とある魔術の時空裂断   作:G.

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You Set Me Free

 これを不幸と言わずして何と言うのだろうか。

銀行からの通報を聞きつけ、たまたま近くにいた風紀委員(ジャッジメント)が、たまたま空間移動能力者(テレポーター)で、

たまたまケイが外に出ようとしたそのときに現れたのだ。

一度在る事は二度在るというが、それにしてもこのタイミングの良さは異常である。

 

 

「うぅぅぅ……俺は平和に平穏に青春を謳歌したいだけなのにぃぃぃぃ……」

「あ、あなた、何を項垂れてますの? それより銀行強盗は!?」

「ソレナラユウカンナカタガタガツカマエテクダサイマシタヨ~。ダカラハヤクソイツラツレテッテネ~」

「そ、そうでしたの。目立った被害もなく済んで良かったですの。では、犯人はまもなく来る警備員(アンチスキル)に任せるとして、事情聴取させていただきますの」

「あはっ、あははっ……お、終わった……」

 

 

 もはやハイライトが消えた目で呟きながら己の不幸さを呪うばかりである。

IDがない今事情聴取などされてしまえばアレイスターが裏で手を引き強制送還されかねない。最悪、身元不明の不審者として捕まってしまうだろう。

2度目などない。このチャンスを逃してしまえば様々な理由で引き止められ、二度と窓のないビルから出られなくなるだろう。そうなればケイは色んな意味で『魔法使い』になってしまう。

計画に計画を重ね、今日という絶好のタイミングでやっと得たこのチャンスが全て水泡に帰してしまうのだ。現実逃避したくなるのも無理がない。

 壊れた玩具の様に何かを呟き続けるケイに、苦笑いしながら風紀委員(ジャッジメント)は聴取を諦め、カウンター付近の一般人から事の顛末を聞く事にしその場を後にした。

 

 

「ははは……さよなら、青い春……さよなら、まだ見ぬ愛しい人よ……俺は立派な魔法使いになって、ゆくゆくは法王……に……!?」

 

 

 そのとき、どこからか金属の擦れる音が聞こえ始める。

音の方に視線を向けると徐々にだがシャッターが開き始めているではないか。

 

 

「なっ!?どうしてシャッターが開き始めましたの!?」

「いや~、犯人も縛られている事ですし、警備員(アンチスキル)が入って来やすいように開けておこうかと思いまして」

「そういうことは一言おっしゃって頂きませんと!」

 

 

 カウンターの方を振り返ると、風紀委員(ジャッジメント)と先程指示を出していた従業員が何か話している。穏やかな内容ではなさそうだが、それよりも異常な光景が視界に飛び込み、釘付けにされてしまった。

風紀委員(ジャッジメント)の死角にいる人々が数人、眩しいばかりの笑顔でこちらに向かってサムズアップをしているのだ。

余りにも異常な光景に混乱していると、さらにその中の数人が開き始めたシャッターを指差し始めた。

 

(こ、これは逃げろということなのか??)

 

皆が銀行強盗を倒した際に事情を聞いていたせいか、先程からのケイの姿を哀れに思ったのかはわからないが、せめてものお礼にと協力してこの場から逃がしてやろうということになったようだ。

 徐々に開かれるシャッター。皆が口裏を合わせたかのように風紀委員(ジャッジメント)の少女は視界から姿を消していく。残りの人々は笑顔で脱出を促している。

……皆の気持ちに応えなければ。ケイは一つ頷き外へと踏み出した。

 

 

(くっ…!皆ありがとう!! この恩は絶対忘れないぜ!!!……親父……親父の街の住人は皆優しい人ばかりだったよ……viva 学園都市!……viva 外の世界!!)

 

 

 既に1/3程開いたシャッターから差し込む光からは懐かしさすら感じる。

だがこんなにも眩しく、希望に満ちあふれた光に触れた事があっただろうか。今ここに誓おう、今日という日を忘れぬよう。

この先どんな困難が待ち受けようとも、どんな壁に立ち止まろうとも、決して心折れたりしないと。皆がくれた明日という名の未来を精一杯生きようではないか。

後ろで風紀委員(ジャッジメント)が何か言ってるが知ったことではない。今、俺は自由なのだと。

出口まで後数歩。小さな子供に手を振られ、おばあちゃんに拝まれながらここまでやって来た。

今ここに、新たなスタートを刻むのだ。

 

 

「俺! 爆t「黒子ー? 終わったー?」aん……おう、姉ちゃん……ちっとこっちこいや……」

「えっ!? な、何!? だ、誰よアn「ごちゃごちゃうるせぇ!! そこに正座!!!」はいッ!!」

「お、おい、ケイ……なにしてるんだにゃー……」

 

 

 ……二度在る事は三度在る。この男本当に呪われているのだろうか?

皆の希望を(勝手に)一身に受け、新たにスタートを切ろうとした最中、またもや邪魔をされてしまったケイ。しかも今度は決め台詞の最中もあってもはや怒り心頭である。

温厚な人間がキレた時程怖いというが、ケイは感情の表現がオーバーなだけであって決して感情に任せて行動することなどのない。

それに加え、喜怒哀楽の怒のみ欠如したような性格のケイが初めて怒りを露にしているのだ。それは地獄の釜を開けてしまったのも同意義であり、最早誰にも止められる訳がない。

邪魔した本人の女学生を天下の往来のど真ん中に正座させ、土御門の制止も聞かず一方的に説教をする。

女学生もケイの勢いと動物的本能で感じ取った恐怖に、いくら話を聞いても友人の安否を気遣い様子を伺いに来た自分が、何故こんな状況になっているのか皆目見当も付かないまま、とりあえず正座をし受け答えしている。

 

 

「お、お姉様!? これはi「オ マ エ モ ス ワ レ」はいですのッ!!」

「あの~……これは一体……」

「あー……触らぬ神に祟りなしだぜい。二人には悪いが落ち着くまで捌け口になってもらうしかないにゃー」

 

 終いには女学生を助けに来た風紀委員(ジャッジメント)にも飛び火し、途中から二人仲良く並んで正座する羽目に。土御門もお手上げの状態で、頭に花を生やした風紀委員(ジャッジメント)と傍観するしかなかった。

この暴走とも言えるケイの説教は、語尾に「~じゃん」と付く警備員(アンチスキル)が到着し、流石に不味いと感じた土御門に引き摺られながら夕刻の街に消えるまで小一時間程続いた。

余りの激昂ぶりにID確認出来るわけもなく、警備員(アンチスキル)に土御門の知り合いがいたこともあり土御門の友人ならばとなんとか事なきを得たケイであったが、この後その土御門から逆にこっぴどく説教を受けたことは言うまでもない。

 

後日、ケイに正座させられた二人は口を揃えて「うちの寮監と同じオーラを感じた……」と言っていたのは内緒の話。




沢山の方にお気に入り登録頂き本当に感無量です。
50人突破したらお赤飯でも炊きましょうか。

活動報告にも書かせて頂きましたがこの話以降、毎週火曜日の朝6時に更新したいと思います。
今後とも『とある魔術の空間断裂』を私共々宜しくお願い致します。
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