本当の君の名は2198   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2199を元にした二次創作小説です。


(8) その手揉み、擦り切れるほど

 タランチュラ星雲、七色星団外縁――。

 

 無事に、七色星団を抜けたデスラー=沖田らは、一路バラン星に向け、艦隊を亜空間ゲート内に侵入させていた。

 数時間前にドメル将軍からの通信を受けた沖田は、通信を終えた後、自室に戻ってから、どっと疲れを感じていた。その様子を心配したタラン=藤堂が、彼の様子を案じていた。

「沖田くん、大丈夫かね。また、酒を飲み過ぎだぞ」

 自室のソファーに寝転んだ沖田は、藤堂に心配をかけまいと、身体を起こした。

「この程度のアルコール、大丈夫です。ですが、長官。あのドメルという男、只者ではありません。わしには分かります」

 藤堂は、ふむと頷いた。

「そのドメルに、バラン星に行くように話をしていたが、いったいどうするつもりかね?」

 沖田は、少し考えると、自身の考えを話した。

「この、デスラー総統という男、七色星団でもそうでしたが、その命をつけ狙う、政敵に囲まれているようです。しかし、あのドメルという男は、デスラーへの忠誠心も厚く、信頼できる数少ない味方のようです。私の直感ですが、彼を味方につければ、そのような敵から身を守り、この旅の成功の確率を上げられるでしょう」

 藤堂は、辺りを見回し、不安を隠さずに沖田に言った。

「しかし……。セレステラとミレーネルは、あまりドメルを信用していないように見えた。これが、新たな火種にならなければ良いが」

 沖田は、ふっと笑った。

「長官、お気づきになられませんか?」

「何がだね?」

「セレステラは、このわし……じゃなくて、デスラーにゾッコンのようです。わしには分かります。それを利用しない手はありません」

 藤堂は、憮然とした表情で、沖田を見つめた。

「……何を言ってるんだ。中身は君じゃないか。彼女は、油断のならない人物だ。我々も、まるで信用されていない」

 沖田は、自信たっぷりに言った。

「そうとも言い切れませんぞ、長官」

 藤堂は、良からぬことを考えていそうな彼に、一言釘を刺そうと思ったが、頭を振って諦めた。

 

 そうして、更に数時間後、彼らの艦隊は、ようやくバラン星鎮守府へと到着した。沖田らを出迎えた銀河方面軍司令長官のゲール少将とその部下たちは、直立不動の姿勢で敬礼し、彼らを出迎えている。

「デスラー総統閣下、このような銀河間空間のような辺境の地へようこそ!」

 沖田は、彼を軽く一瞥した。基地の高官だろうということは、他の者との服装の違いで明らかだった。

「そんなに畏まらなくていい。楽にしたまえ」

 沖田の一言で、緊張した様子で整列した兵士たちの一番後ろに待機していた中年の男は、相好を崩して手揉みした。

「こんな私に、勿体ないお言葉。それでは、失礼して……」

 沖田は、腰を低くして、手揉みをする中年の男を一瞥した。その卑屈な笑顔を確認した沖田は、ひと目見て、彼がデスラーに心酔する味方の一人だと確信した。しかし、沖田と一緒に行動しているセレステラとミレーネルは、まるで汚物を見るかのような不快な表情で彼を見下している。太鼓持ちのようなその男の態度を見るからに、そんな彼女たちの気持ちも分からなくもなかった。

 しかしその中年の男、ゲールも、あとから現れたイスカンダルのサーシャを確認すると、驚愕の面持ちであんぐりと口を開けている。

「サ……サーシャ姫ではありませんか!? 総統とご一緒だったのですか!?」

 更には、何故か手錠をされたゼーリックまでもが現れた。

 身分の高い賓客がもう一人現れたことや、元帥たるゼーリックが手錠を嵌められていることに、ゲールは急に内心の疑念が膨れ上がった。

 こっ……これは、ただ事では無い……。

 ただでさえ、総統自らバラン星を訪れたことだけでも、珍しいことである。そこに、イスカンダルの皇女が付き添い、軍の最高司令官が拘束された状態で居るとなれば、ただの新造戦艦のテスト航海というのが、何らかの隠れ蓑だと言うことは、流石のゲールも気付くことになった。

「ええ。お姉さま……女王スターシャは、デスラー総統と大事な約束を交しました。その約束が履行されることを見届けるため、私が随伴しています」

 ゼーリックの方は、憮然とした表情で黙ってゲールを睨んでいる。

 ゲールは、怪訝な表情で、デスラー=沖田の顔色をうかがった。沖田も、詮索されまいと、わざと彼に睨みをきかせた。その冷たい瞳にゲールが震え上がっていると、ゲールの肩に誰かが力強く手を置いた。

 彼が振り返ると、そこにはドメルがにこやかに立っていた。

「総統、ご無沙汰しております」

 沖田は、ドメルの姿を認めると、その堂々たる自信に満ちた態度に、感心して頷いた。

「うむ。君も、元気そうで何よりだ」

 旧知の間柄なのだろうと推測した沖田は、当たり障りのないように答えた。

「ゼーリック元帥ではありませんか? いったい、何があったのですか?」

 ドメルの当然の疑問に、沖田は平然と答えた。

「色々とな。後で、君にも話しておこう」

 ゲールはといえば、ドメルに対して小さく舌打ちしたものの、政府の高官やらが勢揃いした状況に耐え兼ねて話題を変えた。

「とっ! とにかくこちらへどうぞ。飲み物や食事をご用意して、お待ちしていました。さあさ、どうぞこちらへ!」

 

 沖田やドメルらが会食している最中、セレステラとミレーネルは、席を外して人気のない通路を見つけて話をしていた。

「ミーゼラ。例のアケーリアス文明の遺跡だけど、私、行ってみようと思うの」

 セレステラは、少しだけ目を丸くした。

「行ってどうするの?」

「もしかしたら、そこに行けば、入れ替わりの問題を解決出来るかもしれない」

 セレステラは、訝しげな顔で、ミレーネルを眺めた。

「何故、そう思うの? 入れ替わりをした者同士が接触しなければ、元へは戻れない」

 ミレーネルは、笑みをこぼした。

「やってみなければ、分からないでしょう? ガミラス本星から超空間ネットワークでリモートアクセスした状態では、それしか出来なかっただけかもしれない。それに、ここから遺跡までは、約5パーセク。一日で行ってすぐに戻って来れるわ」

 セレステラは、あまり納得していなかったが、しばらくは休憩の為、バラン星に滞在することになる。その間に、確かめて来るのも悪くは無いだろう。

「分かったわ。上手く行けば、これ以上マゼラン銀河から離れる必要は無くなるものね。でも、オキタたちはどうするの?」

 ミレーネルは、ニヤリと笑った。

「そうね。もし、入れ替わりを解決出来るとしたら、その場に連れて行った方が、話が早いでしょうね。でも、唯一、ドメル将軍だけは、勘が鋭いから、ここに足留めしておかないと」

 セレステラは、憮然とした表情になった。

「そうね……。あの男……油断がならないわ」

 セレステラとミレーネルは、顔を見合わせて頷きあった。

 

 翌日、バラン星に一泊した一行が目覚めたころ、ゲールは、バラン星鎮守府の司令室で、真っ青になって部下を叱責して騒いでいた。

「そ、総統が行方不明だと!? 貴様、何を見張っていたんだ!?」

「も、申し訳ありません。当直の担当兵士たちは、全員睡魔に襲われて、気が付かなかったようです」

「ば、馬鹿者! 職務怠慢だ、貴様たち、どうなるか分かっておるのだろうな!?」

 ゲールが部下に暴力を働こうと腕を振り上げた所、その腕を押さえつける人物がいた。

「どうかしたのかね?」

 ドメルは、冷静にゲールと相対していた兵士に話し掛けた。

「ど、ドメル!?」

 ほっと安心した兵士は、事実を報告した。

「どうやら、セレステラ様らは、デスラー総統を連れて、ここを出たようです。新造艦デウスーラⅡ世が残されている為、別の船を使った模様です」

 ドメルは、顎を撫でながら総統の行方を思案した。

「それなら、そう遠くへは行っていないだろう。捜索部隊を派遣しよう」

「はっ、承知しました!」

 ゲールは、再び怒り出した。

「こっ、こらっ! 貴様、わしの部下ではないか! ドメルの命令など、きかんでいい!」

「し……しかし……」

 部下は、二人の将官の命令の狭間で、困惑していた。それを素早く察知したドメルは、低姿勢でゲールに語りかけた。

「基地司令官殿、これは、失礼した。しかし、総統の身に何かあってからでは遅い。良ければ、私からあなたに具申させて頂きたいのだが」

 胸に手を当て頭を下げたドメルに、ゲールは一瞬当惑したが、次第に安堵して不遜な態度を取り戻した。

「ま、まあ、お前の言うこともわからんでもない。よし、捜索部隊を派遣するという、意見を聞いてやろう」

「良かった。私の意見を聞き届けて頂き、感謝する」

 二人の間で困惑を続けていたゲールの部下は、交互に二人の顔色をうかがった。

 ドメルは、彼をちらりと見て頷いた。

「大丈夫。直ちに、実行に移したまえ」

「は、はっ!」

 敬礼を決めた兵士は、急いで持ち場に戻ると、基地の艦隊へと発進命令を出した。

 遅れて司令室にやって来たサーシャは、何事が起こったのかと、司令室で動き回る兵たちを眺めた。

「どう、なさったの?」

 答えようとするゲールよりも先に、ドメルが答えた。

「総統が、今朝方行方不明になりました。これから、私も部下と共に捜索を手伝います」

 サーシャは、首をひねっている。

「はてな……?」

 ドメルは、自艦に向かおうとサーシャの隣を通り過ぎようとして、立ち止まった。そして、ニコリと笑うと、彼女に声を掛けた。

「サーシャ様。よろしければ、私と一緒に来ますか?」

 サーシャは、嬉しそうに頷いた。

「そうね、一緒に行くわ。ありがとう、ドメル」

「では、こちらへ。私のドメラーズⅢ世にご案内します」

 談笑しながら去って行く二人に、ゲールは苦虫を噛み潰したような顔で見送った。

「……」

 すると、ゲールは、背後で部下たちが笑っているような気がした。彼が勢いよく振り返ると、その部下たちは、一斉に視線を反らした。

「……ど……どいつもこいつも……わしを馬鹿にしおって」

 ゲールは、大きな声で怒鳴った。

「ええい! わしも、捜索にでるぞ! 戦艦ゲルガメッシュの発進準備をさせろ!」

 

 その頃、青いガミラス駆逐艦一隻が、宇宙空間のとある座標にワープアウトした。

 ミレーネルは、艦橋で外部の様子を確認した。

「きっとあれね。あの惑星に着陸なさい!」

 前方に見えるのは、銀河間空間に浮かぶ小さな浮遊惑星だった。太陽のないこの宙域の中で、微かな光を放っている。

 同じく船に乗っていたセレステラは、総統用として用意した部屋にいた。

 そこで沖田は、ソファーに座って、足を組んでいる。その手には、アルコールの入ったグラスがあった。

「これはまた、なかなか美味い酒だ。君も飲めばいいのに」

 赤い顔をした彼は、ご機嫌な様子だった。

 彼の横には、シラフで不機嫌な顔をした藤堂が座っている。

「飲み過ぎだ、沖田くん。件の七色星団からここ、ずっと飲み続けているじゃないか。いったい、どうしてしまったんだね?」

「長官、何と言っても、ガミラスの酒は美味いですぞ」

 ガハハと、沖田は笑っている。

 セレステラは、彼に酌をしながらクスリと笑っている。

 沖田が酒好きだと分かってから、ことある毎に、セレステラは彼に酒を飲ませた。ガミラス星で行動を共にして以来、彼と一緒に過ごす間、有能な戦略家としての彼の側面を彼女は知ってしまった。

 このまま放っておけば、ガミラスにとって獅子身中の虫となるのは明白だった。だからこそ、彼女は、彼が正常な判断が出来ぬように、何かといえば酒を飲ませることに注力していた。

「オキタ、そろそろ着くわ。出発の用意をしましょう」

「何処に行くって?」

 セレステラは、沖田に優しい笑みを向けた。

「元の身体に戻れる場所よ」

「そうだったな、よし、行くとするか!」

 沖田は、立ち上がったが、その足元はふらついている。

 藤堂は、やむを得ず、沖田の身体を支えながら言った。

「その話が本当だったとしても、我々は、イスカンダルで受け取ったコスモリバースシステムを地球に持ち帰らねばならない。それはどうするんだ?」

「そのあなた方の目的は、私が守ってあげるわ。ここまで、あなたたちに協力した、私を信用出来ないの?」

 藤堂は、彼女を睨みつけた。

「当たり前だろう」

 その時、セレステラが指を鳴らすと、部屋の中にデスラー親衛隊の兵士たちが雪崩込んできた。それぞれ構えた銃を、藤堂に向けている。

「おっ……おい。君たちは……」

 困惑する藤堂を無視して、セレステラは言った。

「そこにいるヴェルテ・タラン国防相は、記憶の混濁があって様子がおかしいわ。今すぐ医務室に連れて行って調べて頂戴」

 助けを求めるように、藤堂は沖田を見つめるも、彼は酷く酔ってご機嫌なままで、事態を把握していないようだった。

 

続く…




注)
・宇宙戦艦ヤマト2199を元にした二次創作小説です。一部、若干のキャラ崩壊がみられますが、予めご承知おき下さい。
・以前、私がPixivに投稿した「君の本当の名は」を元にし、これに大幅に加筆しています。
・pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
※ガルマン帝国……私のヤマト小説の公式にない設定。古代ガミラスの移民国家。この時はまだ、ガミラスではその歴史的事実が忘れ去られている。
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