とある魔術の時空裂断   作:G.

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Next Go Round

 ───セブンスミスト店内

 

 静まり返った店内。その静寂が建物の広さを不自然に誇張し、不気味さに拍車をかける。

 時折微かに聞こえる足音。店内に入ったケイ達はその足音を頼りに走り出す。

 

 

 

「ビリビリ!」

「アンタ達!この状況で戻ってくるってどういう神経してるのよ!?」

「そんなことよりあの子は!?」

「それがまだ……「おねーちゃーん」ッ!!」

 

 

 絶望しかけた時、それは聞こえた。声の方へ振り向く三人。そこにはカエルの人形を抱え走る少女がいた。探していた少女は頭に花を生やした風紀委員の少女に人形を渡そうと駆け寄っていく。

 

 

「ふぅ……よかった、無事みたいだな」

(あれは……)

 

 これで万事解決。そう皆が思い安心したその時、突如風紀委員の少女は人形を投げ捨て、自分より幼い少女を守るように抱きしめ踞る。

 

 

「逃げて下さい! あれが爆弾です!!」

 

 

 風紀委員の言葉に驚愕する三人。しかし、人形は刻一刻と爆発へのカウントダウンを数える。最早二人を連れて逃げる猶予などない。

 

(くっ……レールガンd「カミやん!!」「おう!!」!?)

 

 御坂がレールガンで爆弾ごと吹き飛ばそうとしたとき、左右から白い影が駆け抜けた。ケイと上条は僅かな言葉だけで意思を疎通し、当たり前かのように爆弾へ走り出す。

 

 

「昨日は二人に見せてもらったからな……今日は俺の力、お見せてしましょうか、ねッ!!」

 

 

 走りながらそう叫ぶと、ケイの右手に無機質に輝く白い剣が現出する。

 そして、普通の人間では考えられない速度で加速し上条を置き去り───

 

 

「はぁッ!!」

 

 

 ───人形の上下左右、四方の空を囲う様に切り裂いた。

 

 

「カミやん! 中心に右手を!!」

「わかった!」

 

 

 上条が中心に手を添えると同時に反対側を切り裂くケイ。

 次の刹那───上条の右手からけたたましい爆発音がする。

 

 

「一体何が……あの能力は……一体……」

 

 

 一部始終を見ていた御坂は目を疑った。鳴り響いた爆発音。その規模からこのフロア一帯吹き飛んでもおかしくない程のものだった筈だ。なのにも関わらず、被害は───ほぼゼロだった。上条の手の隙間から漏れたであろう熱風の余熱で床が少し焦げた程度だ。未だ花飾りの風紀委員と少女も何が起こったのかわからないと唖然としている。手をかざし爆風を打ち消した上条の右手は知ってるからわかるとして、黒裏の……あの虚空を切り裂いた力は、音も、熱も、光でさえも遮ってしまったあの規格外な力は一体何なのだろう。あんな能力は見たことも聞いたこともない……もしあの能力を人体に向けたら───そう思うと御坂は固唾を呑まずにはいられなかった……

 

 

「継! てめえ、俺を蓋にしやがっただろ!!」

「わはは、もう片方切るの間に合わないかなー、と思ったから手伝ってもらっちった☆」

「いーや嘘だね! 絶っ対嘘だ!! 間に合ったのにワザと俺の右手を蓋代わりにしやがったんだ、この鬼! いや、悪魔! 大魔王!!」

「照れるからそんなに誉めるなって~。 あんまり騒ぐと……三枚に卸すぞ☆」

「横暴すぎる!?不幸ーだーッ!!」

 

 

 さっきまでの騒動が嘘の様にはしゃぐ二人に思わず笑ってしまい、握りしめた掌と共に未知の力に怯えていた自身をゆっくりと解いていった。

 

 

「───それはさておき、御坂~。お前人形見たとき反応してたけど……もしかして犯人に心当たりあるんじゃない?」

「え?……ええ、買いものしてる時にさっきの人形抱えてた奴見たのよ」

「そっか。なら、俺らは帰るから。後ヨロシク~」

「なっ!? 何でそうなるのよ!」

「爆弾魔なんぞ御坂一人いれば十分だろ?大勢で行ったら戦力過多でイジメになっちゃうよ。そ れ に、俺らは目立ちたくないんだよね。称賛も拍手もいりませ~ん」

「まあ、誰が助けたかなんてどうでもいいしな。皆無事ならそれでいいだろ」

「と、いうわけで。花飾りちゃん。この事件は御坂嬢の活躍で解決しました~。以上! アデュ~♪」

 

 

 再び無機質に輝く剣を現出し今度は大きめに虚空を切り裂くと、黒裏は切れ目の中に上条を放り込み自身もふざけた挨拶だけ残して消えてしまった。残された御坂達は二人を飲み込んだ切れ目が空に溶けて行くのを見届けることしか出来ず、途方に暮れていたいた。

 

 

「み、御坂さ~ん。どうしましょう……」

「ったく……アイツ等は放っておきましょう。それよりも……初春さん、後お願い!!」

「えっ!?御坂さんまで!?どうしよう……」

 

 

 御坂はこの場を花飾りの少女・初春に任せ犯人を探す為に走りだす。偶然とは言え唯一犯人の顔を見たのだ。二人に任された以上……いや、例え任されなくても、自分が捕まえなくてはと駆け出した。

 

 

 

 ───第七学区、ケイ自宅

 

 

「痛てッ!!」

「ホ~ム,スウィ~ト ホ~ム♪ ただいま~」

 

 

 御坂達に事件を押しつけ逃げてきた二人は、ケイの家のリビングに出来た空間の切れ目から現れた。

 

 

「さっきといい、扱い雑になってきてねぇか!?」

「やだなぁ上条くん、親愛の証だよ~」

「ホントかよ!? ったく……。それより、一瞬で継の家まで来ちまったけどどういう原理なんだ?」

「ああ、これ?」

 

 

 上条は先程打つけた頭を擦りながらケイの能力について聞いてみた。すると、ケイは何と無しに再び無機質に輝く剣を現出させる。

 

 

「そう、それそれ。爆弾のときのも見た目似てたけど一緒か?」

「モノは一緒だけどちょっと違うんだよね~。さて、何が違ったかわかるかな?ヒントはこの家だね~」

「ん~……爆弾のときはこの家に繋がってなかった……?繋がってたらこの部屋吹き飛んでただろうし」

「正解~!最初の質問の答えだけど、この剣で空間を切り裂いてセブンスミストとこの部屋を繋げたわけだ」

「じゃあ、爆弾のときはどこに繋がってたんだ?」

「ん、あそこ」

 

 

 そういうとケイは上を指差した。セブンスミストの上の階───ではないだろう。確認はしていないが爆発音は上条の手からしか聞こえなかったはずだ。そうなると……

 

 

「空とかか? 高高度の上空とか」

「おしいね~。正解は、宇宙でした~」

「はぁ!? 俺宇宙空間に触ってたのかよ……」

「そういうことになるね。宇宙なら爆発が起こっても迷惑にならないと思いまして」

 

 

 上条の考えよりも遥か上空、宇宙に空間を繋げたとあっさり言ってのけた目の前の少年にもはや溜め息しか出なかった。

 

 

「はぁ……でも、そんな便利な能力なら継は高能力者なのか?いやでも、それだと昨日ビリビリに言ってた言葉と辻褄が合わないような……」

「ああ。俺の力は超能力じゃないんだよね~。能力開発も受けてないし。まあ、名前を付けるとしたら……『時空裂断(ディメンジョンイーター)』、とか?この前見たアニメにそんなのがあったような……」

「アニメからのパクリかよ。でもそうすると、継は『原石』ってやつか。俺のもそうなんかな?」

「ん~、これは憶測なんだけど……原石は原石でも俺とカミやんの力は一般的なそれとは別のものと考えた方がいいんじゃないかな?」

 

 

 他にも、修練を積んだ継は上条とは違い色々と応用が効くらしい。確かに継の実力は空間を切ったり繋げたり出来るだけではないんだろう。実際、自分を置き去りにした、あの異常なまでの加速もそうだ。この街の言葉で言うところの『多重能力者(デュアルスキル)』なのだろうかと上条は漠然とだが考えた。

 

 

「人の事散々チート扱いしたくせにそっちの方がよっぽどチートじゃねぇか」

「はは、だから言ったろ? 『超能力者(レベル5)ごとき束になってかかって来ても余裕だ』ってな」

 

 

 目の前で笑う少年に上条は自身の右手を握り、見つめ、考える。自分も修練などを積めば他にも何か出来る様になるのだろうか。これまで様々な異能の力を『消して』きた自分の右手にこれ以上の可能性が眠っているのだろうか。興味はあるが、あくまでもそれは無能力判定からの脱却により財布の中身が潤えばいい程度の興味だ。ケイやビリビリ少女の様な強大な力はむしろ面倒でしかないなと考えてしまう。平和や平凡が自分には一番。上条はそう思い右手の力を抜いて行く。

 

 

「因みに世界には超能力とは違った力があるんだけど、どうやらこれとも違うらしい」

「違う力?」

「そ。『魔術』って言うんだけどね」

「……は?」

 

 

 今この少年は何と言ったのだろう。魔術?魔法?上条は己の耳を疑い、唯々呆気に取られていた。

 

 

「まあ、信じられないのは無理もないさ。でもな? この世には自分の知らない事が沢山あるんだ。頭固くしてると損するぜ?」

 

 

 確かに継の言う通りなのかも知れない。だがこの科学の街に住む者にとってほとんどの事が科学的に証明されてしまっている中、オカルトの類いである魔術を信用しろというのも難しい話なのだ。ケイの言葉に不思議な説得力があろうと、幾らこの右手を持つ自分が無能力者の判定をされようと、自分もまたこの街の住人であり、すぐには信用できる内容ではないと上条は頭を悩ませていた。すると、反応に困っていた上条を助けるようにチャイムの鳴る音が聞こえてきた。

 

 

「お、家電が届いたかな~?」

「今日買ったばかりじゃなかったか?」

「すぐ使いたいから無理言って届けてもらったんだよ~」

「なるほどね。じゃあ、運ぶの手伝うぜ」

 

 

 正直、ケイの話には興味があるが難しい話は頭が痛くなる。そして頭の痛い話は補修と財布の中身で充分だと、上条はこの話を頭の隅に追いやり、届いた荷物を運ぶことにした。




さ〜て、ようやくケイさん能力使えました。
次回はやっと本編突入です。亀更新ですがお付き合い願えると嬉しいです。

ではでは。
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