ゆめのまちanother『くるみのゆめアール大作戦』   作:TAMZET

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マネマネ戦開始です。
ミルクにとっては絶望的な戦い。


第十三話『VSマネマネ1』

 ナイトメアの闘技場にて、マネマネとミルク達の戦いは続いていた。

 ミルキィローズは変身し、マネマネの分身・キュアマネマネズ達と戦闘している。戦闘形態に変身したブンビーさんも一緒だ。

 マネマネ本体はコワイナーの対処にかかりきっている。

 コワイナーがやられる前にマネマネズを全滅させようというのが、彼等の作戦であった。

 

 まず二人が目をつけたのは、緑のマネマネだ。

 両手にエメラルドソーサーを展開し、緑マネマネは油断なく二人を観察している。

 その慎重さは、まるで本物のキュアミントのようだ。

 

「緑……キュアミントマネマネだな」

「どうするの? エメラルドソーサー、敵にすると厄介よ」

「私に考えがある。ミルキィローズ、君はそこで待っていたまえ!」

 

 言うや否や、羽音を立てるブンビーが飛翔した。

 緑マネマネ頭上を追い越し、すれ違いざまに右腕のニードルガンを連射する。

 弾丸よりも速い速度で発射されたニードルガンだが、緑マネマネはエメラルドソーサーを構えそれを受け止めた。

 キンキンキン! 

 針の弾ける鋭い音が闘技場に鳴り響く。

 

「マネマネ! マネマネ!」

 

 緑マネマネは余裕の笑みを浮かべている。

 こういう所は、本体のマネマネ譲りだ。

 だが、笑っているのはブンビーも同じであった。

 

「キュアミントの盾は基本的に前にしか貼れん。そうだったな? ミルキィローズ!」

「……たしかに! ならっ!!」

 

 ブンビーが何を考えているのか、ローズには大方理解できた。

 彼女は姿勢を落とし、緑マネマネへと突進した。

 ブンビーは針弾を撃ち続け、緑マネマネの注意を引いている。

 

「ミルキィローズ、今だッ!」

「はあっ!!」

 

 ローズは緑マネマネの背後へと跳躍すると、頭頂部に強烈な回し蹴りをかました。

 エメラルドソーサーの弱点は、一度に一方しか防御できない事。

 故に針弾を防御していた緑マネマネに、その一撃を防ぐ術は無かった。

 強烈な一撃に、緑マネマネは夢の蕾を残し、風船のように破裂した。

 ローズは器用に跳躍すると、ブンビーの隣へと着地した。

 

「ありがと! ブンビー!」

「ハハハ! 良い上司というのは、良い指示を出すものだよ。ブンビーさんと呼んでくれても構わんよ!」

「ふふっ! 考えておいてあげる!」

 

 ローズは息を整えつつ、周囲を見回す。

 向かってくる個体は……2体。

 赤マネマネと青マネマネだ。

 ローズは軽く背後にステップすると、2体が一直線に並ぶよう陣取った。

 こうする事で、攻撃してくる相手が一体減るのだ。

 赤青の波状攻撃がローズを襲う。

 続け様に飛んでくる攻撃を、ローズは見切って躱してゆく。

 昼間に散々痛めつけられたばかりだ、使える体力はそんなに多くない。

 一撃を貰うことは、即ち戦闘継続不可を意味する。

 

「はあっ……はあっ……」

 

 身体に残る痛みが、彼女の精神をすり減らしてゆく。

 額に浮かぶ汗を拭う間もない。

 赤と青のマネマネを捌く中、彼女は視界の端に嫌な光景を捉えた。

 黄色マネマネがプリズムチェーンを構えていたのだ。チェーンはイカかネバタコスの触手の如く、広範囲をうねうねとカバーする。

 

「マーネマネネマネ!!」

 

 一対のチェーンがローズの元へと放たれた。

 彼は空中で跳躍し、チェーンを躱し続ける。

 捕らえられたが最後、赤マネマネの炎に焼かれ倒されてしまうのは必至だ。

 一撃が即敗北に繋がる攻防の中で、ローズは逃げ続ける。

 誰か助けて、もう動けない、みんなの攻撃にやられたくない。

 そんな言葉が口をついて出そうになる度、ローズは心でそれを押し殺す。

 そんな事を言ったが最後、身体を支えている糸が切れてしまいそうだったからだ。

 ふと、黄マネマネの攻撃が止んだ。

 ブンビーがチェーンの端を掴んでいたのである。

 

「お前は、キュアレモネードのマネマネ! お前の動きはよ──く知っている」

 

 ブンビーは掴んだチェーンを力一杯引いた。

 マネマネを引き寄せ攻撃を加えようとしたのだろう。

 しかし、それをさせまいと、もう片方のチェーンがブンビーさんの片腕を捕らえた。

 

「ブンビー!?」

 

 悲鳴にも近い声が漏れた。

 その声が自分のものだと、ローズは信じられなかった。

 だが、危機的状況にも関わらずブンビーの余裕は変わらない。

 

「心配するなミルキィローズ。これも作戦のうちだ。プリズムチェーンの操作中は、防御力と機動力が著しく低下する。なら、一度私を捕まえさせてしまえば!」

 

 ブンビーはチェーンを掴んでいた片腕を離し、黄マネマネの体制を崩した。

 間髪入れず、両腕の針弾が火を噴く。

 針弾の直撃を受けたマネマネは、勢いよく破裂した。

 

「一丁上がり!」

 

 ブンビーは嬉しそうにガッツポーズをした。

 仲間の喪失に、赤と青のマネマネの注意が一瞬逸れた。

 

「たあっ!」

 

 その隙をつき、ローズは赤のマネマネに蹴りを入れ、吹き飛ばす。

 

「やあっ!」

 

 帰す刀で、青のマネマネの鳩尾へと肘をめり込ませる。

 2体のマネマネは闘技場の端へと吹き飛び、壁にめり込んだ。

 ローズは息を整えつつ、ブンビーの元へ跳躍した。

 

「アンタ、そんなに強かったんだ」

「強かないさ。部下を助けようと頑張ってるだけの、ただの零細社長だよ」

 

 背中合わせに立つ二人の前に、新しいマネマネが現れた。

 マネマネの中でも特に強力な個体、桃マネマネである。

 特殊な技は使わない……使ってくるのは、純粋な格闘術のみ。

 

「ここも私に任せろ。君はマネマネとの戦いに備えて、体力を温存するんだ!」

「……分かった!」

「頼んだぞミルキィローズ!」

 

 言うや否や、ブンビーは桃マネマネへ向けて跳躍した。

 拳を大きく振り上げ、殴りかかる。

 桃マネマネはどっしりと構え、手刀でそれを受け止めた。

 

「流石にやるね。キュアドリームのマネマネ!」

 

 ブンビーは体勢を整え、拳の連打を繰り出した。

 ぶつかり合う拳と拳。

 スピードは桃が上、しかし、パワーはブンビーが上だ。

 

「来る日も来る日も血の報告書……いっその事、コピペしてやろうかと思ったくらいに書いた報告書……パソコンがない事を恨んだよ」

 

 拳の応酬の隙をつき、ブンビーが桃のマネマネの懐に肘を入れる。

 桃のマネマネが体制を崩した。

 

「でも、そのおかげでね! 私はね、君達の事を、君達より知っているんだよ! 喰らえ! キュアドリームッッ!!」

「マネマネ……ッッ!?」

 

 ブンビーは桃マネマネへと突き出した拳を直前で止めた。

 寸止め……否、そうではない。

 ブンビーは針弾を構えるとしこたま連射したのだ。

 近距離で針弾の連撃を受けた桃マネマネはついに耐えかね、破裂した。

 マネマネの胸から、桃色の蕾がこぼれ落ちる。

 ローズの顔に笑顔の花が咲いた。

 

「やったっ! ドリームの蕾……」

 

 ローズはわき目もふらずその蕾へと駆けた。

 もう少しで大切な親友の夢に手が届く……しかし、手が届く寸前、その側頭部をマネマネの尾撃が襲った。

 黒い尻尾による攻撃……本体マネマネだ。

 

「あっ……うぅ……」

 

 頭を抑え、ローズはマネマネを睨見つける。

 黒マネマネ酷く邪悪な笑みを浮かべながら、ドリームの蕾を使い、また新しい桃マネマネを作り出した、

 ローズの表情に一瞬、絶望の色が浮かぶ。

 手にしかけた希望が奪われる、その瞬間の痛みが心を襲う。

 だが、ローズはすぐさま拳を握り、マネマネを睨みつけた。

 

「マネマネ! ……っ! みんなの蕾をっ、返しなさい!」

 

 ローズの息が上がっている。

 息を整える暇もなく、桃マネマネが再生した。

 赤と青マネマネもそばに並び立ち、ローズへと襲いかかる。

 

「ミルキィローズ!」

「おっとブンビーさん! 貴方の相手はこいつです!」

 

 飛翔しようとするブンビーに、桃マネマネが突撃した。

 腰を押さえられた彼は動く事ができない。

 黒マネマネの背後では、巨大なコワイナーが倒れ伏していた。

 コワイナーの画面にはヒビが入っており、戦闘不能である事は明らかであった。

 

「くっ!?」

 

 ブンビーは桃マネマネの連撃を両腕で防ぐ。

 元より実力が伯仲している相手だ、苦戦もやむを得ない。

 方やローズも、窮地に陥っていた。

 黒マネマネの尾撃により、ローズの身体が吹き飛ばされる。

 彼女は衝撃の直前に後ろに跳ぶことで威力を軽減していた。

 だが、それでも攻撃そのものは防ぎきれない。

 体勢の崩れた彼女の元に、青マネマネが放ったサファイアアローが降り注ぐ。

 

「くうっ……!」

 

 軋む脚を無理やり動かし、彼女は攻撃を回避した。

 だが、避けた先には赤マネマネの放ったファイアーストライクが飛んでくる。火球の着撃に、ミルキィローズの両足が火に包まれた。

 

「熱っつぅ……っ!?」

 

 震える両脚……それにトドメを刺すように、黒マネマネの尾撃がローズの脚を払った。

 帰す刀で、敵の尻尾が彼女の身体を打ち付ける。

 ローズの身体が地面に叩きつけられ、巨大なクレーターを作る。

 

「かひゅっ…………」

 

 肺の中の空気が全て漏れる音を、ローズは自分の耳で聞いた。

 新しい空気が吸えない。

 一瞬視界がブラックアウトする。

 身体を動かそうにも、筋肉が痙攣していて動かない。

 

「仲間達を救いたいなら、まず私を倒す事です! ですが、あなたにそれはできない。何故か? それは……力が足りないからです!」

 

 黒マネマネの挑発が彼女の鼓膜を揺らす。

 その声に、ローズは辛うじて立ち上がった。

 とうに身体は限界を超えていた。

 だが、敵の言いたいがままに言わせておくのは我慢ならなかった。

 

「まだ私は……立ってるわよ」

「そうですか。では……」

 

 黒マネマネが片腕を大きく挙げる。

 直後、赤、青のマネマネによる総攻撃が開始された。

 天に広がる、無数のサファイアアローとファイアーストライク。

 ローズはステップを駆使し、それらを避けようとし続ける。

 うち幾つかは、彼女の腕を、脚を、全身の肌を傷つけた。

 全身に傷が増えてゆく。

 それでもローズは悲鳴を堪え、耐え続ける。

 炎の熱さが、水の鋭さが、この技はルージュとアクアの物だと訴えかけてくる。

 それでも耐えるのだ。

 

「う……うっ!」

「お仲間の技で傷つけられる気分はどうですか? まるで、仲間に見捨てられたような気分でしょう。辛いですなぁ。いつ絶望してもいいんですよぉ」

「ぜんっぜん……いたく……ない……わ!」

 

 攻撃が一瞬途切れた。

 一旦下がろうとするローズだが、身体が動かない。

 疲労が限界まできているのだ。

 脚を震わせ、立ち続けようとする彼女を、黒マネマネがせせら笑う。

 

「強がりを……痛いものは痛いと言えばいいのに」

「痛くないったら痛くない!」

 

 ローズは絶叫していた。

 涙混じりの叫びであった。

 だが、その目には確かな光が浮かんでいた。

 

「私はみんなの攻撃で傷ついたりしないんだから。みんなが元に戻った時、私が傷だらけだったら、みんなきっと、自分を責めちゃう。だってプリキュア5はみんな、底なしに優しくて、いい人なんだから。そんな思いを仲間にさせないために……私は絶対、倒れたりしない!!」

「下らないですね。マネマネズ、もう終わらせなさい」

 

 ローズの背後から、赤マネマネが飛びかかった。

 見なくても気配で分かった、来るのは上段の蹴りだ。

 来るのは分かっている。

 動け体! 

 

「たあっ!!」

 

 ギリギリで攻撃を躱し、ローズは赤マネマネの頭に蹴りをぶちかました。

 急所を突いた一撃に、赤マネマネはたまらず破裂する。

 ローズは急いで蕾を手に取ると、服のうちに隠した。

 

「はあっ……はあっ……これで……あと、二体……」

 

 ローズはあたりを見回す。

 残っているマネマネは桃と青の2体だけ。

 だが、それらは恐ろしく強い。

 そして、身体の弾薬庫に残った残弾はもう無い。

 変身を維持できているのが奇跡なのだ。

 黒マネマネがさっと手を上げた。

 青のマネマネはローズへと背を向け、ブンビーへと飛んでいった。

 ローズの前には、黒マネマネが立ちはだかる。

 

「いいえ? 私を入れて3体でしょう。ですが、弱いものイジメは良くない。ここは、同じくらいの戦闘力で戦ってあげましょう」

 

 黒マネマネの姿がぐにゃりと歪んだ。

 本体の持つ、変身能力である。

 その姿に、ローズは恐ろしく見覚えがあった。

 

「自分と戦うのは、初めての経験では?」

「…………っ!!」

 

 ローズにとって絶望的な、苦痛の延長戦が始まった。

 




頑張れミルク
負けるなミルク
応援の声は届かず。
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