ゆめのまちanother『くるみのゆめアール大作戦』 作:TAMZET
お誕業日会の夜。
カグヤとプリキュアの皆は、散々に騒ぎまくった後、駒沢公園でパーティを開催していた。
会場にはテントが設営され、客席はゆめアール使ってた客で大盛り上がりになっている。
壇上に春日野うららが登壇した。
観客席から盛大な拍手が上がる。
「それでは、プリキュア5&ヒーリングっど♥︎プリキュア&ゆめアールプリンセスカグヤの大コンサート大会を始めます!」
司会の開会宣言に合わせ、ステージ上でビーズの人形達が水流と花吹雪に合わせて踊り狂う。
素晴らしいパフォーマンスに、会場は大盛り上がりだ。
「わぁっ!!あの時のコンサート!!」
最前列席のカグヤは手を叩いて大喜びしている。
となりでは、あすみとかれんが優雅にお菓子を口に運んでいる。
「りんのビーズ人形に、ちゆさんの水流劇……壮観とはこの事ね。あの花弁は……のどかさんかしら」
「はい。ちなみに、ひなたはデザートを食べ過て、ハライタです」
「ふふっ。あの子らしいわね。何にせよ、お誕生日会のサプライズ、間に合ってよかったわ……」
「本当です。計画を持ちかけられた時は、とっても驚きました」
「あすみさん。手伝ってくれてありがとう。今日は楽しみましょう!」
「はいっ!」
やがて、演出が止んだ。
観客に手を振っているうらら。
そしてそこにはもう1人の影があった。
「司会はこの私、春日野うららと……!?」
「新聞部の増子美香が務めさせていただきまーす!」
増子の登場に、かれんは目を丸くした。
客席に戻ってきたのどかとちゆは、頭上にはてなマークを浮かべている。隣にいるりんは、頭を抱えていた。
「誰あの人……?」
「どことなーく益子君に似てるような……?」
増子はノリノリでマイクを握りしめている。
隣にいるうららも若干引くほどの盛り上がりようだ。
「それではまず、初めの演目!5つの王国のみんなによる、ローズガーデン音頭ッ!!」
「ちょっとぉ!マイク返してくださいよぉ〜」
「それでは、国王の皆様!おいでくださーい!」
増子の暴走は止まらない。
そんな彼女の様子に、かれんとりんは目を細めため息をつく。
「増子さん、意味わかって読んでるのかしら」
「ありゃノリに乗ってるだけですよ。ほら、最近全然出番なかったし。画面に映れて嬉しいんでしょ」
りんの発言に、増子はギュンとその首を向けた。
ロボット並みの集音性である。
「そこ、メタ発言禁止ッ!」
りんは両手をあげて降参した。
「あれ、こまちさんは?」
「くるみを探してるみたい。恋敵はしっかり監視しなくちゃって」
「おーこわ。くるみも大変だこりゃ」
やがて第一演目が終わった。
会場は大盛り上がりだ。
続けて、増子が第二の演目を読み上げる。
「続けまして、第二の演目はこちら!プリキュアのプリンセス達による、舞踏会!」
増子が手を大きく挙げると、会場から桃の花びらが吹き出した。
花びらはキラキラと輝き、七色に夜空を彩る。
「わぁ!!」
その美しい光景に、カグヤは目を輝かせた。
出てきたのは、ドレス姿のドリーム、ミルキィローズ、ミント、グレースの4人だ。
そこに、カグヤも加わる。
「それでは、お姫様の皆さんは、王子様とペアを組んで下さい!」
増子の号令の元、プリキュア達は歩き出す。
ドリームは、小々田の元へと歩き出し、ミントは夏の元へと駆け出した。
相手がいないローズは、不安げに周囲を見回している。
そんな彼女の手を、かれんがそっと掬い上げた。
「踊りましょう。お姫様」
「……いいの?私で」
かれんは微笑を浮かべた。
くるみの頬がぽおっと赤くなる。
「当然じゃない。お姫様と聞いて、あなた以外に思いつかなかったわ」
「ふふっ、何だか可笑しい!かれん、とってもきれいに見える」
「きっと、夜のせいよ」
かれんはその場に跪くと、くるみの手の甲にそっと口付けした。
赤くなっていた彼女の頬が、さらに紅潮する。
「焦る事は無いのよ。あなたが王子様の心を射止めるまで、チャーリーと一緒に守ってあげるわ」
「うん……」
二人は手を繋いで壇上へと駆け上がる。
会場から盛大な拍手が巻き起こった。
「かれんが王子様なら、楽なんだけどね」
「ふふ……私もよ」
ゆったりとした曲に合わせ、二人はワルツを踊り始めた。
そんな中、グレースはちゆの元へと歩み寄っていた。
「私で良かったの?」
「うん!ちゆちゃんが王子様なら、私、お姫様やってもいいなって」
側では、ヒーリングアニマル組もドレスアップしている。
「ちゆ、すっごいゆるい顔してるペエ」
「ペギタンも、ラビリンと踊るラビ?」
「……遠慮しておくペエ」
「ラビィ!?なんか腹立つラビ!!」
プリキュア達が次々と相手を見つける中、カグヤは、お母さんの元へと駆け寄った。
「舞踏会……私に見せたかったものというのは、これか?」
「うんっ!一緒に踊ろう?」
カグヤの誘いに、博士は涙を拭い笑顔で頷いた。
「……あぁ。一緒に踊ろう」
そんな彼女達を影から見つめる者があった。
ひなただ。
明らかにお腹が出ている。
顔色も悪い。
「私もやる!うっぷ……お、お姫様役!」
そんな彼女を、ニャトランが引っ張って止めている。
「無理すんなひなた。今踊ったらリバースすんぞ。ほら、後で俺が踊ってやるから」
「やだ!ニャトランの腹踊りもう見たく無い!」
「ニャ!?ニャにおう!!」
何やかんやで舞踏会が始まった。
各々が好きな相手と好きな踊りを踊る。
カグヤと博士の表情は、喜びに満ちていた。
「舞踏会、楽しいな!」
「うんっ!」
夜は深け、舞踏会は白熱する。
大都会、山も海も見下ろす摩天楼の大森林。
木々に覆われた小道を抜け、競技場の門を叩けば、
そこから先は夢の国。
ここは、ゆめが現実になる街、東京。
「ありがとう!ドリーム!グレース!」
「「どういたしまして!」」
笑い合うグレースとカグヤ、そしてドリーム。
プリキュアのみんなは、それを見守っている。
こうして、カグヤ姫はプリキュア達と、楽しい楽しいコンサートをしましたとさ。
めでたしめでたし。
コンサート近くの広場では、のぞみが芝生の上に寝転がっていた。
そこに飛翔する、巨大な黄色の鳥があった。
手紙屋のシロップだ。
手にはカステラを持っている。
パーティ会場からくすねて来たらしい。
「もうすぐ、うららのコンサートだってよ。行かなくていいのか?」
シロップの誘いに、のぞみは首を振った。
彼女の手元には、小さくなったエゴエゴがいた。
「うん……この子が、寂しそうにしてたから」
エゴエゴはふるふると身を震わせている。
そこに、プリキュア達を襲った悪意は既に無かった。
「エゴエゴは、我修院博士に作られたんだって。なら、この子も博士の子供なんだよ」
「そうだったのか。それにしちゃ、あんまし似てないな」
「あははっ!確かにそうかも。でも、いつか、みんな仲良くできたらいいな」
「なれるよ。多分な」
シロップは夜空を眺め、そうつぶやくいた。
自分の過去を重ねているのだろうか、口元には微笑が浮かんでいる。
やがて、彼は何かを思い出したかのように目を開けた。
「てか、さ。なんであんな事書いたんだよ?」
「え?何の事?」
のぞみは目をパチクリさせる。
本当に何の事か分かっていない様子だ。
シロップはため息と共に、懐から2通の手紙を取り出した。
それは、夕暮れの公園でミルクが読んでいたあの手紙だった。
「これの事。お前、博士の屋敷から出してたろ?」
「え?何かおかしい所あった?」
「いや、結局ミルクはお前の事助けに行ったからいいけどよ。あんな書き方したら、もしかしたら逃げちまうかも知れなかっただろ」
のぞみはキョトンとしている。
何を言ってるのかわからないと言った表情だ。
「いや、俺がミルクの奴を焚き付けられたからよかったけどよ。そうじゃ無かったら、アイツそのまま逃げて……」
「……もしかして、最後まで手紙見なかったの?」
「え?」
のぞみ、安心したように笑った。
シロップは訳もわからず、手紙と彼女の顔を見比べる。
「ああやって書けば、ミルクは絶対来てくれるって思ったんだ。だから、私、何も怖くなかったんだよ」
「……ちょっち、もう一回手紙読むわ』
シロップは持っていた手紙をに目を走らせた。
あの時メルポに届いた手紙は思いの手紙。
こちらは、それを読み上げるのに使った原本だ。
『ミルクへ
昨日はごめんなさい。これを読んでいるという事は、私のお手紙、届いてるって事だよね。心配しないで。私は無事です。
くるみがいなくなった後、いろんな事があったんだよ。エゴエゴが頑張って、私の夢の蕾だけ取り返してくれたり、博士と一緒にみんなを起こそうとしたり。けど、ダメだった。私はこれから、エゴエゴと博士、二人と力を合わせて、マネマネと戦います。本当だったら、ヒーリングっど♥︎プリキュアのみんなが力を貸してくれたら嬉しいなって思うけど、ここからじゃ声も届かないし、私が頑張らないと。私が言いたいのは、その後のこと。落ち着いた時に、読んでください。私はカグヤちゃんに夢の蕾をあげようと思います。夢の蕾がなくなったら、私達はたくさん眠ってしまうみたいです。私は寝坊助だからちゃんと起きれるか、心配です。くるみには、いーっぱい!それこそ数え切れないくらい、助けてもらいました。次会えるのはいつになるか分からないから、今のうちにお礼を言っておきます。今までありがとう……』
シロップがあの時読んだのはここまでだ。
だが、手紙にまだ余裕がある。
「あれ、続きがある」
シロップは続きの文に目を走らせる。
そこには、彼の知らない文章が記されていた。
『くるみに一つ、お願いがあります。昨日、カグヤちゃんから聞きました。お母さんと誕生日を迎えたい。けれど、もし私のためにお母さんがひどい事をしようとしているなら、それを止めてほしいって。だから、もし私が眠った後、博士が悪い事をした時は、くるみが止めてあげて下さい。くるみなら心配ないと思います。だって、くるみは私達の中で一番、夢に向かって頑張っているから。マネマネはくるみの夢を小さいって言ったけど、そんな事ないよ。私達は、しばらくは大丈夫。だから、もしもの時は、カグヤちゃんを助けて……』
残りは後一行ほどだ。
そんな時、ドドドドと激しい音が彼の鼓膜を揺らした。
シロップが顔を上げると、そこにはこちらに向かって走ってくる、くるみの姿があった。
「シロップーッ!!」
くるみは鬼の形相だ。
どうやって手紙の事を察したのだろうか。
シロップは慌てて鳥の形態に戻ると、大きく羽ばたいた。
「乙女の手紙を盗み見るなって、言ってるでしょーがー!!」
「えぇーーーっ!?」
くるみは飛ぼうとするシロップに飛びかかり、その身体を地面へと叩き落とそうとする。
シロップはなんとか身体を横に振り、バランスを取ろうとする。
「何すんだよ!?」
「何すんだよじゃ無いわよ!アレほど手紙読むなって言ったのに!あんたそれでも運び屋!?」
「別に読んだっていいだろ!お前がキツネ野郎やられそうになってた時、助けてやったじゃないか!!」
「それ言うなら、私達はアンタがキュアローズガーデンに行くの助けたでしょ!!おあいこよおあいこ!!」
二人は組み合いながら手紙の奪い合いをしていた。
手紙の1通が風に揺られのぞみの元へと飛んでいった。
二人はそれに気が付かず、喧嘩を続けている。
「それは前の話だろ!!」
「恩に前も後ろもない!」
追いかけっこしながら離れてゆく2人を、のぞみは微笑み見送る。
手には、あの手紙が握られていた。
最後の一文には、こう記されていた。
『もしもの時は、カグヤちゃんを助けて……』
ドリームは満足げに、笑みを浮かべた。
『必ず私の事、起こしに来てね キュアドリーム』
ありがとう、ミルク。
私の、最高の友達。
ストロングワールドエンド。
これにて完結です。
長らくお付き合い頂き誠にありがとうございました。