とある魔術の時空裂断   作:G.

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Mouth For War

 ───第7学区、大通り

 

 

 親船の自宅から去った後、ケイは一人街を散策していた。

 

 

「さて、夕方まで何をして時間を潰そうか……」

 

 

 主立ったものは夕方手に入る。残すものは携帯電話、銀行の口座、後は家具や家電などだろうか……

 本来ならば、ID→携帯や口座→住居→家具家電、だったのだが親船のおかげで一気に最重要物が全て手に入る形となり、今、ケイは時間を持て余していた。

 

 

「つっちーは学校か……二日連続でサボらせても可哀想だよな~……そうだ、あいつにも一人暮らし始めたこと知らせなきゃ!」

 

 

 何か思いついたのだろう。ケイはポン、と一つ手を打ち鼻歌まじりで歩き出す。

 

 

 

 ───第七学区、窓のないビル前

 

 

「今の時間ならここら辺にいるはずなんだけど……」

 

 

 辺りを見渡しても誰もいない。今日は休みなのだろうか。ならば無駄足だったと肩を落としていると、近くの路地から何やら話し声が聞こえてくる。

 ケイは静かに近づき死角になるなるであろう場所に身を隠す。

 

 

「では私はここで失礼します」

「ああ、有難う。また宜しく頼むよ。ところで───」

 

 

 若い男と少女の声。だがここからでは姿が見えない。どうにか確認できないものかと辺りを見渡せば、丁度隣のビルの屋上からよく見えそうではないか。

 ケイはまるで忍者のような動きで瞬く間にビルの七階屋上へ駆け上がり、二人が見える位置まで移動する。

 ターゲット確認。間違いなく今回の目標がそこにいる。よくよく会話を聞いてみれば、どうやら仕事の話ではなくただのナンパのようだ。

 

(まあ、あんな格好してりゃ声の一つや二つ掛けられるわな~)

 

 少女の格好は下は普通の冬服のミニスカートなのだが……上が胸を隠す程度の桃色の布にどこかの学校のブレザーを羽織るのみという良く言えば涼しそうな、悪く言えば痴女のような格好なのだ。

 

(はぁ……つっちーといい、何で俺のダチってまともな格好の奴がいないんだろ……)

 

 いくら幼少期から外に出た事のないケイでも、テレビや雑誌などの情報からあの二人の格好がおかしいのはわかる。

 出会った当初は、これが流行最先端なのか!?と疑ったこともあったが、その考えもアレイスターの迅速な指摘で間違いだったことに気付き事なき事を得るのだが、

 

(数少ない友人が全員変な格好してるんだ、黒歴史の一つや二つあってもおかしくないんだよなぁ、俺。……親父、マジでありがとう……)

 

 自身の境遇に涙し、向かいのビルの中にいるであろう父に手を合わせ拝むケイ。

 そんなことをしているとどうやら二人のやり取りも終わったようだ。ナンパは失敗に終わったのだろう。少女は苦笑いで手を降り、男は残念そうに肩を落とし離れて行く。

 

(ありゃ、失敗ですか、ご愁傷様~。さてと、ボチボチ俺も行きますか)

 

 そう呟き男が見えなくなったのを確認してからケイは柵に手を掛け、そして一気に飛び降りる。

 

 

「ふぅ……あの男しつこかったわね……こっちは自分ごと転移して吐きそうだってのに、そんな気になれるわけないじゃない。……今日はもう誰も来ないみたいだし、一旦帰る前にどこかで休もうかしら……」

「あぁぁぁぁわぁぁぁぁきぃぃぃぃちゃああああああああああああんっ!!!!」

「ひッ!? ……きゃぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 突如名前を呼ばれ何事かと思えば、頭上から満面の笑みの男(ケイ)が降ってくるではないか。口から漏れた悲鳴と共に思わず少女は頭上を庇いしゃがみ込む。

 だが、ケイは華麗に空中で一回転し少女の目の前にふわりと着地する。

 

 

「着地成功、っと。酷いな~、俺と淡希ちゃんの仲なんだしそんなに怖がらなくてもいいんでない?」

「ふぇ……ケ…イ?」

「他の誰に見える?」

「ッ!! あ、貴方ねぇ! もうちょっと登場の仕方考えたらどうなの!? いきなり降って来られたら誰だって驚くでしょうが!!」

 

 

 涙目になりながら抗議する淡希と呼ばれた少女。彼女は結標淡希。座標移動(ムーブポイント)と呼ばれる空間移動系の大能力者(LEVEL 4)であり、この窓のないビルにVIPを運ぶ『案内人』である。

 ケイとの出会いも土御門と同じくビルに訪れた際に出会ったのだが───

 

 

「俺としてはいきなに自宅で吐かれた方がビックリするんだけどね~」

「あ、あれは久しぶりに自分ごと転移して仕方なかったのよ! というかさっさと忘れてよ!!」

「いや~、あれは忘れらんないって~。親父に呼ばれて来てみればゲロ塗れで女の子が倒れてるんだもん。最中おばちゃんに言われるまで死んでるのかと思ったわ」

「ッ!! ……いいわ……どうしても忘れられないっていうのなら……私が手伝ってあげる……」

「わー! 待て待て待て!! 頼むからその懐中電灯しまって! わかった! すぐ忘れる、今すぐ忘れる!! だから許して、淡希『お姉ちゃん』!?」

「むぅ……今回は許してあげるわ。でも……次は許さないからね?」

「Yes,Your majesty!!」

 

 

 軍用懐中電灯を向け釘を刺す結標。彼女はこの懐中電灯で能力の基準をつけているようで、過去に一度同じ様にからかったケイが人間ダーツの的(矢はコルク抜き)にされたときは本当に胆を冷やしたものだ。

 今回は忠告だけで済んだが、いつあのときの悪夢が再来するかと思えば暫くからかうのは止した方がいいだろう。

 結標としては過去の恥ずかしい思い出で散々弄られたのだ、温情故だとわかってくれればいいのだが、とため息をつく。

 

(しかし、久しぶりにやった『お姉ちゃん口撃』……まだ通用するとは……恐るべし、『ショタコン』……)

 

 結標の方が若干年上なのもあり、出会った当初結標にお願いされて初めて使った『お姉ちゃん』。

 暫くは『淡希お姉ちゃん』と呼んでいたのだが、土御門と遊んでいるときにふと話に上がり結標のショタコン疑惑が浮上。

 その後、結標に何かお願いするときのみ使う様になり、今では対結標用最終兵器と化してしまったのだ。

 そんな事を思われているとも露知らず、若干ほくほく顔の結標。このまま放っておくと来た意味がなくなってしまいそうだ。

 人目もあるし、とりあえず落ち着ける場所を移そうと提案し二人は窓のないビルを後にした。




やっとヒロイン(?)の登場です。
個人的にはあわきんよりみさきち派です。
え?聞いてない?失礼しました。

ではまた来週
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