とある魔術の時空裂断   作:G.

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A Rat Like Me

 ───第七学区、ファミレス ジョセフ

 

 

「それで、一体どうしたの? 貴方が外に出てるなんて」

「そうそう、それを知らせに来たんだよ。俺昨日から一人暮らしする為に家出たんだ~」

「あら、もう住むところは決まったの?」

 

 紅茶のティーパックを浸しながら淡白な反応を見せる結標に、少し詰まらなさそう肩をすくめてみる。

 

「あれ?意外な反応が。驚かないんだ?」

「どうせ貴方が押し切ったんでしょ?それに昨日からアレイスターの様子がおかしいのよ」

「なるほど~、それで何かあったんだと。流石は淡希ちゃん、良くわかってらっしゃる」

「知り合ってどれだけ経つと思ってるの? 貴方達親子のやり取りは目を瞑っててもわかるわよ」

 

 

 そう、頻度から言えば劣るものの結標とは土御門より前から付き合いがあり、思春期には互いに本当に姉弟のように接してきた。

 最近はもっぱら土御門と、今までできなかった同性同士の付き合いというものを楽しんでいる為昔よりは会う回数は少なくなっていたが、それでも自分の良き理解者として結標を頼ることもしばしばだ。

 

 

「で、順調なの?」

「まあね~。今日の夕方にIDと住居を紹介してもらえることになってるよ」

「よかったじゃない。箱入り息子だったんだから少しは世間の荒波に揉まれなさい」

「あはは、荒波とは違うけど、昨日早速厄介ごとに巻き込まれちゃったよ~」

「早くない!? 何があったのよ」

「あ~、それが……」

 

 

 ケイは苦笑いしながら昨日の一連の流れを話始めた。

 

 

「……で最後は小一時間ほど説教しちゃった」

「あ~、その二人に同情するわ……」

 

 

 何かを思い出した様に身震いする結標。実は彼女も過去に一度怒られている。そのときの普段からは想像出来ないケイの放つ何かに彼女は生の終わりを感じたという。

 

(あんな魔王も裸足で逃げ出す殺気、二度と当てられたくないわ……)

 

 そう呟いて、思い出したくないと頭を振り、話題を変える。

 

「そ、それはそうと、荷物はどうしたの?」

「荷物はつっちー……と言ってもわからないか。土御門って金髪アロハいるじゃん?あいつの家に置いてあるよ~」

「あぁ。貴方達そんな仲だったの?」

「マブダチっすよ~。あれ?知らなかった?」

「それ死語よ……自分転移させた後に談笑なんて出来ないわよ。それに極力運ぶ人間とは関わらないようにしてるの」

「それもそうか。だからこそ親父も仕事頼んでるんだと思うしね」

「ギャラがいいのは認めるけど……正直、話が来たときは耳を疑ったわ」

「まあ、いい練習だと思えばいいじゃん。期待されてるんじゃない?未来の超能力者(レベル5)様?」

「やめてよ! ……別に望んで手に入れた力じゃないわ……」

「そうだね……まあ、お互い苦労するね」

 

 

 気まずい空気を変えようと笑うケイに少し救われた気がした。

 ここ学園都市は大勢の学生を集めて授業の一環として記憶術だの暗記術という名目で超能力研究、即ち脳の開発を行っている。つまりは人体実験だ。能力が開花した後もそれは続き、能力が高い者、希有な能力を持つ者は世の為次世代の為などの名目で研究協力という更なる人体実験が待っているのが現状だ。勿論それが全てではないことは確かだが、その一面を知ってしまった者達は自ら望んでこの街に来たものならばまだしも……いや、例えそうであっても己の力を呪う者が現れても可笑しくはないはずだろう。また、その強大過ぎる力に怯える者もいるだろう。常識では考えられない物理現象を捩じ曲げて起こされる能力、望むままに人を傷付けることすらできる能力は自身の在り方を考えさせられるには大きく、心を深い闇に突き落とすことなど雑作もないことなのだろう。

 そしてこの結標淡希もその内の一人なのだ。望まずに得てしまった力に何度怯え、嫌悪を抱いたか……。それも二三◯万分の七しかいない超能力者に近い力を持っているのだ、その恐怖は尚更だろう。

 そして起こってしまった悲劇……。二年前のカリキュラムにおいて転移座標の計算ミスにより片足が壁にめり込み、 それを不用意に引き抜いてしまったことで密着していた足の皮膚が削り取られるという大怪我を負った。 この事故がトラウマとなり、それ以来自分への能力作用には体調を狂わせるほどの激しい精神的消耗が伴っている。 そしてそのことが原因で、強大な能力を持ちながらも超能力者(レベル5)認定はされていない。

 だがそんな彼女も一つの出会いに心の拠り所を得る。それがケイだ。出会って暫くしてからだろうか、経緯は違えど自分も同じ気持ちになることがあると打ち明けてくれたときは涙を流しそうになったことを覚えている。それでも力を受け入れ『ケイ』という生き方を模索する彼に惹かれ、その存在に何度励まされたかわからない。

 

(全く、……これじゃどっちが年上かわからないじゃない)

 

「ところで淡希ちゃんこの後暇?」

「えぇ、今日はもう予定ないけど」

「じゃあ、色々行きたい所あるから案内してくれないかな?まだどこに何があるかわからなくてさ~」

「いいわよ。何処に行きたいの?」

「ありがとう! 服買いたいのと、見るだけなんだけど家電と家具だね!」

「それなら、先に家具とか見に行きましょう。服は荷物になるから後回しのほうがいいでしょ」

「そうだね!じゃあ、ぼちぼち出発しますか!」

 

 

 その日の夕方、第七学区の某ショッピングセンターの売り場には、着せ替え人形になった哀れな男のすすり泣く声が聞こえたとか。聞こえないとか。




さて、次回から新章に移りたいと思います。
やっと本編に?
亀執筆すみません。

ではでは
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