白い怪物に悪魔が宿る   作:Senkai79

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白い怪物に悪魔が宿る

 

 

 

 この広大な世界に、1人の命が生まれた。

 ありふれた光景。しかし、輝かしい命の息吹。子をとり上げた助産師、子を産んだ母親、子を見守った父親も、新たな生命の誕生を祝った。

 

 特におかしなところはない。この子供は、善良な父と母、隣人に囲まれ、良き環境の中で幼少期を過ごした。まだ幼子であるというのに、早くも文字、言葉、数字を覚え、この驚くべき学習スピードには、幼子の両親も我が子は天才だと大層喜んだ。

 

 

 

 世は『大海賊時代』。海賊王、ゴールド・ロジャーが言い残した言葉によって幕開けた、荒くれ者共の時代。海賊共はひとつなぎの大秘宝(ワンピース)を求め大海へと漕ぎ出し、殺し、略奪、侵略を繰り広げ、人々を恐怖に陥れた。

 今もなお時代は続き、世界には混沌とした状況が続いているが、この幼子の住む地には脅威が訪れなかったことは幸運であっただろう。

 

 しかし、時が経ち、この幼子に物事を判断する知能がついた頃。

 幼い顔立ちから成長し、男女両方に見てとれるような中性的で美しい容姿へと変貌した少年(?)はある日、町外れにある森の中へと遊びに行き、そこで()()()()()()を見つけた。白の矢印がまとわりついたような姿をした、異形の果実。しかし、成長したとはいえ、まだ正しき判断を下せる程の年はとっていなかった少年は、好奇心に抗えず、この怪しげな果実を口に含んでしまった。

 途端、強烈な味が少年の口に広がる。そのあまりの不味さに吐き出しそうになるも、少年はよろけて後ろに転んでしまい、その拍子に果実を飲み込んでしまった。

 ゴホッ、ゴホとえづき、体の異変を確かめるも、特に変わった様子はない。そのことにホッとし、少年は己の愚行を反省しつつ、自分の家へと戻った。

 

 しかし、その出来事から時間が経ち、少年の心が落ち着いた頃。少年は体に変化が起きていることに気づいた。自身の周りにある、運動量、熱量、電気量などのエネルギーを感じとり、そのエネルギーの向き(ベクトル)を操作できるようになったのだ。

 とはいえ、それらの力の向きを自身の思う通りに動かすことは困難を極めた。当てずっぽうで能力を使っても、見当違いの方向に力が飛んだり、あるいは能力自体が発動しなかったこともあった。

 それでも、少年は自身に芽生えた能力に興味を持ち、探究し、能力を掌握することを諦めなかった。自身の天才的な頭脳を惜しみなく使い、検証に検証を重ね、その結果それぞれのエネルギーの公式を導きだし、少年はあらゆるベクトルを操ることができるようになった。

 

 そこからさらに数年の時が経ち、少年は10才になった。ベクトル変換の能力は、最早手足のように自在に扱えるようになり、それどころか反射などの簡易的なモノなら無意識下でも発動することができるようになった。

 無意識に体に有害である紫外線を常時反射してしまい、色素が不必要となってしまった結果、髪や肌が真っ白に変わってしまったという誤算はあったが、少年は、この大いなる力を手に入れたことを喜んだ。この能力があればなんでも出来る。家族や、村の人々の助けになることができる、と。

 

 しかし、少年は知らなかった。強大な力は、使い方を誤れば自身に牙を剥くことになることを。

 

 ある日、少年が広場で友人と遊んでいたときのこと。ちょっとしたことが原因で喧嘩となり、少年の友人が掴みかかって来たそのとき、うっかり反射を発動してしまい、その結果、友人の手首の骨を折ってしまった。異変に気づいた大人達が止めに入るも、冷静さを失った少年は無意識に反射を発動してしまい、自身に近づいた大人達を次々弾き飛ばし大怪我を負わせた。

 このときから、少年の周りの環境が一変した。少年の能力を脅威に思った者達が、少年を捕らえようと迫るも全員が怪我を負い、その悪循環が巡り雪だるま式に被害が増えていく。ついには軍が出撃し、少年を取り囲んで捕らえようとしたが、その圧倒的な力になす術なく倒れ伏した。

 

 その頃から、少年を人として見る者はいなくなった。村の人々、友人、そして家族からも化物を見るような目を少年は向けられるようになった。

 そして、自らの危険性を自覚した白き少年は、自身が育ってきた村を、周りの畏怖の感情を背に受けながら静かに立ち去った。

 

 

 

 こうして、少年は村から姿を消し、時とともに人々の記憶から存在を忘れ去られていった。

 しかしその数年後、少年は異国の地にて、世界を揺るがす大事件を引き起こすこととなる。

 

 

 

 

 

###

 

 

 

 

 

 幻想的な光景だ。島のいたるところに番号がふられた巨大な樹々が生えわたっており、人々が賑わうその頭上には多くのシャボン玉が浮いている。まるで妖精の住む世界に来てしまったかのような、そんな印象を抱いてしまうほど、この島は美しい。

 

 ここは『シャボンディ諸島』。偉大なる航路(グランドライン)の前半部にある、新世界への裏ルートである海底ルートへの準備をする場所として、多くの海賊達が集結する島である。

 なら治安は悪いのか、と聞かれればそんなことはない。近くには海軍本部が設置されており、この島では問題を起こさない、というのが海賊達の暗黙の了解となっている。──それに、今日という日は特に慎重にならざるをえないだろう。

 

 

 

 島の中央にある大通り。しかし、民衆は賑わうことなく、跪き額を地面に押し当てている。

 その大通りの中央には、屈強な兵士に囲まれた宇宙服のように見える珍妙な格好をした人物が、奴隷に跨りふんぞりかえって道を進んでいた。

 

 『天竜人』と呼ばれる、世界で最も誇り高く気高き血族として、世界の頂点に君臨する者たち。その存在は絶対的で、その姿を見た者は土下座してでもやり過ごさなくてはいけない。もし、この中に少しでも顔を上げ無礼を働いた者がいるならばその者は問答無用で、文字通り天罰をうけることとなるだろう。ただ殺されるならばマシな方だ。酷いものなら一生奴隷として天竜人にこき使われ、今天竜人に跨がれている彼のような家畜同然の扱いを受けることとなるだろう。

 

「ほら、さっさと進むえ! ノロノロしてるとまた痛めつけるえ!」

 

 ドシ、ドシと、容赦なく奴隷の顔を足蹴にし、『〜え』という天竜人特有の語尾をつけながら罵倒する。蹴られている奴隷は声の一つも漏らさない。天竜人の機嫌を損ねれば、さらに酷い仕打ちが待ち受けているからである。

 

「…ん、ん〜ん?」

 

 ──とそこで、奴隷を蹴りつけていた天竜人の足が止まる。奴隷の背からおりて、土下座を続けている民衆の下へと足を運んだ。悪魔が近づく恐怖に怯え、民衆から唾を飲み込む声が聞こえる。

 そして、天竜人は1人の女性の前に立ち、屈んで顔を覗き込むと──、

 

 

 

「こいつ、つれて帰るえ。光栄に思うといいえ、下々民よ」

 

 その天竜人の言葉を聞き、女性の顔が真っ青に染まった。心臓の動悸が激しくなり、呼吸が困難になっていく。今すぐにでも逃げだしたい。一生を奴隷として生きたくない。そんな思いが、女性の頭を巡る。

 …しかし、その女性には愛する家族がいた。父、母、そして妹。自身が天竜人に反抗すれば、家族がどんな扱いを受けることになるか。最悪、皆が自身の代わりに奴隷になってしまうかもしれない。

 

 葛藤の末、女性は自身の家族を守るために、奴隷として生きる未来を受け入れた。絶望の表情で、天竜人の側近に連れていかれる。

 

 それを哀れに思うも、止めようとするものは誰もいない。逆らえば、次は自分に災いが降り注ぐ。彼らだって命が惜しいし、愛する家族がいるのだ。故に、額を地面に擦り付け、彼女を見捨てるしかなかった。

 

 

 しかし──。

 

 

「……お姉ちゃん?」

 

 偶然やって来たのか、連れていかれる自身の姉の姿を見て、まだ幼い顔立ちをした少女が女性の元に駆け寄ってきた。

 

「待って!来ちゃダメ!!」

 

 必死に叫んで少女を止めようとするも、幼いながらも姉の危険を察知したのか少女は止まらない。

 

「やめて!お姉ちゃんを離して!!」

 

 少女は必死な様子で女性の足にしがみつき、連れていかれそうになっている姉を止めようとする。しかし、天竜人の側近が、姉にしがみつく少女の顔を殴り飛ばした。

 

「この無礼者が! よくも我の前を横切ったえ!」

 

 少女の無礼に天竜人は怒りを露わにし、懐から銃を抜く。それに気づいた女性は、咄嗟に天竜人の前に立ち、跪いて命乞いをした。

 

「お願いします!私はどうなっても構いません! 妹だけは、妹だけはどうかお許しください! お願いします!!」

 

 女性は必死に土下座をして謝罪の言葉を述べ、妹を救おうとする。しかし、それでも天竜人は許さない。それほど少女の行いが怒りに触れたのか、あるいは女性を絶望に叩き込むことに愉悦を覚えているのか。下卑た笑みを浮かべ、引き金に指をかける。

 

「駄目だえ。下々民の言葉に我が耳を貸すと思うかえ。このガキは、我の手で殺してやるえ!!」

「いや、やめてええぇぇぇぇ!!!」

 

 自身の妹を庇おうと、女性は少女の上に覆い被さる。それに構わず、天竜人が女性もろとも撃ち殺そうとした、そのときだった。

 

 

 

 

 

 

 

「──オイ」

 

 低く、唸るような声が聞こえた。天竜人だけでなく、民衆も声のした方へ目を向ける。

 

 白い髪、白い肌、赤い瞳。中性的な容姿をしており、身体のラインは細く、灰色を基調とした衣服を身につけている。

 身長は170cmほど。その細身も相まって姿は大きくは無いが、目がケモノのようにギラつき得体の知れぬ威圧感を辺りに漂わせる。

 

 突然現れたその少年に、天竜人は何のアクションも起こさない。否、起こせなかった。自身の前を塞ぎ睨みつけるというそんな反逆的な行為を目の当たりにし、怒りよりも先に驚愕が来て呆然と立ち尽くしていた。

 それは周りの者達も同じであり、この白い人物のあまりに無礼な行動に、思考が停止していた。

 

「ンな大勢で集まって道を塞いでンじゃねェよ。さっさとどけろ、邪魔だ」

 

 さらに天竜人に向け暴言を吐く少年に対し、やっと思考が追いついたのか、天竜人は銃口を少年の額に向けた。

 

「き、貴様。我が何者なのかわかってるのかえ!? 我は天竜人だぞ!!」

「……ああ、聞いたことあンな。世界貴族の、この世の頂点に立つ存在だったか?

 …ヘェ、オマエがあの天竜人か。いや、悪かったなァ、あンまりにも三下なナリしてるから気づかなかったわ」

「き、貴様ァァァァ!!!」

 

 少年の不敬についに怒りが沸点を越え、銃口から銃弾が放たれる。銃弾どころか、女性に殴られただけでも吹っ飛びそうな貧弱な身体。誰もが、少年の脳髄が飛び散る姿を幻視した。

 

 

 

 ──その直後のことだった。

 

 

 

「ぎやああああああァァァァ!!!?」

 

 突如、天竜人が左手を押さえ、地面にうずくまる。その手はザクロのように肉が裂け、おびただしい血を流していた。

 対する、銃弾を身に受けたはずの少年の体には、キズひとつ無い。天竜人の醜態を、ただただブタでも見るような目で見下ろしている。

 

 いったい何をした? 人々の頭に浮かぶのはその言葉。天竜人が引き金を引いたその瞬間、突如天竜人の持つ銃が爆発した。腔発でもしたのかと疑ったが、天竜人の持つ銃がそのような不調を起こすなどありえなかった。

 

「貴様ァ、何をしたえぇ!!」

「…さあな、その銃が欠陥品だったンじゃねェのか?」

 

 少年の顔に、狂気的な笑みが浮かぶ。ゾワッと、得体の知れぬ少年の力に恐怖を覚えた天竜人は、自身の護衛に向けて叫んだ。

 

「殺せ!! コイツを原形も残さぬほど殺し尽くしてしまえ!!」

 

 天竜人の指示を受け、護衛達が一斉に少年に向けて発砲する。それを少年は、手を大きく広げ、むしろ迎え入れるかのように銃弾を身に受けた。

 その瞬間を、護衛達は確かに見た。自身の放った銃弾が少年に触れた瞬間、時間を巻き戻したかのように跳ね返ったところを。 

 

「ぐ、があっ!!」

 

 全ての銃弾が反射され、護衛達の銃が一斉に爆発する。痛みに倒れ伏した護衛達の後ろから、屈強な肉体をした別の兵士が、剣や槍を手に少年に迫った。

 一瞬で間合いに詰め寄り、己の剣を振りかぶる。天竜人の護衛にあたることを許された精鋭達。その実力は並の海賊、海兵達では足元にも及ばないだろう。

 

 だが、それでも少年には届かない。その刃が少年に触れた瞬間、剣を持つ腕ごと反射によってへし折られた。

 ならば意識外からの攻撃は? 護衛の1人が六式の一つ、(ソル)を使って少年の背後に周り、剣を突き立てようとする。しかしそれすらも対処され、優秀な兵は何も成せぬまま吹き飛ばされた。

 

 反射の威力は相手の攻撃力に比例して強くなる。その力が仇となり、護衛達は次々と倒れていく。得体の知れぬ能力にどう対処したらよいか分からず、護衛達の動きが止まった。

 

「クハッ、オイオイどォした? 来ねェならコッチからいくぜェ!!」

 

 ボゴォッと、一瞬で姿が消えたかと思えば、重厚な装備を纏った兵士の体を弾丸のように蹴り飛ばす。

 悲鳴をあげながら別の兵士が銃口を少年に向けるも、弾を撃つよりも早く、少年の蹴り飛ばした石ころが兵士の肩ごと銃を貫いた。

 

「ア"ハハハハッ!こンなモンかよ天竜人様の護衛さンはよォ!!もうちっとやる気出してくれてもいいンだぜェ!!」

 

 民衆の前で、少年による一方的な蹂躙が繰り広げられる。ありとあらゆる攻撃が反射によって無に帰し、細身で筋力を感じさせぬ体からは大の大人が吹き飛ぶほどの威力の攻撃が放たれる。

 

 『白い怪物』。そう呼ぶに相応しい戦闘風景。怪物が足で地面を小突けば護衛の1人が宙に吹っ飛び、指で触れれば魂を奪われたかのように地面に崩れ落ちる。全方位から攻撃を仕掛けるもその全てが反射され、逆に護衛達が倒れ伏した。

 

 

 そしてついに、最後の兵士が、少年のデコピンによって前方に弾き飛ばされ、そしてそのまま動かなくなった。

 

「……さァて、残ったのはオマエだけだなァ」

 

 ゆったりと歩きながら、少年は地面に蹲る天竜人に近づく。その残虐な笑みに、天竜人は悲鳴をあげながら後ずさった。

 

「ヒッ。く、来るな、来るなあああ!!」

 

 残った右手で石を掴みとり少年に向けて投げるも、反射によって弾かれる。天竜人とは思えぬ無様な姿に少年は口角をさらに上げ、天竜人の体を踏みつけた。

 

「ぐぎゃああああああ!!」

 

 バキバキッと、連続して肋骨が折れる音が鳴り響く。足を掴んで除けようとするもなぜか弾かれ、それどころか掴もうとした指の骨が折れていく。

 

「た、助け、助けて。頼むから、見逃してくれえ」

 

 下々民と蔑む人間から、必死に許しを乞う天竜人からは、最早威厳などまったく無い。その無惨な姿は、天竜人に虐げられている民衆達ですらも思わず引いてしまうような有り様だった。

 

 だが、白い怪物は足を退けない。しかし、口角を下げて無表情になり、天竜人に問いかける。

 

「そォいや気になったンだけどよォ。天竜人の身体って普通の人間とどォ違うんだ」

「…は?」

 

 急に関係のないことを口走る少年に、天竜人は困惑する。

 

「こうして殴れば血が出るし、痛みを感じる。今みてェに命の危機にあえば恐怖を感じる。呼吸もするし、飯も食うだろうし、クソも出す。今オマエの醜態を見てるコイツらとどこが違うっていうンだ?」

「ぶ、ぶざけるな。貴様ら下々民共と一緒にずるな! 我はこの世の上に立つ神聖な存在。貴様らゴミ共とは流れる血が違うんだえ!!」

「…ふーン、そォかよ。神聖な存在なら、コイツらを奴隷として虐げ、殺してもいいと」

「あ、当たり前だえ!!」

「…OK、わかったよ」

 

 そう呟くと、白い怪物は天竜人から足を退ける。しかし、そのかわりに狂気的な笑みを再び浮かべ、何故か身をかがめて天竜人の傷口に触れた。

 

「話は変わるがよォ、人の体には血液が流れているってことぐらいオマエも知ってンだろ?」

「そ、それがどうじだ?」

「心臓によってポンプのように押し出され、血管を巡って酸素などの生きるために必要なモンを身体中に運んでいる」

 

 天竜人の疑問を無視し、少年は喋り続ける。

 

「さァて、ココで問題です。俺は今、オマエの身体に流れる血液の向き(ベクトル)に触れています。その()()()()()()()()()()()にしたら、一体どうなるでしょう」

「……あ、ああ、アアアアアアア!!!!」

 

 聖地にて学を受けた天竜人だからこそ少年の意図を察することができたのか、突如狂ったように叫び声をあげながら、少年の手を退けようとする。しかし当然、反射によって弾かれ、自分自身を傷つけていく。

 

「止め、止めろ!!止めてくれええええ!!」

 

「ンだよ、答えられねェのか? …しょうがねェな、仕方ねェから教えてやるよ。

 

 ──正解は、自分の体で確かめてみな」

 

 

 

 天竜人の悲鳴が途切れ、体がビクンと大きく跳ねる。その直後、天竜人の身体の穴という穴から、大量の血が噴き出した。全身から噴き出た血が衣服を濡らし、地面を赤く染めていく。誇り高き天竜人は、プライドも何もかもをズタズタに引き裂かれ、白い怪物の手によって無惨に絶命した。

 

「ひっ……うわあああああ!!」

 

 今、とんでもない出来事が起きた。白い少年が得体の知れぬ力を使い、あの『天竜人』を殺害したのだ。

 

 少年の力に恐怖した民衆が一斉に散り散りになって逃げていく。あれは人間ではない。天竜人よりも恐ろしい、最強の怪物だ。自身に手が向くことを恐れた民衆は、日頃恨んでいた天竜人の醜態に快感を覚えることなく、必死の形相でこの場から立ち去った。

 それを、少年は特に何も感じていないといった様子で眺めながらゆっくりと立ち上がる。

 

「気高き神聖な存在、ねェ。……馬鹿らしい。オマエに流れていた血と俺達の血。なンも変わンねェじゃねーか」

 

 天竜人の死体を一瞥した後に背を向けて、天竜人が飼っていた奴隷の方へと向かう。

 少年が奴隷につけられた首輪の鍵穴に触れた瞬間、ガチャという音と共に首輪が奴隷の首から外れた。

 

「どう…して……」

「…さあな。ただの気まぐれだ」

 

 舌打ちをし、自由の身となった奴隷から背を向け、この場から立ち去ろうとする。

 

「ねぇ、待って!」

「ああ?」

 

 自身を呼び止める声に振り返ると、そこには天竜人に殺されかけた少女が、姉に抱きしめられながら立っていた。まだ幼いが故に少年の行いをよく理解できてないのか、その顔に恐怖の感情は感じとれない。

 

「あの、お姉ちゃんやわたしを助けてくれてありがとう」

「はァ? オマエ、俺のやったこと見てなかったのか?」

「え〜と…ずっとお姉ちゃんに顔を埋めてたからわかんない」

 

 それでも、そこに転がっている天竜人の姿を見れば恐怖を抱くはずだが…。…いや、天竜人の死骸の前には少年によって助けられた奴隷が立ち塞がっている。それで少女からは視認できないのだろうか?

 

「でも、あなたがわたし達を助けてくれたのはわかってるよ」

「…ふん。勝手にそう思ってろ、ガキ」

 

 少女の言葉に眉を顰め、白い少年はその場を去ろうとする。

 

「ま、待って!」

「チッ、まだ用があンのかよ?」

「えと、……あなたの名前」

「ああ?」

「あなたの名前を教えて!」

 

 少女の言葉に目を開き、その場に立ち止まる。そして、少女の方へと振り返り、白い怪物は名を口にした。

 

アクセラレータ向き向き(ベクベク)の実を食った化けモンだよ、クソッタレ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この日、世界を揺るがす大事件が起きた。

 世界貴族である天竜人の殺害。その記事に、世界中の人々が目を見開いた。

 事態を重くみた海軍本部は事件を起こした白い少年の身元を調べようとしたが、出身地どころか、性別や名前すらも突き止めることができなかった。

 手がかりとなったのは、全身が白いという特徴的な容姿と、少年が口にした「アクセラレータ」という()()。政府は少年の写真とアクセラレータという名を手配書に貼り付け、生死問わずという条件で賞金首にかけた。その金額、実に3億ベリー。そのひ弱な体格から甘くみられ、多くの者達から少年は狙われることとなるも全員を返り討ちにし、その結果、『最強の能力者』として名を馳せることとなるのだが、それはまだ先の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

###

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇねぇ何をしてるの?って、ミサカはミサカは尋ねてみる!」

 

「ああ? ……俺に向かって来たバカ共を潰していただけだ」

 

「おお、デンジャラスな状況に出くわしてしまったと、ミサカはミサカはガタガタと震えてみたり!」

 

「…ふん、さっさと失せろクソガキ」

 

「あ、ちょっと待って!っとミサカはミサカはあなたにしがみつく!」

 

「ぐっ、離せクソガキ!早くしねェとぶっ飛ばすぞ!!」

 

「じゃ、じゃあ離すから、ミサカのお願いを一つだけ聞いて!」

 

「チッ、わァったよクソ。…で、一体なンだ。さっさと言え」

 

「えーと……親も友達も住む家もないので、ミサカを一緒に連れてってください!!」

 

「……アア!!?」

 

 

 後に1人の少女と共に行動することとなるのだが、それも先の話である。

 

 

 






もし続きが出るとしたら…。(書くかは未定。書けても多分遅れる)

  • 麦わら一味出て欲しい!(ルフィと戦闘あり
  • 麦わら一味出て欲しい!(ルフィと戦闘なし
  • 麦わらの一味は出さないで!
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