情に、もう一度身体を震わせた。

 

 ……

 

 セレステラは、混乱が収まった一同に、改めて説明した。

「約半年前、ここから、約一パーセク程の座標に、新たに発見された浮遊惑星がありました。そして、調査の結果そこには、アケーリアス文明の遺跡も見つかったのです。私たちの調べでは、その遺跡には、人格を交換する装置が設置されていました。私とミレーネルは、その装置を本星からの超空間ネットワークで接続して、いくつかの実験を試みていました。そして、実験は失敗し、総統とその男オキタの人格を、誤って交換してしまったのです」

 一同は、沖田=デスラーの方へ注目した。中でも、シュルツは、訝しげな表情で、沖田の顔を眺めた。

「オキタ……? 君はいったい何者なんだ……?」

 守と土方は、最早これまでと判断し、隠していた銃を抜いた。

「動くな! 我々はザルツ人などでは無い! 地球人だ!」

 そして、土方は、銃口を沖田の身体へと向けた。

「余計なことをすれば、デスラー総統の命は無い」

 土方は、小さな声でデスラーに言った。

「すまん、沖田……いや、デスラー総統。この窮地から脱するには、あなたを人質に取るしかない」

 何が何だか分からなくなったシュルツとガンツは、パニックに陥った。

「チキュウ……つまり、お前たちはやっぱりテロン人だったのか!?」

「その年寄りが総統だとか、元帥がセレステラ様だとか、わしには到底信じられん」

 シュルツとガンツ、そして警備兵たちも、銃を抜いた。一同は、銃を向けあって、一触即発の事態となった。

「あーあ……。もう、面倒。ねえコダイ。私を抱き上げてくれる?」

 ユリーシャは、突然守の首に腕を回して抱きついた。

「ゆ、ユリーシャ!? いったい、何を」

「お姫様抱っこ。ちょっと、身体が動かなくなるから、お願いね」

 そう言うと、ユリーシャの身体から力が抜け、慌てて守は彼女の身体を支えた。

 その時、シュルツはビクリと身体を硬直させると、ふらふらと身体を揺らした。

「大佐……?」

 ガンツは、シュルツの身体の変調に気付いた。シュルツは、身体の揺れが治まると、持っていた銃を腰のホルスターへと戻した。そして、おもむろにガンツや警備兵に腕を伸ばして言った。

「皆、銃を下ろして。この人たちの言っていることは本当。今は、協力して問題を解決するのが先」

 シュルツの命令で、ガンツはしぶしぶ銃を下ろした。

「……大佐がそう仰るのなら。おい、警備兵たちも、銃を下ろせ」

 土方は、あ然として沖田の身体に向けた銃を下ろした。デスラーは、突然のシュルツの変化に何か気が付いた様子だった。

 守の方を向いたシュルツは、舌を出してウインクして来た。面食らった守は、動かなくなったユリーシャと、彼を交互に見比べると、その数秒後に何が起こったのか察した。

 ……ユリーシャが、あのシュルツという男に憑依した……?

 守は自分の銃を仕舞い、力無くその身体を自身に預けるユリーシャを抱き上げた。

 そんなことが出来るものなのか?

 しかし、既に沖田と藤堂の入れ替わりも起こっており、宇宙人とは、そういう物なのかも知れないと、半ば思考を諦めた。

 そして、一同がギクシャクと互いを見つめる中、シュルツに憑依したユリーシャが宣言した。

「我々も、そのアケーリアス文明の遺跡に向かいましょう。そして、この事態を収拾する」

 

続く…




注)
・宇宙戦艦ヤマト2199を元にした二次創作小説です。一部、若干のキャラ崩壊がみられますが、予めご承知おき下さい。
・以前、私がPixivに投稿した「君の本当の名は」を元にし、これに大幅に加筆しています。
・pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
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