本当の君の名は2198   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2199を元にした二次創作小説です。


(3)その嘘は、地球を救う

 ガミラス――。

 

 沖田とセレステラは、ミレーネル・リンケを連れて、視察という名目で、第二バレラスを訪れていた。

 第二バレラスは、ガミラスとイスカンダルの中間地点の重力均衡点、ラグランジュポイントL1に位置する巨大な衛星都市である。その名の通り、第二の首都を意味し、来たるべくイスカンダルとの大統合が実現した際の遷都に使用することになっている。

 

「き、君は、本当に沖田くんなんだね?」

 タラン=藤堂は、酷く憔悴した様子で、第二バレラスの病院のベッドにいた。

「いかにも、私は、本物の沖田です。少々若返ってはおりますが」

「若返っている……? いや、沖田くん、何を言っているんだね? 完全に別人だよ」

「そうでしょうか? 若い頃は、こんな感じでしたよ?」

 同席したミレーネルは、そのやり取りを真顔で眺めていた。

 遅れて病室にやって来たセレステラは、沖田に状況を説明した。

「総統……いや、オキタ。国防相のヴェルテ・タラン氏は、昨日、突然記憶喪失となり、かなり混乱されていたそうよ。部下の方々に入院を勧められてこちらに連れて来られたみたい。何でも、オキタを呼んでくれとしきりに騒いでいたらしいわ。身体に問題がある訳ではないから、今、退院の手続きをしてきたから」

 沖田は、セレステラににこりと笑って礼を言った。

「ありがとう、セレステラ」

 セレステラは、その笑顔に、思わず赤面していた。

「どうか、したのかね?」

「な、何でも無いわ!」

 顔を反らした彼女は、デスラーに優しい言葉をかけてもらったような気がして、不覚にもドキドキしていた。

 それを見ていたミレーネルは、彼女を冷静にじっと見つめている。

「な、何よ」

「別に……」

 その後、沖田は、今自分たちに起きている問題を説明して、藤堂もそれを理解して、やっとのことで冷静さを取り戻していた。

「沖田くん……。これから、どうする?」

「この、セレステラが、我々を地球に送り届けてくれるそうです。帰りましょう。我々の母なる星、地球へ」

「本当かね? 君たち、それは事実かね?」

「本当よ。私も、総統を取り戻さなければならないから」

 沖田は、ふと、病室の窓から見える青い惑星のことが、先程から気になっていた。ガミラス星の月のように漂うその惑星は、豊かな海を抱えた美しい星だった。

「ところで、あの星は、何という惑星なのかね?」

 セレステラは、ああ、というように気がつくと説明した。

「あれは、イスカンダルよ」

 沖田と藤堂は、耳を疑った。

「な……なんだと……?」

「あれが、イスカンダル……?」

 二人は、顔を見合わせて驚きを共有していた。

「ガミラスとイスカンダルが二重惑星……?」

「我々は、イスカンダルに騙されていたんだろうか?」

 その会話で、セレステラとミレーネルは、ピンときていた。

「もしかして……。イスカンダルは、テロンに接触してきたのかしら?」

 沖田は、頷いた。

「地球を元の姿に戻すシステムを提供すると言われている。しかし……。まさか、君たちとイスカンダルは、グルなのかね?」

 セレステラは、ミレーネルと見つめ合って、何と説明するか考えていた。

 ミレーネルは、ニヤリと笑うと先に口を開いた。

「……そうね。あの女は、そうやって困っている人を、たぶらかすのが好きなの。高みの見物をして、自分では何もせずに、試すだけ」

 沖田と藤堂は、絶望したような表情になり、大いに落胆していた。

「そうだったのか……。沖田くん。私は、その小さな可能性に賭けようと思っていた。本当に残念だよ」

「いいえ。私もです。命を賭けるに値する誘いだと思っていました」

 ミレーネルは、首をかしげて、そんな二人を面白そうな顔で眺めた。

「そんなに落ち込むことは無いわ。その装置は、確かにイスカンダルにある」

 沖田と藤堂は、再び顔を輝かせた。

「おお、本当に、あるのかね?」

 セレステラとミレーネルは、顔を見合わせて笑った。

「だったら、ちょっとだけイスカンダルに寄って行きましょうか?」

 

 セレステラは、スターシャに連絡を取ると、総統から大事な話があると伝え、シャトルで宮殿を訪問することにした。

 宮殿の大広間で、彼らはスターシャが来るのを、今か今かと待っていた。

「オキタ、さっき説明したとおりにやるのよ?」

「……分かっておる」

 セレステラは、不満そうにしていた。

「ちょっと……。そのジジ臭い喋り方、どうにかならないの?」

 沖田は、ギロリとセレステラを睨んだ。

「わしを、年寄り扱いするな!」

 ミレーネルは、面倒くさそうに言った。

「あなたは、白髪と白髭のお爺さんだった。私、見たのよ」

「わしは、まだ五十代だ! 爺さんなどではない!」

 その時、大広間の中央にエレベーターが降りてきた。

 一同は、慌てて整列して、スターシャが出てくるのを待った。

 そのエレベーターからは、スターシャだけでなく、サーシャも現れた。厳しい表情の二人は、沖田たちの前に進むと、二メートル程度の距離で立ち止まった。

「……久しぶりね、アベルト。直接、この星を訪れたのは、何年ぶりかしら?」

 スターシャの冷たい瞳と、その口調に、一同は会釈で応えた。

 沖田は、頭を下げながらセレステラに小声で話しかけた。

「話が違う。この男は、彼女に嫌われているようだぞ?」

「大丈夫。言われた通りやって」

 頭を上げた沖田は、しぶしぶスターシャの前に歩み寄り、その距離を一メートルまで詰めた。

 そこで片膝をついて頭を垂れた沖田は、右手を胸の前に置き、スターシャに語りかけた。

「……スターシャ、折り入って、君に相談したいことがある」

 スターシャは、沖田を見下ろしたまま、冷静に答えた。

「私に相談? 何かしら?」

 スターシャの声は、まだ氷のように冷たい。果たして、セレステラに授けられた策が通用するのか、沖田は疑問を感じていた。

 しかし、それでもやるしかない。

 沖田は、その姿勢のまま、目を閉じて語りかけた。

「スターシャ。私が間違っていた。これから、軍を退き、あらゆる星々の救済に乗り出そうと思っているんだ」

 スターシャは、目を丸くして、耳を疑った。

「アベルト……いったい、どうしたの?」

 スターシャの反応が変わった……!

 声色に動揺がみられる。本当に、たったこれだけで、彼女の気持ちを揺さぶることができそうだった。

 沖田は、気を良くして、顔を上げて、スターシャの瞳を覗き込んだ。

「私は、もう、疲れてしまったんだ。戦いを終わらせたいんだ」

 スターシャは、口元に手を当てると、目を見開いて、瞳を潤ませている。

 沖田は、ゆっくりと立ち上がった。そして、彼女の手に両手で触れると囁いた。

「君の為に」

 スターシャは、顔を真っ赤にして沖田に手を触られたまま、動かなくなった。

 セレステラとミレーネルは、目を細めて二人を眺めていた。

「チョロいな」

「うん、チョロい」

 沖田は、そこで本題に入った。

「手始めに、一番遠い我々の侵略している星、テロンの救済に乗り出そうと思っているんだ。私がこの手で、コスモリバースシステムをテロンへ届けたい。そして、和解を申し出ようと思うんだ。どうだろう? 私は本気なんだ、スターシャ。私の相談に乗ってくれないか?」

 スターシャは、小刻みに震えると、こわばった笑顔を向けた。感動と驚きとで、正常な判断が出来なくなっているようにみえる。

「分かったわ、アベルト。早いほうがいいわ。手配しておくから、装置の部品を受け取って」

 沖田は、心の中で、ガッツポーズを決めると、満面の笑みで応えた。

「ありがとう!」

「待って!」

 そこで、声を上げたのは、スターシャの横で様子を伺っていたサーシャだった。

「あの、デスラー総統が、こんな殊勝な態度を取るはずがありません、お姉さま。この男は、お姉さまを騙そうとしています!」

 沖田は、頭の中で大きな舌打ちをした。

 ちっ……!

 この女、邪魔立てする気か……!

 あのような美女で無ければ、とっくに怒鳴りつけているところだった。

 沖田は、眼光も鋭くサーシャの方を睨むと、どう誤魔化そうか頭をフル回転させていた。

「ならば……」

 スターシャとサーシャは、注意を沖田の方に向けてくれた。

「証明してみせよう。君が、テロンへの旅に同行し、私の本気を確認すればいい」

「なっ……!」

 セレステラとミレーネルは、沖田が余計なことを言い出したのに慌てていた。

 

 その後、結局一行は、再び第二バレラスに戻っていた。先程の沖田の申し出の通り、サーシャを連れて。

 第二バレラスの総督府の執務室の総統用のデスクにいた沖田は、セレステラに聞いた。

「わしらが、地球まで行ける船は用意出来るのか?」

 セレステラは、ちらと周りを確認した。サーシャは、ミレーネルと共に、コスモリバースシステムの受領と組み立ての指示をする為、通信室の方へ行っていて今はいない。

「出来るわ。ここには、タラン国防相が指揮して開発している、総統専用の戦闘艦デウスーラがある。後は、本星の総督府から、コアシップを呼び寄せれば、いつでも出航出来る。つまり、トウドウ。あなたがテスト航海の為と理由をつければ問題ないはずよ。それを承認するのも、総統だから」

「分かった。なら、私の方で手配しよう」

 藤堂は、沖田と顔を合わせた。

「こんなことになって、どうしたものかと思っていたが、我々は、運が良かった。そう、思わんかね? 沖田くん」

 沖田は、重々しく頷いた。

「その通りです、長官。これで、地球を救えます」

 沖田は、ふと、気が付いて呟いた。

「考えてみれば、わしの身体は、遊星爆弾症候群を患い、もう長くは保たない。この男の身体のままなら、それも解決するのだな」

 セレステラは、聞き捨てならないと目を釣り上げ、総統用のデスクを思い切り叩いた。

「な、な、……何を言っているの! そんなことは、私が絶対に許さない。あなたがそのつもりなら、いつでも、コスモリバースシステムを捨ててしまってもいいのよ?」

 セレステラの剣幕に、沖田と藤堂は青ざめた。

「お、沖田くん、今の発言、撤回したまえ」

「は、はい。……冗談だ、セレステラ。このままで良いなんて、わしは思っとらんよ」

「どうだか……。あなた、総統の身体、気に入っているでしょう? 私は、心が読めるのよ」

 セレステラは、沖田の心を読もうと集中した。

 沖田は、真剣な表情で、彼女を見返していた。

 ……確かに、わしはこの身体が気に入っておる。

 若くて元気だし、何より男前だ。これなら、もうひと花咲かせられるかもしれぬ。それに、このセレステラも、どうやら総統に気があるらしいしな。さぞや、モテるのだろう。

 ……い、いかん、心を読むと言われているのに、何か、何か……他のことを考えねば。

 沖田は、考えれば考えるほど、このままでいたらどうなるか、という妄想を止められなくなっていた。

 セレステラは、みるみる顔色が変わり、怒りが収まらなくなっていた。

「こ、こ、この、エロじじい! あんたなんかに、絶対に総統の身体は渡さない!」

 セレステラは、怒ったまま、足早に執務室を出て行った。

 藤堂は、沖田の方を睨んでいた。

「沖田くん……。君は、どんないやらしいことを考えたんだね」

「それほどでは」

 藤堂は、ため息をついた。

「気をつけたまえ。彼女を怒らせて、この話を反故にされたらことだ」

 沖田は、真面目な顔で重々しく頷いた。

「分かっています」

「……沖田くん。本当に、大丈夫かね?」

 

 その翌日、一行は第二バレラスを出発して、遥か遠い、地球を目指して旅立った。護衛の親衛隊の一部の艦船が、デウスーラの護衛で同行したことは、言うまでもない。

 

 その頃、バレラスでは――。

 

「なにぃ〜? 吾輩に内緒で、総統が新造艦のテスト航海にバラン星に向かっただと?」

 副総統のヒスは、定例会議の場で、総統不在を伝えたところ、軍の代表たるゼーリックから問いかけられていた。

「そんなに長くはかからない。それに、不在の間は、私が代わりを務めるから、特に問題ない」

 ゼーリックは、大きな声で笑い出した。

 ヒスは、不快な表情で彼を見つめた。

「なるほど。ならば、政治の方は、あなたにお任せしよう。だが、軍の最高責任者が不在の今、私こそが、軍の最高責任者であ〜る!」

 ゼーリックは、急に席を立つと、議場から出ていこうとした。

「あ、おい。ま、待たんかゼーリック。まだ会議は終わっていないぞ」

「だぁ〜から、あなたに任せる、と言っている」

 そう言い残すと、彼は本当に議場を後にした。

 

 ゼーリックは、軍司令部に戻ると、部下に指示した。

「今からバラン星に、向かう! 直ちに出航の準備をしろ!」

 ゼーリックは、にやりと笑った。

 これぞ、あやつを亡き者にする絶好の機会……!

 

続く…




注)
・宇宙戦艦ヤマト2199を元にした二次創作小説です。一部、若干のキャラ崩壊がみられますが、予めご承知おき下さい。
・以前、私がPixivに投稿した「君の本当の名は」を元にし、これに大幅に加筆しています。
・pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
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