本当の君の名は2198   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2199を元にした二次創作小説です。


(7)その手柄は俺のもの、その失敗はお前のもの

「なっ、なんだと!?」

 銀河方面軍司令長官の任についていたゲール少将の元に、再び意外な報告が入っていた。

 

 そこは、バラン星鎮守府。

 

 本星から、お忍びでデスラー総統がバラン星に向かっているという噂が伝わったのが、一週間前。一方、そのデスラー総統から、冥王星基地撤退を命じられたと、太陽系方面軍のシュルツ大佐自身から報告があったのが、たった今。その冥王星基地は、テロン軍による攻撃で、既に廃墟となってしまったという。

 ゲールは、立体映像で待機するシュルツを放置したまま、落ち着かずに司令室の中を、行ったり来たりしながらその理由を考えていた。

「何故だ……? 何故総統は、そんなご命令を……?」

 ゲールは、考えれば、考える程、嫌な予感しかしなかった。

 一週間前に、総統直々にバラン星を訪れるという噂を聞きつけた際には、嬉々として、直ちにその受け入れ準備を部下に命じた。

 彼は、その時から、これまでの銀河方面軍としての自身の活躍について考えを巡らせていた。既に、ボラー連邦とガルマン帝国(※)との接触も行い、強大な二大星間国家の存在を本国に知らしめ、更には、偶発的に戦争状態へと入ったテロン星については、圧倒的な武力で侵略を進めており、占領も時間の問題と報告していた。そしてこの、テロン星侵略は、銀河方面軍として、大ガミラス帝星の新たな領土拡大の足がかりになるはずだった。

 昨日までのゲールの頭は、これらの活躍を受けて、サプライズで自身に勲章を授与されるのか、はたまた昇進を命じられるのか、どのような良いお話がもたらされるかを、ワクワクしながら待っていた。

 それは、このシュルツ大佐の報告により、一転して叱責や、降格、下手をすれば投獄、または最悪の場合、処刑、といった可能性が彼の脳裏をかけめぐった。考えられるのは、二大星間国家の存在を報告したものの、手も足も出ずに紛争になりかけ、シュルツの尽力でことを納めた後、静観を続けていることか、もしくは、テロン星の侵略に既に何年も経過しており、時間がかかり過ぎていることなのか、悪い方へ悪い方へと考えると、その可能性は幾つもの要因として考えられた。

 ネガティブな思考へと一瞬で陥ったゲールは、この窮地から自身の身を守る方法がないか、これまでの経験を活かして頭をフル回転させた。そして、この窮地を脱するには、何らかの納得出来る言い訳や、これらの問題の責任が部下にあることを証明せねばならない。

 ふと、考えてみれば、どうして、シュルツの上司である自身に連絡が無く、シュルツ本人に直々に報告があったのか、違和感を覚えずにはいられなかった。

 そうやって、諸々の問題を考えていくうちに、ゲールは一つの結論に至り、暗く、下衆な笑いが込み上げていた。

 そう。明らかに総統は、テロン星侵略の遅延の問題について、ゲール本人では無く、シュルツにその原因があると、考えているのに違いない。そうでなければ、自身を飛び越して、末端のいち士官へと、直接連絡があった理由も辻褄が合わないというものだ。

 こうして、充分に時間をかけて考えをまとめたゲールは、ようやく立体映像で、敬礼の姿勢のまま、固まっているシュルツへと向き直った。そして、偉そうに見せようと、胸を張って腕組みをすると、シュルツに不快感を顕にした表情で語りかけた。

「シュルツ。何故、総統から直々にそのような連絡があったか、お前はわかっておるのだろうな?」

 敬礼した手を下ろしたシュルツは、冷や汗をかいて自信がなさそうに答えた。

「何でしょう……。総統に、我々の作戦が失敗とお思いかと、お尋ねしましたが、それには答えて頂けませんでしたので……」

 ゲールは、ニヤリと笑うと勿体ぶって少し間を空けて話した。

「そんなことだから、お前は駄目なんだ。テロン星如きの弱小国に、時間がかかり過ぎていると、総統はお考えなのだろう。その責任は、誰にあるのか、お前はどう考えている?」

 シュルツは、憮然とした顔になると、ゲールに回答した。

「お言葉ですが……。そもそも、最後の艦隊戦での一度の敗北で、艦隊の損耗をお怒りになったのは少将でした。そして、遊星爆弾によるロングレンジ攻撃に切り替えるように指示されたのも少将です。こんなに時間がかかっているの主な原因はそこにあります。総力戦で、全艦隊でテロン星へ侵攻すれば、艦隊の損耗は多少あるでしょうが、かなり前に占領は完了しているものと、私は思いますが」

 ゲールは、手を振り上げて激怒した。

「きっ、貴様! わしのせいだと言うのか!」

 シュルツは、言い過ぎたと、後悔して取り繕おうとした。

「い、いえ。艦隊戦での敗北は、確かにテロン軍を甘く見た私の責任もあると思っていますが……」

 ゲールは、大声で怒鳴った。

「その通り! 総統からお預かりした大切な艦隊なのだぞ! たかだかテロン軍相手に、何隻も失うなど言語道断! 貴様が不甲斐ないから、わしは、少し助言してやっただけだ。にも拘らず、貴様は無能にも、遊星爆弾攻撃だけを続け、戦いを長引かせた。その責任を、総統はお前に取らせようとしておるのだ」

 シュルツは、彼が責任を放棄して、自分に全責任を被せようとしていると悟った。ワナワナと怒りに震えたシュルツは、何か言い返そうと歯を食いしばった。しかし、この様子では、逆らえば逆らうほど、彼の逆鱗に触れるだけ。シュルツは、思い留まって、運命を総統に任せようと、心に決めた。唯一の救いは、まだ総統が冥王星基地撤退の理由を明確にしていなかった、という事実だ。

 しかし、シュルツが反抗的な態度に変化したことを、ゲールは見逃さなかった。

「何だ、その態度は。納得出来ないというのなら、上司への反逆行為とみなし、わしが直ちに貴様を処罰してやっても良いんだぞ? 何なら、本星にいる貴様の家族がどうなるかも、お前次第ということだ」

 ガハハと笑い出すゲールに、シュルツはキレる寸前となっていた。その時、シュルツの背後に控えていたガンツは、シュルツの背に触れた。振り返ったシュルツは、彼が目に涙を浮かべながら、首を振っているのを知った。

 ……これ以上、反抗すれば、何をされるか分かりません。

 ガンツの表情から、シュルツは彼が言わんとしていることを読み取った。彼も、同じように、本星に家族を住まわせている。彼の気持ちは、痛い程、よく分かっていた。自分も、ヒルデや妻の身に何かあれば、二等ガミラス人に身を落としても生き続けようと決意した意味が失われてしまう。

 小さくため息をついたシュルツは、本心をぐっと隠して、仕方なくゲールへ答えた。

「……誤解させてしまったのなら、申し訳ありません。そのようなつもりはありませんでした」

 ゲールは、下衆な笑顔を浮かべながら、勝った、と思っていた。これで、総統が何か苦情を言ったとしても、すべての責任をシュルツに押し付けられると、そう確信していた。

 

 それから数日が過ぎた。

 

 ゲールは、総統がバラン星を訪れるという噂が本当なのか、戦々恐々として日々を過ごしていた。太陽系を旅立ったシュルツも、到着までしばらくはかかる筈だった為、彼は落ち着かない日々を過ごしていた。

 ゲールは、自室の中を、行ったり来たりしながら、イライラと、新たな報告を待っていた。

 突然、部屋の通信機の着信音がして、ゲールは、ビクっと驚いて、慌ててベッドの中に潜り込んだ。

 しかし、その着信音は一向に止まない。諦めたゲールは、布団から頭を出すと、しぶしぶそれに応えた。

「……ゲールだ。何の用だ?」

 その音声に反応して着信音が止まり、相手の音声が部屋の中に響いた。

「ゲール少将。閣下宛に、超長距離通信が入っています」

 超長距離通信と聞いたゲールは、即座に「総統からだ」と思い、真っ青になった。

「い……今行く」

 ゲールは、一度ベッドに腰掛けると、行きたくないと思い、頭を抱えた。しかし、長く待たせる訳にも行かず、フラフラと立ち上がって、自室を出ていった。

 

 司令室に向かうと部下が報告して来た。

「お待ちしていました。繋ぎます」

 ゲールは、冷や汗をかきながら、大きく手を振った。

「ま、待て。相手は誰だ?」

 部下は、青ざめたゲールの様子を怪訝に見つめていた。

「……ドメル将軍からです」

 ゲールは、キョトンとして、それを聞き返した。

「ドメル……だと?」

「はい」

 てっきり総統だと思い込んでいたゲールは、ホッとして気軽に返事をした。

「それを早く言え。繋いでいいぞ」

「は、はい。申し訳ありません。繋ぎます」

 すると、すぐに立体映像で、そのドメルの姿が浮かび上がった。短く切りそろえた髪と、精悍な顔。そして、筋肉質で大柄な彼の姿は、ゲールが卑屈に思うのに充分なものを持ち合わせていた。そして、自身と同じ将官ではあるものの、かなりゲールよりも若い。そして、総統に気に入られて、若くしてその地位まで上り詰めた彼に対して、ゲールは憎々しげに思っていた。

「ドメルだ。ゲール少将、久しぶりだな」

「ふん……。貴様か。いったい、何の用だ?」

 ドメルは、苦笑いで答えた。

「随分な挨拶だな。まあいい。単刀直入に言おう。総統の乗った新造艦とその護衛艦隊が、テスト航海中に七色星団に入ったという情報をキャッチした。私は今、タランチュラ星雲の亜空間ゲート付近に居る。ちょうど、小マゼラン銀河で蛮族を追い払えという命令を受け、近くで演習を行っていた所だったのでね、少々、心配になって様子を見に来たという訳だ」

 総統が七色星団に入ったという情報を、初めて聞いたゲールは、総統がバラン星に来るという噂が、本当だったと悟った。震え上がったゲールは、落ち着かない様子になって、ドメルに尋ねた。

「ほ……ほう。それで、総統は無事に見つかったのか?」

「総統の乗る新型戦艦デウスーラⅡ世は、無事に七色星団を抜け、つい先程、連絡がついたばかりだ。総統は、バラン星に向かっているそうだ。テスト航海というのは表向きで、その目的は極秘任務で、まだ教えることが出来ないと言われている」

「極秘任務……?」

 ドメルは、頷いた。

「バラン星で、任務の内容を明かすので、先に向かっていてほしいと頼まれた。あなたの方で、この件、何か聞いていないのか?」

 何の連絡も受けていなかったゲールは、先に総統と話をした彼に、嫉妬して歯ぎしりした。

「……極秘任務なんだぞ。例え知っていたとしても、わしの口から言える訳が無かろう」

 何も聞かされていなかったと答えるのは、ゲールのプライドが許さなかった。なので、どちらとも取れるように、嘘をつかない範囲で曖昧に答えた。

 それを聞いたドメルは、なるほどと頷くと、ゲールに向かって敬礼した。

「確かにそうだな。分かった。では、我々も、これよりバラン星に向かうので、よろしく頼む」

 通信が切れて、ドメルの映像が消えたあと、ゲールは考え込んだ。そして、考えれば、考える程、嫌な予感しかしなかった。 

 

続く…




注)
・宇宙戦艦ヤマト2199を元にした二次創作小説です。一部、若干のキャラ崩壊がみられますが、予めご承知おき下さい。
・以前、私がPixivに投稿した「君の本当の名は」を元にし、これに大幅に加筆しています。
・pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
※ガルマン帝国……私のヤマト小説の公式にない設定。古代ガミラスの移民国家。この時はまだ、ガミラスではその歴史的事実が忘れ去られている。
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