とある魔術の時空裂断 作:G.
毎週更新出来るよう頑張っていますので気長にお付き合い頂けると幸いです。
ではどうぞ。
「それじゃあ、夕方には全部用意出来ると思うからまた来て頂戴」
「了解~。じゃあまた後で!」
そう告げるとケイは笑顔でまた虚空へ消えて行った。
「わかりません……ただ、理事長の話によれば『原石』であると」
「……『原石』、ですか……」
「ええ……。彼の力がどのようなものであり、どれ程の可能性を秘めているかはわかりませんが、理事長が直々に養子に迎えた経緯を考えれば、彼がとても大きな運命を背負っていることは伺えます」
この街に来て初めて超能力を目の当たりにしたときもそうだったが、この胆が冷える感覚はどうにも慣れない。
親船があまり自身の警護の力を入れない方針の為、襲撃などの類は幾度も経験してきた。
だが、あれは違う……。決して常識などでは考えていけないものなのだ。
人間、自分のわからない───理解し難いものに対しては酷く閉鎖的傾向になることがある。
趣味趣向や宗教の相違などがそうだが、要は自身の認識する『世界』を壊されるのが嫌なのだ。その嫌悪感は対象の力の大きさに比例してゆく。
だが、そう簡単に割り切れないのも人間である。
例え、どんな未知の力を持っていようとも、先程まで共に談笑していた銀髪の少年を秘書の男は恐れたりはしなかった。
それどころか彼の環境を考えれば、親船が言う『運命』に立ち向かう力になってくれるだろうと安堵さえした。
畏怖する力さえも希望に変えてしまう、そんな彼の魅力に男は気持ちが昂るのを感じた。
「……私は初対面でしたが……それでも、彼ならば乗り越え覆してくれると感じました」
「ふふふ、貴方もあの子に魅了されてしまったみたいですね。無理もありません。あの子は、あの統括理事長でさえ骨抜きにしてしまったのですから」
「しかし、理事長に黙って彼のIDを作っても大丈夫なのでしょうか?」
「そのことなら問題はありません」
そう答えながら親船は、机の引き出しの中から1通の口の開いた白い封筒を取り出すと、徐に秘書に手渡した。
秘書は訝しげに受け取り、親船の許可を得てから中身を確認する。
「!! これは……一体誰がこれを」
「彼しかいないわ。恐らくあの子が私を頼ってくるのを見越して直ぐに用意し送ってきたのでしょうね。彼もあの子の事ではただの親バカだということでしょう」
くつくつと笑いを堪えながら話す親船に、開いた口が塞がらないという言葉を体現している秘書の男。
封筒の中身はケイのIDと書庫(バンク)に登録されたであろう内容が記された1枚の紙だった。
どうやらアレイスターはケイが家を出た後、直ぐにこれらを用意し、親船のポストに投げ入れたようだ。
本来ならばこんなに早く発行出来るものではない。一連のあまりの手際の早さに前々から準備していたのではないかと勘繰ってしまう程だ。
先程再度会う時間を夕方以降に設定したのは既に手元にあったから。後は約束通り住居を探して話を付けておけば今日からでも住めるだろう。
「全く、似た者親子ですね。ですが、これで全て合点がいきました」
「彼ばかりあの子の力になるなんて、狡いじゃないですか。でも、あの子の入れた紅茶がいつでも飲める権利を得たのですから私の方が得をしたかもしれませんね」
「ああでも言わなければ彼も納得してくれなかったでしょう。親船さん、貴女もずっと親バカですよ」
「ふふふ、とても嬉しい誉め言葉だわ。次は孫かしら?そう言えば娘も良い歳なのに浮いた話の一つも聞こえなくて……あなた、うちの娘と「お、親船さん!?」あら、ダメかしら?」
「今日のスケジュールは可能な限りずらしておきます!私に出来る事がありましたらいつでもお声掛け下さい、それでは!!」
親船は微笑みながら急いで部屋を後にする秘書に礼を言い、そして、窓辺に足を運んだ。窓から見えるその景色の向こうには雲一つない空の元、アレイスターがいるであろう窓のないビルが小さく見える。
(……これぐらいはいいわよね? アレイスター……)
実はアレイスターから届いた封筒には別にもう一枚手書きの便箋が封入されていたのだ。内容は簡単に言って3つ。
一つ───ケイが頼って来たら同封されているIDと書庫(バンク)に登録されたないようが記された紙を渡して欲しい事。
二つ───このことはケイに教えない事。
そして三つ───必要以上に手を貸さない事。
最初の二つはこれから果たされる。だが3つ目はどうだろうか。
アレイスターの想像の範疇だろうか。それとも約束を反故したことになってしまうのだろうか。
だが、ここであれこれ考えても始まらない。自分はケイの力になると決めたのだ。
実の息子の様に可愛がっているケイに頼られたのだ。力にならない訳が無い。寧ろ自主的に動かなかったことを褒めて欲しい程だ。
そして、それとは別に気にかかっている事が一つ。それは───
(黒裏 継(くろうら けい)……『クロウリー』を継ぐ者……そう思っていいのかしら、アレイスター……?)
───その日の夕方、ケイは親船の紹介によりテナントが1階にあるマンションに居を構えた。
奇しくもその場所は、昨日ケイが土御門と待ち合わせるために降り立ったビルであった。
閑話
夕方、ケイと再会する少し前
「ケイ=クロウリー……クロウリー ケイ……くろうり けい……黒裏 継……大分強引な気がするのですが……」
「烈怒乱舞羅亜みたいですよね」
「親船さん!?」
あ、お赤飯炊きましたよ!嬉し過ぎてエビフライも付けました(笑)
皆様のおかげでモチベーションが保ててます!有難う御座います!!
次は100か……10話前に達成したらお寿司でも食べに行きましょうかね。
ではまた来週。さよなら、さよなら、さよなら。