ゆめのまちanother『くるみのゆめアール大作戦』   作:TAMZET

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これにてマネマネとの戦闘はラストです。


第十六話『ココナッツミルキィローズ』

 ココナッツミルキィローズと怪物マネマネ。

 光と闇の化身となった2人の最後の戦いが始まった。

 

 先に動いたのは、ローズの方であった。

 動いたと言っても目に見える速度でではない。

 飛翔したかと思ったローズはいきなりマネマネの眼前に現れていた。

 瞬間移動に近い移動であった。

 ローズはくるりと宙返りをすると、輝きに満ちた踵をマネマネに向けて振り下ろした。

 移動と違い、大振りな攻撃である。

 マネマネは2本の腕をクロスさせるとその攻撃を防御した。

 攻撃を受け止め、マネマネはにやりと頬を歪めた。

 

「ふふ……大仰な変身をしたかと思えば、戦闘力は大した事ありませんねぇ。まったく、こけおどしもいい所です!」

 

 マネマネは腕を振るとローズの身体を吹き飛ばした。

 彼女は空中で宙返りをし、速度を殺して着地した。

 続け様にマネマネの瞳が赤く染まった。

 レーザー発射の合図である。

 だが、ローズはその場に立ったまま動かない。

 マネマネの瞳がきらりと光った……瞬間、マネマネは苦悶に顔を歪めた。

 それもそのはず、彼の胸にあったコワイナーの仮面が破壊されていたのだ。

 

「な、何ッ!? コワイナーの仮面が、一瞬で!? 何故!?」

「最初に蹴った時よ。早すぎて気がつかなかった?」

「な、何ですってぇ!?」

 

 間髪入れずローズは再度マネマネとの距離を詰めた。

 両手に握った剣を振り上げ、彼女は飛翔する。

 

「スカイフルーレ! 秘密の光ナツ!」

「グランドフルーレ! 王家の光ココ!」

 

 青と黒、1対のフルーレによりマネマネの身体が切り裂かれる。

 マネマネはその巨体で跳躍すると、ローズと距離を取った。

 

「私の知らない武器!! この力、あの時のプリキュア達の力と同じ……いや、それ以上か!」

 

 怯えるマネマネは両目に力を込め天に向けて無数のレーザーを放った。

 レーザーは空で無限に分割されまるで雨のように降り注ぐ。

 だがローズは1対のフルーレを交差させ、回転切りを放つようにしてそれらを斬り払う。

 フルーレが振るわれるたびレーザーは消滅し、透明な光へと変わってゆく。

 

「私の力が、通じないのか!?」

「これが、ココナッツミルキィローズの……パルミエ王国の力よ!」

 

 ローズは地を蹴ると、再度マネマネの元へと超速移動した。

 フルーレを交差させ、エックスの字に斬撃を放つ。

 斬撃は空中で回転するとマネマネの中の夢の蕾を穿った。

 夢の蕾は斬撃により摘出され、ローズの手元へと戻った。

 

「くっ!? ドリームとアクアの力までも!?」

 

 マネマネの巨体が、目に見えて縮んでゆく。

 夢の蕾の力を失ったからだろう。

 敵は苦し紛れに、尻尾を鞭に変化させて応戦する。

 ローズはフルーレでフルーレを振るい、マネマネを追い詰めてゆく。

 

「絶望こそ人の寄る辺! 進む事を放棄し、暗闇に身を委ねる事が最たる安寧なのです! お前達は、どうしてそれを理解できない!」

「そんなの決まってるじゃない。夢という名の希望の光があるからよ!」

「そんなまやかしを……」

「まやかしなんかじゃない! 例え叶わない夢かも知れなくても、私達は、それを持っていれば前に進める!」

 

 ローズはマネマネが防御のために構えた尻尾にフルーレを突き立てた。

 凄まじい悲鳴と共に、尻尾が根元から切断された。

 叫ぶマネマネをローズは突撃で吹き飛ばした。

 闘技場の壁にめり込み、マネマネは動けなくなった。

 ローズはフルーレを交差させ、剣先に力を溜めた。

 

「受け取りなさい! あの日あなた達に滅ぼされ……もう一度甦った、パルミエ王国の光を!」

 

 ローズの手にしたフルーレの先に、2輪の薔薇が蔦を伸ばしてゆく。

 スカイフルーレからは群青の薔薇が。

 グランドフルーレからは漆黒の薔薇が。

 二つの薔薇はローズの背後で混じり合い、黄昏色の薔薇となった。

 3人の意思が一つになる。

 

「プリキュアに!」

「ミルキィローズに!」

「私に!」

 

 光がローズを包み込んだ。

 

「「「力を!!!」」」

 

 ローズが掲げるは黄金に輝くミルキィミラー。

 彼女の身体から飛び出した手紙の光が鏡に集まってゆく。

 

「乙女の夢が巻き起こす……薔薇の嵐を吹かせましょう!」

 

 ローズはフルーレの鋒をマネマネへと向けた。

 光は無限大に広がったかと思うと、一点に収束し、光の槍となってマネマネを捉える。

 ローズは大きく息を吸うと、右脚を引き、腰を深く構えた。

 

「トリニティ……ロイヤルパルミエブリザード!」

 

 叫びと共に極光の槍がマネマネへと向けて放たれた。

 壁に埋まっているマネマネは槍を避けられず、真正面から受け止める。

 

「おおお……おおおおおおおっ!!? この力、到底受け止め切れるものではない……ッ!?」

 

 恒星の如き光のエネルギーに、マネマネはその姿を歪めてゆく。

 否、消えているのだ、身体そのものが。

 光の奔流の中で、マネマネは思う。

 

「私はまた帰るのか……あの暗闇の中に」

 

 光と闇の狭間で、マネマネは確かに感じた。

 自分を覆う、暖かさを。

 それの正体は、昔からずっと、自分の側にいた。

 あの人の側に、ずっと……

 

「認めたくはないものですね。求めていたものは、もう手に入っていたなんて」

 

 闘技場を揺るがす巨大な爆発と共に、マネマネは光の中へと消えていった。

 マネマネが消滅したからだろう、闘技場は完全に崩壊し、ローズ達とブンビーはプリキュア達が眠っている研究室に皆投げ出された。

 

『一時的に、機能が制限されます』

 

 ペンダントから響く機械音声と共に、ローズの変身が解除された。

 その身体には、傷一つない。

 みんなの力をもらい、夢が花開いたのだ。

 寝巻きのままの、素顔のくるみ。

 それでも、その表情は晴ればれとしていた。

 

「やった……マネマネを、やっつけた……わ……」

 

 くるみはくらっとぐらついたか思うと、その場に倒れ伏した。

 マネマネとの戦いで疲労が嵩んでいたのだろう。

 限界を超えた戦いを繰り返したのだ、無理もない。

 ココとナッツも同じ様子だ。

 地面に倒れ伏したまま、起き上がらない。

 そんなくるみを優しく抱き起こす人物がいた。

 我修院博士その人であった。

 

「マネマネを倒し、夢の蕾を取り戻してくれたんだな。本当に感謝する」

「博士……」

 

 寝ぼけ眼のくるみを抱え博士は研究室を進む。

 試験管を開くと、博士はくるみの体をそこにそっと収めた。

 

「こんなに大きな夢の蕾があれば、大いなる夢の蕾も花開くだろう。ありがとう。君のおかげで、これからもずっと、カグヤの誕生日を祝ってあげられる」

 

 博士は液体が溜まりゆく試験管に、深々と頭を下げた。

 

「……ありがとう。キュアドリーム、ミルキィローズ。プリキュア5……」

 

 お礼と共に、試験管の扉が閉められた。

 これにて、くるみとマネマネを巡る長い戦いは終局を迎えた。

 やがてここにカグヤが来る事になるのだが、それはあと数分後の話。

 


 

 屋敷の庭にて、ブンビーは新人にビンタを食らわせていた。

 新人は約4回目のビンタで、うっすらと目を開けた。

 

「おい! おいってばおい! 大丈夫か!? 新人!」

「え、ええ……私は、いったい何を?」

 

 新人は本当に何も覚えていない様子だ。

 ブンビーはしばらく腕を組んだ後「いろいろだ」と返した。

 首を傾げる新人を前に、ブンビーは遠くを見て話し出す。

 

「やり直せん事はないさ。一緒に、新しい道を見つけていこうじゃないか」

「……ええ。あなたが上司なのは、少し、いやだーいぶ頼りないですが」

 

 新人の軽口に、ブンビーの額に青筋が浮かんだ。

 

「言ったな! 相変わらず、生意気な奴だ! 報告書書くか!?」

「結構です! 私は定時後出社定時前退社がモットーなので」

「サボりまくってるじゃないか!! 息抜きは大事だが、抜きすぎも良くないぞーっ!!」

「分かってますよぉ〜」

 

 新人は手をひらひらと振りながら、先にスタスタと歩いて行ってしまう。

 ブンビーさんは怒りながら、彼の後を追いかけた。

 

「やっぱり、帰ったら報告書だーっ!」

 

 ブンビーカンパニーの忙しい忙しい1日は、これにて、幕を閉じたのである。




あと2話でおしまいです。
やってきやしょう。
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