ゆめのまちanother『くるみのゆめアール大作戦』   作:TAMZET

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更新してなくてごめんなさい。
修行の旅に出てました。


第七話『動き出す闇』

夜も更け、月も高く登る頃。

ナッツはホテルの椅子に深く腰掛け、ゆめアールシティのパンフレットに目を落としていた。口元は硬く結ばれ、表情は暗い。

 

「言い過ぎたとは……思ってないさ」

 

誰にともなくそう呟き、ナッツは窓の外に広がる幻想の街へと視線をやる。空飛ぶ鯨、夜も忙しなく駆け巡る光の渦。

そこは綺麗ではありながら、どこか自分がこの世界の住人ではないような、疎外感を感じさせる、景色であった。

 

「俺ものぞみ達と出会う前までは、迷っていたんだったか」

 

ナッツは目を閉じ、短くため息をついた。

 

数分後、部屋の戸が、コンコンと音を立てた。

ココは熟睡していて気が付かないようだ。起きていたナッツは人間に変身し、戸に手をかけた。

 

「……はい。ナッツですが」

「……」

 

ナッツは扉の前に立っていた人影の正体に気がつき、安堵のため息を漏らした。

頭を掻き、優しい目でナッツはその人影を見つめる。

 

「どうしたんだ?こんな時間に」

「……」

 

人影は、小声でナッツに語りかけた。

彼は呆れたように溜め息をつき、肩をすくめた。

 

「分かった。話は外でしよう……支度する。少し、待っていてくれ」

 

ナッツは部屋の奥へと戻ってゆく。扉は開いたままだ。

人影が、ゆっくりと部屋の中へ入ってくる。

 

「……」

 

ナッツは背後の人影に気づき、立ち上がった。その時…

 

「待ってくれって言っただろ。すぐ支度するから、ま……ッ!?」

 

ナッツの身体がその場に崩れ落ちた。人影の手には、スタンガンが握られていたのだ。ナッツは変身が解け、妖精の姿に戻ってしまう。

 

「ナ……ツ……」

 

人影は、月明かりに照らされその正体を表した。四つの目を持つ、巨大な狐の化け物である。その姿は博士が作った怪物……エゴエゴに酷似していた。

 

「マネマネ、マネマネ成功……おっと、誰か来ましたね?これは、同業者……」

 

怪物は月明かりを背に、邪悪な笑いを浮かべていた。月明かりで透ける体の中身。その中には、カワリーノによく似た新人の姿があった。

 


 

我修院邸の地下、研究室。

サレナがモニターを眺めている。その手には、古式ゆかしき折りたたみ式の携帯電話が握られていた。

 

「計画は順調のようだな、エゴエゴ」

 

モニターには、ダンサーエゴエゴを前に活躍するプリキュア5の姿が映し出されている。

サレナは食い入るようにそれを見つめ、頬を歪める。モニターの反射で眼鏡がきらりと光り、6人の夢の蕾を映し出した。

色とりどりの光を放つ6つの蕾。その大きさに、サレナは頬を歪ませた。

 

「あのレベルの蕾が6つもあれば、計画のステージを飛躍的に進める事ができる。全てはカグヤのために、頼んだぞ……エゴエゴ」

 

ふと、彼女の後ろから近づく者があった。

金髪をオールバックに固めた作業服の男である。目尻に刻まれた皺の数々を見る限り、歳は四十路を迎えた頃と思われる。元々は白かったと思われるその作業服は、汚れとシミでクリーム色に変色していた。

 

「あ、修理終わりましたよ〜」

 

ひょうきんな調子でそう報告する男に、サレナは右手を上げて答えた。

その間も、彼女の目は画面に向かっている。

 

「ありがとう。報酬は約束通り振り込んでおいたよ。確認してくれ。あ、依頼したお菓子の事も忘れないでくれたまえよ」

「はいはい!そりゃもう確実に!すぐ買ってきますんで」

 

男は「あの新人何やってんだ、こうなったら私が……」とブツブツ言いながら、俊速でスマホを取り出し、慣れない手つきで触り始めた。

 

「はいはい!おニューのスマホのブンブンビー(024882)っと。あれ、なかなか開かないな」

 

少しして、男はスマホから目を上げた。

モニターの画面がチラリと目に入ったのである。男はあっと声を上げた。

 

「あれ、そいつら……プリキュア5じゃ無いですかぁ。懐かしいなぁ。元気してるみたいっすね」

「先程渋谷で怪物を撃退した、謎の少女達だ。彼女達を知っているのか?」

「いやぁ、知り合いというか、恩人というか……昔のライバルというか、上司と部下の仇というか」

「ライバルか。もしかして、君ならプリキュアを捕まえてこられたりもするのかな?」

「え!?そりゃあもちろん!このブンビーにかかれば、お茶の子さいさいですよ!」

 

男の軽口に、サクヤは破顔一笑した。

男もつられて、にこやかに笑う。

 

「いい冗談だ。気に入ったよ。修理の腕もいい……また、仕事をお願いしよう」

「ありがとうございますッ!今後とも、ブンビーカンパニーをご贔屓に!」

 

男はきっちり45°に頭を下げ、出口へと向かう。部屋から去る寸前、男は足を止めた。

男の背中からわずかに漏れ出た邪気に、サレナの目が細まる。

 

「ウチの新人見ませんでした?こーんな感じで、細っそい目した奴なんですけどね」

「……いや、見ていないな。先に帰ったんじゃないか?」

 

サレナは少し口籠もった末にそう返した。男は眉に皺を寄せ、鋭い目で彼女を睨んだ……が、すぐにその表情を解き、笑顔に戻るった。

 

「そうですかぁ!いやいや、見てないならいいんです。まったく、仕方ない奴だなぁ」

 

男は足早に部屋から出て行こうとする。サレナは真顔でその背を睨み、右手を上げた。

 

「エゴエゴ、やってしまえ!」

 

瞬間、影から飛び出した白い影が、男へと襲いかかった。

 


 

翌朝、早朝6時ごろ、ミルクはホテルの電話に起こされた。

かれんはまだ眠っている。寝ぼけ眼でくるみに戻ったミルクは、電話を手に取った。

 

「もしもし、こちらミルク……じゃなかった、美々野です……」

 

あくび混じりにくるみはそう答える。すると、電話口から低い声が聞こえてきた。

 

「おはよう。こちらエゴエゴ。昨日は世話になったな」

「エゴエゴアザラク……?いたずら電話ですかぁ……?切りますねぇ……」

 

受話器を戻しかけるくるみ。電話口の向こうの人物は、焦ったように待て待てを繰り返す。

 

「お前達の大切な仲間を攫ったと言っても切るのか!!」

「はい……おやすみ……」

「ええい!目を覚ませプリキュア5!!エゴエゴが攫ったのは、パルミエ王国皇太子、ココとナッツだ!!」

 

その言葉に、くるみは即座に受話器を耳に戻した。その表情には、鬼神が宿っている。

 

「ココ様とナッツ様に……何したって?」

「誘拐させてもらった。エゴエゴエゴ……返して、欲しければ、2時間後、我修院邸へ来い。お前の仲間も一緒にな」

 

くるみは歯噛みした。

疲れて眠っていたとはいえ、ココとナッツが拐われるのを見過ごしてしまったのだ。

電話の主は仲間も一緒と言っている。

自分たちがプリキュアである事を知っているという事だ。エゴエゴというのは知らないが、とにかく、敵である事には間違いない。

くるみは、声色低く続ける。

 

「目的は何?身代金?私達学生だけど!?一体、いくら欲しいって言うのよ」

「……5000円だ」

 

回答までには、随分間があった。

正直ふざけていると思う。お金ではなく、自分達を誘き出す事が目的……つまり、100%罠だ。だが、ココ様とナッツ様を攫われて、黙っているわけにもいかない。

くるみは大きく深呼吸すると、受話器の向こうの相手へと恫喝した。

 

「随分良心的ね。分かったわ。首洗って待ってなさい!!」

 

ガシャンと電話を切ったくるみは即座に反転しすると、布団の内で寝言を呟いているかれんを揺らした。

 

「かれん起きて!大変なの!」

「……あなたのおかげだなんて……そんな……」

「寝ぼけてる場合じゃ無いの!!ココ様とナッツ様が攫われたの!!」

「うん……お大事に……って、ええっ!?ココとナッツが!?」

 

かれんが飛び起きた。

口元のよだれを拭い、1秒で毅然としたかれんが帰ってきた。

 

「とりあえず、私はココ様ナッツ様の部屋見てくるから!かれんは、みんな起こしてきて!!」

 

くるみは、勢いよく部屋のドアを開け放つと、ココナッツ部屋の方へ駆け出した。

ココナッツ部屋は荒らされており、窓ガラスが割れている。部屋のあちこちを探すが、ココ様とナッツ様は見つからない。

 

「いない……」

 

荒らされた跡、割れた窓……部屋の状況が誰かに攫われたのだという事を物語っている。

 

(私が、もっとちゃんとしてれば……いや、今はそんな事なんて言ってられない!)

 

くるみは、腰元からミルキィパレットを取り出した。

 

「スカイローズ・トランスレイト!」

 

身の丈ほどもある青い薔薇を背景に、眩い光が、くるみの全身を包み込む……小さな少女の身体はそのままに、キュアローズガーデンの青い薔薇の力が彼女を戦士へと変身させてゆく。

やがて光が晴れた時、そこには紫と白の戦闘衣を身に纏った戦士……ミルキィローズの姿があった。

 

「青い薔薇は秘密の印、ミルキィローズ!」

 

自分の行き先を残した書き置きを残し、東京の地図を手に、ミルキィローズは窓のヘリへと足をかける。

 

「エゴエゴだかイゴイゴだか知らないけど、ココ様とナッツ様は、返してもらうわ!」

 

ミルクは窓の外へと飛び出した。向かうは一つ。ココとナッツを攫った、エゴエゴの元だ。

 

(一人前のお世話役になるためにも、ココ様とナッツ様に認めてもらうためにも!)

 

だが、ミルクは気がついていなかった。窓ガラスの破片が、内側に落ちていない事に。

それはつまり、犯人は内側から窓ガラスを開けたという事。

敵は、内側にいるという事だ。

プリキュア5……彼女達に昏い影が迫っていた。




更新頑張ります。
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