本当の君の名は2198   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2199を元にした二次創作小説です。


(15) 誰が誰だか、分からない

 アケーリアス文明の装置の設置された洞窟――。

 

「あれが、そうなのかね?」

「はい、総統」

 沖田=デスラーと、ゼーリック=セレステラは、ミレーネルと共に、本物の沖田や、手錠を着けたゼーリック、そして艦隊を代表して、ゲールとその部下の兵士たちが地下に降りていた。デスラー直々の指名により、ゲールは喜々としてそこにいた。

 セレステラは、デスラーに頭を下げた。

「総統。本当に申し訳ありませんでした。私とミレーネルが軽率な実験をしたばかりにこのようなご迷惑をおかけしてしまいました」

 デスラーは、手を振った。

「案外、面白かったよ。テロンで過ごした日々は、興味深い体験も多かった。だから気にするな」

 セレステラは、またも目を潤ませていた。相変わらず、ゼーリックの姿のままの為、デスラーは若干の吐き気を催していたが、黙って耐えた。

「そういえば、デウスーラは、この惑星に移動する指示は出したのかね?」

 ゲールが手揉みをしながら返事をした。

「勿論です! 総統が元に戻りましたら、すぐにガミラス星に帰れます」

 デスラーは、満足気に頷いた。

 セレステラは、デスラーに促した。

「それよりも、入れ替わりのご本人がここに集まっていますので、手を触れたりして肉体の接触をすれば、元に戻るはずですが」

 デスラーは、手を上げた。

「まぁ、待ち給え。その前に、この装置の使い方や機能について、私に教えてくれないか?」

「は、はい!」

 セレステラは、装置の前にデスラーを連れてきて、パネルの使い方やスイッチの意味を伝えた。

「……と、言う訳で、入れ替わりの一方の対象選択は出来るのですが、もう一方の選択機能がありません。もう一方は、ランダムに決定するようです」

 デスラーは、眉をひそめた。

「ランダム……? たまたま、関わりのあったテロン人のオキタだったから良かったが、宇宙の何処かも分からない場所に住む人間と入れ替わる可能性もあったということかね?」

 ミレーネルは、横から意見した。

「そうではないと思います。やはり、過去、現在、未来で出会った、または出会う可能性のある者が選ばれるようです。ですので、全く知らない所になることは無いと思います」

「それで……。セレステラ。この装置には、元に戻す機能はあるのかね?」

「元に戻す機能……あると、私は思っていたのですが、どうやらその機能は装置には無いようです。ですが、元に戻るには、対象同士で直接接触すれば良いだけです」

「ふむ……。しかし、その接触したという事実、そしてそれをトリガーに元へ戻すという仕掛け自体は、どうやって実現しているのかね?」

 ミレーネルは、またも話に割って入った。極力、デスラーの心象をよくしようと彼女は必死だった。

「この浮遊惑星自体の地下深くに、巨大なシステムが埋め込まれていることが分かっています。この装置は、システムのインターフェースなのだと思います。そういった変化の検知や、システムの稼働を、この端末が促しているようです」

 デスラーは、大きく頷いた。

「よろしい。その他に、何か特別な機能はあるかね?」

 セレステラは、先程ミレーネルが使おうとした機能について思い出した。

「複数の対象を任意に選択して、一度に大勢ランダムに入れ替えることも出来るようです。例えば、自分以外のここに集まった全員の人格を、ランダムに変更することが可能です。しかし、これはとても危険な機能です。今回の事でも分かったように、下手をすれば、遠い宇宙の遠い場所との入れ替わりが一度に起こり、元へ戻すのは至難の業かと。そうなれば、大きな混乱を招き、破滅的な事態になってしまうと思います」

 デスラーは、ほう、と感心した。

「それは、大変だね。しかし、対象を選んだり、外したりは自由に出来るのだね?」

 セレステラは頷いた。

「はい。この電極を頭皮に装着して、心に思い描いた人々を選択したり、外したりが出来ます」

 デスラーは、その電極を掴むと、自身の頭皮に装着した。

「総統……?」

 デスラーは、にこりと笑った。

「君の話は理解したよ。この装置は、危険なので廃棄しよう。しかし……その前に、一度くらい、試してみても構わないだろう?」

 セレステラは、人の感情の動きが、色がついたように見えるのだ。デスラーの感情は、何か悪巧みをしている時の反応に感じられた。しかし、普段は失礼の無いように心を読むことを控えている為、彼が何を考えているかはまでは分からなかった。

 ミレーネルは、いち早く気がついて、セレステラに叫んだ。

「総統は、何かやる気よ! ミーゼラ、総統を止めて!」

 しかし、ハッとしたセレステラが動くのより早く、既にデスラーは人格交換の実行を装置に入力していた。

 

 その瞬間、ゲールは、ガンツと入れ替わっていた。

 驚いたゲールは、そばにいたシュルツに話し掛けた。

「お、おい。シュルツ。わしは、ゲールだが……」

 振り向いたシュルツは、真っ青な顔をしていた。

「どこ!? ここはどこなの!?」

 どうやら、助けを求めたシュルツも、別人と入れ替わっているらしい。

「お、おじさん、教えて! ここは何処?」

「ここは、バラン星の近傍宙域だが……お前の名は?」

 シュルツは、泣きべそをかきはじめた。

「私は……ヒルデ」

 ゲールは、呆然としたまま、泣きじゃくるシュルツを見つめた。

 

 そしてドメルと入れ替わったのは、副総統ヒスだった。

「? さっきまで、執務室にいたはずなのだが……。おい、君。ここはどこだね?」

 話しかけられた士官も混乱していた。

「わ……私。おかしいわね。さっきまで、小さな駆逐艦にいたはずなのに」

 ヒスは、男に尋ねた。

「君の名は?」

「私はラーレタよ」

 そこにいたサーシャは、呆然としていた。自分の身体を確認して、入れ替わっていないことを確認して、少しホッとしていた。

「イスカンダルには、手を出さなかったのね。デスラー総統」

 

 浮遊惑星一帯に集まった人々だけだなく、ガミラス本星でも、人格交換が実行された。

 ガミラス星にいたガデル・タランは、気がつけば、デスラー親衛隊の一行に暴力を振るわれている最中だった。

「止め給え! 私は、ガミラスの参謀次長なのだぞ!」

 相手は、にやにやと笑っている。

「ほう、それなら、俺は元帥だ」

 酷い暴力は続き、気がつけばタランは血塗れになって裏通りの路地に倒れていた。立ち上がってふらふらと歩く。

「いったい、ここはどこなんだ?」

 見たことのない建築物や、異星人たちがそそくさと街を歩いて、タランを避けるように通り過ぎる。タランは、近くにあった建物のガラスに、自身の姿が映っているのを見た。

「……俺はいったい、誰なんだ?」

 しばらくして、そこが惑星オルタリアだと、タランは気がついた。しかし、どうやって、自身がガデル・タランだと証明して、どうやって本星に戻ればいいのか。皆目見当もつかなかった。

 

 ドメルは、ハッとした瞬間、入れ替わりが実行された事にすぐに気がついた。そこは執務室らしく、すぐに鏡を確認した。

「私が……ヒス副総統だと?」

 ドメルは、周囲の状況を確認して回った。しかし、誰一人として、元の人格のままでいる人間がおらず、総督府内は、大混乱に陥っていた。

 ドメルは、懸命にそれでもまともに思考できる人間を探した。

「総督府内の全スタッフに連絡! ガミラス軍の士官、将官だったという者は、直ちにヒス副総統の執務室に集合! 繰り返す……!」

 

 ゼーリックの身体に入っていたセレステラは、もう何処にもいなかった。そして、それはミレーネルも同様だった。セレステラの身体に入っていたゼーリックも行方不明だ。皆、名も知らぬ兵士や市民に入れ替わって混乱していた。

「ここはいったい……?」

「私は、どうしてこんなところに!?」

「誰か! 誰か知っている者はいないのか!」

 唯一、ゲールの身体に入っていたのは、比較的近くにいたガンツだった。

「あ、あれ? どうして、私はこんな場所に……?」

  

 デスラーは、にやりとして、沖田の方を見た。

「デスラー総統。何故、こんなことを? こんなことをしでかして、あなたの国は、下手をすれば滅亡してしまいますぞ?」

「心配してくれてありがとう。そうだね、オキタ。だが、こんな混乱ぐらい、私がいる限り、すぐに収まるよ。私は、首都バレラスに巣食う、邪魔な人間を排除しただけだ。私が本星に戻ったら、もう一度皆を導けばよいのだよ。今度こそ、理想とする国家が築けるというものだ」

 沖田は、ゆっくりとデスラーに近付いた。 

 デスラーは、自分の身体に入った沖田の姿をじっと見つめた。

 

 先程のセレステラやミレーネルの話の通りであれば、近い将来、テロン人たちはガミラスに来るはずだったということになる。つまり、ガミラスの防衛線を越えて、恐らくはスターシャが渡した波動エンジンの設計図を使った船が、イスカンダルを目指して来ることになったのだろう。知る限り、ヤマトとか言うたった一隻の船で。

 ならば、ここで、沖田を始末するべきなのか?

 デスラーは、その沖田と視線を交わした。

 いや。違う。

 沖田と彼らテロン人は、ここでコスモリバースシステムを持たせて帰らせるのだ。一緒に過ごし、土方を始めとした優秀な軍人がいて、勇気もある。そのような者を、ガミラスとイスカンダルにこさせてはならない。ここで、彼らを始末したとしても、ヤマトを完成させた彼らは、必ずやガミラスにやって来るだろう。それは、マゼラン銀河の統一という私の崇高なる使命の障害にしかならない。

 

 デスラーは、沖田を元に戻す事に決めた。

 デスラーは、右手を伸ばした。

「オキタ。この手に触れ給え。元に戻るべき時が来た。君たちテロン人には、人格交換は行っていない。このあと、コスモリバースシステムを持って帰るといい。そして、もう二度と、我々とかかわりを持たないと約束してくれないか?」

 

 沖田は、その手を取るべきか考えた。このまま、デスラーが戻らなければ、ガミラス帝国は黙っていても崩壊する可能性が高い。しかし、その混乱が良い方へ向くとは限らない。その歪みは、予想もしない事態を引き起こしてしまうかもしれないのだ。

 デスラーが言うように、黙って地球へ帰れば地球は救われ、二度とガミラスの脅威に直面することはない。侵略者からの魔の手に抗う術もない地球の為を思えば、デスラーの望み通りにするしか無いだろう。

 それでも……。

 沖田は、何だかんだいいながらも、ここまで連れてきてくれたセレステラが、このような不憫な最期を迎えることは、望んでいなかった。それは、ここへ来るまでに出会ったすべての人々に言える事でもある。しからば、今は、何をすべきなのか……。

 

 沖田は、静かに決意を固めると、デスラーに更に近寄り、同じように右手を伸ばした。

 

 そして――。

 

 手と手が触れ合った瞬間、沖田とデスラーは、半年の時を経て、ようやくそれぞれの身体に戻っていた。

 

「ふう。やっぱり、自分の身体が、一番しっくりくるね。そう、思わないかね、オキタ」

 沖田は、鋭い眼光でデスラーを見据えた。

「確かに。だが、私は君たちと二度とかかわりを持たないということを、約束することは出来ない」

「ほう?」

「何故なら、私も、君たちの国の人々の営みや、その心情は、我々と何ら変わりがないということを知ってしまったのだ。知ってしまった以上、彼らがこのまま不幸になることを、私は見過ごすことが出来ない」

「なるほどね」

 デスラーは、銃を抜くと、何の躊躇いもなく装置に撃ち込んだ。銃撃を受けた装置は、あちこちが、穴だらけになり、高圧電流が駆け巡り、パネルもランプもすべての火が消え、黒い煙が立ち昇った。

「……だが、これでもう、元へは戻れない」

 沖田は、デスラーを睨みつけたまま、黙ってそこに立ち尽くしていた。

 デスラーは、マントを翻し、洞窟のような部屋をあとにした。

「コスモリバースシステムは渡してやろう。それで……君たちが、いったいどうするつもりか、楽しみに待っているよ」

 沖田は、じっとその場から動かず、装置からもくもくと立ち昇る煙を見つめた。

 

続く…




注)
・宇宙戦艦ヤマト2199を元にした二次創作小説です。一部、若干のキャラ崩壊がみられますが、予めご承知おき下さい。
・以前、私がPixivに投稿した「君の本当の名は」を元にし、これに大幅に加筆しています。
・pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
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